八条学園怪異譚
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第四十話 開かずの間その八
「是非な」
「はい、それじゃあ次は」
「あそこに行ってみます」
二人も日下部に答える、こうして次に行く場所も決まった。そして話が終わったところでだった。
赤鬼と青鬼が二人にこう言って来たのだった、その話はというと。
「それでだが」
「今晩だが」
「お誘い?飲むの?」
「そっちのこと?」
「そうだ、よかったらな」
「話も終わったしこれから飲むか」
鬼達は笑顔で二人を誘う。
「あんた達さえよければな」
「どうだ」
「確か鬼さん達の飲むものって」
愛実は鬼達の誘いからこう言った。
「日本酒よね」
「いや、そちらも好きだがな」
「今日は別の酒だ」
そうだというのだ、そしてその飲む酒はというと。
「葡萄の酒だ」
「赤い方だ」
「えっ、ワインなの」
愛実は鬼達がワインを飲むと聞いて目を丸くさせて問い返した。
「日本酒じゃなくて」
「我等は元々葡萄が好きだからな」
「それで葡萄から造った酒も好きだ」
「だから飲む」
「それと豆腐も用意してある」
「ふうん、そうなのね」
愛実にとっては意外なことだった、それで言うのだった。
「何か赤ワインとお豆腐って違う気もするけれど」
「普通は白よね、ワインだと」
豆腐と一緒に飲むワインはそちらだというのだ、白だとだ。
「和食には白ワインよね」
「そうそう、赤はお肉とかパスタよね」
「お豆腐にもよるけれど」
「普通は白なんじゃないの?」
「まあそうだがな」
赤鬼は二人の話にややバツの悪い顔になって答えた。
「確かに豆腐には赤ワインだ」
「お料理によるけれどね」
「普通はそっちよね
「夏だから冷奴だ」
それを食べるというのだ。
「だが赤だ」
「あまり合わないと思うけれど」
「それでもなのね」
「今丁度白ワインがなくてな」
青鬼は何故今回赤ワインなのかを話した。
「だが赤はふんだんにあってな」
「それで赤なのだ」
「葡萄もあるがな」
「そちらはマスカットだ」
「いや、マスカットも」
愛実はその葡萄と聞いてまた言った。
「ワインだったら白でしょ」
「赤ワインってフルーツにもちょっとね」
聖花も言う、赤ワインはマスカットにはあまり合わないというのだ。同じ葡萄ではあるがだ。
「あまりね」
「そうよね」
「赤ワインと冷奴、そしてマスカット」
「どうなのかしら」
「止めておくか?今晩は」
青鬼は首を傾げさせる二人に問うた。
「そうするか」
「そうね、あまりって思うし」
「それじゃあ」
二人も実際乗り気ではなかった、それでだった。
今日はこれで止めようという話になりかけた、だがここでだった。
体育館にうわばみも来た、うわばみはこう一行に言った。
「話は聞こえていたぞ、白ワインならわしがたんまり持っておるぞ」
「おお、うわばみさんが持っておったか」
「そうだったのか」
「うむ、丁度今日博士にたんまりと貰ってきたのじゃ」
あの悪魔博士からの頂きものだというのだ。
「イタリアのワインじゃ」
「ふむ、イタリアか」
「ではそちらにするか」
鬼達はうわばみの言葉に頷いた、尚彼等は人間の姿に化けたりして学園の外に出張したりもしている。
鬼達はうわばみの言葉を受けてだ、二人にあらためて問うた。
「ではどうする?」
「白ワインが来たぞ」
「ええと、じゃあお言葉に甘えて?」
「何か断ろうとした手前図々しいけれど」
「そうしたことは気にしないでくれ」
「言わないことだ」
鬼達は遠慮を見せた二人に鷹揚に返した。
「それでは飲むか」
「今からな」
「うん、じゃあお言葉に甘えて」
「今から」
こう話してだった、二人も決めた。
そしてその二人にだ、日下部と幽霊が言って来た。
「でjは我々はこれでな」
「私達は身体がないからね」
だから飲み食いが出来ない、それでだというのだ。
「後は君達で楽しんでくれ」
「また何かあれば来てね」
「はい、今回は有り難うございました」
「色々と」
二人も日下部達に頭を下げる、そうしてだった。
鬼達、それにうわばみと一緒に白ワインを飲み冷奴とマスカットを楽しんだ。この日も楽しい最後を過ごすことが出来たのだった。
第四十話 完
2013・6・14
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