ゲルググSEED DESTINY
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第五十三話 ネオは戦場へ行った
マーレがプラントに辿り着いてすぐにプラント群がレクイエムによって撃たれた事と、コロニーレーザーがゴンドワナの部隊ごと消し去ったという報告を受ける。
「何てことだ!?これだからナチュラルは美しくないのだ!!」
隣で一緒に機体を受領しに来たルドルフも叫んでいたが、今の彼はそのルドルフ以上に腸煮えくり返っていた。
「舐めやがって……ナチュラル共が――――ッ!!」
近くにあった壁を横殴りする。痛みを感じても頭は冷えない。寧ろ激昂しきっていた。
「俺もすぐに出るぞ!!出せる機体を用意しろ!!」
「ちょっと待ってください!?マーレさん!あなたの機体はまだ調整中ですよ!」
技術者たちが止めようと叫ぶが、当然止まることなどなく、無理なら別の機体でもいいから出す準備をしろと騒ぎ立てる。
「落ち着いてください、マーレさん!主任にあなたの機体を用意するようにって頼まれてるんですから!?」
「そうだぞ、落ち着き給え。ナチュラルの蛮行に腹が立つのはわかるが、機体の準備が整うまで待つべきだ!」
技術者だけならまだしも、クラウの伝言やルドルフからも制止を受けたなら流石に留まるべきだと判断してマーレは仕方なく留まる事にする。
「だったら早い所仕上げろ!一秒でも遅れたら勝手に機体を借りて出るぞ!」
MSデッキから一旦出ていきロッカールームでパイロットスーツに着替える。ルドルフもオリジナルのパイロットスーツを着ており、既に準備万端の様子であった。
「絶対に許さねえぞ……ロゴスが」
そう呟いてマーレは機体の準備を待つのだった。
◇
「つまり、厄介者には同じ厄介者を押し付けようって魂胆なのね……全く、面倒とかそういうレベルじゃないな」
ネオ・ロアノーク含むファントムペインの部隊はアルザッヘル基地から出撃し、ある敵艦を駆逐するように命じられていた。不沈艦アークエンジェル―――前大戦で英雄と言われ、今回の戦いで様々な影響を及ぼした部隊。所謂厄介者だ。それは連合だけでなくザフトにとってもそうであり、事実エンジェルダウン作戦などと言う作戦が実行されたらしいが、スカンジナビア周辺から宇宙に上がったことがコロニーレーザーや中継ステーションを防衛するための偵察隊から知らされたとの事だ。
元ジブリールの私兵に近かったファントムペインはジブリールが死に、アズラエルが牛耳った今、彼ら自身も厄介者であり、おそらく今回のアークエンジェルを討つという命令は所謂捨て駒として切り捨てられたという事を意味するのだろう。
「ま、そんな役に甘んじてやる気はないけどな」
厄介払いっていうなら額面通り依頼を受け取ってこなしてやろうと思い、そのまま母艦であるガーティ・ルーを発進させる。アークエンジェルの位置は既に捕捉しており、ルートの予想も出来ている。後は目標地点まで到達後に待ち伏せするだけだった。
「恨むんなら自分たちの行いを恨めよ……ドンパチやってりゃ前大戦の英雄だろうが何だろうが、敵なんだからな―――」
広大な宇宙の中で予想通りの航路を渡ってきたアークエンジェルを視界に捉える。
「始めるぞ、イアン―――状況次第じゃ、いつも通り指揮を任せるからな」
「あまり頻繁に任されたくないのですがね……了解しました、大佐殿」
「悪いな、いつも無茶ばかり言って―――これより本艦は、敵艦アークエンジェルを討つ。ゴットフリート照準、MS隊発進準備を進めろ。ミラージュコロイドを解除と共に一斉射撃―――先制攻撃に主砲とミサイルの豪雨をお見舞いしてやれ!」
ガーティ・ルーのMS隊は105スローターダガーやNダガーNを中心に出撃準備を整え、ロッソイージスとネロブリッツの二機も準備が整う。ネオの乗るライゴウとアウルの新型機に関しては状況を見て投入する予定だ。何せ相手はあの不沈艦と名高いアークエンジェルなのだから。備えはいくらあっても問題ないだろう。
巨大な戦場から離れた一角で彼らの戦場は今まさに始まる。
◇
ネオ達が狙っていることなどつゆ知らず、アークエンジェルのクルーはレクイエムやコロニーレーザーについて色々と話し合っていた。
「まだ、ラクス様との連絡は取れないのかい?」
「ええ―――エターナルとの連絡は第一中継点へと向かうという報告以来ないみたいね……」
レクイエムを止めるために動いたという報告を最後にエターナルの情報が途絶えており、ヒルダ達は艦橋に上がってマリューにエターナルからの連絡が来ていないかを確かめるが、未だ報告は得られず、状況は芳しくないと言えた。
「畜生、これだから地上に降りるのは反対だったんだ―――ラクス様の命令だから聞いたけど、こんな事なら無理矢理にでも残っておくんだった……」
「……最悪、あの砲撃に巻き込まれたことも考慮しなくてはならないな」
「バルトフェルドさん!?」
バルトフェルドの言葉に艦橋のクルーの空気が重くなる。ヒルダに限っては殺気すら見せる始末だ。
「すまんな―――だが、事実としてそういった事を考慮に含めなくてはならんだろう―――違うかね?」
確かにそうだろう。彼女たちは落とされたのかもしれない。そういう事実として落とされた可能性を考慮しておかなければ、彼らはいもしない生存者を求めて彷徨う事となってしまう。
「ともかく、スカンジナビアの助力のおかげで宇宙にも上がってこれたんです。僕たちは一刻も早く、あの兵器を止めなくちゃいけないんだ」
「―――まあ、確かにキラ君の言うとおりだな。エターナルの捜索も当てもなく探すわけにはいくまい。ひとまず、あの砲撃兵器を破壊するのが最優先だな」
一応は議論の決着がつき、目標としてコロニーレーザーの破壊を行う事を決定する。そしてこれからコロニーレーザーに向かっていこうとしたその瞬間、横合いから砲撃が襲い掛かってきた。
「なッ!?」
距離があった為か直撃は殆どなかったものの、不意に放たれた十二のビームの雨とミサイルの群勢にアークエンジェルのクルーは驚愕する。
「敵ッ!一体どこから!?」
「回避ィ―――!!」
「いやッ、間に合わん!迎撃させろ!!」
バルトフェルドの忠告通りイーゲルシュテルンでミサイルを迎撃しながら、マリューの指示に従って操舵手であるアーノルド・ノイマンがミサイルを避けようと艦の舵をきる。
『ヒュ~、相変わらずやるねぇ。だけど、こっちも手を休める気はないよ』
ネオの指揮の下、MS隊が次々と接近してくる。
「連合の部隊!何でこんなところに!?」
主戦場は未だに遠く離れているであろうにも関わらず、突然何の前触れもなく現れた敵艦に驚愕する。
「キラ君!出撃するぞ!このまま黙って落とされるわけにはいかん!!」
「はい、バルトフェルドさん!」
キラ達は急いで艦橋からMSデッキへと移動する。敵MS隊との接敵までは僅かながらだが猶予がある。少なくともキラ達が出撃するまで余程実力差があるか、運が悪くなければ戦闘は継続するはずだ。そして、前大戦を生き延びた不沈艦とまで呼ばれるアークエンジェルに実力は当然ながら、運にもかなり恵まれている。
「キラ・ヤマト、フリーダム―――出ます!」
『バルトフェルド、リゼル―――出るぞ!』
キラのストライクフリーダムとバルトフェルドの指揮官機用のリゼルが出撃する。アークエンジェルはMSに襲われていたものの、何とか迎撃していた。
「当たれェェェ―――!!」
ストライクフリーダムのドラグーンを起動させて狙い撃つ。105スローターダガーは次々と撃ち落とされ、回避をした機体もすぐさまキラのビームライフルによって頭部を撃ち抜かれる。
『相変わらずの腕前だね、この分だと俺が出る必要はなかったかな?』
そう言いつつもバルトフェルドは接近してきたNダガーNをシールドミサイルによって一機撃墜する。ミラージュコロイドで姿を隠していたが、この乱戦の中ではアンカーだけでの移動など不可能に近く、また発見も困難な筈だと判断してスラスターを使ったようだ。
だが、キラが目の前の敵に対しての戦闘に集中している分、バルトフェルドは艦に対して突然のビームによる攻撃があったことで敵がミラージュコロイドを使っているだろうと予測し、熱源によって敵を発見してそのまま撃ち抜いていた。
『裏切り者のナチュラルとコーディネーター共が―――俺が始末してやる!』
「何だ、あの敵は!?」
『エースのご登場ってわけか……』
エミリオの搭乗するロッソイージスがキラ達の目の前に現れ、砲撃を仕掛けてくる。キラは咄嗟にそれを躱すが、ビームは追随するように曲がった。
「この攻撃はッ!」
二年前に戦った連合の三機の中で鎌を持っていた機体をキラは思い出す。
『浄化ッ!』
連続して放ってくる収束ビームにストライクフリーダムも反撃を仕掛ける。だが、巧みに変形機動を繰り返すロッソイージスに攻撃が中々命中しない。更に言えば、彼にとってかつてアスランと戦ったイージスの後継機であるロッソイージスは精神的にプレッシャーを与えるものだった。
とはいえキラの乗るストライクフリーダムを相手に連合のエースでは些か以上に実力不足だ。一瞬の隙を突いてレールガンを命中させる。
『クッ、コーディネーターめッ!!』
レールガンによって吹き飛ばされ、体勢を崩したロッソイージスをフリーダムが撃ち抜こうとしたその時、フリーダムの後ろからアームが襲い掛かってくる。直前で反応して躱したキラだが、そのおかげでロッソイージスも体勢を立て直す時間を与えてしまったようだ。
「ミラージュコロイドか!?」
『惜しい!まさか見破られるなんてね。だがまあ、そういうことだ。悪いが早々に退場してもらうぜ!』
『残念ながら、退場するのは君の方だ!』
ミラージュコロイドによって不意を突いて現れたネロブリッは右肩だけに搭載されていたアームによって続けて攻撃を仕掛けようとするが、バルトフェルドがビームランチャーで介入することで動きを止めた。
『チッ、邪魔しやがって』
「バルトフェルドさん!」
『こっちは任せたまえ、キラ君。君は他の敵を頼むよ!』
そう言ってリゼルを突撃させ、蹴りを入れてネロブリッツを吹き飛ばす。
『ああッ、面倒くせぇな!』
ダナの乗るネロブリッツは吹き飛ばされた体勢を持ち直し、そのままランサーダートを放つ。リゼルはそれを回避してビームランチャーで反撃するが、そのビームが届くことはなく、展開されていた右肩のアームによって防がれ、そのままビームが撥ね返ってきた。
『何だと!?』
ヤタノカガミと同質の武装だとバルトフェルドは判断し、ならば実弾でとシールドミサイルを再び放つ。しかし、ネロブリッツはそのまま突撃し、ミサイルの直撃を受けながらも全く堪えた様子なしにそのまま接近し、アームで捕らえようとする。バルトフェルドは実弾の耐性が通常の装甲と変わらないヤタノカガミではないのかと驚きつつも、リゼルはそれをシールドで防いでみせた。だが次の瞬間、突如ネロブリッツの左肩からアームが現れ、横合いからリゼルを捕らえた。
『バカが、最初っから手の内全部曝け出すかよ』
元々ネロブリッツの装甲はPS装甲であり、ビームを弾いたのもアームに取り付けられたクリスタル化という特殊武装によるものだ。そしてミラージュコロイドを部分的に展開することでアームは右肩に一つしかないと錯覚させたのだ。リゼルは必死に脱出しようともがくが、大型クローによって捕らえられた状態からびくともしない。
『ヘッ、PS装甲だって砕けるアームだぜ?無駄無駄』
そして、そのまま止めを刺そうとリゼルの装甲を砕こうとするが、周りからドラグーンのビームによる攻撃が仕掛けられる。それを余ったアームをクリスタル化させて一度防ぐが、そのまま受け続けるわけにはいかないと仕方なしにリゼルを投げ飛ばし、スラスターを吹かせて回避した。
『チッ、エミリオ!何やってるんだよ!』
そいつの相手はお前がすると言ったんだろうに、と悪態をつきながらダナは反撃を警戒して一旦エミリオのロッソイージスの所まで下がる。エミリオはロッソイージスでキラの駆るフリーダムを相手にかなり奮闘したと言えるだろう。だが、所詮は奮闘であり、終始圧倒されていたことに変わりはない。隙をついてキラはドラグーンをバルトフェルドの援護に使用した。
「大丈夫ですか!バルトフェルドさん!」
『すまないね、任せろと言ったのにこのありさまで』
そうやって互いにわずかながらも空白が出来た瞬間、複数の方向からビームが発射される。その数は六つ―――不意を突くかのように放たれた全方位攻撃に驚愕しつつもキラ達はシールドを展開して防御し、回避する。
『悪いが、アークエンジェルはミネルバ以上に気に入らないのでね。今日ここで、引導を渡してやろう!』
ライゴウと青いMS。ライゴウの後ろにはガンバレルダガーを応用し、エグザスを改良して取り付けられたガンバレルパックが、青いMSには平たい円柱形の二つの物体を持ち、内部に誘導用のワイヤーが巻かれ、これを繰り出しつつ内蔵推進器によるパルス状のロケット推進を行う事で展開している連合の新たな武装であるインコムが搭載されていた。
『けっこー使えんじゃん!まあ、とりあえず死んどけ!!』
「クッ!やらせない!!」
空間認識能力が高くなくとも使える兵器―――その為の連合の解決策の試みがこのインコムだ。ワイヤーは弛みが発生しない様、常に一定の張力が掛けられており、方向変換の際にはリレーインコムと呼ばれる中継器をワイヤー上に射出し、本体のベクトル変更を行う。ユニットの回収もワイヤーの巻取りによって行われる。これらの試みによって高い空間認識能力がなくとも扱えるガンバレルの後継ユニットが開発されたのだ。
『所詮は血塗られた運命さ……今更この罪から免れようとは思わんが、こいつらまで俺の運命に巻き込む必要はないだろう―――悪いが、ここで落とさせてもらう!』
戦いは第二局面に移る。
後書き
初っ端のタイトルからして反戦小説のタイトルから抜き出してくるあたり、最近の作者の思考は末期になりつつある(笑)
ていうかこのタイトルだとネオの人生が物凄い悲惨なことになってしまいそうだけど、ムウの頃から考えると似たような状況な気がするからたぶん大丈夫(何の根拠もない)
そして遂に延ばしに延ばしていた青いMSの登場。まだインコムがあるだけであの機体とは限らない!インコムなんてガンバレルパックみたいに後付けできるんだし(多分)!というわけで青と言って思いつくものって何かありますか?別にアンケートではないですが作者がそれ良いなと思ったら採用するかも。
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