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陽気な助っ人

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第三章

 ホージー自身にも取材をした、他ならぬ彼に。
「いや、今日も打たれましたね」
「かなり日本の野球をしておられるとのことですが」
「打てるのはその結果ですか?」
「研究の成果ですか?」
「いや、違うよ」
 ホージーは記者達の問いを笑って否定した。
 そのうえでだ、こう言ったのである。
「僕が打てるのは神様のお陰なんだ」
「神、ですか」
「キリスト教の」
「そう、神様のお陰なんだよ」
 その明るい、満面の笑みでの言葉だった。
「神様が打たせてくれるんだ」
「そういえばホージー選手はかなり熱心なクリスチャンでしたね」
 記者の一人がこのことを思い出して言った。
「そうでしたね」
「熱心かどうかはわからないけれど信仰はあるよ」
 これは自分でも言うのだった。
「ちゃんとね」
「その神様がホージー選手を打たせてくれるんですね」
「神様のご意志だよ。僕は神様に出会えなかったら」
 どうなっていたか、ホージーはここで普段見せない顔になった。
 遠くを見る顔だ、その顔で言うことは。
「僕の家は貧しい母子家庭でね」
「アメリカのカルフォルニアのですね」
「そう、スラムにいたんだ」
 それでだというのだ。
「スラムじゃ一番いい暮らしが出来るのは麻薬の売人でね」
「それになるおつもりだったんですか?」
「まさか」
「そうなんだ」
 今のホージーからは想像出来ないことを考えていたというのだ、かつての彼は。
「子供の頃はね。けれどね」
「教会に行かれてですか」
「それで神様に出会ってね」
 そしてだというのだ、ホージーはここで笑顔に戻った。
「信仰を知ってね」
「麻薬の売人にはならなかったんですか」
「野球選手になったんですね」
「神様が僕に野球を用意してくれてね」
 それでだというのだ。
「これで生きてきて今も日本に来てね」
「打っている」
「そうなんですね」
「そうだよ、全部神様が導いてくれているんだ」
 それで今に至るというのだ。
「僕が打とうと思っても打てないんだよ」
「ううん、ホージー選手が打てるのはですか」
「神様あってのことですか」
「そう、全部神様のお陰だよ」
 ホージーはさらに言う。
「僕は生きられて野球を出来るのもね」
「全て神様のお考えによるもの」
「ですか」
 記者達はここでホージーのことを知った、彼の明るさに野球もだ。
 全て神があってこそなのだ、信仰が。
 ホージーはその信仰を隠さずにさらに言う。
「僕はこれからどうなるかわからないけれど」
「それでもですね」
「全ては神様あってのことですか」
「神様が導いてくれるんだ」
 全てはそうだというのだ。
「僕はそのまま生きていくよ」
「野球もされますか」
「今していることも」
「ずっとしたいね」
 野球自体の愛着も口にする、しかしそれもだった。
「神様が導いてくれる限りね」
「神様がずっとそうして欲しいですね」
 記者の一人がホージーのその優しくそれでいて信仰への熱さも含んだその目を見てこう彼に言った。
「ホージー選手がずっと野球が出来る様に」
「本当にそう思うよ」
 こう話してだった、そのうえで。
 ホージーは打ち続けた、そしてヤクルトを優勝に導き自身もホームラン王になった。日本シリーズにおいては。 
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