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ランブリング!!

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【RB1】
  【RBプロローグ】

 
前書き
気が向いたらゆっくり更新していきます 

 
 四月。

 それは桜の咲く季節でもあり、新たな新年度の始まりでもある季節。

 並木道の木には桜が咲き誇り、風が駆け抜けていくとひらひらと舞い降り――歩く通行人の頭に花びらが落ちる。

 そんな頭に乗った花びらを、鬱陶しそうに頭を振り、無理やり落とす青年。


「けっ……、入学式何てダルすぎだろ…」

「もぅ……。また兄さんはそんな事言って……」


 気だるそうに欠伸をする青年は、気乗りしない足取りで桜並木道を歩き、駅へと向かう。

 その隣には、袖を通した制服があまり似合わないぐらいの幼い顔をした少女が困ったように隣の青年を見上げた。



「……ちっ、お前のその顔、昔から苦手だ……」

「むぅ。そんなこと言っても昔からこの顔なんだから仕方ないじゃない。……可愛い妹なんだから、たまには褒めてもいいのよ、兄さん?」

「けっ……。勝手に言ってろ……バーカ」

「むぅ……」


 軽く舌打ちし、駅へと早足で歩いていく。

 そんな男を『兄さん』と呼んだ少女は頬を膨らませつつも、慌ててその後ろを着いていく――。

 交差点の信号が赤へと変わり、車が行き交う中――初めて見る人はまずその異形の乗り物を見上げるだろう……。

 男が視線を【それ】に移す。

 その異形の乗り物は、車とは違い、脚がついている。

 高さも、三メートル程あり、人の様な手も有り、それはまるで漫画の世界から出てきた様な【ロボット】の形をしていた。


「……『来栖(クルス)』兄さん。ここも、だいぶ【RB】が普及したよね?」

「……別に、今さら珍しい物でもねぇだろ『由加(ユカ)』?【ランブリング】なんざ、その辺の看板でも見るじゃねぇか」


 来栖と呼ばれた青年は、交差点を【歩いていく】ロボットをそのまま眺めるように見、隣の妹に言った。


 来栖が言った通り、街中ではあらゆる場所に【ランブリング】――通称【RB】と呼ばれるロボットは、バスの側面にも宣伝の為か描かれていた。

 電気屋のショーウィンドウにある投影型ディスプレイにも【RB】同士が戦っている姿が映し出されていた。

 その戦いは通称【RBB】――【ランブリングバトル】と何の捻りも無い名称だが、毎日の様にその戦いが行われており、テレビも専門のチャンネルが複数用意されるほど、世界中で人気のバトルだ。


 プロじゃなくてもRBBに参加する事は可能で、参加費不要の【FRBB】――【フリーランブリングバトル】と、競馬のようなクラス分けがされている【ランク戦】とがある。

 そのクラスも、競馬と同じく【GⅢ】【GⅡ】【GⅠ】とあり、どのクラスにも上位に【ランカー】と呼ばれるプロが存在する。

 大抵のランカーは、企業とスポンサー契約をし、自身が操る【RB】にはスポンサーのステッカー等が貼られている。

 FRBBは、参加費不要の【サバイバルランブリングバトル】が主だ。

 最大八機によるサバイバル戦で、RBが戦闘不能になると、直ぐ様新たなRBが参戦――離脱するまでずっと戦うことが出来るプロもアマも関係無くバトルが行えるのが特徴で、勝てば勝つほど――この場合、RBを破壊すればするほど架空のお金である【クレジット】が貰えるというシステムだ。

 因みに、このRBは【ボディモジュール】の破壊は非常に困難であり、内部もパイロットを保護する様に特殊な【エネルギー膜】で覆われているため、死亡事故が0という安全設計となっている。

 だが、それ以外は消耗率も高い。

 特に【アームモジュール】部分は、破損率も高いため完全破壊されると、大人しく新しい【アームモジュール】をクレジットで購入する方が安くすむ。

 ただ、ちゃんとした【RB保険】さえ入っていれば、破損したモジュール分の金額は戻ってくるので余裕がある人は必ず保険に加入している。

 このRBの操縦は実はかなり簡単で、内部の特殊な【エネルギー膜】にRBを、思いのまま操縦する事を可能にする神経に直接機体をリンクさせるシステムがあるため、車の免許を取るよりは遥かに簡単に済む。


 だからといって、車より優れている訳ではない。

 RBは小さい物でも高さは二メートル半程あるため、専用のガレージが無いと一家に一台とはいかない。

 RB専用の駐車場もあるが、月額が高いため此方も余裕がある人でないと難しい。

 気軽にRBを求めると、色々整備面でのコストが掛かり、維持費等でも家計を苦しめるだろう――この辺りは自動車と同様だ。

 だがそれでも、常にRB関連会社は、整備の簡易性を高めるための簡素なアームモジュールやレッグモジュール等の開発を行っている。


「ちっ……。まだ信号変わらねぇのかよ」

「うん……。で、でも、十時からだからまだ時間はあるよっ?」


 兄を宥める様に、由加は気遣うものの只でさえ目付きの悪い兄は、更に眼光鋭くなり、他人が見れば絶対にかかわり合いたくなくなり、喧嘩っ早そうな――俗にいうチンピラみたいな人が見ると、確実に一触即発になりそうな雰囲気を醸し出していた。


 苛々する兄を、ハラハラした様に様子を窺う妹――。

 すると、漸く信号が青へと変わり、ホッと胸を撫で下ろす。


「由加、とっとと行くぞ」

「ま、待ってよ兄さんっ!」


 信号が変わるや、直ぐ様駅へと向かう兄妹――。

 ひらひらと桜の花びらが舞い散る中、片方は面倒とは思いつつも学園生活に少しは期待し、もう片方は兄が面倒を起こさないか、また悪い虫が寄って来ないかを心の中で心配していた。

 そんな四月初頭の出来事。

 まだ二人の学園生活は始まってすらいない物語――。 
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