久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五十二話 重力の剣その一
久遠の神話
第五十二話 重力の剣
上城は広瀬と共にスペンサーを見据えていた、そのうえで彼に対して言った。
「貴方の戦う目的は自分の為ではないんですね」
「そうです」
「貴方のお国の為ですか」
「合衆国は素晴らしい国です」
己の国への愛情を隠しもしない。
「世界で最も強く美しく素晴らしい国です」
「そしてそのアメリカをですか」
「はい」
剣を構えたまま上城の問いに礼儀正しく答える。間も無く戦うことになろうともその相手に対する礼節意を忘れてはいない。
「永遠に世界の指導者にする為にです」
「戦われるのですな」
「安いものだとは思いませんか」
スペンサーは微笑んで上城と広瀬に言った。
「一人が生き残ればそれで、ですから」
「合衆国の永遠が保たれるのですね」
「そうです。戦争をせずに」
「アメリカはよく戦争をしますが」
「正義の為とは言いません」
アメリカは常に正義を旗印にするがスペンサーは現実主義者だった。それで上城に対してもこう答えるのだった。
「国益の為です」
「アメリカの、ですか」
「そうです。アメリカの国益の為です」
まさにその為にだというのだ。
「私は戦います」
「そうですね」
「私の為には戦いません」
それはないというのだ。
「決して」
「凄いことではあるね」
広瀬もそのことは認めた。
「俺は違うからな」
「そうですか」
「俺は国家とkには興味がないんだよ」
広瀬の考えではそうだ。
「全くな。まあ目的は言わないがな」
「しかし戦われて」
「そうする。それでだ」
「はい、それではですね」
「あんたも倒す」
広瀬はスペンサーを見据えて言った。
「最初に倒す剣士になるかもな」
「まだ剣士は一人も減っていませんね」
「そうです」
今度は上城がスペンサーに答えた。
「まだ一人も倒れていませんし」
「離脱もしていませんね」
「こんな戦いは終わって欲しいですが」
「それは私もです」
スペンサーもこのことは上城と同じ考えだった。
「私が勝ち残ることによって」
「そうして、ですか」
「それで終わるべき戦いです。それでは」
「はじめるか」
広瀬はスペンサーから見て右手に動いた、そして。
まだ動いていない上城に対してこう言った。
「君の戦い方は知っている」
「そうですか」
「君は前から攻めるか、それとも」
「横からにします」
即ちスペンサーの左手からだというのだ。
「そこからにします」
「そうか、わかった」
「スペンサーさんは剣を両手に持っておられますが」
今もそうしている、剣のあまりもの巨大さ故であることは二人もそれこそ見ただけでわかることであった。
ページ上へ戻る