白百合紅百合
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第六章
「初代さんこの学校が好きで部活にも熱心だったんだよ」
「それでなんですか」
「ああ、死んですぐに生前の姿で出て来られる様になったんだよ」
「ここに皆がいて寂しくないからですか」
「一人でいても寂しいだけだからな」
それでこの生徒会室に来るというのだ、十五日に。
「それでなんだよ」
「だったんですか」
「そろそろだからな」
先生は生徒会の窓を見た、もうすぐ夜になろうとしている。
「これから九時位までやるからな」
「そうですか、それじゃあ」
「今から」
「あとね」
また由紀が笑顔で話してきた、今度は彼女から言って来た。
「どうして紅白かよね」
「あっ、それですね」
「そのことですね」
「縁起がいい色合いでしょ」
由紀はこのことも自分から話した。
「そうでしょ」
「そうですね、けれど」
「それと中国が一体」
どういう関係があるかというのだ。
「あの、縁起がいいのと幽霊さんと」
「それに中国がどう合わさるのか」
「日本ではお葬式とか死んだ人の送迎は黒と白よね」
喪服が黒いのもここからだ。黒と白は日本では死者の色合いなのだ。
だが中国はどうか、先生が話すことは。
「それがね」
「中国では違うんですね」
「そういうことですね」
「ええ、そうよ」
それでだというのだ。
「中国では死んだ人があちらの世界でも楽しくやれる様にね」
「縁起よくですか」
「死はその二色にするんですね」
「そう、じゃあこれでわかってくれたわね」
「はい、初代の先生のあちらの世界でも幸せに過ごせる様に」
「そしてその人を迎える為に」
「赤と白なのよ」
そういうことだった。
「それでこの生徒会室の配色なの」
「ううん、そうだったんですね」
「だからなんですか」
「初代の先生は女性だったけれど漢籍の素養が凄くて」
昔の知識人はそうだった、夏目漱石も漢詩を残している。尚漱石は俳句も書いており詩人としての一面もあった。
「中国の文化が好きでね」
「それでお迎えにもですか」
「紅白なんですか」
「じゃあいいわね」
由紀は笑顔で二人に言う。
「今からね」
「「はい、毎月十五日には」
「この日には」
「この日が先生の命日だったのよ」
その初代会長のだというのだ。
「もうすぐ来るわよ」
「じゃあ今から」
「お迎えですね」
彩と佐江も微笑んで頷いた、そしてその昼と夜の端境の時に。
生徒会室の扉が開きそこからだった、綺麗な赤い和服を着た美人が入って来た、その黒髪を綺麗に整えている。
その美人が彩と佐江を見て言う。
「一年の娘達ね」
「はい、そうです」
「宜しくお願いします」
二人はその初代顧問の先生に頭を下げて挨拶をした。
「生徒会に入れてもらいました」
「書記です」
二人共だというのだ。
「毎月十五日にこっちに来られるんですね」
「この生徒会室に」
「そうよ。あちらの世界からね」
初代先生は微笑んで答える、見ればその身体は透けていてそれがこの人が実体がないことがわかる。
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