友人フリッツ
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第一幕その四
第一幕その四
「四十にして」
「ようやく」
「それはないね。絶対にね」
フリッツは笑ってそれは有り得ないとした。
「何があってもね」
「果たしてそうかな。まあいいさ」
しかしダヴィッドは今は席を立ったのだった。そうして彼が書いていたその二百歳になったら返済するという契約書を持って席を立つ。
そのうえで。フリッツ達に今は暇乞いをするのだった。
「それじゃあこれを二人に手渡して来るから」
「うん、頼むよ」
「任せておいてくれ給え」
今は去るダヴィッドだった。残ったフリッツ達はカテリーナが用意したその昼食をワインで乾杯する。暫くは楽しく酒と食事を楽しんだ。
「いや、美味いね」
「全く」
二人の客人は上機嫌でフリッツの家の昼食を楽しんでいた。
「君の家の食事は何時でも」
「最高だよ」
「楽しんでくれているかな」
フリッツはズッキーニと大蒜やピーマン、それにオニオン等をくたくたになるまで煮たものを食べながら応えていた。他には鶏肉を焼いたものにジャガイモ、それとパンが置かれている。エスカルゴもある。
「今日も」
「うん、見た通りね」
「こうしてね」
ワインは赤だった。それも楽しく飲んでいる。
「フランスになってもドイツになっても」
「こうやって楽しく過ごせる」
「全て君のおかげだよ」
「僕のおかげじゃないよ」
フリッツはまた謙遜して述べた。
「神の思し召しだよ」
「それでかい」
「それでこんなに楽しいのかい」
「そうさ」
まさにそれだというのである。
「だから神に感謝して」
「楽しく明るくだね」
「この幸福を」
こんな話をしているとだった。カテリーナが来た。そうしてフリッツに対して声をかけてきた。
「旦那様」
「んっ、何だい?」
「お客様です」
こう彼に告げるのだった。
「宜しいでしょうか」
「ああ、いいよ」
フリッツはまたしても気さくに言葉を返した。
「それで誰かな」
「スーゼルさんですが」
「ああ、あの娘なんだ」
スーゼルの名前を聞いても笑顔になるフリッツだった。
「じゃあ通して。一緒に食事でもどうかって」
「わかりました」
主のその言葉に応えてだった。カテリーナは黒髪を頭の後ろで団子にした小柄な少女を連れて来た。青い服とスカートで白いエプロンが映える。顔はやや丸く鼻もあまり高くはない。しかし初々しい顔立ちで垂れ目気味の黒い目に大きめの口元が印象的だ。何処かアジア系の顔立ちである。
「やあ、スーゼル」
「はい、旦那様」
その少女スーゼルはまず彼をこう呼んできた。
「お誕生日おめでとうございます」
「旦那様なんていいよ」
フリッツは席を立った。そのうえで彼女のところに来て笑顔で告げた。
「そんなね」
「宜しいのですか」
「ただ君の家に家を貸しているだけじゃないか」
彼女はフリッツの借地に住んでいる家の娘なのである。
「それだけなのに」
「いいんですか」
「そうだよ。そんなことで何で旦那様なんて言うんだい?」
ここで部屋に残って側に立っているカテリーナに対しても言った。
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