魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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A's編 その想いを力に変えて
34話:灼熱の剛拳(後編)
前書き
今日はもっかい。
「はっ!」
「でぇやっ!」
突如として迫ってきた拳を避け、逆に拳を突き出す。
だが自分の拳を引きながら逆の手で叩いて受け流し、顎めがけて拳を振り上げる。
「っ!」
「ぬっ!?」
アッパーのようなその攻撃を上半身を仰け反らせる形で避け、状態が後ろへ行く勢いを利用して、足を振り上げる。
怪人はそれを後ろに跳んで避け、俺はバク転で距離を取る。
「だぁっ!」
「ふん!」
体勢を立て直した士は一気に飛び出し、空中で回し蹴りを放つ。それを怪人は両手で受け止め、弾く。
着地したところへ、怪人の足払い。地面に倒れた士は、すぐさま距離を取るように転がる。そして先程まで士の体があった場所へ、怪人の踵が落とされる。
「くっ!」
「こんどはこちらから…!」
転がってからすぐ立ち上がるが、そこへ怪人が距離を詰めての膝蹴り。士は両手をクロスさせ防ぐが、衝突してすぐその防御も弾かれる。
そしてすぐさま怪人の拳が士の体に食い込む。
「がはっ!?」
その拳はそのまま振り抜かれ、士は砂漠の砂を巻き上げながら飛んでいく。
「まだまだ…ですよ…!」
砂塵で姿が見えないが、怪人は飛びだし、士の元へ。
「がはっ!…くそ…なろぉ…!」
体に引っかかる砂を落としながらゆっくりと立ち上がり、ライドブッカーに手をかける。
「負ける…かぁあ!!」
〈 KAMEN RIDE・AGITO 〉
士はライドブッカーからカードを取り出し、発動。体は一瞬光に包まれ、姿を変える。
基本の色を黄色にして、肩には尖った装飾。胸には細長い石のようなものがあり、頭の上には金色の角“クロスホーン”を持つライダー、“仮面ライダーアギト”へ。
「ふっ!」
「はっ、だぁ!」
突き出してきた拳を右腕を立てて進路を変え、左手で突き上げる。右腕が上がったところへ右拳を放つ。
それを怪人は左手で掴み、さらに左へ流しながらまた右拳を顔に回り込むように繰り出す。
「あぶねっ!」
士は右手を引っ張られつつも、体を仰け反らせて避ける。丁度それで掴まれていた右手も離れる。
怪人は右拳を出した勢いで、右足を軸に左足で逆時計回りに体を反転させ、後ろ蹴りのように蹴りを放つ。士は腕を交差させて防ぐ。だがその勢いは収まらず、砂漠に筋を作りながら少し下がる。
「くっ…はぁあ!」
怪人が体勢を整える前に、士は少し跳んで空中で右回し蹴り。怪人は防ぐが、防ぎきれず砂漠に転がる。
「ぐっ…!」
「よし!」
転がった怪人はすぐに立ち上がり、一回距離を取る。俺は声では喜ぶが、左手を腰に、右手を前に構える。
「やりますね…!」
そう言いながら怪人は右手を後ろに回し、両手を銀に染める。さらに光と共に銀の棒が怪人の手に収められる。
そこから一気に飛び出し、得物を両手で振り下ろしてくる。士は両手で掴み、横へずらす。
「くっ…!」
「その程度で…!」
だが怪人も両手に赤い炎のような装飾を浮べ、棒を一気に振り上げる。力が強く、掴んでいた両手も離れてしまう。
「はぁああ!!」
そして幾度となく繰り出される棒術。体に何度も当たり、火花が散る。
不意に突き立てられた一撃で、士は砂漠に転がる。
「ぐっ…」
「はぁっ!」
すぐに立ち上がるが、怪人の両手に赤だけでなく緑の風のような装飾が浮かび上がる。棒の両端に炎を灯し、地面を削りながら振り上げる。すると棒の炎が砂を巻き上げながら風のように放たれる。
「っ、のぁああ!!」
士はそれを見て、思いっきり横へ跳ぶ。怪人の攻撃はそのまま通り過ぎ、少し小高い砂山に衝突し、爆発する。
「おいおい、そんなこともできんのかよ…!」
「もう一度…!」
「っ!?」
今度は先程放ったのとは逆に灯っている炎を放つ。それも横に跳んで避ける。
背後にあった砂山も、二撃目が当たって完全に跡形も無くなった。
「どうです?すごい威力でしょう?」
「あぁ、驚きすぎて頬が引きずったまんまだ」
そう言いながらちゃんと立ち上がり、ライドブッカーから新しくカードを引き抜く。
「今度は…どうでますか?」
怪人は再び両端に炎を灯し、構える。
(負けるか…!)
〈 FORM RIDE・AGITO FLAME 〉
そう思いながら士はカードをディケイドライバーへ。
アギトとなっていた士の右腕は赤く染まって大きくなり、胸も赤く染まる。アギトの超越感覚の赤と呼ばれる姿、“フレイムフォーム”に変わる。そして右手にはフレイムセイバーを掴む。
「はぁあああ!」
「効くかぁぁぁ!」
怪人は得物を振り回し、今度は連続で炎を放つ。それらを新たに身につけた超越感覚と右腕のパワーで切り裂いていく。
フレイムセイバーを斬り上げ、斬り下げ、また斬り上げ。次々と迫る炎を切り裂く。
「さすが…!」
「―――ここだ!」
途中斬り下げたところで、フレイムセイバーに魔力を注ぐ。その魔力は剣を通して炎へと変わり、怪人と同じように炎を放つ。その前に放たれていた怪人の炎と衝突し、爆発する。
そしてその爆発で起きた爆煙で、両者の姿が見えなくなる。
怪人は得物を振るい爆煙を払う。だがそれでも怪人の目からは士は見えない。
「―――っ!?」
刹那、怪人の懐に赤いアギトの姿が映る。一旦得物を振るった後で、得物で防ぐ事ができない。
逆に既に構えていた士は、左腰から居合のように抜き放ち斬り上げ、今度は左上から斜めに斬り下げ、今度は横に斬り払う。そして振り返る勢いで上から斬り降ろす。
「ぐはっ…!」
さすがに怪人もそれには耐えかね、地面に体を転がす。
士は追撃をすることなく、フレイムセイバーを居合の構えのように左腰に構える。
「さ、さすがに効きましたよ…」
ですが…、と怪人は続け、得物を手放す。すると今度は両手を青色に染め、光と共に両手に一つずつ拳銃が握られる。世間的に言う二丁拳銃というやつだ。
しかしそれを見て、この間とは違うことに気づく。
怪人は拳銃を持ったまま、右手を横へ大きく腕を開く。すると怪人の右側に無数の光弾が生まれる。
よく見るとその右手は青の上に赤と、先程の緑の代わりに黄色の装飾があった。黄色の装飾は水玉だ。
「行け!」
そのかけ声と共に、右手が前へ振るわれ、光弾が一斉に迫ってくる。
士はフレイムフォームの能力である“超越感覚”で弾道を見抜き、迫り来る光弾を斬り裂いていく。
(この光弾…炎を…!)
斬り裂いて、その事に気づく。右手を主に使って斬っている筈なのに、手がしびれてくる。
そう瞬間、背後に何かを感じると同時に、背中に衝撃を感じる。急に感じたそれに、俺は体勢を崩す。
(後ろに回り込ませていた…!?)
思考するのも束の間、すぐさま前方から無数の光弾が視界に入る。
「ぐああああああああ!?」
体勢を崩したところからの攻撃で、士は避ける事ができず、それを全て体で受けてしまう。
それが収まると、士は砂漠の上に膝をつけてしまう。
「が、は…」
「フハハハハ、こんなもんでしたか?あなたは?」
それを見た怪人は、何を思ってか追撃する事なく笑い始める。
こんな状況で、奴は笑っている。そう思うと、士は心の奥から怒りの感情がわき上がってくるのを感じた。
「てめぇなんかに―――」
「さぁ!踊ってください!私の為に!」
怪人は今度は両手を広げ、自分の周り全体に光弾を生み出す。
「てめぇみたいな変質者に…!」
〈 FORM RIDE・AGITO STORM 〉
「負けるかよ!」
士はまた立ち上がりながらカードを使う。赤かった体は青く変わり、右腕は元に戻り、逆に左腕が青くなる。アギトの超越精神の青と呼ばれる“ストームフォーム”だ。その左手には専用の薙刀、ストームハルバードが握られる。
「そんなもので防げますか!?」
「はぁあああああ!!」
周りにある光弾を一気に放つ。士はストームハルバードを魔力を込めながら、頭上で回す。
その間にも光弾は士の周囲を囲い、迫り来る。だが士の持つ得物は風を発生させていき、それはさらに士の足下の砂を巻き上げる。それはまさに、砂嵐のよう。砂嵐は光弾を阻み、それを見た怪人は少し表情を歪ませる。
「ですが所詮は砂。威力を上げて突き破ればいいだけのこと!」
怪人がそう言うと、周りにある光弾は纏う炎の量を増やしていく。そして光弾は徐々に砂の壁を少しずつ抉っていく。
そして遂に一発の光弾が砂嵐を突き破り、それを皮切りに続々と光弾が士の元へ―――
「―――っ!?」
とその瞬間、砂嵐を突き破り飛び出してくる。青いその姿は士のもの。強化された俊敏性で砂嵐を飛び出してきたのだ。
「はっ!」
士は攻撃範囲に入った瞬間、怪人の持つ拳銃を一閃して弾く。
「くっ!」
「はぁあっ!」
怪人は後方に下がるが、士は再び踏み込み、得物を振るう。
「―――っ!?」
だがそれは甲高い金属音と共に何かに阻まれる。それは怪人の左腕に現れた盾だ。
怪人は盾を押し出し、士の得物をはねのける。それと同時に盾にある剣を引き抜く。
「はっ!」
振り上げるように引き抜き、士のストームハルバードと衝突する。それによって士の得物は大きく跳ね上げられる。だが士も上げられたのを利用する為、得物を持ち替え振り下ろす。
だがその攻撃も怪人の盾で防がれる。怪人は今度受け流す形で攻撃をいなし、剣を逆手に持ち替え振り上げる。
「がぁ!?」
「ふん!」
武器が振るえないところへの攻撃の為、そのまま受けてしまう。怪人はさらに剣を持ち替え、振り下ろす。
そしてそのまま斜め斬り、横斬りをする。これにさすがの士も後退。最後に怪人の突きが放たれ、士は再び砂漠に転がる。
「ぐぅ…エクストリームか…」
「フフフ…」
さすがにストームでは歯が立たないか…
士がそう考えると、ライドブッカーからカードを抜き取る。
(これならば奴についていけるかも…だけどどれだけ魔力が消費するか…)
「行きますよ!」
だが怪人は士を待つことはない。剣を構え、走り出していく。
迷っている暇はない。そう決意し、立ち上がりながらカードをディケイドライバーに挿入する。
〈 FORM RIDE・AGITO BURNING 〉
「うおおおぉぉぉ!!」
カードの発動と共に、士の周りに炎がどこからか逆巻く。炎は士の体を包み込んでいき、その姿を変えていく。
アーマーは赤くなり、ひび割れた胸部が溶岩のように燃え上がる。複眼は黄色に変わり、頭部のクロスホーンは赤く、展開されたままになる。
アギトの強化形態、燃え盛る業炎の戦士である“バーニングフォーム”だ。
怪人はそこへ剣を振り下ろす。士はその斬撃を腕で受け止める。そして右拳に炎を灯し、勢いよく突き出す。
拳は怪人の盾に阻まれるが、士はそのまま振り抜く。怪人の体は勢いよく吹き飛び、砂をまき散らす。
「ぐぅ…!」
「シャイニングカリバー!」
〈 Single mode 〉
怪人が立ち上がる前に士は右手を開き、叫ぶ。すると光と共に専用武器、シャイニングカリバーがエマージュモードの状態で出現し、右手でそれを掴む。
それと同時にトリスの声と共に閉じていた刃が展開され、シングルモードへと変わる。
「はぁあああ!」
「ならばこちらも!」
シャイニングカリバーを構え、走り出す士。砂を払いのけながら立ち上がった。そして剣を横へ向け、右手に三色の装飾を浮かび上がらせる。
それと共に刀身が光り出し、怪人は剣を左側へ移動させる。
「グロリアスレイ!」
そのかけ声と同時に剣を横に一閃。光は刀身から離れ、空中でいくつかの光の弾へと変わる。そしてその光弾は一斉に士の元へ飛んでいく。
士はそれを見ても避ける素振りも見せず、走り続ける。当然、怪人が放った全ての光弾が士に命中する。それと同時に、砂埃が舞い上がる。
「うおおぉぉぉぉ!!」
「っ!?」
だがそれにも動じず、士は走り続けていた。そのスピードは、まったく衰えていない。
ならば、と怪人は一旦剣を盾に納め、その盾にエネルギーを溜め始める。
「はぁあっ!」
「エレメントブレイク!」
士は得物を大きく振り上げ、一気に斬り掛かる。怪人は溜めたエネルギーを刀身に込め、一気に抜刀、そして士の攻撃と衝突する。
爆音と共に砂が大きく舞い上がり、視界を失わせていく。だが砂埃の中から、二人が勢いよく出てくる。
「くっ!」
「ぬぅ…!」
それぞれが砂を削りながら後退し、自分達の武器を構える。
威力は互角…とも見えるが、だが少しだけ士の方が後退する距離が長い。威力は怪人の方が高いようだ。
「くそっ、バーニングでもダメなのか…!」
〈マスター!〉
悪態をつくように呟く士、腰にあるトリスが声を上げる。
「急にどうした!?」
〈八時の方向、200メートル先で、フェイトさんが!〉
その言葉に、思わず視線を向ける士。
そこには確かに、フェイトとシグナムの姿が。だが、それだけじゃない。あの仮面の男もいる。それも…フェイトの背後に。
そして…フェイトの体から、男の腕が突き抜けていた。
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