SAOもう一人の聖騎士
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追想~目で追う現実(リアル)~
前書き
遅れました!・・・・・・・いや仕方なかったんですよちょっと今週忙しかったんです・・・・・・・
「面!面!」
すり足で前後しながら素振り用の重たい木刀を振る。一見ただの基本練習に見えるが、足を意識し過ぎると木刀が真っ直ぐ振れなくなり、逆に木刀を意識し過ぎるとすり足が上手くいかなくなる。剣道の基本中の基本であるが、この二つを同じように意識しなければならないため、中々に難しいのだ。(無論、かなり小さい頃から剣道をやって来た私からすればそうでも無いが)
「いぃーちにぃーい!さぁーんしぃーい!」
換気用に開けていた下の窓から、外周を走るサッカー部が見える。我が校の武道場は学校の敷地を囲むフェンスのすぐそば、つまり学校の隅にぽつんと建っているため、走り込みをする部活生が見えるのだ。
(あいつは・・・・・・・ああ、いたいた。)
ひとかたまりになって走るサッカー部に、私は中学からの知り合いであるレコンこと長田慎一を見つけた。高校になってから急にサッカーなんて始めたので色々と心配だったのだけれど、幸い先輩にシノンさんの恋人であるシュピーゲルさんがいるので特にこれと言ったことは起こっていないようだ。
(むー。でも何か気にくわないのよねー・・・・・・・)
あるとき、偶然誰かと待ち合わせをしているレコンを街で見てから、何故だか私は不思議なイライラを感じずにはいられなかった。別に私とレコンは恋人同士でも何でもない。ただのゲーム友達だ。どこで誰と待ち合わせしていようが彼の自由だし、勝手のはずだ。頭ではちゃんと理解しているのに、もやもやした不快感は無くなるどころか、さらに大きさを増していた。
このもやもやの原因には、高校に上がったレコンが中学の頃とは別人のように精悍に・・・・・・単刀直入に言えばかっこよくなっていることも少なからず関わっているだろう。身長は少し伸びた程度だが、体格が格段にしなやかで逞しくなり、(私は別に男子の筋肉に興奮するような性癖の持ち主ではない。断じて。)オタクっぽい長髪を短く切り揃えて練習に励むその姿は、少し悔しくなる程爽やかだった。私自身も、何度か不覚にもドキッとしてしまった事がある。
「桐ケ谷さん?桐ケ谷さーん?」
「へ!?おっとっと!?」
肩を叩かれながらの注意に現実に呼び戻された私は、振り上げた木刀の重さに堪えきれず尻餅をついてしまった。
「い・・・・・・・いきなり何するんですか”藤枝„先生!?」
藤枝錦(ふじえだ にしき)先生。まだ若いが、剣道三段の腕前をもつ立派な教師だ。・・・・・・何故かいつも一言多いのが珠に瑕だけど。
「いや~桐ケ谷さんは次の大会で先鋒なんだから、彼氏君とアイコンタクトするのもいいけど練習はちゃんとしてくれないと困るんだよ」
「べっ別にアイコンタクトなんて・・・・・・・」
「せめて部活が終わった後にしてほしいんだけど・・・・・・・」
「それ以上言うと木刀でぶん殴りますよ先生」
「やめておくれ桐ケ谷くん」
レコンがよい方向に変わっているのは見れば分かるし、それが非常に良いことだと理解している。そのはずなのに、何故だか大きくなる黒いモヤモヤの正体は何だろう?
「あ、直葉ちゃん。途中まで一緒に帰らない?」
「え、えーと・・・・・・・別に良いけど」
帰り道、見つからないように細心の注意を払ってきたけど、ついに見つかってしまった。断る事も出来ず、彼は私の歩幅に足並みを揃える。・・・・・・あ、今まで気にしなかったけど、放課後からずっと剣道漬けの私は汗くさくないだろうか?
「?どうしたの?」
気付かずに詰められる距離が恨めしい。こちらは相手が自分をどう思っているか気になって仕方がないのに、レコンはそのまま近付いてきてしまうのだ。
待ち合わせ、変化、色んな事がミキサーでシェイクされたように混ざり合い、急にこんな事を言ってしまっていた。
「な、長田君!か、彼女とかいる!?」
うわー!聞いちゃった聞いちゃったよどうしようー!
「え?居ないよ?彼女なんて。最近はちょっと知り合いにALOで特訓してる以外大して変わった事なんて無いし」
へ?特訓?じゃああの待ち合わせって・・・・・・・、まさか・・・・・・・
「思わせ振りな事しないでよ長田君の癖にっ!」
ゴスッ!剣道で鍛えられた私の一撃が、レコンの脇腹に食い込んだ。「え・・・・・・・酷いよ直葉ちゃん・・・・・・・」と蚊の鳴く様な声で訴えるレコンにあっかんべーをして、そのまま走り出す。足取りは自分でも驚く程軽く、胸の奥底でわだかまっていたモヤモヤはきれいさっぱり無くなっていた。
後書き
・・・・・・あ、甘え。砂糖吐きそう・・・・・・
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