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久遠の神話

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第五十一話 上からの返事その一

                   久遠の神話
              第五十一話  上からの返事
 加藤は今権藤と対持していた。二人共その手にはそれぞれの剣があり構えを取っている。
 そのうえで加藤はこう権藤に対して言った。
「あんたは政治家になるんだな」
「如何にも。私が目指すのは首相だ」 
 その椅子だというのだ。彼の目標は。
「そして首相になりだ」
「そのうえでだな」
「我が国、この日本を正しい姿にする」
 政治家としての彼の抱負も語る。
「日本は太平洋、ひいては世界の指導的な国の一国となれるのだ」
「俺は政治には興味がない」
 加藤は権藤の政治家としての抱負については関心がなかった。それでそれを聞いてもこう冷淡に返すだけだった。
「何もな」
「興味があるのは戦いだけか」
「仕事はもうある」
 生きる為のそれはだというのだ。
「清掃業がな」
「掃除が好きか」
「好きだ。汚いものが奇麗になる」
 言っていることは見事だがそこには何故か偏執めいたものがあった。
「いいことだ」
「それはそうだがな」
「そして戦いもだ」
 それもまた、というのだ。
「戦えればいい。生きている限りな」
「だから私の話も聞かないか」
「国家だの何だのは俺には関係ない」 
 全くの無関心のままだった。
「何もだ」
「では私の話も聞かないか」
「喋りたければ勝手に喋れ」
 それはいいというのだ。
「俺は他の奴の言葉を遮ることはしない」
「そうか」
「俺へのものでもそれはしない」
「罵倒の類でもか」
「言いたい奴は言え」
 今も素っ気無い、全くの無関心の言葉だった。
「好きなだけな」
「それでいいのか」
「所詮言うだけだ」
 あくまでそれだけだというのだ。
「俺は聞かない。それだけだ」
「そうか。では言わないでおこう」
 聞かない相手に言うつもりは権堂にもなかった。だから今はそれでいいというのだ。
 そして話を変えた。今度の話は。
「君は倒す」
「剣士としてか」
「政治家の務めは最大多数の最大幸福を実現することだ」
 今は経営者としてよりも政治家としての言葉だった。
「出来れば私も手を汚したくはない」
「潔癖症か」
「手段は選ばない主義だがそれでも奇麗に済ませたい」
 そうだというのだ。
「人は誰でも奇麗ごとがいいのだからな」
「随分割り切った言葉だな」
「それで済ませられるならそれでいい」
 奇麗に済ませるというのだ。
「しかしどうしようもない時はか」
「その時はか」
「私は手を汚す」
 自らの手をだというのだ。
「人に汚させるよりもな」
「あんた自身がか」
「人にさせてそれで奇麗でいられるかというとそうではない」
 汚れ仕事を他人にさせてもそれでもだというのだ。そうした汚れからは逃れることはできはしないというのである。
「心にその汚れが残る」
「ああ、それはその通りだな」  
 加藤はこの話は乗った。そうしたことはだというのだ。
「人にさせても汚れは及ぶものだよ」
「心はかえって汚れる。それならだ」
「自分でやった方がずっといいな」
「私の汚れ仕事は私でする」 
 そうするというのだ。
「だからだ。私は剣士として最後まで生き残り首相となる」
「俺達を全て倒してか」
「私の野心と日本の為だ」
 野心も隠さない。今の権藤は完全に剣士として心にもないことはあえて言うことはしなかった、加藤にありのままを言ってみせる。 
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