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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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09 はるかなる日々 その三

 5日後。
 宗教都市プルゼニュのロシュフォル教会の聖堂に祈りを捧げる一人の姫君の姿が。
 まぁ、私の事なのだが。
 状況は膠着状態に陥っているように見えながら、天秤は解放軍の方に傾きつつあった。
 トリスタン皇子生存の報告がゼノビア全土に広がって、彼を盟主にすると宣言した解放軍の支持が急増したからだ。
 ゼノビア王国残党や、現状に不満を持つ者、勝ちに寄ってきた傭兵など兵力は膨れ上がり、現在3000の兵が解放軍本拠地ミュルニークへ向かっている。
 それは、ゼノビアのスラムでも同じで、巧妙なサボタージュによって帝国軍の行動を束縛しつつあった。
 一方、私がトードに命じていたロシュフォル教会次期大主教の座に法王ノルンを据えるという案は、神聖ゼテギネア帝国側も飛びついて決着の運びとなった。
 トード経由でアヴァロン島の僧侶達に金をばら撒いた結果、教皇ノルン待望論が浮上したのだ。
 これに教会内部の帝国派と中間派が乗っかり、帝国軍と交渉。
 大神官ノルンの誕生は規定路線となるが、同時に黒騎士ガレスの処遇をめぐり紛糾。
 ノルンが帝国内の権力闘争に敗れた事も指摘され、黒騎士ガレスが再度の暴挙を起こさない事を願い、ノルンの護衛騎士団アヴァロン騎士団の創設を決定。
 その騎士団長にデボネア将軍を推挙したのである。
 大神官ノルンが誕生すると、彼女は黒騎士ガレスの退去を要求。
 黒騎士ガレスは当初抵抗したものの、デボネア将軍という目付がいる事と属性相性が最悪であるアヴァロン島の抵抗運動に手を焼いていたので退去に同意。
 大神官ノルン護衛の為に、デボネア将軍とその直轄騎士団1000は海を渡りアヴァロン島へ。
 ディアスボラとゼノビア統治責任者の玉突き人事異動に帝国軍が動揺しない訳がない。
 ゼノビアは同じ四天王の一人であるカラム・フィガロ将軍の担当となったはいいが、フィガロ将軍の軍はまだゼノビアに到着していない。
 こうして、頭なき烏合の衆と化した帝国軍に反乱軍が負けるはすがなかった。
 宗教都市エルランゲン攻略戦は、ミュルニークから出撃した本隊2000の兵に帝国軍守備隊がパンプキンヘッドに釣り出された所を狂戦士アッシュ率いる別働隊が急襲し帝国軍が大敗。
 本来、後詰を出す予定のゼノビア守備隊は同時期に発生したスラム暴動の鎮圧に手間取ってしまい、兵を送れず見殺しに。
 この為、城塞都市アンベルグに篭っていた帝国軍はゼノビアに撤退し、アンベルクも解放軍の手に落ちた。
 かくして、守備兵より寡兵な解放軍がゼノビアを囲むという状況なのだが、集まった3000の兵が手元に来れば6000。
 一方、帝国軍は空路・海路を使って脱走を図っており、ゼノビアは熟れた実のような状況になっていた。

「何を祈っているのですか?」

 私の祈りに、声をかけた者の姿を見ると、神官服に身を包んだ……ん?これプリーストじゃないぞ。
 ……あ!
 ライトプリーストだよ。おい。
 と、言う事は……

「さぁ?
 何を願うという訳ではありませんが、祈りを捧げると落ち着くので。
 アクエリアス殿」

「こちらの身元は確認済みですか。
 流石ですね。『流浪の姫君』エリー様」

 アクエリアスの後ろにフードをかぶった二人の従者が。
 多分、あの二人がトリスタン皇子と従者ケインだろう。
 『伝説のオウガバトル外伝~ゼノビアの皇子~』では、ケインと二人で旅立ったってあったが、まぁついてきているのだろうな。
 むしろ、解放軍の進撃がゲーム上より停滞しているから、合流できたと考えてもいいかもしれない。
 という事は、外伝の連中でトリスタン皇子の側近を作れる。
 人材不足解消の希望が見えたを隠してあくまに冷静に向き合う。
 なお、こちらの従者二人もフードで顔を隠しているが、その正体は解放軍リーダーと占星術師だったりする。
 これには理由があって、双方襲撃を警戒しているのだ。
 とはいえ、見極める為にはさしで会わない事には分からない。
 実質的なトップ会談だが、二人には口を開くなと厳命している。
 それは向こうも同じだろう。
 先に切り出したのは私だった。

「お互い、いらぬ腹を探るのはやめましょう。
 こちらは、トリスタン皇子を盟主にゼノビア王国を復興する事に賛成する用意があります」

「正直に申し上げて、エリー様。
 私どもは貴方を信用できません」

 まずは一撃。
 言葉のクロスカウンターが互いに突き刺さる。
 そして、口撃は双方それで終わらない。

「あくまで、解放軍の一部である私に対しての不信については、私の徳の至らなさに謝罪する所存です。
 ですが、解放軍を率いるのはデスティンなので、彼について見ていただけるとありがたいのですが」

「失礼ながら、デスティン殿は傀儡で、解放軍の実務はエリー殿が取り仕切っているともっぱらの噂」

 肩をすくめ心外なと見え見えのポーズを取りながら、私は口を開く。
 まだ、アクエリアスのガードが取れたようには見えない。

「解放軍の一隊を率いてはいますが、あくまでそれだけの身分にて」

「悪徳商人トードを用いて、ロシュフォル教会を買収し法王ノルンを大神官に据える策を実行なさっているお方が『それだけの身分』ですか?」

 アクエリアスの口撃が私にクリティカル。
 だけど、私は倒れない。
 ライトプリーストなんてクラスになっているから、ロシュフォル教会内部に伝があったのだろう。

「それ、ゼノビア落城まで黙っていてくださいね。
 大神官ノルン擁立資金の出所が解放軍だったと自らばらして、大神官ノルンとデボネア将軍の立つ瀬を突き崩すつもりなので」

「うわ。
 えげつねー」

 えげつねー言うな。向こうの付き人その一よ。
 まだどっちがトリスタン皇子なのか分からないので付き人その一扱いだが。  

「その手段こそ、私達が貴方を信用できないと言っているのです。
 あなたは、目的の為に手段を選ばなさ過ぎる」

「こればかりは自覚しています。
 とはいえ、勝たない事には今も未来も得られないでしょうに」

「……貴方は第二の女帝エンドラと化すおつもりか!」

 お。
 攻め時と思ったか、アクエリアスの攻撃が鋭さを増す。
 だからこそ、カウンターを受けやすいって事を思い知らせてあげる。

「では、お尋ねしたい。
 なぜ女帝が神聖ゼテギネア帝国を作る羽目になったかご存知か?」

 予想外の質問返しに、アクエリアスのガードが下がる。
 そこを渾身のストレートで口撃する。

「ローディス教国の光焔十字軍の三度に渡る遠征と聖地奪回運動。
 貴方が知らないとは言わさないわよ」

 はっきりと動揺が顔に出たアクエリアスはしばらく言葉を紡ぐ事ができない。
 ローディス教国は遥か北方の大陸に存在するという強大な軍事力を持った宗教国家で『オウガバトルサーガ』全体を通して登場する軍事大国である。
 ひどい話だが、『だいたいローディス教国のせい』と言っておけば大体あっているから困る。
 北のガリシア大陸の西に位置し、ローディス教の教義を実践する者のために存在するが、このローディス教が太陽神フィラーハを唯一絶対の神とし、その使いである聖者ローディスの教えの実践を目的とする宗教という所が問題となる。
 このゼテギネアに広がっているのがロシュフォル教なのだが、この宗教の主神も太陽神フィラーハなのだ。
 宗教界によくある本家と元祖の争いと思ってもらっていいだろう。
 という事は、聖地も同じな訳で。
 ローディス教国はサルディアン教皇の提唱によって聖地アヴァロンの奪回と、近隣国の教化・改宗を目的に始まった光焔十字軍の遠征を開始。
 三度にわたる遠征によってガリシア大陸の大半を管理下におき、帝国暦13年には北のパラティヌス王国を属国とし、ゼテギネア侵攻への足がかりを作った。
 この国のゼテギネア侵攻の脅威に機敏に反応したのが北のハイランド王国。
 25年前の大乱と神聖ゼテギネア帝国成立のひとつのきっかけである。

「考えた事はなかった?
 何で神聖ゼテギネア帝国は暴政を行うようになったか?
 ロシュフォル教会を弾圧し、介入するようになったか?
 ローディス教国の脅威がありながら、末端部の反乱すら力で弾圧しているのはなんでか?」

 振り返り、アクエリアスではなく聖堂に描かれた聖なる父の姿を見て微笑む。
 この聖堂の聖なる父は何も語らない。
 だから私が私の言葉で語る。

「得ちゃったんでしょうね。
 何とかなるだけの圧倒的な力を」

「……そ、それは……」

 聖なる父からアクエリアスの方を振り向いてきっと睨みつける。
 私の渾身の言霊がアクエリアスだけでなく、トリスタン皇子やデスティンにも届く事を信じて。

「そうよ。
 オウガや暗黒神の力よ。
 このゼテギネアの地は、これらの力によってローディス教国の脅威から守られているわ」

「それは詭弁です!
 あなたは、帝国の脅威に、政策に賛同するつもりですか!」

 激昂するアクエリアスに対して、淡々と語る私。
 けど、アクエリアスの付き人その一が剣に手をかけようとして自制したのを私は見逃さなかった。
 トリスタン皇子はあっちか。

「賛同するんだったら、反乱軍なんかに席を置いてないわよ。
 帝国の脅威を取り除くのならば、帝国が感じていた脅威に備えて欲しいと言っているだけ。
 わたしはそれに備える為にこういう事をやっている訳。
 納得はできないでしょうが、理解はしてもらえたかしら?」

 私は知っている。
 『タクティクスオウガ』や『オウガバトル64』で繰り広げられた新生ゼノビア王国とローディス教国の代理戦争を。
 そして、語られなかった物語の果てに、新生ゼノビア王国が負ける事を。

「世界を救う。
 それはすばらしい事です。
 ですが、私達は人です。
 この手で抱えられるものすら助けられません」

 一歩二歩と大股で歩き、アクエリアスとすれ違う。
 小さく驚いた声をあげたアクエリアスなど気にせず、私はまっすぐにトリスタン皇子の前に進み臣下の礼を取る。
 デスティンもウォーレンも私の行動を阻害しようとしない。
 信じているのか、それとも……

「フィクス・トリシュトラム・ゼノビア殿下。
 貴方が進むべき道です。
 貴方しか進めない道です」

 私が臣下の礼を取った事で、デスティンも動く。
 私の隣で臣下の礼を取り、あるものを差し出したのだ。

「それは『えいこうのカギ』。
 バーニャは生きているのか?」

「はい。殿下。
 現在は貿易都市カルロバツにて手のものに保護させています」

 この筋書きで決定打になる切り札、『えいこうのカギ』を持っているバーニャが貿易都市カルロバツにいる事は知っていた。
 ステージクリア後にしか出てこないのが不安だったが、トードのコネと金、コリ達ニンジャの働きで彼女の居場所を見つけ、確保したのである。
 最初からトリスタン皇子にゼノビアを復興してもらうつもりだった事を説明すると、バーニャは快くゼノビア家を継ぐ者の証、王位継承者の証である『えいこうのカギ』を渡してくれたのだった。
 トリスタン皇子はデスティンの手から『えいこうのカギ』を取り、私たちに尋ねる。

「私の望みは、ゼノビアを復興させローディス教国の脅威からゼノビアをゼテギネアを守ること。
 そのためには、きみたち反乱軍の力が必要だ。
 協力してくれないか?」

 私だけではない。
 ウォーレンも、アクエリアスやケインも臣下の礼をとって同じ言葉を誓ったのだった。


「すべては殿下の命ずるままに」


 ゼノビア攻略戦はわずか半日で終わった。
 解放軍にトリスタン皇子とその一党が合流した報告はゼノビア全土に広がり、城塞都市アンベルグにトリスタン皇子の旗が翻ると、帝国軍は組織的後退もできずに逃亡者が続出。
 ゼノビアを取り囲む城壁は一戦もする事無く解放軍の手に落ち、ゼノビアの城に篭っていた帝国軍も身柄の保障と安全な退去を条件に降伏した。
 ここにゼノビアは無血開場という色をつけて、トリスタン皇子の帰還を伝説に祭り上げたのである。

 トリスタン皇子はトリスタン王として即位し、新生ゼノビア王国の建国を宣言。
 こうして、シャロームで勃発した反乱は、新たな局面を迎える。 
 

 
後書き
キャラが走る走る。
こんなに長く書くつもりなかったのに。 
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