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舞台神聖祝典劇パルジファル

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第一幕その一


第一幕その一

                 舞台神聖祝典劇  パルジファル
                  第一幕  清らかな愚か者
 深い森の中であった。しかしその中は陰気ではなく厳かな雰囲気の中にある。その中に一人の白銀の鎧と白いマントに身を包んだ年老いた騎士がいた。
 兜で頭を覆っていて顔だけが見える。その顔は皺だらけで髭も真っ白である。目には厳かな光がある。
 その彼がだ。己の傍にいる二人の小姓達に尋ねるのだった。それは低い声であった。
「朝が来たが」
「はい」
「また朝が」
「それでは御水浴場を見てきてくれ」
 朝になったのを確かめてからの言葉であった。
「いいな、王が来られる前にだ」
「わかりました、ではすぐに」
「今から」
「もう寝台輿の先駆が見えてきた」
 見ればであった。森の奥から彼と同じ姿の騎士達がやって来ていた。老騎士は彼等を見ながら話すのであった。
「すぐにな」
「はい」
 小姓達は彼の言葉に従いその場を後にした。彼等と入れ替わりに二人の騎士が来た。老騎士は彼等に対して問うのだった。
「アムフォルタス王はどんな御様子だ」
 そしてさらに言うのであった。
「早朝から御水浴とはあの女の薬草が痛みを和らげたのだな」
「いえ、グルネマンツ様」
「それが」
 騎士達は晴れない顔で彼の言葉に応えた。
「傷口が激しく痛まれた為」
「その為に一睡もできず」
 こう話すのだった。
「それで是非御水浴をと」
「そう仰いまして」
「そうか」
 グルネマンツはそれを聞いてまずは辛い顔になった。
「やはりな」
「残念ですが」
「やはりあの傷は」
「わかっておる」
 グルネマンツは目を閉じ首を横に振って述べた。
「あの傷を癒す方法は一つしかないのだ。どんな薬草でも水薬でもだ」
「効き目はありません」
「では」
「何はともあれだ」
 グルネマンツはここでは答えなかった。その代わりに言うのだった。
「御水浴だ」
「わかりました」
「それでは」
 騎士達も彼の言葉に応える。しかしここで小姓達が戻って来てだ。グルネマンツに対してあることを告げてきたのであった。それは。
「グルネマンツ様」
「あの女が戻りました」
「クンドリーがです」
「そうか」
 グルネマンツはそれを聞いて静かに頷いた。すると黒いぼろぼろの服に伸ばし放題の乱れた黒髪の女がやって来た。裸足で化粧気もなくまさに野生だ。その女が来たのだ。
 顔は整っている。黒い目の光は強く全体的に妖艶ですらある。だがその姿はまさに獣であった、。顔色は朱を帯びた褐色で服の帯は蛇の皮だ。服はくるぶしの裾の辺りが乱れて破れている。
 その女がグルネマンツの前に来てだ。言うのであった。
「持って来ました」
「これをか」
「はい、バルザムです」
 こう告げて彼にその水晶の容器を差し出すのであった。
「どうか」
「これは何処にあったのだ?」
「想像もつかない遠方からです」
 その強い光を放つ目と共に言うのだった。
「そこからです」
「また持って来てくれたのだな」
「これ以上の薬はもう何処にもありません」
 女はこうまで言った。
「ですがまだご所望なら」
「いや、今はいい」
 グルネマンツはこう女に告げた。
「クンドリーよ」
「はい」
「今は休むのだ」
 そして名前も呼んでみせたのだった。
 
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