占術師速水丈太郎 五つの港で
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第三十四章
第三十四章
「それでなのですが」
「はい」
「まずは現場に案内します」
「御願いします。それでは」
「こちらです」
白い港はここでもであった。しかし佐世保は佐世保で独自の形をしている。その港でまず気付いたことは。西に海が開けているということであった。
速水は小川に案内されながらその海を見ていた。すると前を行く彼が言ってきた。
「この海ですが」
「随分と西に開けていますね」
「ここは日本本土の最先端ですので」
だからだというのである。
「ですから」
「だからですか」
「我が国の九州の海の守りにおいては」
小川はさらに言ってきた。結構饒舌である。
「ここが要です」
「五つの港の一つとしてですね」
「はい。横須賀、呉、大湊、舞鶴」
その名前を挙げていく。速水は既に全て回っているのは当然ながら言っていない。
「そしてこの佐世保で」
「五つですね」
「それで九州の艦艇はここに集まっていまして」
「そういえば」
速水はここで港も見回る。すると確かにここにもかなり大型の船が見られる。
「数もその大きさも見事なものですね」
「流石に横須賀や呉程ではありませんが」
その二つの港程ではないというのである。
「この佐世保も見事ですね」
「はい、確かに」
「それにです」
小川はさらに上機嫌に話していく。その饒舌さはかなりのものである。
「佐世保の街は行かれましたか」
「いえ、それは」
「是非行かれたらいいです」
その上機嫌な言葉で言っていくのだった。
「まず商店街がです」
「そこですか」
「まずはそこです」
商店街に行っていたことは内密だった。まさか舞鶴から瞬時でここまで来たのだと言うわけにはいかないからである。だから内密なのであった。
「あそこに行けば何でもあります」
「何でもですか」
「それに」
小川の話は続いていく。
「商店街の左右にはです」
「何かあるのですか?」
「佐世保は自衛隊、昔は海軍の街ですので」
そのことを話してきて、であった。
「ですから多くの居酒屋があります」
「お酒ですか」
「お酒はお好きですか?」
「はい」
これはその通りである。隠すことでもないのですぐに答えた。
「それはかなり」
「それでは一度行かれたらいいです。お好きな店へ」
「ではその時はそうさせてもらいます」
「あとは」
小川の饒舌そのものの言葉が続く。
「ハウステンボスもあります」
「ハウステンボスもですか」
「あそこも佐世保なのですよ」
このことはかなり楽しそうに話すのだった。
「これは意外ですか」
「ええ、そうだったのですか」
これは速水も知らなかった。それで話を聞いてそのうえで言うのであった。
「ハウステンボスは佐世保だったのですか」
「そうです。ハウステンボスに行かれたことは」
「大好きな場所です」
速水はその顔の右半分と言葉を頬笑まさせて答えた。
「それもかなり」
「かなりですか」
「何度も行っています」
「ということは通なのですか」
「いい場所ですね」
ハウステンボスに対してかなり評価の高い彼だった。少なくとも嫌いな場所でないことはよくわかる言葉であった。そしてそれをはっきりと出していた。
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