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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第36話 修学旅行-1日目- その1

 
前書き
修学旅行1日目です 

 
 さて、月曜日となり今日から四泊五日の修学旅行だ。一応、木乃香と千雨には昨晩念話を使い、現状の危うさについては説明しておいた。

 千雨は単に魔法使い同士の勢力争いに自分達を巻き込むな、と怒っていたが、木乃香はその勢力争いの大元が自分の祖父であり、それにいいように踊らされているのが自分の父であり、そしてその焦点の一つが自分であることに盛大に凹んでいた。
 とは言っても最初に魔法を説明し、オレの従者にした時からずっと考えさせていたのである程度覚悟は決まっているようだ。

 最悪の場合、2人がオレの従者であることをばらすことまで決めて、3人で修学旅行に望むことになった。

 ………。なんで、中学の修学旅行でこんな覚悟が必要なんだろう?





  ☆  ★  ☆  





 学生の集合時間は9時だが、オレ達先生の集合時間は7時だ。

 なので、それに間に合うように家を出る。集合場所が何故か麻帆良市内の駅ではなく、JRの大宮駅なので最寄りの電車を使って向かう。



 大宮駅の改札付近で人だまりができている。
 なんだろう? と見てみるとスーツでリュックサックを背負い、長い棒状の物に布を巻き付けた赤毛の少年が駅員に捕まり説教されている。

 ネギだ。

 聴力をオーラで強化し事情を聞いてみると、ネギがオコジョを肩に乗せ改札を通ろうとして捕まったらしい。

 駅員が捕まえたのは当たり前だ。
 ケージにも入れていないペットを連れて新幹線に乗ろうなんて、常識以前の問題だ。

 ネギは必死に「カモ君は温和しいから~」「誰にも迷惑かけないから~」とか言っているが、何を言ってるんだろう? そんなのは説明にも言い訳にもなっていない。しかもどうやら一度離れてオコジョをリュックサックに隠して改札を通ろうとしたらしい。

 で、バレて説教されているのに出くわしたようだ。

 うん、放置だな。

 改札は一カ所ではないので別の改札を通り、ホームで他の先生方に合流する。

 10分前に集合場所に着いたのだが他の先生方はもう既に来ていた。どうやらオレが一番最後だったらしい。

「おはようございます。すみません、一番最後だったようですね」

「うん、おはよう、遠坂先生。大丈夫、最後と言っても充分間に合っているから」

 代表して瀬流彦先生が声をかけてくれる。

「皆さん、早いんですね」

「いや、まあ。どうしてもこう言うときには早く着く生徒がいるからね」

 そう言って瀬流彦先生が目を向ける方向に視線を向けると3-Aの生徒が何人か既に来ている。

 ………。まだ、集合時間2時間前なんだけど。

 新田先生を中心に軽く打ち合わせを済ませ、断ってからクラスの連中が集まっているところに向かう。

 既に来ているのは、佐々木、明石、和泉、大河内、宮崎、早乙女、綾瀬、(クー)、長瀬に加え、エヴァと茶々丸だ。

「おはよう。お前ら早いなぁ」

 そう声をかけると「「「「「「「おはようございまーす」」」」」」」と返事がある。

 どうやら待ちきれずに麻帆良を始発で出て来たらしい。
 ていうか、真祖のエヴァが従者の茶々丸のボケたツッコミを受け、それを他のクラスメイトにいじられているのはかなりシュールだ。

「あんまり騒ぐなよー」

 女子中学生のテンションについていけず、一言二言話して先生方の方へ戻る。

 始発で来るのを読んで早く来ているのを考えるとさすがだなぁ、と思う。



 他の先生方もちらほら集まってくるそれぞれの生徒に声をかけるため、集まっている場所から何回か出たり入ったりする。当然オレもだ。後はまぁ、京都についてや今までの修学旅行での経験談など雑談をして過ごす。


 教員の集合時間の7時はとっくに過ぎているのに未だネギは来ていない。

 あきれ果てたムードが漂う中、今回の責任者の新田先生が学園長に報告をする。
 なお、今回頼み込んで携帯電話をスピーカーモードにしてもらい、学園長との話しを集まった先生全てに聞かせてもらう。

「おはようございます、学園長」

「おはよう、新田君」

「朝から残念な報告ですが、ネギ教育実習生が定刻になっても来ておりません」

「ふぉっ?」

「打ち合わせにもほとんど出て来ていませんので修学旅行にあまり興味もないんでしょう。元々ネギ教育実習生がいないカタチでシフトも組んでありますので、ネギ教育実習生は今回休みというカタチで進めさせてもらいます」

「ま、待つんじゃ、新田君」

「何を待てと? 学園長」

「そ、それはじゃな………」

「学園長。修学旅行は時間を決めて集団行動することを学ぶ機会でもあります」

「そうじゃな」

「それを指導する側から理由もなく破るなど言語道断です」

「し、しかしじゃな」

「しかしもかかしもありません。ネギ教育実習生の指導教師は学園長です。もっとしっかり指導してもらわないと困ります。ちょうど良い機会です。授業もないこの5日間でみっちり指導してはいかがです?」

「ま、待ちな「プツリ、ツー、ツー」」

 キ、キレてるな、新田先生。

 そりゃぁそうか。ネギの奴、エヴァとの戦いの前ということもあってほとんど修学旅行の打ち合わせに出ていないしな。学園の結界を抜けて、正常な判断力が少し戻ればこうなっちゃうわな。
 あーあ。学園長、涙目だな。

 そう思っていると携帯に着信が入る。

 相手は学園長だ。

 新田先生の剣幕に驚いている先生方に通知者を示し、注目を集めてからスピーカーモードにして電話に出る。

「大変じゃ、サギくん」

「おはようございます、学園長。それと私のことは遠坂と呼んでください。じゃないときりますから」

「そんことはええんじゃ、サギく「ブツッ。ツー、ツー」」

 間違えたので警告通りきってやった。

「い、いいのかい、遠坂先生?」

 若干頬を引きつらせながら瀬流彦先生が声をかけてくる。

「いいんですよ、何度言っても直さないんだから。それにどうせさっきの件でしょ」

 そう話しをしているとまたもや学園長から電話がかかってくる。なので、同じようにスピーカーモードにして電話に出る。

「サ、サギく「ブツッ。ツー、ツー」」

 まったく、学習しない人だな。

 容赦なく携帯を切ったオレをあぜんとした目で他の先生方が見ている。

 また、携帯が鳴る。スピーカーモードにして電話に出る。

「す、すまんかった、遠坂先生。話しを聞いてくれんか」

「最初から名前を間違わなければ良いんですよ。で、ネギのことですか?」

「そ、そうなんじゃ」

「先程の件はスピーカーモードですべて聞いてました。私も新田先生と同じ考えです。つーか、只でさえ生徒の指導もおぼつかないのに、ネギの面倒まで見切れません。こっちに話しを振らないでください。プツッ」

 学園長と話すのに有利に進めるのは、学園長の話しをまともに聞かないことだ、と気付いたので言いたいことだけ言って直ぐに電話を切る。

 瀬流彦先生、模蕪(もぶ)先生と次々魔法先生に学園長から電話がかかってくる。
 2人は事前にスピーカーモードにしていることを学園長に話し、魔法関連のことを話させないようにし、のらりくらりと学園長の頼み---ネギを見つけ、修学旅行に連れて行くように新田先生を説得することだろうーーーをかわす。

 その後、学園長は一般の先生2人にも断られ、最後に3-Sの副担任として参加した源先生を情に訴え泣き落とす。

 新田先生もこんなことに時間をかけたくないんだろう、大宮駅構内を新幹線の出発に間に合う範囲で源先生がネギを探すのを許可する。
 なお、修学旅行の参加については遅刻した理由如何によって考えるということだ。

 早速源先生は駅のホームからネギを探し始める。

 一つ思いついて新田先生に話し、許可を得る。

 近くの駅員さんを捕まえ、事情を話し、源先生を放送室へ連れて行ってもらう。

 5分もすると、迷子の知らせの放送が入る。

 もちろん、迷子はネギのことだ。

 一瞬後、ホームの一角---麻帆良の生徒が集まっている辺り---で爆笑が起きる。

 まぁ、指導する立場の教員が迷子とかないわな。

 10分もして8時ぐらいになるとほとんどの生徒が集まって来る。
5クラス153名と先生7名(担任5名、副担任2名)、教生1名の161名がホームを使うため、事前にJRと協議して、優先スペースを確保しているので、生徒達をクラスごとに分けて集め始める。

 3-Aは8時の時点で全員集まっていた。
 幽霊の相坂以外は全員出席だ。

 6班はそのせいで4名となったが、4人と話した結果そのままと言うことになった。

 というか、この班で班長の桜咲は木乃香のストーカー、エヴァと茶々丸主従は自由気ままに京都観光する気満々なので、残ったレイニーデイに聞くと、エヴァ達と一緒に行動するとのことで、エヴァに確認したら、「よかろう、ザジにも京都を満喫させてやろう」とか言っていたのでまかせることにした。

 点呼を取って戻ろうとすると、宮崎から「あの~、ネギ先生がまだ来てないみたいなんですけど~」と声をかけられる。

 迷子の放送が気になっているんだろう。
 というか、佐々木と雪広がギャーギャーうるさい。

 ま、別に隠すことでもないので、ネギが来ていない、連絡も来ていない、つまり絶賛迷子中だと言うことを話し、多分、修学旅行は休みだと言うことを告げる。

「「「「「ええーっ!」」」」」

 うるさい。麻帆良じゃないんだ、もっと常識ある行動をしろよな。

 ネギを探すため、直ぐに集合場所から離れようとする雪広達を捕まえて説教をする。

 もちろん、駅のホームだろうが、直に正座だ。

 実際のところ、教員の修学旅行の費用は学園から出ており、ぶっちゃけて言うなら、教育実習生にはその費用は当てはまらない。というか、修学旅行の時期に教育実習生がいることが想定されていないんだろう。なので、ただでさえ大変な麻帆良の生徒の引率に余計な仕事を増やしたくないので、ネギが参加しないのは先生方にとっては大歓迎だ。
 しかもオレ達魔法先生にとっては、ネギは密書というカタチで親書を持っているので、二重に大歓迎だ。

 中部魔術協会の魔術師としてはいささか残念ではあるがな。

 説教も終え、新田先生のところへ報告に戻ると迷子の放送のおかげでネギの場所が判明する。

 駅員室でペット持ち込みの件で延々と説教されていたようだ。

 まぁ、注意された上で隠れて持ち込もうとしたんだ、そりゃぁ、怒られるわな。どうせ反省もしていないんだろうし。
 責任者として新田先生が迎えに行くが、何故か一緒にオレも行くことになる。

 事情を聞くとまんま予想通りだ。予想通り過ぎて頭が痛い。
 新田先生が頭を下げてお詫びしている間に学園長に連絡をする。

「学園長、ネギが見つかりました。今、新田先生が頭を下げてお詫びしてます」

「ひょっ。な、何があったんじゃ?」

「ネギが新幹線にペットをケージにも入れずに連れ込もうとして駅員に注意され、再度、リュックに入れて隠して連れ込もうとしたのが見つかり、今まで説教されていたようです」

「なっ………」

「何考えているんでしょうね? 修学旅行にペットを連れて行こうなんて。先生の自覚はあるんでしょうか? まぁ、放し飼いのペットを公共機関に連れ込もうとしている時点で、常識というか正気を疑いますが。ちょうどいいので、今日から5日間、その辺もしっかり教育してください」

「ふぉっ。しかしじゃな、サ、じゃなくて遠坂先生も使い魔がおるじゃろ」

「それがどうかしましたか?」

「なら、わかるじゃろ。魔法使いと使い魔は言わば一心同体じゃ。「関係ありませんね」なんじゃと!?」

「関係ないと言ったんです。魔法使いとして行動中ならともかく今は「先生」として行動しているんです。秘匿の意味からも使い魔を連れて行かないという選択もあり得ます。実際、今回自分の使い魔は実家に預けてますし。最低限、使い魔を連れて行くならそれなりの隠す方法をとるべきです。というか、なんで指導者の貴方が教えてないんです、学園長?」

「そ、それはじゃな………」

「あぁ、言い訳には興味ないので必要ないです。で、ネギはどうしますか? 麻帆良学園に返しますか? 学園長が迎えに来ますか?」

「それしかないのかのぅ」

「ないですね。というか、ここまで先生として自覚がないのならいっそ辞めさせたらどうです? 誰が見ても先生失格でしょう」

 そんなことはオレに指摘されなくてもわかっているんだろう。ただ、わかっていても「立派な魔法使い(マギステル・マギ)」にネギをしたい学園長は、他の方法が採れないということなんだろう。

 さすがに学園長でもここではフォローできないんだろう、そのまま携帯をネギに渡し、ネギはその足で麻帆良学園に帰ることになった。





  ☆  ★  ☆  





 ネギの修学旅行の不参加が決まり、その旨を各クラス担任が生徒に告げる。
 理由が理由だけに失笑が漏れる。

 騒ぐのは3-Aの一部だけだが、さすがに「先生が修学旅行にペットを連れて来ようとした」「そのペットは放し飼いでケージにも入れず連れて来ようとした」という理由は庇いきれないんだろう、ぐずぐず言うだけですぐに静かになった。



 大宮駅から出発し東京駅で乗り換え、一路京都へ。



 麻帆良の生徒が乗る車両には結界符を使い、即時対応できるようにする。
 名古屋を過ぎた辺りで新田先生がクラス全体に修学旅行での注意を促し、その後、3-Aの生徒がいる車両をぶらぶらと見回る。

 修学旅行と言うことで、断っていた車両内販売の人が通り過ぎた後、結界に反応がある。

 いつの間にか貼られていた召喚符をこっそり剥がす。

「(なんかあったん?)」
「(なんかあったのか?)」

 オレが貼っていた結界の反応に気付いたのか、木乃香と千雨から念話が入る。

「(あー、くだらん召喚符だな。気にするほどもないぞ)」

「(わかったぇ)」
「(わかった)」

 それから特に何もなく京都に着いた。





  ☆  ★  ☆  





 京都に着いて全体行動としてクラス単位で清水寺を見学する。

 綾瀬の博学な説明に驚いたが、それ以上にエヴァがテンション上がりっぱなしで笑えた。

 まぁ、15年振り? の麻帆良の外の世界だ。仕方ないんだろう。

 恋占いの石で落とし穴があり、3-Aの一部の生徒が穴に落ちた。

 とりあえず、新田先生経由で清水寺の管理者に連絡してもらったら、音羽の滝で日本酒が混ぜられており、3-Aの一部の生徒が酔って寝てしまった。
 何故か神楽坂は必死にこのことを隠そうとしていたが、それよりも急性アルコール中毒などを心配して、急いで救護室へ連れて行く。
 幸い、寝ているだけだったので、バスに連れて行き、早めに見学を切り上げて今日の宿に向かう。

 神楽坂に何故隠そうとしたか聞いたら、さすがバカレッド、「酒を飲んで酔っぱらったと思われて修学旅行が中止になると思った」とかほざく。

「そんなことよりも友達の体の心配をすることが先だろう。大体自分から飲んだのならともかく、悪戯で飲まされたのに修学旅行が中止になるわけないだろう」

 あまりにも残念な発言に軽く説教をしてやる。

 この後、警察が来て検証とかして騒然としたようだが、その辺は新田先生に担当してもらった。

 その他は滞りなく終え、本日の宿の嵐山の旅館に着いた。  

 そういえば清水寺でクラスの集合写真を取ったんだが、この場合、卒業アルバムに載るとき、ネギはやはり欠席者扱いで○の中で載るんだろうか? 
 

 
後書き
清水寺で修学旅行中の生徒が悪戯で酒を飲まされ寝てしまうとか大問題ですが、その辺は関西呪術協会が秘匿したと言うことで。 
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