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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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幕間
  Trick@03-1_ツンデレ!!



これは≪小烏丸(こがらすまる)≫が結成されて数週間後、
常盤台中学が強襲される数週間前のお話。


御坂美琴 白井黒子 佐天涙子 初春飾利


この仲良し4人組はお泊り会を開くことになった。

理由は簡単。その日に佐天の休みが決まったからだ。

もちろん学校の休みと言うだけではなく、A・T(エア・トレック)の練習も連続で休みになっていた。

中々休みが取れないA・Tの練習。
その休みの日が学校の休日と重なるとなればイベント事に結びつけるのが女の子の力。

そして決まったイベントはお泊り会ことパジャマパーティーである。

各自でお気に入りのパジャマを着て夜通しおしゃべりを楽しもうというのだ。

日付も時間も決まった。
御坂と白井は尽力をつくして寮監様(様付けはとても重要)から外出許可を勝ち取った。

場所は佐天の部屋。自分の休みに合わせてもらうからと言って自分の部屋を提供した。

残念ながら他の女子メンバー、美雪と位置外は所用で参加できない。
だが、それでも4人のテンションは止まらなかった。


どうせなら昼間は買い物をしよう、と前日まで楽しく段取りを決めていた。

盛り上がった彼女たちだったが、生憎と“自然”に邪魔されてしまった。





「どしゃぶりですね~」

「どしゃぶりですの」

「ほ~んと、どしゃぶりね」

「うわー、バケツをひっくり返したって表現、初めて使う機会が来たわ」

セブンスミストの前。4人は目の前の天気にそれぞれ感想を言った。

「もう少し後に降り出すと思ったから、買い物をゆっくりしていたんですけどね」

「しかたありませんわ初春。“樹形図の設計者”(ツリーダイアグラム)は万能であっても
 わたくし達が確認を怠っていた天気予報も意味がありませんの」

「でも少しゆっくりしすぎちゃいましたかね? おかげでお店から出られそうにないし」

佐天は店の入り口から少しだけ手を出した。

数秒後に戻すと、気が滅入るほど手がびしょ濡れになっていた。

「おしゃべりしながら食べるお菓子や飲み物も買ったから
 走って雨の中強行軍っての難しいわよね・・・・」

御坂の右手には少し膨らんだ袋が1つ。
ペットボトルや夕食の食材が入っていた。

左手には小さめの旅行バックといった大きさの鞄。着替えが入っている。

他の3人も同じような中身の袋と鞄を持っていた。

「あー!?」

「! どうしたのよ初春! 急に大きな声出してびっくりするじゃない」

「どれぐらいで雨が止むか天気予報を確認したんですよ!」

初春の手にはいつも使っているデバイス。それで天気予報を検索していた。

「天気予報のページに大雨警報があって!
 もしかしてと思って調べてみたら川の氾濫も警報が出ていて!

 学園都市の橋がいくつか通行止めになっています!!」

「「「えーー!!」」」

「佐天さんの家に行くにしても、私の家や御坂さん達の寮も通る橋が通行止めです!

 ・・・どうしましょう?」

「「「・・・・・」」」

「えっと、私、少しお金持っているから近くのホテルで一泊ってのも」

「だめですよ御坂さん! いくら御坂さんがお嬢様だからってそんな簡単に!」

「そうですよ佐天さんの言う通りです! そこまでしてはいけません!」

「ですが初春に佐天さん、このままですと行く所がありませんの。

 お姉様の言う通り、適当なホテルに泊るしか方法がありませんわ。

 お姉様だけでなくわたくしも出しますから」

「でも・・・」「・・・・」

他に方法も思いつかない。

でもお金をあまり持っていない佐天と初春がホテル代を半分も出す事が出来ない。
御坂と白井にほとんど払ってもらうことになる。

友人として譲れない何かが2人はあった。

このままではホテル行き(白井(ヘンタイ)発想の危ない意味ではない)に
なってしまう。

自分の休みの日に、こんな不幸が訪れて一番落ち込んでいた佐天を
救いの手が差し伸べられた。


4人が立っている店の前に1台のワゴン車が停まった。

セブンスミストの業者の人かと思った4人だが、運転席から知っている顔が見えた。

「真っ赤な車だったら決まっていたんだろうなー、この場面。


 お客さん  どちらまで?  」

タイミングを逃さないかのように、見せ場を逃さないかのように
信乃がシニカルな笑顔で現れた。

急な登場に驚いた4人だったが、一番付き合いの長い御坂がいち早く
意識を取り戻し、格好をつけて答えた。

「あなたと共に、行けるところまで」

「おう、それじゃ地獄にでも行きますか。 乗ってください」

御坂は嬉々として助手席に乗り込み、茫然としていた3人も急いで
後ろの席に乗り込んだ。





「ほんと助かったよ信乃にーちゃん。タイミングもバッチリだし」

「偶然ですよ。常盤台中学の修繕に使っている道具を片付けていた帰りです。

 大雨だから道具を外に出したままには出来ませんからね」

「ところで信乃さん、この車どちらに向かっていますの?」

「橋が通行止めなのは知っていますかね?
 4人の家で行けそうな場所はあります?」

信乃の言葉に4人全員が首を横に振って否定した。

「やはりそうですか。ここから行けるのは私の家だけだと思っていたので
 私の家に向かっています」

「お! さすが信乃にーちゃん気がきくね!」

「いえいえ、それと信乃にーちゃん言うなバカ妹」

「あのー、盛り上がっているところ悪いのですが、信乃さんに少し質問がありますの」

後ろの席から白井が、恐る恐ると言った感じで声を出した。

「なんですか?」

「あのですね、信乃さんは高校1年生で間違いありませんのよね?」

「はい。それがどうかしましたか?」

「ということは15、または16歳・・・なぜ車を運転してますの?」

「「「あ!」」」

他の3人も気付いたように声を上げた。通常、車の免許は18歳からしか取れない。

「さて、何故でしょう? おっと!」

信乃の操作で車が揺れた。4人をからかうためにわざと大きめにハンドルを切って。

「ちょ! 信乃さん無免許運転はだめですって! まずいですよ!」

「あわわわわ! 私まだ死にたくない! 死にたくないです! 助けて佐天さん!」

「信乃さん! 早く車をお停めになってください! 今ならまだ罪が軽いですわ!!」

「信乃にーちゃんなら・・・・無免許運転ぐらいやりそうだな」

「ははははは!」

4人の反応に満足して信乃が笑った。

「信乃さん笑っている場合じゃ「大丈夫ですよ」 へ?」

白井の言葉を信乃は笑いを堪えながら遮った。

「一応、免許は持っています。

 世界は広いですね。12歳からでも免許を持てるんですよ」

「・・・・本当に持ってますの?」

国際運転免許許可書(ナショナルドライバーライセンス)を持ってますよ。

 この免許、かなり優れものですごいですよ。大型の車だけでなく
 船や飛行機の免許も兼ねていますよ」

「イヤイヤイヤ、そんな免許あるはずがありませんの」

「信乃にーちゃんなら・・・・それぐらい持っていそうだな」

「お姉様、いくら信乃さんをお慕いしているからといっても
 少し信じすぎではありませんの?」

「黒子、私は信乃にーちゃんを信じているんじゃなくて
 信乃にーちゃんのブッ飛んだ考えと行動力を見ているから
 納得しているのよ」

「あ、それわかります。私も信乃さんならそんな免許持っていそうだなって
 思ったんですよ。御坂さんと同じ理由です」

「佐天さんもですの?」

「少し気になって調べてみたんですけど、実際にそんな免許あるみたいですよ」

と、先程の天気予報と同じく手元のデバイスを除きながら初春が言った。

「本当ですの?」

「はい。

 ただ、免許を取るにはかなり厳しい基準をクリアしないといけないみたいです。

 あの有名な人材派遣会社 ASEの運転手ぐらいじゃないと貰えないみたいですよ」

「あ! 私知ってる! 1年前ぐらいにロサンゼルスで警察相手に
 街中をバイクで逃げ回っていた人でしょ!? しかも2人乗りで!!
 ビルの屋上や中を走り回っていたのニュース特番で見た!

 CGやスタント抜きであんな運転できる人、いるなんて信じられなかったよ!」

佐天が興奮したように語った。

「人材派遣会社の人が警察相手に逃げ回るなんて・・・
 どうやったらそんな状況になるのよ?」

「そんなすごい人が持っている免許ですの?

 それでしたら余計に信乃さんが持っているはずがありませんわ」

「白井さん、これは私の知っている人が体験した話です」

「な、なんですの信乃さん? 急に真剣に話し始めて・・」

「とある男性が、女性と一緒に車に乗った時の話です。

 どうしてそうなったのか、その状況は省略させてもらいますが
 女性が運転して、男性は助手席に座って車を走らせていました。

 ふと男性は思い出したのです。女性は十代から孤島で生活しているので
 免許を取る暇がなかったのでは、無免許運転ではないのかと。

 恐る恐る、男性はこの事を聞いてみました。すると女性は答えました。

  『あら、馬鹿にしないでくださいよ。いくらわたしが箱庭育ちの
   世間知らずだからって、それくらいのことは弁えています。
   十八歳になったとき、ちゃんとお金を払って買いました』

 とね」

「この場面でなぜその話をしますの!?
 もしかして信乃さんも買いましたの!? 免許を!? お金で!?
 そもそも免許は買うものでは「あ、着いた」 ヘブッ!?」

信乃が急ブレーキを踏んだために白井の言及は強制停止させられた。
というより運転席の椅子に顔面から突っ込んだ。

「この寮の4階、一番奥の部屋です。さぁ、行きましょう」

信乃の先導に4人が、白井は顔を押えながらついて行った。

「結構いい寮ね。1つの部屋も大きいみたいだし。

 これなら5人が泊っても大丈夫そうね」

御坂は寮の外観から1部屋の大きさを予想して言った。

「そうですね。以外と広いですし大丈夫ですよ。

 この寮は学生だけでなく、教師も使っている人がいるので大きめに設計されて
 作られたと聞いた事があります。私も部屋の大きさでここを決めましたから」

階段を昇りながら信乃が説明していった。

「今さらですけど・・・・一人暮らしの男性の部屋に女の子が入るってのは・・」

佐天は顔を少し赤くしながら言った。

信乃にそのような心配は一切ないがために今まで3人(佐天抜き)は
気付かなかった。

もちろん佐天も信乃を信頼しているが、好きという感情を持っているがゆえに
気付いてしまったのだ。

「そういえばそうね。信乃にーちゃん、襲ってきたらだめよ?」

「ん~~、ないな」

信乃の反応で少しだけ佐天ががっかりしたような、安心したようは顔をした。

他の3人も今さら確認するまでもない事だったので、格別反応はなかった。

「ないなって、即答? それはそんな事態は起こさないって意味?

 それとも私達に女としての魅力が無いって意味?」

「両方。そんな事態は起こさないし、琴ちゃんにはそんな魅力はないし」

「ほう? 信乃にーちゃん、もう一回言ってみて」

バチバチと額から青い電撃が漏れ出していた。

「もう一回言ってもいいんですか?」

信乃はヘラヘラと笑い御坂を挑発する。

小さい頃から御坂をからかっては楽しんでいた信乃。

学園都市に戻ってきた当初はギクシャクした関係で
あまりふざけた会話が無かったが、最近では頻繁に兄妹漫才を披露していた。

ふと、マンションの廊下から下の駐車場が見えた。

そこには駐車しようと入ってきたばかりの車があった。

「あれ、あの車は黄泉川さんだ。やましい事が無いっていっても
 警備員(アンチスキル)に4人が入るところを見られるのは少しまずいですね。

 皆さん、この階の一番奥の部屋ですけど少し急ぎましょう。


 ん? 黄泉川さん、下手な駐車ですね。あんな運転でよく警備員なんて・・・
 おいおい、そんな技術で私のワゴンの隣に停めないでくださいよ。

 だいたいなんでわざわざそんなすぐ隣に・・・ちょっと・・ちょ、おいこら!
 てめえ! なにをするつもりだあんたは!」

黄泉川の運転を見ながら信乃の表情と口調は変わり、最後には怒鳴り声になった。

「部屋のカギ空いてるから先入ってて!!」

階段を駆け下りながら4人に言って去って行った。

「結局男の人の部屋に入るって話は・・・まあいいや」

「私に魅力が『ないな』で片付けられた事、戻ってきたらとっちめてやる!」

佐天と御坂は別々の反応をし、4人は部屋へと向かった。




「カギ空いてるって言っていたけど本当に勝手に入っていいんですか?」

ドアノブに手をかけた御坂だが、今まで空気だった初春が「空気じゃないです!」
失礼。空気を読まない初春の言葉で御坂が止まった。

「別にいいんじゃない? それに黄泉川さんって私達も会ったことあるでしょ?

 顔見られるほうがダメだと思うわよ」

そう言って御坂はドアノブを捻った。

予想通りガキは掛かっておらず、すんなりとドアが開いた。

そして予想外にも無人と思っていた部屋には一人の少女が座っていた。

「いらっしゃい♪」

御坂美琴の義理の姉にして西折信乃の家族、西折美雪がいた。

「・・・・・何で雪姉ちゃんがいるの・・・」

信乃が幻想御手(レベルアッパー)事件で怪我して以降、治療・看護・監視の
意味を含めて一緒に住み始めた美雪だが、そのことは当人とカエル医者以外には
誰にも知られていないことだった。

「大雨で週末は出かけられそうにないから遊びに来てたの♪」

美雪も適当に嘘をついた。
(信乃に絶対に本当のことは言うなと命令されている)

「美雪お姉様、一人暮らしの殿方のお部屋に遊びに来るというのは
 少し無防備といいますか・・・・」

白井も御坂と同じく顔が引きつった笑いを浮かべていた。

「へ? 信乃は襲ってくるとかそういう話?」

「「お、襲う!?」」

美雪の言葉に佐天と初春が顔を赤くして叫んだ。

それを美雪は少しだけ笑った、少しだけ。

「ないない♪ だって退院した後も一緒にいたのにな~んにもないよ・・・・

 ・・・・もう女としてのプライドが粉砕するくらいになにもない・・・・」

美雪は虚ろな目で明後日の方向を見ていた。

後ろでは佐春か襲うのキーワードに顔を真っ赤にし、正面では美雪が落ち込んでいる。

この状況を打破すべく御坂と白井は無理矢理話題を変えた。

「そそそういえば雪姉ちゃん!今日は論文仕上げるって言ってなかった!?」

「でですわ! 美雪お姉様も今日のパーティーにお誘いしましたのに!」

「あ~論文ね・・・・うん終わったよ。

 明日に終わらせる予定だったけど調子良くってスラスラ書けたんだ♪

 あ、ごめんね♪ こんなところで話し込んじゃって♪ どうぞ中に入って♪♪」

「「(ほっ)」」

話題変更に成功して美雪は復活、御坂と白井は安堵した。

促されるままに中に入った4人はすぐに温かいお茶が出された。

「ん~おいしい!」

「ですわね」

「美雪さんありがとうございます」

「温まる~! いくら夏前でも雨のせいで肌寒いかったからね!」

佐天も初春も復活して、4人それぞれが紅茶の感想を言った。

ふと、佐天は気がついた。自分達が持っているものに対する違和感に。

「あれ?」

「どうしたですか佐天さん?」

「・・・どうして4人分のカップが用意されているんですか?」

「へ? あ~確かに一人暮らしの男の人はティーセットなんておかしいですね」

「そんなことないわよ初春さん。信乃にーちゃん、料理好きだから持ってても
 不思議じゃないわよ」

「違いますよ御坂さん! 私が言いたいのは

   何で急に来た4人分のお茶がすでに準備されているのかってことです!  」

「「「あ・・・」」」

確かに信乃と美雪、2人が飲むにしては6人分(4人+2人)は多すぎる。

それにカップも座る前にはすでに4つ出されていた。

一同は不思議そうな顔をして一斉に美雪を見た。

それを見た美雪も不思議そうな顔して首をかしげた。

「え、だって信乃は4人が困っているだろうから連れてきたんでしょ?

 雨の中、車を走らせて探してきて♪」

「え・・学校帰りに偶然見つけたって信乃にーちゃんが・・・」

4人の反応を見た美雪は数秒間ポカンとして、そしてそのまま優しい笑いを浮かべた。

「あのね、10分前まで信乃はここにいたの♪

 それで私が今日のお泊まり会を論文のせいで断ったとかの話になってね♪

 『部屋に行く前にセブンスミストで買い物するって言ってたけど、
   雨が降る前に帰れたかな』
 って私か言ったタイミングで、テレビで橋が通行止めニュースが流れたの♪

 信乃は学校に忘れ物したって、それ以外何も言わずにすぐに出て行っちゃった♪

 お茶は私が用意したの♪ あんな信乃を見て、言うまでもないでしょ♪?」

「「「「・・・・・」」」」

「・・・・・・・」

「まったく、信乃にーちゃんってあれだよね」

御坂は言った。

「そうね、あれですわ」

白井も言った。

「あれですよね~、実際」

佐天も続ける。

「信乃さんはあれに違いないですよ」

初春も同意した。

「確実にあれだね♪」

美雪も確信した。

そして全員が、声を揃えて異口同音。

『ツンデレ!!』

「・・・・・誰がツンデレだって?」

黄泉川との壮絶な死闘?を終えて、ドアを開けたばかりの信乃が丁度聞いていた。

「「信乃さん」」「ですの」「昔からずっと信乃にーちゃん」

「もうあれだね♪ 信乃のテーマソングは桜新町の町歌だね♪」

ツンツンデレツンデレツンツン♪

「・・・・・・俺をいじめて楽しいか?」

『うん』

「・・・・やめて。俺のライフはすでに荷負荷(マイナス)だよ・・・」

ひどい言われように信乃は落ち込みながら部屋に入ってきた。

「つーちゃんがいたら6人でもっと楽しいのにね~」

「いやいや佐天さん、小烏丸の練習にまともに参加しない引きこもりが
 家から出るわけないじゃん」

「・・・ですね。電話で即答されました」

電話を掛けた時に『だが断る』の一言と同時に切られたのを思い出して
佐天は少しだけブルーになった。

「そういえば信乃さん、今は普通に話してますのね、敬語を使わずに」

「あ、ほんとだ。でも、この方が信乃にーちゃんらしいよ」

「昔は今みたいに話してたんですか?」

「そうだよ初春さん♪

 でも再会してからは琴ちゃんにもよそよそしいしゃべり方になっちゃった♪」

「美雪、お前には敬語なんて使わないぞ。俺だって敬意を払う相手を選ぶんだからな。

 初春さん、失礼な話し方をしてすみません。今から普段通りにします」

「いえ、失礼だなんて思っていないですよ。
 いつもと違いますけど、これはこれで信乃さんらしいです。

 それに自分の家なんですからリラックスしてください」

「いいんですか? それじゃお言葉に甘えさせてもらうよ。

 うん、やっぱりこっちの方が楽でいいや」

信乃の話し方に皆、満足そうに頷いた。

一月ほど前にも同じように信乃の話し方について話題になったが
敬語で話す事を譲らなかった。

会ったばかりの当時と比べれば大きな進歩、心を開いている証拠だ。

特に喜んでいるのは御坂美琴だった。
兄同然の信乃から距離を置かれた気がして寂しく感じていた。

だから何度注意されようとも『信乃にーちゃん』と呼び続けた。

直せと言い返してくる信乃との、せめてものジャレ合いを楽しんでいた。

「お姉様、それほど嬉しいですの?」

「え?」

「御坂さ~ん、とてもいい笑顔してますよ」

「ふぇ!?////」

周りを見れば、信乃と御坂以外がニコニコというよりはニヤニヤとした
笑いを浮かべて御坂を見ていた。

「ですね。思わず写真に収めちゃいました」

「ナイスですわ初春!! 後でデータを送りなさい!!」

「あ、私にもちょうだい!」

「コラー! なにしてるのよ!

 それに信乃にーちゃんの話し方なんてどうでもいいの!
 嬉しくとも何ともないんだからね!」

「素直じゃないね琴ちゃんは♪

 そういうツンデレなところは信乃そっくり♪♪」

「そっくりじゃない! ツンデレ言うな!」「そっくりじゃない。ツンデレ言うな」

「「「そっくり」」」

語調は違えど一字一句全く同じ事を同時に言った兄妹だった。



つづく
 
 

 
後書き

今回は完全トーク話です。
シリアスな要素が一切ない話になっています。

ついでに戯言の車ネタをふんだんに入れてみました。
一番書きたかった「ノイズ君、空を飛ぶwwwww」の巻は
掛けないことが少し残念ですがね。

感想、アイディアをお待ちしております。
感想のおかげで今回の話を完成させることができたくらい
七の名は現金な奴なんです。
生温かい感想があれば生きていけるんです。
お待ちしておりま~す。
 
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