万華鏡
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第四十話 二学期のはじまりその六
「主食だから」
「御飯と一緒なのね」
「麺もね」
こちらも主食になるというのだ、おかずではなくだ。
「中国ではお米が主食でない地域も多いから」
「何かヨーロッパと同じね」
ヨーロッパでは主食は麦、つまりパンである。そのことからこう思ったのである。
「麦が主食って」
「そう思うのね」
「ずっと中国でもお米が主食だって思ってたから」
中学生まではそう思っていたのだ、これは炒飯からそう思っていたのだ。
「けれど違うのね実際は」
「包っていうパンもあるし」
中国のパンと言うべきものである。
「お饅頭もあるし餅もね」
「中国の餅ね」
「そう、小麦を練って焼いた餅ね」
それがあったというのだ。
「中国の北の方では麦が主食なのよ」
「餅とかは全部おかずだけれどね」
母も韮の餅をおかずとして出す、だから琴乃はそうしたものかおかずと考えている。饅頭、この場合は豚饅だがそれもおかずである。
「主食なのね、向こうじゃ」
「日本のお料理だけれどおうどんもね」
「主食なのね」
「そうよ、おかずじゃないから」
「じゃあうどん定食は」
関西独特の定食だ、他にはお好み焼き定食もある。ラーメンと炒飯のセットも中華料理店に行けばある。
「ないのね」
「中国ではね」
「成程ね、そういえばうどん定食とかって」
ここでだ、琴乃はこの関西独特の定食について言った。言いながら鰯を煮たものも箸に取ってそれで口にしている。
「関西独特よね」
「日本でもね」
「関東じゃないのね」
「関東だとお蕎麦が主流でね」
うどんではなくこちらだ、江戸時代からである。
「それで御飯と一緒には食べないから」
「別々なのね」
「お好み焼きもね」
こちらもだった。
「それだけだから」
「もんじゃってあったわよね」
琴乃はこれは食べたことがない、関西でも広島でもそれぞれのお好み焼きはあるがこちらはないのである。
「あれもなの」
「ええ、それだけで食べるから」
「寂しいわね、私いつもおうどんと丼食べるけれど」
だがそれもだった。
「関東じゃないのね」
「そうよ。というかね」
「というかっていうと?」
「炭水化物と炭水化物はね」
この組み合わせはというのだ。
「日本でも西の方の独特だから」
「ううん、独特なのね」
「お母さんも大人になって一回東京に行くまでね」
それまでだったというのだ。
「知らなかったわ」
「お母さんもなの」
「お店で親子丼ときつねうどんを頼んだけれど」
その時に何があったか、母は娘に言った。
「お店の人にびっくりされたのよ」
「普通じゃないの?親子丼ときつねうどんなら」
「そうなの」
「そう、それでね」
娘にさらに話す。
「おうどんをおかずにして食べても」
「驚かれたの」
「そうだったのよ、勿論おつゆは濃かったから」
「ああ、それ聞いてるわ」
「墨汁?って思った位にね」
そこまで黒かったというのだ。
「それで辛かったから」
「ううん、おうどんはおかずじゃなくて」
しかもつゆも黒く辛い、琴乃は話として聞いていた部分もあったがそれでも信じられないといった顔であった。
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