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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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氷の女王


「何でエルザみてーなバケモンが俺達の力を借りてぇんだよ」
「知らねぇよ。つーか『助け』なら俺1人で十分なんだよ」
「じゃあお前1人で行けよっ!俺は行きたくねぇ!」
「じゃあ来んなよ!後でエルザとティアに殺されちまえ!」

ここはマグノリア駅。
言うまでもないが・・・ナツとグレイが周りを巻き込んで喧嘩していた。
周りの人たちは驚いたような目で2人を見ている。

「うっせーなぁ・・・まぁ、面白れぇからいいか」
「ティアが来たら殺されちゃうね」

この2人はその喧嘩を呑気に見ている。

「迷惑だからやめなさいっ!」

エルザに協力を頼まれていないはずなのにいるルーシィが止めようと言った。

「もぉっ!アンタ達、なんでそんなに仲悪いのよぉ」

溜息まじりにそう言うルーシィ。
ナツとグレイは一旦喧嘩を止め、ルーシィをまじまじと見つめた。

「何しに来たんだよ」
「頼まれたのよっ!ミラさんに!」

そう。
時は戻すこと前日、つまりエルザが帰って来た日・・・。

『確かにあの6人が組めば素敵だけど、仲がギクシャクしてるトコが不安なのよねぇ~。ルーシィ、ついてって仲を取り持ってくれる?』
『えぇーっ!』
『ペン・・・』

ちなみに最後の『ペン・・・』はリーダスである。

「ミラさんの頼みだから仕方なくついてってあげるのよ」
「本当は一緒に行きたいんでしょ」
「まさか!てか6人の仲取り持つならアンタがいたじゃない!うわーかわいそっ!ミラさんに存在忘れられてるしー」
「あい」
「僕とアルカとティアは仲いいよね?」
「ギクシャク何かしねーよなぁ。ったく、ミラは心配性なんだよ。そーゆートコも好きだけどなっ!」

よくそんな事を堂々と言えるものだ。
そしてそんな間にも2人の喧嘩は再会していた。

「テメェ、なんでいつも布団なんか持ち歩いてんだよ」
「寝る為に決まってんだろ。アホかお前」
「あーあ・・・めんどくさいなぁ・・・」
「キャバ嬢。いい方法があるよ」
「あたしキャバ嬢じゃないから・・・で、方法って?」
「耳貸して」

ルーがごにょごにょと何かを囁き、ルーシィは納得したように頷く。
そして2人は顔を見合わせ、口を開いた。

「あ!エルザさん!」
「ティアもいる!」

その一言を聞いた2人はぴくっと反応する。
そして。

「今日も仲良く行ってみよー」
「あいさー」

2人は仲よさそうに肩を組んだ。
そう、ルーが言ったいい方法とはエルザとティアが来たと2人に思わせる事。
もちろん2人はまだ来ていない。正真正銘、真っ赤な嘘だ。

「あはははっ!これ、面白いかも」
「でしょ?」
「「騙したな、テメェ等!」」
「あんた等、本当は仲いいんじゃないの?」
「騙されたのが悪いんじゃないの?」

怒鳴る2人をルーシィとルーが鼻で笑う。

「冗談じゃねぇ!なんでこんな面子で出かけなきゃならねぇ!胃が痛くなってきた・・・」
「魚食べる?」
「いるかっ!」
「ルーシィ、なんでお前が居るんだ?」
「そーいえばどーして?キャバ嬢、呼ばれてた?」
「何も聞いてなかったんですかっ!それにあたしはキャバ嬢じゃないっ!」
「お前ら、本当面白れぇよな。見てて飽きねぇ」

そんな会話をする6人のもとへ、ようやくエルザが到着した。

「すまない・・・待たせたか?」
「荷物多っ!」

大量の荷物と共に。
トランク12個ほどを縄で縛り、荷台のようなものに乗せて運んでいる。
中に一体何が入っているのだろうか。

「ん?君は昨日妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいたな・・・」
「新人のルーシィといいます。ミラさんに頼まれて同行する事になりました。よろしくお願いします」
「私はエルザだ、よろしくな。そうか・・・ギルドの連中が騒いでいた娘とは君の事か。傭兵ゴリラを倒したとか何とか・・・頼もしいな」
「それ・・・ナツだし事実と少し違ってる・・・」

正しくは『傭兵ギルド南の狼』と『メイドゴリラ』だ。

「今回は少々危険な橋を渡るかも知れないが、その活躍ぶりなら平気そうだな」
「危険!?」
「フン」

怯えるルーシィはさておき、ナツが振り返った。

「何の用事か知らねぇが、今回はついてってやる。条件付きでな」
「条件?」
「バ・・・バカ・・・!お、俺はエルザの為なら無償で働くぜっ!」
「言ってみろ」

慌てるグレイを無視し、ナツは一呼吸置くと条件を口にした。

「帰ってきたら俺と勝負しろ。あの時とは違うんだ」
「!」
「お、おい!早まるなっ!死にてぇのか!?」
「死にたいならティアを呼んだ方が早いんじゃない?」
「アイツ、誰だろうが手加減なしだもんな」

そんな無謀すぎるナツの申し出にルーシィとグレイは驚き、ルーとアルカは何とも的外れなコメントをした。
そう言われたエルザはクスリと笑う。

「確かにお前は成長した。私はいささか自信がないが・・・いいだろう、受けて立つ」

エルザは髪をかきあげ、了承した。

「自信がねぇって何だよっ!本気で来いよな!」
「ふふ・・・解っている。だがお前は強い・・・そう言いたかっただけだ」

そう言うと、エルザはグレイに視線を向ける。

「グレイ・・・お前も勝負したいのか?私と」

そのエルザの言葉にグレイは首がちぎれるんじゃないかと思うほど全力で激しく首を横に振った。

「おしっ!燃えてきたぁ!やってやろうじゃねーかっ!」

目標が出来たナツは、文字通り燃えている。
そこでアルカが口をはさんだ。

「なぁエルザ」
「なんだ?お前も勝負したいのか?」
「いあ、そうじゃなくて・・・ティアは?」

そう。
居るはずのティアがいないのだ。
先ほどからルーが辺りをきょろきょろ見回している。
すると、1人の男が泣きながら歩いてきた。

「くっそぉ・・・くっそぉ・・・」
「仕方ねぇって。相手はあの氷の女王(アイスクイーン)だぞ?」
「噂にゃ聞いてたが・・・あれ程とはよぉ・・・ぐすっ・・・」

氷の女王(アイスクイーン)
その言葉を聞いた瞬間、ルーとアルカの顔が輝き、エルザが溜息をつき、グレイはやれやれと額に手を当て、ナツがさらに燃え上がった。

「貴女に一目惚れしましたっ!す、好きです!付き合って下さい!」

すると向こうからTPOを全く考えていない告白の言葉が聞こえてきた。
周りにいた野次馬たちが囲むようにしてその光景を見ている。

「何あれ・・・こんなトコで告白するなんて、デリカシーが無いっていうか・・・」
「あの人、終わったね」
「あぁ」

呆れるルーシィの横でルーとアルカが縁起でもない事を呟く。

「・・・一目惚れ?」

感情の篭っていない、冷たい氷のような声が響いた。
その声を聞いた瞬間、エルザがさらに大きなため息をつく。

「そんなの一種のまやかしに過ぎないわ。私の見た目しか知らないくせに気安く告白なんかして来ないで。私はアンタみたいなTPOを知らない、しかも見知らぬ人間と付き合うほど軽い女じゃないの。答えは当然『NO』よ」

強烈すぎるというか冷淡すぎるというか・・・そんな返事に男はワナワナ震えて立ち去り、野次馬達もばらけていった。

「ティア!」

ルーが声を上げ、ティアに向かって走っていく。
そして・・・。

「久しぶりっ!会いたかったよ!」

何の前触れもなく、ティアをぎゅっと抱きしめた。
ルーシィはその意外過ぎる行動に唖然とする。
そして抱きしめられているティアは細かく震えると・・・。

「毎回毎回・・・勝手に抱きついて来てるんじゃないわよ、バカルーがぁぁっ!」
「ぐぼっ!」

ルーを思いっきり殴り飛ばした。
一応お知らせしておきます。ここは駅です。民間人大勢います。
よい子はマネしてはいけません。

「さっすがティア、キレも威力も変わってないね!」
「それ褒めてるのかしら、貶してるのかしら」
「褒めてるよ?」

子犬のように可愛らしく屈託のない笑みを浮かべるルーに何も言えなくなったのか、ティアが溜息をつく。

「エルザ、遅れて悪いわね」
「いや、私も今来たところだ」
「そう・・・」

ティアの視線がルーシィに注がれる。

「あんた、ハルジオンの・・・」
「へ?」
「覚えていないの?乏しい記憶力ね」
「ムカッ!」

初対面の人にこんな事言われて怒らない人はいないだろう。

「私よ。帽子を取った方がいいかしら」

そう言うと被っていた大きめの帽子を取る。
ふわっと群青色(ラピスラズリ)のカーリーロングヘアが揺れ、同じく群青色(ラピスラズリ)の大きい瞳がルーシィを見つめる。
長い睫に縁どられた瞼、すっと通った鼻筋、薄い唇、頬は薄く桃色に染まっていて、少し幼さが残るものの美しく凛とした雰囲気のある顔立ち。

「あっ!」
「やっと思い出したみたいね」

そう言いながら帽子を被りなおす。
ハルジオンで火竜(サラマンダー)妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入れてやると言われた時に会ったあの美少女。
記憶から消えかけていた。

「ギルドに入れたのね」
「は、はい!新人のルーシィです、よろしくお願いします」
「私はティア。特別慣れ合うつもりはないけど、まぁよろしく」
「へ?」
「気にすんな。こーゆー奴なんだよ」

アルカが呟く。
深い青色のリボンが巻かれた大きめの白い帽子が、ティアの顔を隠す。
あの時と同じ、フェミニン調のミリタリールックの服に身を包んで、足元はレースアップブーツだ。

「おい、ティア!」
「あら、アンタもいたの。脳みそまで燃え尽きてしまった単細胞の火竜(サラマンダー)
「相変わらずムカつくヤローだな・・・」

ティアは顔色変えずに言い放つ。

「で、何の用かしら?」
「帰ってきたら俺と勝負しろ!」

まただ。
さっきエルザに勝負を挑んだ事を忘れている訳ではなさそうだが・・・。

「ティアに勝負を挑むなんて・・・」
「マジで死ぬぞ。ティアに勝負を挑んだ日が命日だ」
「えぇっ!?」

珍しく笑顔を崩して驚くルーとアルカの言葉にルーシィが驚く。

「はぁっ・・・めんどくさいわね」
「んだとっ!」

髪を指にくるくる巻きつけて呟くティアにナツが噛みつく。

「だってアンタも覚えているでしょ?去年私に喧嘩を挑んで殺されかけたじゃない」
「あの頃はガキだったんだ!あの時とは違う!」
「殺されかけない自信があると言いたいの?」
「おぅよ!」
「・・・そう」

髪から手を離す。

「ならいいわ。受けて立つ」
「おっしゃあーーーーーーーーっ!」
「その代わり」

ティアは意地悪そうにニヤッと微笑んだ。

「手加減しないわ。死んでも文句言わないで・・・アンタが実力を上げている様に、私も実力を上げている事を忘れないで」

その言葉にナツの炎が消える。
ギギギ・・・とぜんまいの切れた人形のような動きでティアを見つめた。

「こ、殺すなよ?」
「さぁ?どうなるかしらね」
「・・・やっぱ止めてもいいか」
「意気地なし、訂正禁止よ。それに殺されかけない自信があるって言ったのはアンタ。恨むならそのことを口走った己を恨みなさいな」













その後、列車に乗り込んだ一同。
席順はというと、こんな感じだ。

    窓側
エルザ    ナツ+ハッピー
ルーシィ   グレイ
アルカ    ルー
    
    通路

ティア

そして言うまでもないが・・・。

「うぷっ・・・おぉっ・・・はぁ、はぁ・・・」

ナツが乗り物酔いで弱りきっていた。

「なっさけねぇなァ、ナツはよぉ・・・うっとおしいからティアのいる席に行けよ」
「めんどくさいのをこっちに送り込もうとしないで。もう列車乗らずに走れば?」
「毎度の事だけど、辛そうね・・・」

グレイが厳しくナツを罵倒し、ティアは魔法書を読みながら興味ナシというように呟く。

「全く・・・しょうがないな。私の隣に来い」
「退けって事かしら・・・」
「俺は退く必要ねぇな」
「あい・・・」

見かねたエルザが自分の横の座席をポンと叩く。
既に座っていたルーシィとナツが場所を入れ替える。
酔っているナツを見てエルザは溜息をつくと・・・。

「うるさいから黙って」

何故かエルザではなくティアが呟き、ナツに向かって何かを放った。
一瞬すぎて、何を放ったのかは解らない。
その一撃によってナツは気を失い、エルザの膝に倒れ込んだ。

「少しは楽になるだろう。ありがとう、ティア」
「別に・・・読書の邪魔だから言葉を発せないようにしただけよ」

ツン、とした態度で呟く。
その光景にルーシィとグレイとハッピーは目を見開いて沈黙した。
ルーは我関せずというように呑気に寝ていて、アルカは腹を抱えて大爆笑している。

「そういやあたし、妖精の尻尾(フェアリーテイル)でナツとルーとアルカ以外の魔法見た事ないかも」

場の空気を変えるようにルーシィが呟いた。

「エルザさんとティアさんはどんな魔法使うんですか?」
「エルザでいい」
「私も。ティアでいいわ」

魔法書を読んでいてこっちの会話など聞いていない様に見えるが、実はしっかり聞いていたらしい。

「エルザの魔法は綺麗だよ。血がいっぱい出るんだ、相手の」
「綺麗なの?それ・・・」
「ティアの魔法も綺麗だよ。吹き飛ばしたり斬りつけたり爆発させたりするんだ」
「よ、よく解らないわね・・・」

まぁ、こんなあやふやすぎる説明で魔法を理解できる人間はそういないだろう。

「大した事はない・・・私はグレイの魔法の方が綺麗だと思うぞ」
「そうか?」

エルザの言葉に、グレイは左掌に右手を乗せる。
そこから冷気が溢れ出て、ゆっくりと手を開くと氷で出来たギルドマークがあった。

「わぁっ!」
「氷の魔法さ」
「氷ってアンタ、似合わないわね」
「ほっとけっての」

するとルーシィは何を考えているのか、ふと真顔になる。

「氷!」

グレイを見てそう言い、今度はナツに目線を向ける。

「火!」

そして何かに気づいたように右手を握った。

「あ!だからアンタ達仲悪いのね!単純すぎてかわいー」
「そうだったのか?」
「どうでもいいだろ!?そんな事ァ」

図星なのか、グレイの額に汗が浮かぶ。

「そうよ。そんなくだらない事より本題に入るべきだわ」

突如そう言ったのはティアだ。
魔法書から顔も上げずにそう言い放ち、エルザを見つめる。

「確かにそうだな。一体何事なんだ?お前ほどの奴が人の力を借りたいなんて・・・しかもティアまで引っ張り出してくるなんてよほどだぜ」

アルカの言葉にエルザは頷き、話し始めた。

「そうだな・・・話しておこう。先の仕事の帰りだ。オニバスで魔導士が集まる酒場へ寄った時、少々気になる連中がいてな・・・」












時を戻す事、オニバスの酒場。

「コラァ!酒遅ぇぞ!」

エルザの座っていた席の近くで4人の男が飲んでいた。
その中の1人がキレている。

「ったくよォ、何モタモタしてんだよ!」
「す、すみません」
「ビアード、そうカッカすんな」
「うん」
「これがイラつかずにいられるかってんだ!」
「ひっ」

店員が小さい悲鳴を上げる。

「せえっかく『ララバイ』の隠し場所を見つけたってのにあの封印だ!何なんだよあれはよォ!全く解けやしねぇ!」
「バカ!声がでけぇよ」
「うん、うるせ」
「くそぉっ!」

ぐびぐびぐびっとイラついた様子で酒を飲む男『ビアード』。

「あの魔法の封印は人数がいれば解けるなんてものじゃないよ」
「あ?」
「後は僕がやるから、皆はギルドに戻っているといいよ」

そう言うのはどこか優男のような顔立ちの男。

「エリゴールさんに伝えといて。必ず3日以内に『ララバイ』を持って帰るって」
「マジか!?解き方思いついたのか?」
「おお!さすがカゲちゃん!」












「ララバイ?」
「子守歌・・・眠りの魔法か何かかしら」
「聞いた事ねぇな」

ララバイ、という聞き慣れない言葉に3人は首を傾げ、ティアは魔法書に目線を落としている。
協力はするけどそこら辺の事情に興味ない、という事だろう。

「解らない・・・しかし封印されているという話を聞くと、かなり強力な魔法だと思われる」
「話が見えてこねぇなァ・・・」
「あぁ。得体の知れない魔法の封印を解こうとしている奴等がいるってだけだろ?そいつらの仕事かもしれねぇ」

列車が止まる。

「そうだ・・・私も初めはそう気にはかけてなかった。エリゴールという名を思い出すまではな」

カン、カン、カン、と音が響く。
ボォーッと汽笛の音が聞こえた。

「魔導士ギルド『鉄の森(アイゼンヴァルト)』のエース。死神エリゴール」
「し、死神!?」
「暗殺系の依頼ばかりを遂行し続けついた字だ。本来暗殺依頼は評議会の意向で禁止されているのだが、鉄の森(アイゼンヴァルト)は金を選んだ」
「それなら俺も聞いた事がある。6年前に魔導士ギルド連盟を追放・・・現在は『闇ギルド』というカテゴリーに分類されている」
「闇ギルドぉ!?」
「ルーシィ、汁いっぱい出てるよ!」
「汗よ!」

エルザとアルカの説明に冷や汗を流すルーシィ。
ゴトゴトとエルザの大荷物を引っ張りながら列車を降りる。

「なるほどねぇ・・・」
「ちょっと待って!追放・・・って、処罰はされなかったの!?」
「アンタ、バカね。されたに決まってるじゃない」
「むっ」

突然会話に入ってきたティアにバカと言われ、ルーシィはイラッとする。

「当時鉄の森(アイゼンヴァルト)のマスターは逮捕され、ギルドは解散命令を出された。だけど闇ギルドと呼ばれているギルドの大半が、解散命令を無視して活動を続けているギルドの事なのよ」

それを聞いたルーシィはぶるっと体を震わせる。

「帰ろっかな・・・」
「出た」

まぁ帰りたくもなるだろう。

「不覚だった・・・あの時エリゴールの名に気づいていれば・・・全員血祭りにしてやったものを・・・」
「甘いわね。奴等は掟も守れない愚かな集団よ。半殺しくらいが丁度いいわ」
「ひいいっ!」

エルザの怒りの形相とティアの無表情で淡々と語る姿に、ルーシィは悲鳴を上げる。

「そういう事か。その場にいた連中だけならエルザ1人で何とかなったかもしれねぇ」
「だが相手がギルドまるまる1つとなると・・・」

アルカとグレイの言葉にエルザは頷く。

「奴等は『ララバイ』なる魔法を入手し何かを企んでいる。私はこの事実を看過する事は出来ないと判断した」

そこまで言うとエルザはグレイ達の方を向いた。

鉄の森(アイゼンヴァルト)に乗り込むぞ」

それを聞いたグレイとアルカは笑みを浮かべ、ティアは表情一つ変えずに魔法書を閉じる。

「面白そうだな」
「久々にやりがいのある仕事じゃねぇか」
「全員まとめて半殺しにしてやるわ」
「来るんじゃなかった」
「汁出すぎだって」
「汁って言うな」

未だにルーシィは冷や汗を流していた。

「で・・・鉄の森(アイゼンヴァルト)の場所は知ってるのか?」
「それをこの街で調べるんだ」
「あれ?やだ・・・嘘でしょ!?」

一同が情報収集に向かおうとした時、ルーシィが辺りをきょろきょろ見回し始めた。

「ナツとルーがいないんだけどっ!」

その言葉にグレイとエルザは目を見開き、アルカはクスクス笑い、ティアは大きく溜息をついた。
ルーはただ寝ているのを起こし損ねただけだからいいとしよう。
問題はナツだ。
乗り物に弱いナツを、あろう事か列車において来てしまったのだ・・・。











一方その頃、そんな事を知らない列車は走り続ける。
車内には荒く息をするナツとそのナツの肩に頭を預けて眠るルーがいた。

「お兄さん達、ここ空いてる?」

すると1人の男が声を掛けてきた。
酔いと必死に戦っているナツとぐっすり眠っているルーに答える事は出来ない。

「あらら・・・辛そうだね。大丈夫?」

男はナツと正面に座った。
その男の目にナツの右肩の紋章とルーの左手の甲の紋章が映る。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)、正規ギルドかぁ・・・」

そう言う男の正体、それは・・・。

「羨ましいなぁ」

エルザ達の探している闇ギルド、鉄の森(アイゼンヴァルト)所属の『カゲヤマ』だった。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
7話目にしてやっとティアとルーシィ達が会いました・・・。
長い様な短いような。
一応、主人公はティアなんですよ。設定的に。

感想・批評、お待ちしてます。 
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