ヘタリア大帝国
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TURN88 うぽぽ菌その十
「済まないな、お陰で助かった」
「いえ、お気遣いなく」
平良は謹厳な調子で返した。
「公のことですので」
「あんたにしたことじゃないしね」
キャロルはむっとした顔だった。
「だからお礼なんていいわよ」
「ははは、そう言うか」
「そうよ、あたしは祖国ちゃんや枢軸の皆の為には動くけれど」
それでもだというのだ。
「あんたの為には何もしないからね」
「キリング長官、今のお言葉は」
平良は感情を出すキャロルに言う。
「あまりにも」
「失礼だっていうの?」
「ガメリカ国務長官として日本帝国海軍相に申し上げる言葉ではないかと」
こう言ったのである。
「幾ら何でも」
「それはそうだけれどね」
「はい、お言葉を選んで頂ければ」
「わかったわよ、じゃあね」
「はい、宜しくお願いします」
「とにかく、一月で話が済んだから」
キャロルはこのことをまた言った。
「それでじゃあね」
「ああ、すぐにブラジルだ」
東郷は戦略のことを話した。
「いよいよ敵の最深部だな」
「ブラジルでもうちのスタッフ用意しておくからね」
「憂国獅子団の有志達も」
だからスムーズに進めると話してだった。ブラジルへの侵攻は即座に進められた。
だがここでだった。平良は伽ロスが去って、東郷にあからさまな嫌悪を見せてから去ったのを見てそれからだった。
東郷に対してそっと囁いたのだった。
「お話は聞いていますが」
「隠してないしな」
「こうしたことをお話するのは好きではありません」
謹厳な平良はこのことを断ってから述べた。
「ですがあえて言わせて頂きます」
「別にそこまで言わなくていいがな」
「それでもです、それでなのですが」
「ああ、あのことだな」
「キリング長官は海相の奥方の妹君でしたね」
「そうだ」
まさにそうだと返す東郷だった。
「あの娘は俺の義理の妹になる」
「奥方のことですが」
「もう死んでいる」
東郷はあえて表情を消して述べた。
「諦めているさ」
「事故でしたね」
嫁いだ日本から祖国ガメリカへの里帰りの時だ、実家であるキリング家の方からどうしてもと言われてなのだ。
「あのことは」
「残念だった、本当に」
東郷はここでも表情は見せない。
「生きていて欲しいがな」
「そうですか」
「あの娘にとって俺は姉を奪い死なせた男だ」
「そうなるからですね」
「俺を嫌っている」
このことを確信している言葉だった。
「だからあの態度だ」
「難しい話ですね、これは」
「公を優先させる 分別があるからいいがな」
「ですが長官にとっては」
「構わない、誰からも好かれることは無理だ」
どれだけのカリスマの持ち主でもだ、レーティアにしても国外では彼女を嫌っている者もいる、エイリス等がだ。
「だからな」
「構いませんか」
「特にな」
「長官がそう仰るのならいいのですが」
平良も言うことではなかった、それで言ったのである。
「ではその様に」
「ああ、それでな」
ここで東郷はこうも言った。
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