ソードアート・オンライン ~生きる少年~
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第一章 護れなかった少年
第十一話 夢と予感(前)
前書き
前、後で今回はわけさせていただきます。
『ねえ......誰か助けてよ......』
周りには二人の死体。
それの手前で、少年は顔を覆ってしゃがみ込んでいた。
その顔を覆っている手の片方には......血塗られたナイフ。
少年は何をどうしていいのかわからず、ただうずくまって泣いていた。
そして少年はいつの間にか、中学校の自分の席に座っていた。
目の前の机に刻まれている文字は《人殺し!》。
その上では少年が普段使っていたノートなどがびりびりに引き裂かれ、散らばっている。
黒板を見ると、そこには《人殺しは帰れ!》や《人殺しは死ね!!》等の言葉が踊っている。
そしてまた舞台は変わり、そこには便器が並んでいた。
おそらく、男子便所であろう。
そこでは、少年は殴り倒され、《人殺しヤロー》などと罵られ、ホースの水をかぶせられたり、大便の便器に頭を押しつけられている。
そしてまた舞台が変わる。
周りの風景などから、おそらく学校の屋上であることがわかる。
そして、少年はうずくまっていた。
そこを数人の集団が、蹴りを浴びせたり、上から鉄パイプでむちゃくちゃに叩いている。
そしてついに少年は無理矢理立たされ、制服をめくられる。
そして、筋肉が少しついているひ弱そうな肉体に向かって、数人の中の一人が笑みを浮かべながら、煙草に火をつけ、そして......
「うぁぁぁぁぁっぁぁっぁっぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
叫びながら飛び起きる。
「ハァ......ハァ......」
荒い呼吸を必死に押さえつけようとする。
そして右腕が勝手に枕元にあるはずの薬を探し求め、そこでやっとここがSAO内であることを思い出す。
そして徐々に呼吸が収まっていき......どうにか元に戻った。
「こっちの世界でも夢って見るんだ......」
一人でそうつぶやき、ベッドから立ち上がる。
一瞬フラっとしたが気にせず、朝ご飯を作る。
......適当に簡単なサンドイッチでも......。
そう思いながらアイテム欄などをタップしていき、朝ご飯を作り、さらに水をコップに入れる。
そして、すべてを終え、出来たそれらをテーブルに持っていく。
そして食べ始めるが......
「あれ? 今何時?」
起きたばっかだけど、何となく思った。ので、特に意識していなかった、右上にある時間のところを、視線だけを動かして見る。
現在時刻PM3:30
理解するのに十秒ほどかかった。
......えーっとアルゴさんが言うには4時に広場で開始だから......。
「やばっ!!」
そしてサンドイッチと水を急いで食べ、顔を洗ったりして、ちゃんといつものコートと曲刀を装備して、部屋を出る。
広場に着いたのは四時五分前のことだった。
―☆―☆―☆―
「はーい!それじゃ、五分遅れだけど、そろそろはじめさせてもらいます。みんなもうちょっと前に!......そこ、あと三歩こっち来ようか!」
堂々としゃべるのは装備の各所に金属の鎧を着けた、片手剣使いだった。
とりあえず間に合った......ぽい。
「今日はオレの呼びかけに応じてくれてありがとう!!知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな!!オレは《ディアベル》、職業は気持ち的に《ナイト》やってます!!」
すると、噴水近くに集まっている人たちがどっと沸き、口笛や拍手に混じって「ほんとは《勇者》っていいてーんだろ!」などという声が上がった。
元々SAOに職業などは無いはず何だけど(生産系は職名で呼ばれることがあるらしいが......。
まぁ、別にどういう職を名乗ろうと個人の自由だし、僕が口を出すことは無い。
......早い話が少しどうでもいいわけである。
「さて、こうして最前線で活動している、いわばトッププレイヤーのみんなに集まってもらった理由は言わずもがな何だけど......」
そこで区切り、町並みの彼方にそびえる巨塔――第一層迷宮区指し示し、続けた。
「......今日、オレ達のパーティーがあの塔の最上階に続く階段を発見した。つまり、明日か明後日には、ついにたどり着くってことだ。第一層の......ボス部屋に!」
どよどよ、とプレイヤー達が驚く。
少し僕も驚いていたけど、顔に出るほどじゃない。
まぁ、僕はずっと2,3階らへんでレベル上げしてたんだけどね。
「一ヶ月。ここまで来るのに一ヶ月かかったけど......それでも、オレ達は示さなきゃいけない!ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかクリアできるんだってことを、始まりの街で待ってるみんなに伝えなきゃいけない。それが、今この場所にいるトッププレイヤーの義務なんだ!!そうだろ!みんな!!」
再びの喝采。
今度は噴水の近くにいるプレイヤー達以外の所からも聞こえる。
......にしても凄い人だ。指導者とかそういうのが向いてる人なんだろう。
と、僕も拍手を送ろうとすると、
「ちょお待ってんか、ナイトはん」
そんな低い声が聞こえてきた。
歓声がピタリ、と止まり、前方の人垣が二つに割れた。
そしてその中心に立っていたのは、小柄ながらがっちりとした体格の男だった。
そしてその男は一歩踏み出し、ディアベルの美声とは正反対の濁声で唸った。
「そん前に、こいつだけは言わせてもらわんと仲間ごっこはでけへんな」
唐突な乱入にディアベルは表情を崩さず、逆に歓迎するように手招きをしながら、口を開いた。
「こいつって言うのは誰かな? まぁ、何にせよ意見は大歓迎さ。でも、発言するならいちおう名乗ってもらいたいな」
「......フン」
後書き
......やばい。一層ボス戦で悩み中なう。
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