こぶたのまき5
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こぶたのまき5
次の日、学校に向かう途中のことだった。何かに突き落とされた感覚があった。
うっすら聞こえる笑い声。あぁ私はその笑ってる人たちに突き落とされたんだね。河川敷から落とされたんだ。川に落とされたんだ。
目が覚めたら私は病院にいた。時刻は午後8時を回っていた。
「りなちゃん!!」
私の目が覚めたことに気づき声をかけてきたのは美咲先生だった。美咲先生はナースコールをした。
私は少し体に痛みを訴えた。数分後、先生が来た。回復したのが奇跡だと言われた。
美咲先生に聞くと、偶然あの河川敷を通りかかった時に私が川でおぼれているのを見かけたらしい。
時間は午前8時過ぎだという。川から引きあげて声をかけても応答はなく救急搬送した。搬送されて5時間経っても意識が戻らず美咲先生が医師に言うと医師は「大分危険な状態にいます。もしかしたら
意識が戻らないかもしれないから覚悟してくれ」と言ったそうだ。美咲先生は大学をわざわざ休んで
私に付き添ってくれていた。申し訳ないことをしちゃったな。目を腫らした美咲先生。泣いていたのかな。
「りなちゃん」
と小さく声がかかった。菜由佳だ。菜由佳も来てくれてたんだ。
「美咲先生……菜由佳……来てくれたんだ。ありがとう。ごめんね」
私は言った。
「何言ってんの。よかったぁ、意識が戻ってくれてほんとによかったぁ。あ、無理して起きたらだめ」
体を起こそうとすると美咲先生は止めて寝かせた。
「りなちゃん、誰がやったか覚えてない?」
菜由佳が聞いた。あの声はきっと6年生2人と同級生3人だっただろう。私は菜由佳に彼らの名前を言った。
そして
「やっぱり」と菜由佳は呟いた。
やっぱり?その反応からして菜由佳は何かを知っている可能性が高い。
「私、見たんだ」
と菜由佳はぽつりと言った。菜由佳によると、菜由佳が登校中6年2人と同級生3人組を見たらしい。
彼らの会話が不審に思い考えていたという。「あいつ、ほんとに大丈夫か?」「死ぬんじゃね?」
「ばれたらやばいんじゃないの?」「やりすぎじゃなかった?」などの会話だったという。
その時はわからなかったらしい。だって、あの橋を越えていたから。そして学校について朝会を始めるとき先生が「秋山さんが川でおぼれて、今救急搬送されました。意識不明だということです。何か知っている人がいれば教えてください」とみんなに報告した。その時その同級生3人の顔が蒼くなってなにか慌ててる
ような感じだったという。そして昼休み。「聞いたか、ヤバいことになってないか?」「いいよ、あいつは別にいなくても。悲しむ奴はいないだろ」という会話を聞いた。そして菜由佳は確信したという。私を突き落とした人はこの人たちに違いないって。で、この様だという。
「許せないよ。りなちゃんは何も悪くないのに何でこんなことするのかな。死にかけたのに」
「ほんと、許せません」
など美咲先生と菜由佳が口々に言いだした。私はとっても嬉しかった。今までこういうことを言ってもらったことがないからとても嬉しかった。大事にされてるんだなぁって思った。
ガラッっと病室のドアが開いた。担任の先生と、父と……後ろにはあの人たちがいた。私はヒヤッとした。
父は彼らに何かをしなかっただろうかという心配、どこまで聞いたんだろうかという疑問。
彼らを見ると傷跡があった。やっぱり……父に殴られたんだろうか。
「りな、こいつらだな」
父は私の前に彼らを突き出した。うんと言って解決すべきか、違うと言って彼らをかばうか。うんと言ったらまた何か学校でお前言っただろみたいな面倒なことが起きちゃいそうで……。だけど、彼らには傷跡がある。
「ねぇ、お父さん。この人たちに何かした?」
「あぁ。担任から連絡入ってな、学校に向かったらこいつらがいて、担任と俺の前で俺たちがやりましたっていうから。腹立ってな。大事な娘をこいつらに殺されかけたことが。だから1人ずつ2,3発殴ってやった」
彼らの顔を見ると引いたような顔でこちらを見ていた。まぁ無理もないだろう。だってうちの父は声も体もやることも大きいからね。
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