八条学園怪異譚
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第四十一話 百物語と茶室その十五
「日下部さんはそこは厳しいのよ」
「そうなんですね」
「日下部さんは」
「伊達に海軍将校だった訳じゃないわ」
そして海上自衛隊で幹部だった訳ではないというのだ。
「まああの人はそうした理由でね」
「それで男の子はですか」
「礼儀をですね」
「そこに女の子らしさを見るからね」
それでチェックしているというのだ。
「だから商業科の女の子って人気あるのよ」
「いえ、人気のことは」
「どうしても」
このことはだ、二人は怪訝な顔で茉莉也に返した。
「そうは思えないですけれど」
「どうも」
「あれっ、知らないの」
「知らないのって商業科の女の子って」
「かなり大変ですよ」
こう言うのである、茉莉也に対して。
「競争が激しくて」
「彼氏ゲットするのに修羅場なんですね」
「それは商業化の男の子が少ないからよ」
茉莉也はこのこともわかっていて言うのだった。
「だからよ」
「それで、ですか?」
「実はもてるんですか」
「というか余るから」
女の子がだ。
「普通科とかじゃ人気あるのよ、それもあってね」
「何かそれってハイエナとか」
「そんな感じなんですけれど」
「近いわね」
実際にそうかもと返す茉莉也だった。
「その辺りはね」
「余りものだから狙うって」
「もう何だか」
「けれどね、実際ね」
「女の子も欲しければ男の子も欲しいのよ」
彼氏、彼女の性別の違いはあってもそこはというのだ。
「だからね」
「商業科の娘は他の学科から人気あるんですか」
「そうなんですね」
「そうよ、だからね」
それでだというのだ。
「若しあんた達が彼氏ゲットしたいと」
「他の学科ですか」
「そっちを見ればいいんですよ」
「そうよ、そうすればね」
茉莉也は的確にアドバイスしていく。
「あんた達も彼氏が出来るわよ」
「そうですか、それじゃあ」
「その時は」
二人は何となくといった感じだが茉莉也の言葉に応えた、茉莉也はその二人に対して笑顔でこうも言ってきた。
「まあ彼氏じゃなくてもいいけれど」
「っていうとですか」
「やっぱりなんですね」
「そう、彼女よ」
彼女もだというのだ、つまり同性愛である。
「彼女でもいいじゃない」
「またそっちにお話持って行くんですね」
「本当に先輩は」
「いいじゃない、別に」
茉莉也は二人の困った顔での突っ込みにあっさりと返した。
「女の子もいいものよ」
「ですから私達そんな趣味はないですから」
「女の子同士っていいんですか?」
「傍から見れば二人共結構お似合いだしね」
百合の話になっていく。
「私もいるじゃない」
「先輩本当にそういうお話好きですよね」
「百合話が」
「まあまあ、とにかくね」
「とにかく?」
「とにかくっていいますと」
「神社に入ったらね」
その時はというのだ。
「いいわね、お菓子よ」
「はい、それとお茶ですね」
「ご馳走になります」
「遠慮は無用よ」
茉莉也はこちらについても遠慮はいいとした、それで言うのだった。
「楽しみましょう」
「それで今度は百物語ですね」
「その後はうわばみさんですか」
「そろそろ見つかってくるかしら」
ここでだ、茉莉也はこうも言った。
「もうね」
「怪談の場所も減ってきてますし」
「かなり回ってきてますからね」
「そうよ、じゃあ何処かしらね」
茉莉也は楽しげな顔で言った。
「泉はね」
「ですね、一体何処なのか」
「楽しみです」
二人も茉莉也に応える、そしてだった。
三人は茉莉也の家である神社に入りそこで和菓子を楽しんだ。茉莉也はこの日も大酒を飲み二人は麦茶だった。そうしたものを楽しみながら次の泉の候補地に向かうのだった。
第四十一話 完
2013・6・23
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