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八条学園怪異譚

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第四十話 開かずの間その二

「汚くない?制服が汚れるわよ」
「面白い指摘ね」
「埃やゴミがついて。だからね」
「倉庫はなのね」
「そう、好きじゃないわ」
 綺麗好きの愛実らしい言葉だった。
「私はね」
「私も。埃はね」
 聖花も言う、この辺り二人は同じだ。
「好きじゃないわ」
「二人共綺麗好きね」
「だって、お店で埃ってね」
「絶対にアウトだから」
 ここでも店の話だった、やはり二人は生粋のお店の娘だ。
「倉庫でそういうことするんじゃなくて」
「綺麗な場所でないとね」
「成程ね、二人共日活みたいな話には興味ないのね」
「日活って随分古いわね」
「そこでそう言うなんて」
 二人は今度はテケテケの日活、日活ロマンポルノについて突っ込みを入れた。
「もう殆どの人が知らないわよ」
「私達もちらっと聞いたことがあるだけだから」
 こういうことに疎い二人は観たことがない、というよりは今のアダルトビデオも観たことがない。
「そういうことは」
「ちょっと」
「純情っていうか知らないのね、あんた達は」
 花子さんは二人に笑って言った。
「そろそろ経験していく年頃だと思うけれど」
「よくそう言われるけれど」
「私達まだそういうことには興味がないから」
 恋愛自体についてだ、二人はそちらは今のところはなのだ。
「だからね」
「今はね」
 こう話してそしてだった。
 愛実と聖花はその夜に水産科の日下部のところに向かった、そしてすぐに彼に普通科の体育館の倉庫について尋ねた。
 すると日下部はすぐに二人にこう答えた。
「あの場所にはよく行っている」
「ああ、やっぱり幽霊さん絡みだったの」
「テケテケさんの言う通りだったのね」
「あそこが何故開かずの間となっているかというとだ」
 日下部は二人にこのことから話した。
「理由は簡単だ、扉の立て付けが悪くてだ」
「それだけですか?」
「それが開かずの間になっている理由ですか」
「そうだ、それだけだ」
 日下部は拍子抜けした感じになった二人に静かに答えた。
「拍子抜けした様だな、話を聞いて」
「はい、実際に」
「まさかそれだけなんて」
「よくあることだ、開かずの間になった時に当時の校長が話を聞いたがその時丁度卒業式の前だった」
 学校の教師達が最も忙しい時だ、よりによってその時に話を聞いたというのだ。
「話を聞いたがそれどころではなくだ」
「対応しなかったんですか」
「というか聞いても覚えていなかったんですね、当時の校長先生が」
「副校長も教頭もだ」
 学園の責任者達全員がだったというのだ。
「忙し過ぎてな」
「とてもだったんですね」
「聞いても対応出来なかったんですか」
「そういうことだ」
 それで対応が出来なかったというのだ。
「私はこの話をグラウンドで聞いた」
「ああ、あそこですか」
「あの戦前の野球をやってた場所で」
「観戦中に聞いた、その普通科にいる幽霊の人からな」
「それどういう人ですか?」
「普通科の幽霊さんって」
「面白い人だ、何なら今から会いに行くか」
 その普通科に行ってだというのだ。 
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