とある星の力を使いし者
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第88話
麻生達は近くのホテルの一室にいた。
待つ事、数十分後。
部屋の扉をコンコン、とノックする音が聞こえた。
海原はその扉を開けると、スーツを着た男が立っていた。
その男から封筒を受け取ると、男はどこかへ立ち去る。
海原はその封筒の中身を取り出し、中身を確認する。
「下部組織に先程の武器商人のリストを調べ上げて貰った結果が出ました。
リストの中で学園都市を崩壊させようとしている部隊と接触した可能性があるのは二人だけの様です。」
「二人だと、私達の三人の内の二人がその武器商人に接触する事になるわね。」
「時間があればそうしているのですが、今は急を要します。
今回は学園都市の存亡がかかっているので、自分達とは別の暗部の組織と協力体制を取る事になりました。
二人の内の一人をその組織に任せる事にします。」
「それじゃあ、誰がその武器商人の所に向かうんだ?」
麻生の言葉を聞いた海原は笑みを浮かべて、麻生の方を見る。
海原の笑顔を見た瞬間、麻生は何か嫌な予感がした。
「ええ、武器商人の所に向かうのは麻生さん、あなたに任せる事にします。」
「は?」
結標は海原の突然の発言に驚き声をあげ、麻生は嫌な予感が見事に的中して既にだるそうな表情を浮かべている。
「あなた、自分が何を言っているか分かっているの?」
「ええ、分かっていますよ。」
「下部組織でも私やあなたではなくこいつに行かせるって訳?」
「もちろん、彼を行かせる理由はちゃんとありますよ。」
海原は椅子に座り、両手を合わせて、前かがみの姿勢を取りながら説明する。
「まず一つにその武器商人はとても用心深いという事です。
下部組織や他の暗部の組織はこの武器商人を捕まえようと何度か接触しようとしましたが直前になって逃げられる事がほとんどだとこの資料には書いてあります。
嘘か本当かは分かりませんが、その武器商人は暗部の組織の顔を全員分覚えているとの事。」
「暗部の組織の全員分の顔ですって!?
そんなのありえないわ。
私達の組織でさえ、下部組織と合わせると何千は軽く超す組織よ。
その顔を全部覚えるなんて「いいや、可能だ。」・・・どういう事?」
「この世の中には完全記憶能力って言う特異体質を持った人間がいる。
その武器商人がその完全記憶能力体質なら話は繋がる。」
現にインデックスは一〇万三〇〇〇冊を記憶している。
それも一字一字正確にだ。
その武器商人が完全記憶能力を持っているのなら暗部の組織の顔を全部覚えるのも不可能ではない。
「麻生さんの意見が正しいにしろ正しくないにしろ、相手は暗部の組織の顔を見分ける事が出来る人物だという事です。
ですが、麻生さんは暗部の人間ではなく完全に逆側の人間です。
「書庫」にもレベル0と書かれていますので、警戒されることはないでしょう。」
麻生はとてもだるそうな表情を浮かべながら大きくため息を吐く。
「俺に拒否権はあるのか?」
「時間があれば言い分の聞くのですが今は一分一秒も無駄に出来ません。」
「他に手はないんだな?」
「今の現状ではこれが最善策かと。」
海原は笑みを崩さずに麻生に言う。
それを見た麻生は頭をかきながら言う。
「分かったよ、それしか方法がないって言うのなら従うよ。」
「そう言っていただけると思っていました。
ではこの資料と携帯を渡しておきます。
資料には隠れ家についての情報が書かれています。
連絡や報告についてはその携帯でかけてください。」
海原から資料を受け取った麻生は面倒くさい、と呟きながら部屋を出て行った。
「彼で本当に大丈夫なの?」
結標は思わず心配の声をあげてしまった。
なぜなら、可能性がある武器商人は二人。
その内の一人が当たりだ。
他の暗部の組織に任せている武器商人が当たりなら麻生が失敗しても何の問題もない。
だが、麻生の方が当たりなら取り逃がすととても厄介な事になる。
「彼なら大丈夫でしょう。
自分も彼が普通の能力者ならこんな事は頼みません。
ですが、彼は普通ではありません。
まぁ、気長に彼の報告を待つ事にしましょう。」
呑気な事を言いながら、海原は紅茶を作り、カップに注ぐ。
それを見た結標は呆れた表情を浮かべるが、自分の分も入れるように言うのだった。
第五学区のビルとビルの間にある通路に地下に伸びている階段があり、そこに武器商人の隠れ家があると資料に書いてある。
麻生はバスと電車を使い、第五学区のビル街に来ていた。
高いビルなどが立ち並ぶと、人の注目や視線がそっちの方へ向いてしまう。
すると、ビルとビルの間にある通路などに注意が薄くなる。
そう言った心理的状況を利用した隠れ家だろう。
資料に書かれている通りにビルとビルの間の道を歩いていると、地下に伸びている階段が目に入った。
確かにビルなどに視線が集まっていたら気づく事はない位置にそれはあった。
麻生はその階段を下りていく。
階段を下りた先には鉄の扉が一つだけあった。
その扉を開けると、中は木でできた四人掛けのテーブルが三つ縦に並んで、通路を挟んでカウンターがある。
見た目は隠れた料理屋に見えなくもない。
だが、そこ人は誰もいない。
麻生が中に入り、扉を閉めたと同時にカウンターの奥にある扉が開くと男が出てきた。
身長はおよそ一七〇センチ程度、日に当たっていないのか肌白い。
黒のジーンズに白のワイシャツを着ている。
「何の用だ?」
男は麻生の顔を怪しげに見つめながら言った。
「武器やその他もろもろ買いに来た。」
「何で俺の所に?
他にもいろいろあった筈だ。」
「知り合いが、あんたの所は品揃えが良いって聞いてなわざわざ足を運んだわけだ。」
「見るからに暗部の組織じゃあなさそうだな。
リストには乗っていなかったし、それじゃあ改めていらっしゃい。
とりあえず、奥に入りな。」
麻生の事を暗部の組織の人間ではないと判断したのか、警戒を解き少し笑みを浮かべて話しかけてきた。
どうやら、疑っていただけで元はよく話すタイプらしい。
そのまま男について行くと、そこにはいろんな物が置いてあった。
「外」にあるような拳銃や爆弾、学園都市が作った対能力者用の装備もあった。
それ以外にも怪しげな薬物や何枚かの紙を挟んだファイルも置いてある。
その中の一つに鍵開けのリスト、と書かれているものがあった。
「それはいろんな人材をリストアップしたファイルだよ。
金さえ払えばその仕事をやってくれるプロだな。」
麻生がそのファイルを見ていたのを見て、説明してくる男。
「さて、何をお探しで?
一応、車とかも扱っているぜ。」
「本当に幅広く取り扱っているんだな。」
「これだけ集めるのに苦労したぜ。
暗部の組織の連中が俺を捕まえようと、いくつも隠れ家にやってきてその度に集めた商品を捨てるのは正直きついぜ。」
完全に麻生の事を暗部の人間ではないと確信しているのか、ペラペラと喋りかけてくる。
部屋の全体を見渡していると、奇妙なモノを見つけた。
「おい、あれも商品の一つなのか?」
麻生が見ている視線を追い、その商品を見て小さく笑いながら男は言った。
「ああ、今回から始めたんだ。
もしかして興味ありか?」
そこには鎖で繋がれた少女が吊り下げられている。
歳は十三歳くらいだろうか。
両手を枷に縛られ、服も下着だけだ。
しかも一人ではない、合計五人もの少女が横に一列に並んでいた。
まるで、商品を陳列させているようだった。
「あれはどこから拉致してきた?」
「おいおい、人聞きの悪いこと言わないでくれ。
拉致したんじゃない、買ったんだよ。」
「買った?」
「あんた置き去り(チャイルドエラー)って知っているか?」
「まぁ人並み程度に。」
置き去り(チャイルドエラー)とは学園都市における社会現象の一つ。
原則、入学した生徒が都市内に住居を持つ事となる学園都市の制度を利用し、入学費のみ払って子供を寮に入れ、その後に行方を眩ます行為。
そういった子供は孤児施設に預けられ、能力の実験などに利用される。
「最近、こういった物を買う客が多いって聞いてな。
置き去り(チャイルドエラー)の処理で困っている施設から格安で買い、売るって寸法さ。」
よく見ると、その少女たちにはいくつもの青黒い痣があった。
「最初の方は結構抵抗するからさ、試したい商品とか使って黙らせたりと結構苦労したんだぜ。
今じゃあ、大人しくしてくれてるけどさ。」
少女達の瞳の光はなく、全身に力もなく呼吸音しか聞こえない。
一応、生きてはいるようだ。
麻生はその少女達をじっと見つめていた。
「もしかして買っていく?
今なら結構な安さで買えるけど。」
麻生はポケットに手を入れると、そこから一万円の札束を幾つも取り出し、男に投げ渡す。
「もしかして全部買っていく感じ?」
麻生は何も答えない。
男は麻生が買っていくものと判断して話を進める。
「これだけあれば全員分払った事になるな。
いやぁ、初めてした商売だけど幸先いいね。
次の仕入れておくから暇になったら来てくれよ。」
男は上機嫌なのか、麻生の事をお得意様のように扱う。
その言葉を聞いて、麻生はため息を吐いた。
「何か勘違いしているみたいだな。」
へ?、と男は声をあげる。
「俺が金を渡した訳でも、あの娘達を買った訳でもない。
これからあの娘達の今後の生活の資金を出しただけだ。」
その瞬間、男は気づいたら壁に叩きつけられていた。
それが、麻生の左腕が自分の顔面を掴み、壁に叩きつけられているのだと気付くのに数秒かかった。
それと同時に全身に針を刺したような凄まじい痛みが広がる。
「て、てめぇ!?
何を!?」
「俺が一番嫌いな人間のタイプ、ベスト一を教えてやるよ。
お前みたいに人を物扱いにして、道具のように使う屑だ。」
空いている右手を握り、拳を作る。
そして、左手の握力を一気に強くし男の骸骨を圧迫しながら右手で男の身体を殴り続ける。
その部屋には骨が砕ける音と、男の叫び声が響き渡った。
三分後。
麻生の足元には手足があらぬ方向へと曲がり、骸骨のほうは歪み、男の周りには血だまりが出来ていた。
麻生は自分の携帯を取り出すと土御門に電話を掛ける。
「キョウやんか、どうかしたかにゃ~?」
「お前、この仕事の報酬とか言っていたな。
気が変わったから報酬を用意してくれないか?」
「それは構わないけど、何が欲しいんだなにゃ~?」
「五人分の住居と中学校か?、そこの在籍書でも何でもいいから用意しろ。」
麻生の言葉を聞いた土御門は少しだけ間を空けて言った。
「了解、こっちで用意しておく。」
「報酬は前払いだ。
今すぐ用意しろ。」
「分かったぜい。
報酬の方は海原から貰ってくれだにゃ~。」
麻生の言葉で全てを理解したのか、土御門は快く引き受けた。
電話を切って、落ちている札束を全部拾い、少女達に近づく。
麻生が彼女達を縛っている枷に干渉して鍵を外す。
そして彼女達に札束と何もない所から幾つもの服や下着を創り渡していく。
「とりあえず、これに着替えろ。
部屋と学籍は用意してやったから、後は自分で生きろ。
怪我が痛むならこの医者に電話しろ。
事情を話せば、無料で診察してくれる気前のいい医者だ。」
それだけ言って、麻生は部屋を出て行こうとする。
「あなたはだれ?」
少女達の一人が麻生に聞いた。
麻生は振り返らず答えた。
「ただの通りすがりの一般人Aだ。」
それだけ言って、部屋を出る。
海原から貰った携帯を開き、海原に電話をかける。
「こっちが当たりだ。
商人から記憶を探ってみたら、武器の数などが分かった。
あと、一人瀕死の奴がいるから回収でもしてくれ。
それと、土御門から連絡入っているな。
至急、部屋と学籍を用意と少女たち五人を保護してやってくれ。」
それだけ言って通話を切る。
そして、地下室を後にするのだった。
後書き
この話は原作で一方通行がした行為がかっこいいと思ったのでそれをオマージュしました。
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。
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