舞台神聖祝典劇パルジファル
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第二幕その三
第二幕その三
周りの騎士達を見回してだ。そのうえで告げたのだ。
「いいな」
「はい」
「わかりました」
彼等は黒い鎧に灰色のマントであった。外見はモンサルヴァートの騎士達と完全に正反対であった。その彼等がクリングゾルの言葉に応えたのだ。
「それでは」
「今からその若者を」
そして告げる言葉は。
「倒すのだ。いいな」
「はい、それでは」
「今より」
こうして彼等は出陣した。そのうえで城門にいる若者に剣を抜いて向かうのだった。
若者は何故自分が今この城の前にいるのかわからなかった。それでまずは呆然としていた。
「どうしてここに?」
「待て、そこの若者よ」
「何の用だ」
まずは門番の騎士達が彼に問う。
「何故ここに来た」
「言うのだ」
「僕はただここに来た」
こうその暗灰色の壁の前で言うのだった。
「ただそれだけだ」
「それだけだというのか」
「貴様は」
「そう」
こう朧に答えた。
「それだけだ」
「では聞こう」
「この城に入るつもりか」
「入らなければならない気がする」
これも自分ではわかっていなかった。しかしこう言うのであった。
「何があろうとも」
「そうか、それではだ」
「我等はここを通さん」
「クリングゾル様のこの楽園は」
「楽園。そうなのか」
若者はそれを聞いてもやはりわかっていない返答であった。
「ここが」
「入るのか」
「それではだ」
騎士達は彼に剣を向ける。しかし若者もまた剣を抜きだ。彼等を瞬く間に退けてしまったのであった。
「何っ、この男」
「強い!?」
「しかもかなり」
攻撃を受けてからの言葉だった。
「これは何があってもだ」
「通すわけにはいかない」
「待て」
「そこにいたのかっ」
ここで城の中から他の騎士達も現われた。そうしてだった。
それぞれ剣を抜いて若者に襲い掛かる。だが若者はあまりにも強く彼等は退けられるばかりだ。気付けば騎士達は全て傷を負ってしまっていた。
「くっ、何という」
「これは」
「中に入れば」
ここでまた言う若者だった。騎士達は城の中に退いていく。
彼はそれを追うように城の中に入った。するとそこは様々な熱帯植物が豊かにあり紅や緑の花々が極彩色の世界を作っている。そうした場所だった。
アラビアのそれを思わせる城であった。その城の中でだ。彼は呆然とその城の中を見回していた。するとその不思議な園に出て来たのは。
「門から誰か来たわ」
「やけに騒がしかったけれど」
「私のいとしい人達を傷つけたのは」
「貴方だというのね」
その紅や緑の透き通る服の女達が出て来たのであった。そのうえで彼の周りに集まってきて言うのであった。
「貴方が私達のいとしい人を傷つけた」
「その貴方は一体」
「誰だというの?」
「僕は」
若者は彼女達にも要領を得ない返答で返したのだった。
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