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八条学園怪異譚

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第四十一話 百物語と茶室その九

「ここが」
「そうよ、まずは大きい方の茶室に行ってね」 
 最初にそこにだというのだ、泉の候補地である小さな茶室ではなく大きな茶室にである。
「挨拶しましょう、日下部さん達にね」
「あっ、日下部さんも来ておられるんですね」
「この茶室に」
「そうよ、日下部さんって雅なことが好きでね」
 それでだというのだ。
「茶室の会合にはいつも来ているわ」
「ああ、そうなんですか」
「そういえば日下部さんって文化的なこともお好きですね」
「昔の軍人さんですからね」
 茉莉也は日下部のそうした趣味の根拠をそこにあると話した。
「だからね」
「そういえば昔の軍人さんは」
 聖花もその話を聞いて言う。
「古典とかよく読んでいて」
「それで茶道とかにも通じていたりしてね」
「かなり教養がありましたね」
 これは陸軍も海軍もだ、だから漢詩や和歌もよくい詠んだのだ。
「そうでしたね」
「武士だったからね」
 今度はここに理由があった。
「それでね」
「文武両道ですね」
「そうよ、だからね」
 昔の軍人は教養があったというのだ。
「いつも文武に励んでいたのよ」
「強いだけじゃなかったんですね」
「今の学者さんより知識や教養があったんじゃないかしら」
 そこまでいくのではというのだ。
「博士は特別にしてもね」
「というか博士って普通にあの頃からの人ですよね」
「戦前からの」
 何しろ日清戦争どころか明治維新の頃から生きているのではないかとさえ言われている、まさにその頃からの人なのだ。
 だからだ、その教養はというのだ。
「それだと相当な教養があっても」
「それも当然なんじゃ」
「そうなのよね。仙人か妖怪みたいにもなってるから」
 そこまでいっているというのだ。
「あの人は例外としてね、今の学者さん達よりもね」
「昔の軍人さんは教養があったんですね」
「武士みたいに」
 二人はこのことを茉莉也と共に話してだった、そうして。
 三人で茶室に向かった、そこに入ると。
 その日下部がいた、そして先日の普通科の幽霊やグラウンドでプレイしていた選手達もいた、それぞれの服で茶室に正座している。
 日下部は三人が来ると正座したまま彼女達に顔を向けて言って来た。
「今日は小さい方の茶室に行くのだな」
「あっ、わかります?」
「察しはつく」
 こう茉莉也に答える。
「ここでの話となればな」
「そうなんですね」
「それでだが」
 日下部は茉莉也と話をしてから今度は時分から言った。
「茶室に来たな」
「あっ、今日はお茶は飲まないです」 
 茉莉也はまた日下部に答えた。
「泉を探しに来ましたから」
「だからか」
「それに日下部さん達は幽霊ですから」
「お茶を飲めないからだというのだな」
「はい、ですから」
「確かに私達がここにいるのはただの会合でだ」
 それでここにいるのだというのだ。
「お茶を飲むことはない」
「はい、ですから」
「気にすることはない」
 日下部は遠慮する茉莉也に言った、二人は茉莉也が遠慮しているのを見て彼女の後ろで意外といった顔をして言った。 
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