インフィニット・ストラトス~二人の白の騎士~
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第5話 『アルバイト』
前書き
お待たせしました。
今回は,ようやくヒロインの1人でもある千冬さんとの話です。
お楽しみください。
中華鍋を振るいながら注文を確認する。
店は多くのお客で賑わっていた。
「ライさん,日替わり2人まえ入りました!」
「はい,わかりました。野菜炒め4番テーブルまでお願いします!」
「は~い!」
ここにお世話になって2週間ほどたった。
この世界に来てからはまず衣食住を確保するために住み込みのアルバイトを探すことにしたのだ。
幸い服は港の従業員の物を少し拝借することで手に入れたが,この世界で僕の世界のクレジットカードが使えるかわからないため迂闊には使用することができない。
そこで五反田食堂の臨時アルバイトを見つけたのだ。
五反田食堂の店主でもある五反田玄さんが腰を痛めてしまい厨房に立てなくなってしまったのだ。
その為,臨時で料理ができる人を探していたようだ。
だが,玄さんは厳しい人で僕の前にも多くの人が面接を受けたようだがすべて不採用にされたらしい。
お客さんが少なくなりカウンター席には二人の赤い髪の兄妹が座っている。
「ライ兄ちゃん野球しようよ~」
「駄目だよお兄,ライさんは私の勉強を見てもらう約束してるんだから」
兄の名前が五反田弾,妹の名前が五反田蘭とても仲がいい兄妹だ。
「こら弾,蘭。まだ,ライ君はお仕事中だからもう少し待ってなさい」
二人を注意したのだが五反田食堂の自称看板娘であり弾,蘭ちゃんの母親でもある五反田蓮さん。見た目はかなり若く見える。20代と言われれば納得してしまうほどだ。
混雑のピークを過ぎた店の入り口が開き中学生の制服を着た黒髪の少女と少女にどことなく似ている少年が入ってくる。
「いっしゃいませ」
「あ! ライ兄ちゃんだ!」
「こんにちわ,ライさん」
2人は,五反田家以外の数少ない知り合いだ。
姉の名前が織斑千冬,弟が織斑一夏。
千冬ちゃんが竹刀袋を持っていることから道場帰りかこれから向かうのだろう。
彼女は,篠ノ之道場で剣術を学んでいる高校生だ。
僕も一度行ってみたいと思っているがなかなか時間が取れなかった。だが,ようやく明日の午後に時間を作ることができた。
とても明日が楽しみだ。
◆
道場の真ん中では黒髪の少女,織斑千冬と銀の髪の少年が防具もつけずに竹刀を構えていた。
それを見守るのが千冬の弟の一夏,條々之道場の当主でもある篠ノ之 柳韻だ。
竹刀を握る2人は動かない。いや動けないのだ。
すでに試合が開始し30分が経とうとする。
最初に動いたのは千冬の方だった。
早く鋭い竹刀による突きがライを襲う。
ライは,千冬の突きを紙一重で避ける。
剣道をたしなんでいる者からすればこの試合は異常に見えるだろう。
見えない程の鋭い突きを放たれながらも危うげなく紙一重で避ける。
千冬は少し息が上がってきたが,ライの方は薄く汗をかくほどしか体力は消費していない。
「相手の動きをしっかり見るんだ」
「はい! やあぁぁぁぁ!!」
ライは千冬からの攻撃を受けながらも的確にアドバイスをしている。
これは相手との差があるからこそできることだ。
「少し力が入り過ぎだよ」
それにしても飲み込みが早い。
本来,自分の型が出来上がった者はそれを簡単には直すことができない。しかし,千冬ちゃんはすぐにやってのける。
「今度は,こちらからいくよ」
「はいッ!」
一気に千冬ちゃんとの距離を詰める。
千冬ちゃんと同じように突きを放つが,突きは1度や2度では止まらない。合計で4回の連続の突きを放つ。
藤堂さんに鍛えてもらっているときに身いに付けた技だ。
1撃目,2撃目は防ぐことはできても3撃目で竹刀を飛ばし,4撃目を寸止めする。
千冬ちゃんは悔しそうに僕を見てくる。
そんな彼女の頭を優しく撫でる。彼女がこれからどれだけ強くなるのか見てみたい。
「どうして,ライさんはそんなに強いんですか?」
外で休憩をしている時に千冬ちゃんにこう聞かれたが,僕は自分が強いと思ったことはない。
「僕はそんなに強い人間じゃないよ」
「でもっ・・・実際,私はライさんに負けました」
「千冬ちゃん,強さは人それぞれだ。大事なのは自分が何を目指し,何をするかだよ」
そんな話をしている僕たちを建物の陰から見る人物がいた。
後書き
いかがでしたか。
更新が遅れてしまいまことに申し訳ありません。
楽しんでいただけましたか?
次回は,束さんが登場します。お楽しみください。
ご意見やご感想があればよろしくお願いします。
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