中国的麺
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第一章
中国的麺
北京にあるこの店はかなり変わった店だ。
売っているのは麺類だけだ、とにかく様々な種類の麺類がある。
店長の張青易は難しい顔で妻の趙晴花によくこう言っていた。
「うちは麺の店だからな」
「麺だけでいいっていうのね」
「ああ、そのかわりな」
どうかとだ、張は晴花にこう返す。
「麺は充実させるからな」
「何種類でも置くのね」
「何種類?それだと少ないだろ」
「じゃあ何十種類ね」
「百種類以上だよ」
そこまでだとだ、その太った顔で痩せていて自分よりずっと小さな妻に言うのだ。
「実際にそこまで置いてるだろ」
「それはそうね」
「うちは麺専門の店なんだよ」
まさにそれだというのだ。
「だから麺はな」
「百種類以上なの」
「イタリアって国があるな」
「あの長靴みたいな形の国ね」
「あの国のパスタなり日本のうどんとかはまあいい」
そうしたものはというのだ。
「外国のものはな」
「じゃあ中国のものをなのね」
「何でも揃えるからな」
「大きく出るわね、中国って一口に言っても」
それでもだとだ、晴花も夫に言う。
「広いしそもそも麺類発祥の国よ」
「それが中国の誇りの一つだからな」
ひいては中華料理の、である。中華料理といえば麺類というのは中国人にしても強く意識していることなのだ。
「だからな」
「それでなのね」
「ああ、麺を揃えるぞ」
また妻に言う。
「この国の麺ならな」
「本当に大きく出たわね」
「北京だけじゃない」
彼等が今いるこの国の首都でもあるこの町のものだけではないというのだ。
「上海も四川もな」
「そして広東もね」
「中国には色々な料理があるんだ」
張は妻に目を輝かせて言う。
「だったらな」
「あらゆる麺を揃えるの」
「拉麺もな」
これもだというのだ。
「揃えるからな」
「大きく出たわね、けれどね」
「けれどか」
「乗るわ」
晴花は笑顔で夫に答えた。
「それにね」
「店に中国のあらゆる麺を揃えることにか」
「ええ、乗るわ」
そうするというのだ。
「是非共ね」
「よし、言ったな」
「言ったわよ」
約束したというのだ。
「じゃあいいわね」
「ああ、この国を中国一の麺の店にしてやるからな」
「種類も揃えて」
「腕もな」
これも忘れてはいなかった、食べ物の店はまず美味くなくては話にならない。あまりもまずいとそれはそれで話題になるが。
「それもあるからな」
「わかったわ、じゃあね」
「目指すぞ、中国一だ」
「ええ、今からね」
二人は誓い合いそしてだった。
麺の腕を鍛えるのと共にどういった種類の麺があるのか勉強していった、そうして様々な麺を実際に揃えていた。
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