皇太子殿下はご機嫌ななめ
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第16話 「カストロプ討伐」
前書き
マクシミリアンはコミック版から持ってきました。
設定はごっちゃになってます。
というかOVA版のマクシミリアンは、なんかいや。
第16話 「おらがザ○は○○一」
リヒテンラーデ候クラウスである。
現在、帝国の財務尚書はオイゲン・フォン・カストロプ公爵だ。
まったくこの男と来たら、財務尚書になってからというもの……。
私腹を肥やす事ばかり考えよってからに。ルーゲ司法尚書にもしっぽを掴ませずに、あれやこれやと財を貪っておった。
いっそ見事という他ない。
ところが皇太子殿下が、帝国宰相の地位に就任したのと同時に、奴のしっぽを捕まえろ。との指示が下った。
あんな男に、帝国の財布を任せておけんということだ。
皇太子殿下の指示を知ったらしい。オイゲンも大人しくしておれば、良かったものを。
ついつい油断したらしいのだ。
オーディンを逃亡し、領地に逃げ帰る途中で事故に遭いよった。
■宰相府 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム■
「わざと逃がしたな」
「はてさて何の事やら、私、如きには分かりかねますな」
「まあいい。息子がいたろ? そいつに不正に溜め込んだ財を返せば、家は残してやると言っておけ」
「素直に従いますかな?」
「利口ならな。利口なら従うだろう。雌伏の時だ。また復活するときを待つ」
「それが分かりますかな?」
「分からんだろうな」
分かるんなら、自分から財を返還するだろう。その方が長い目で見れば、得だ。自分と父親は違うと言い張れる。
さて、と。誰に向かわせるかな?
選り取りみどりというのも、悩むもんだな。
誰にしようかな~。
ビッテンフェルトでも良いんだがな。アルテミスの首飾りもないし。どうしようかな?
よしエルネスト・メックリンガー。君に決めた。ついでにジークを連れて行かせるか。
何事も経験だ。俺の代わりに見て来い。
■惑星カストロプ ジークフリード・キルヒアイス■
皇太子殿下のご命令により、カストロプ公爵を討伐する事になった。
私はメックリンガー准将の従卒として参加している。
最初は私達の前に、マリーンドルフ伯が説得に向かったのだけど、捕まって監禁されたらしい。
皇太子殿下曰く。
「無理に行かなくても良かったのに。マクシミリアンは馬鹿だから、行っても無駄になるはず」
だそうだ。
現在、カストロプ公爵領を支配しているのは、マクシミリアン・フォン・カストロプという人だ。
何という名前だったか知らないけど、マクシミリアンの妹の艦隊を撃破した。
メックリンガー准将が一応、降伏勧告をしたのだけど……。
その時の様子は詳しく言いたくない。
あんな少女にひどい事をする。
アレを見たら、皇太子殿下が口の割りにどれほど私達を、かわいがってくれていたのかが、理解できる。皇太子殿下はあのような真似はなされない。
「マクシミリアン・フォン・カストロプ。宰相閣下のお言葉を伝える」
「ふふん。なんだというのだ。言いたい事があるなら、皇太子にここに来いと伝えろ」
「――お前は犬の餌だ。喰い殺されろ」
「なにっ?」
メックリンガー准将が通信を切ると同時に、命令を下した。
「強襲上陸艇、突入せよ」
艦隊から強襲上陸艇が突入していく。
地上に近づくにつれ、その中からザ○が飛び出していった。
肩に取り付けられている盾に描かれている三つ首の猟犬。
ケルベロスというらしい。私は知らなかったのだが。ミヒャエル・ヴルツェル大尉率いるMS二個中隊の紋章だ。
ヴルツェル大尉あの、アルトゥル・フォン・キルシュバオム少佐とともにイゼルローンで活躍したそうだ。
昇進して、今は大尉になっている。
「さあ、野郎ども。皆殺しの雄叫びを上げて、戦いの犬は解き放たれた。俺達の出番だ」
嬉しげなヴルツェル大尉の声が艦橋にも響いた。
この人も口が悪いなぁ~。
どうしてこう、皇太子殿下に関わる人たちって、口が悪いんだろうか?
不思議でしょうがない。
「略奪。暴行の類は一切許さぬ」
「分かってますって。俺達は猟犬で、ぶたじゃねえっ!!」
メックリンガー准将の言葉に、ヴルツェル大尉が怒鳴り返した。
平然と言い返す辺り、良いんだろうかと思うけど、准将は苦笑しているだけで、叱責する様子はなかった。
地上に降りたザ○たちが戦車を蹴散らしながら、神殿みたいなマクシミリアンの居城を取り囲んだ。片膝をついて、大型ブラスターを構えた体勢で止まった。
ザ○は基本的に宇宙用なんだけど、陸戦にも、極地用にもなるそうだ。派遣される場所によって装甲他、改造されるらしい。
おらがザ○は○○一。とか言ってたけど、なんだったのか?
皇太子殿下は時々、よく分からない事を言い出す。
「マクシミリアン・フォン・カストロプ。周辺はザ○が取り込んでいる。大人しく降伏すればよし。さもなくば、猟犬が吠えるぞ」
メックリンガー准将が再び、マクシミリアンに降伏勧告をした。
マクシミリアンの顔が歪む。
「犬の分際で」
憎々しげに吐き捨てた。
「俺達は獲物を追い込む猟犬だ。雄叫びを聞いてみるかい?」
ヴルツェル大尉がブラスターを上に構え、撃った。
ビームが雲をかき消す。
そして再び照準を、マクシミリアンがいる地点に決める。
モノアイが赤く光った。
しばらくして、中から人々がでてきた。
最初はマクシミリアンだと思ったんだけど、違うみたいだ。
マクシミリアンの周囲にいた人たちらしい。
「我々は暴虐な支配者から解放された」
と言ってる。
それを聞いたときのメックリンガー准将の眉が、ほんの僅か顰められたけど、何事もなかったように応対してる。
ザ○を降ろした強襲上陸艇が戻ってきた。
今度は兵士達が地上に降りてくる。居城を捜索するそうだ。
こういう時に略奪とか、暴行が起きるそうなんだけど、ザ○の目が光ってるから、どうしようもないらしい。
「ま、もっともそれが当然なのだが、中々にうまくいかないものだ。今回は彼らが見張っていてくれるから、安心だがね」
そう言ったときのメックリンガー准将の目が細められていた。
よっぽど信頼しているんだな~と思った。
口は悪いけど、信用できて頼りになる鋼鉄の猟犬。
それがミヒャエル・ヴルツェル大尉率いるMS二個中隊だそうだ。
あっ……兵士達に守られるようにマリーンドルフ伯がやってきた。
■宰相府 アレクシア・フォン・ブランケンハイム■
「第一回、どうして俺をクシ○トリアに乗せてくれないのか、を問う会議を始める」
皇太子殿下がまた、おかしな事を言い出しました。
呆れてものが言えないとはこの事です。
ですが……駄々を捏ねられても困りますので、説明しましょう。
当然、それはわたくしの役割でしょう。
アンネローゼ“如き”には、渡しませんよ。
「殿下? ルードヴィヒ皇太子殿下は、帝国宰相でもあります。戦争は兵士達がおります。殿下に戦場に出てもらうよりも、国内で改革をしてほしいと、帝国臣民みながそう願っているからです」
「俺は乗りたいと言っているんだ」
「駄々こねないで下さい。こどもですか!!」
「大人の方が我が侭なものさ。ふっ」
無駄に格好つけないように。
憂いを秘めた目をしてもダメです。
まったくこの人は……。
だいたいですね~。時々ヘンな事を言い出すんですから。
ストレスでも溜まっているんですか?
「毎日毎日、書類とにらめっこばかりしてて見ろ。ストレスだって溜まるさ。俺もストレス解消したいんだ。良いじゃないか、俺も宇宙に行かせろよ」
「オーディン上空なら良いですよ」
「それでも良い。そしてクシ○トリアに乗るんだ」
失敗しました。
迂闊でした。リヒテンラーデ候の視線が突き刺さります。
皇太子殿下は嬉々として、俺のクシ○トリアぁぁぁとか、言ってやがります。
どうしてくれましょうか?
はっ、そうです。アンネローゼ。クシ○トリアを破壊してきなさい。
「ご自分でどうぞ」
「わたくしにこの手を汚せと言うのかっ」
「あらそいはいけないわ。にくしみはにくしみの連鎖をうむだけよ」
「うわー。うざい女ー」
「お前ら、楽しそうだよな~」
はっ、皇太子殿下が呆れたような笑みを浮かべて見ておられる。
おのれー。アンネローゼのせいに決まっている。
「他人のせいにすんな」
「黙れ。金髪の魔女」
「自己紹介ですかぁ~」
「むかつくなぁ~おんなわぁ~」
「お互い様ですわぁ~」
「意外と似たもの同士かもしれませんな」
「うむ、そうだな」
皇太子殿下とリヒテンラーデ候が頷きあっているっ!!
このままでは誤解されてしまう。
心底反発しあっているのが、分からないのでしょうか?
やはりこの女は、わたくしの敵です。
「それはこちらの台詞です」
「はっ。寝言は寝てから言いなさい」
「殿下と一緒だから言いませんですぅ~」
「へっ。寵姫になっていらい、唯の一度もお渡りのない女の癖に」
「あなたもないでしょうがっ!!」
「あたしあるよ」
マルガレータ・フォン・ヘルクスハイマーが爆弾発言をしよったわ。
いったいいつの間に?
皇太子殿下?
これはいったいどういう事ですか?
返答次第では……ふっふっふ。
「ああ、そういえば、乳母がまた風邪を引いたときに、絵本を読んでやったな」
「うん」
は、はははは。そういう事ですか……。
心臓に悪いですわ。
「では、そういう時には皇太子殿下ではなく。わたくしに言いなさいね」
「わたしわたし。わたしに言うんですよ。殿下と二人で読んであげます」
「どっちもやー。殿下がいい。じゃなかったらジーク」
このがきゃ~。その年で、もう男が欲しいか。
マルガレータ。――恐ろしい子。
「と、言うか。そなたらが怖いのじゃと思うぞ」
黙れ、このじじい。
「年よりは引っ込んでなさい」
ああ、アンネローゼ。よく言いました。
そして盛大な自爆。見事です。
皇太子殿下が引いています。
わたくしの勝ちですわー。おーほほほ。
後書き
アンネローゼVSアレクシア
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