八条学園怪異譚
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第四十話 開かずの間その五
「このこと誰も気付いていないけれど」
「というか窓はですか」
「空いてるんですか」
「そうなのよね。本当に皆気付いていないけれど」
実はそうだというのだ。
「いや、このこと誰も気付いてないのね」
「誰もが扉しか見ていないからな」
それでだというのだ、日下部も二人に話す。
「まして外から入るには窓の場所が高くて誰からも見えない場所にあった」
「いや、それだったら一緒じゃないですか」
「見えない場所にあるってことは高い場所にあるってことですから」
それ故だった、考えてみるとだ。
「普通に人間だと入られないですよ」
「出るにしても」
「我々は壁を抜けて入られるがな」
日下部は幽霊として二人に話した。
「だが実体である君達が入るには」
「この扉凄く立て付けが悪くてそれで開けられないのよ」
幽霊はここでこの扉が何故開かないのかを話した。
「そのせいでなのよ」
「それで開かずの間なんですか」
「そうなってたんですか」
「ここは結界とかじゃないのよ」
怪談でよくあるそうした話がはじまりではないというのだ。
「普通にね」
「立て付けが悪くてですか」
「開かないだけですか」
「怪力で思いきり引けば」
「開くんですか」
「そうなるんですね」
「ええ、多分だけれどね」
そうなるというのだ。
「だからここは」
「鬼の人達を呼ぶか」
日下部が知恵を出してきた。
「赤鬼さんと青鬼さんをな」
「そうね、それがいいわね」
幽霊は日下部のその提案に頷いて応えた。
「それじゃあ早速ね」
「呼ぶとしよう、赤鬼さんに青鬼さん」
「うむ、呼んだか?」
「どうしたのだ?」
日下部が名前を呼ぶとすぐにその赤鬼と青鬼が出て来た、本当に一瞬だった。
その鬼達にだ、幽霊は夜の挨拶をしてからすぐに言って来た。
「あの、ここの扉だけれど」
「おお、普通科の体育館の開かずの間だ」
「ここをか」
「ええ、開けてくれない?」
こう鬼達に頼む、そのうえで愛実と聖花に顔をやってからそのうえであらためて鬼達に話した。
「この娘達が中に入りたいっていうから」
「ふむ、ではな」
「開けさせてもらおう」
鬼達はその扉を見てから幽霊に答えた。
「わし等の力ならこの扉も開くだろう」
「それではな」
鬼達はすぐに扉のすぐ前に来た、そのうえで。
扉に手をかけて左から右に思いきり引いた、するとだった。
扉は勢いよく開いた、その中は普通の体育館の倉庫だった。
だが幽霊達の話通りだった、そこは埃だらけだった。
何十年も積もりに積もっている埃を見てだ、愛実はその顔をこれ以上はないまでに顰めさせてこう言った。
「お掃除したいところだけれど」
「ああ、それなら止めておけ」
「しない方がいい」
鬼達は愛実の今の言葉にすぐにこう返した。
「これだけ汚れていると生半可な掃除では駄目だ」
「何十年分の汚れだからな」
それこそ掃除をすればというのだ。
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