ビビッド“ダ・ガーン”オペレーション
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第1話 勇者復活
黒騎れいはどこにでも居る普通の中学生だ。ただ一つ、異世界へ行った事があるのと銃器をある程度扱えるのを除けば。
数ヶ月前、れいの世界は新世代エネルギー機関“示現エンジン”の暴走で壊滅した。そこでただ一人生き残ってしまった彼女は『始まりと終わりに存在するもの』の使いを名乗る一羽のカラスから取引を持ち掛けられる。
消滅したれいの世界を蘇らせて欲しければ、別の世界の示現エンジンを破壊しろと。
れいはその取引に応じた。そして、カラスに与えられた力で“アローン”と呼ばれる怪物を強化し、示現エンジンを破壊しようとした。だが、その世界で出会った少女“一色あかね”との出会いが彼女を変える。しだいにれいは自分のやっている事が正しいのか疑うようになっていった。
そして、れいはついにその世界の軍に捕まってしまう。だが、あかねの祖父でその世界の示現エンジンの開発者である“一色健次郎”によって殺されることだけはまぬがれた。本来なら、それによってあかね達の世界は『始まりと終わりに存在するもの』による“試練”をクリアした事になるハズだった。だが、その末端たるカラスが暴走。れいに与えられた力を彼女ごと取り込み、その力で示現エンジンを破壊し世界を壊滅させようとする。
だが、あかねとその友達らの活躍でれいは救出され、カラスは倒された。そして、『始まりと終わりに存在するもの』はあかね達の世界が存在し続けるのを認め、れいの世界を蘇らせると彼女を元の世界へと返したのであった。だが・・・新たな危機がれいの世界を脅かそうとしていた。
地球から遠く離れた月の近くの宙域。そこを一隻の宇宙戦艦が航行していた。銀色の船体を持つ巨大なマスケット銃の形をした戦艦だ。その引き金の直上にあるブリッジの艦長席に一人の女性が座っていた。金色の髪をドリルのようにロールにした美しい女性だ。顔は少々童顔であるが、その胸は豊満で色気を放っている。
「ももいろさん、あかいろさん。」
女性がそう呼ぶと、彼女の後ろから二つの影が現れる。メイド服を着た二人の少女だ。片方は桃色の髪をツインテールにし、もう片方は赤色の髪をポニーテールにしている。
「お呼びですか。」
「キャンデロロ様。」
出て来た二人が女性…キャンデロロに問いかける。
「紅茶を淹れてちょうだい。」
「了解」
「しました。」
二人はキャンデロロの命令を受理すると、再び後ろへと引っ込んだ。そして、三十秒足らずで紅茶とミルクと砂糖を持って再び出て来る。
「ありがとう。」
キャンデロロは紅茶を受け取ると、そこにひとさじの砂糖をミルクを入れ、眼前に映る地球を見ながら飲み始めた。その表情はひたすらに穏やかである。
「きれいな惑星(ほし)ね。命で満ち溢れているわ。でも・・・だからこそ可哀想。」
だが、直ぐにその笑みには狂気が現れた。
「生きるという不幸から私たちが救済してあげないといけないわ。でも、そのためには邪魔な存在を何とかしないと。」
キャンデロロは“この宇宙”で手に入れた情報を思い出していた。
かつて、生命のある星々を荒らし回っていたオーボス軍。それがこの惑星で壊滅した。それだけの物がこの惑星にはあるのだろう。
「さあ、リチェルカさん。貴方の出番よ。」
キャンデロロがそう命じると、艦首の銃口から何かが発射された。それは、真っ直ぐに地球へと向かって行く。
《地球防衛機構軍オーストラリア本部・衛星軌道監視室》
地球防衛機構軍。
地球の平和を守るために組織された軍隊だ。数十年前、“オーボス軍”という宇宙からの侵略者との戦いを経験した彼らは、再度の宇宙から侵略者に対抗すべく、地球の衛星軌道上に監視網を敷いていた。そして、数十年という時を経て再び地球へと脅威が迫る。
「軌道上に宇宙船らしき物体が現れました!!」
「そうか。」
オペレーターが報告を行うが、ここの司令官らしき人物は慌てる事なく冷静な対応をする。
「まだオーボス軍のような敵とは限らない。友好的な宇宙人かもしれんから、調査するよう空軍に通達しろ。」
「はっ!」
監視室からの知らせを受け、空軍から2機の戦闘機がスクランブル発進した。戦闘機はそのまま飛行物体と接触する。黄色い円盤状の機体だった。
「そこの飛行物体!こちらの誘導に従い着陸しなさい!!」
直ぐにパイロットは飛行物体へ警告を行った。そして、その答えは・・・ロボットへと変形する事だった。
「何!?」
パイロットが驚いている隙に、ロボットは左腕のウエポンラックから右手で拳銃を取り出す。そして、銃を構え妖しく光る単眼で戦闘機のうち1機に狙いを定めると引き金を引いた。銃口からは実体弾ではなくビームが発射され、容赦無く機体を撃ち抜く。
「司令室!飛行物体はロボットへ変形し我々に敵対行動を取った!!これより攻撃する!!」
それを見たもう1機は基地へ通信で報告し、ロボットをミサイルを発射する。だが、効果は無く逆に先程の機体と同じように撃墜されてしまった。
緑が浜。
綺麗な海があるのと新幹線の線路が通っているのを除けば何処にでもある普通の町だ。
「れい!早くしないと遅刻するぞ!!」
一人の少女がとある家の扉をノックしていた。緑がかった黒髪と尖った耳が特徴だ。彼女は“桜小路芽衣”。ワイルダー星人と地球人のハーフである。
芽衣は今、幼馴染の“黒騎れい”の家の前で彼女を待っていた。
「ごめん、お待たせ。」
すると、れいは学校の制服であるセーラー服姿で出て来た。
「全く、早くしないと私まで一緒に遅刻じゃないか。」
「確かに、風紀委員長が遅刻は格好がつかないわね。」
「そう思うならさっさとしろ!」
そんな会話をしながら、二人は学校へと出発した。そして、その道中。
「おーい!何してんだよ!!遅刻すんぞ!!!」
一人の少女が合流してきた。いかにも今時の女子中学生と言う感じの短いスカートに派手なヘアアクセの少女だ。二人の幼馴染の“高杉星矢”である。
「星矢!またそんなスカートを短くして!!」
すると、芽衣が星矢の服装を見て注意した。彼女とれいのスカートが膝くらいの長さなのに対し、星矢のスカートは太ももの半ばまでしか無い。
「いいじゃん、可愛いんだからさ。」
「良くない!そんなハレンチな格好をしてどうとも思わないのか!!」
「ハレンチって、そんな大袈裟な。」
そんな二人の会話を聞いてれいは考える。
(芽衣が新大島学園の制服を見たら何て言うんだろう・・・)
新大島学園の女子の制服の下は何故かスカートではなくお尻のラインがくっきりと浮き出るブルマのようなズボンだった。あの頃は自分の世界を取り戻すのに精一杯だったので気にしなかったが、今思うと恥ずかしい。一応、制服は自分の部屋にとってあるがもう一度着ろと言われてもそれなりの勇気が居るだろう。そう考えながらふと近くの公園にある時計を見てみると・・・
「って、もう時間が無い!!!」
時間はギリギリどころか走っても間に合わないほどになっていた。
「何だと!?」
「芽衣が口うるさいせいで!!」
れいの叫びを聞いて驚く芽衣に星矢が文句を言う。
「どう言う意味だ!」
「も、もうだめよ・・・おしまいよ・・・」
芽衣が星矢に反論する中、れいはかなり慌てている。彼女の担任教師は一言で言うと“鬼”だからだ。
「仕方ねえな。着いて来い。」
すると、星矢がいつもと違う方向に向かって走り出した。
「え?もしかして近道を知っているの?」
「ああ。父さんに教えてもらったんだ。少し、罰当たりな気はすっけどな。」
「罰当たり?」
星矢の言う意味が分からず、れいは首を傾げる。
「背に腹は変えられないわ。案内して。」
一方で、芽衣の方は特に何も気にする事は無く彼女に着いて行く。
「あ、待って!」
それを見たれいは慌てて二人を追った。
《地球防衛機構軍・日本支部》
「ダメです!航空部隊、全滅しました!!」
「途轍もないスピードで日本に向かっています!!」
「避難勧告を出せ!!」
「今からでは住人の避難が間に合いません!!」
指令室内が騒然とする中、ここに所属する軍人“高杉星史大佐”は考えていた。
(再び、彼らが必要とされる時が来てしまったのか?)
かつて“勇者”達の指揮官として戦った彼は、これはオーボス軍の侵攻以来の人類の危機では無いかと考えていた。
「推定ルート、出ました!!」
その時、オペレーターの一人が飛行物体の推定飛行ルートの計算結果を告げる。
「奴の目的地は・・・エリア357です!」
「何だと!?」
それを聞いた星史は確信した。これはオーボス軍級の脅威だと。エリア357。そこはプラネットエナジー解放点の一つであると同時に・・・かつての戦友“ダ・ガーン”の眠る“緑が浜”を含んでいたからだ。
「ここは頼む!」
星史は指令室を副官に任せると、ある場所へ向かった。
星史が向かった場所。それは、基地内にあるガレージの一つだ。彼はシャッターを開けて中に入る。そこにあったには・・・一台のパトカーだった。スポーツカーがベースで、カラーリングは白黒ではなく白と青で、ボンネットには黄色い六芒星が描かれている。星史はそれに乗り込むと、エンジンをかけて緑が浜へと出発した。
一方、こちらは学校へと向かうれい達。彼女達は星矢の案内である場所の中を通過していた。そこは・・・
「まさかお寺の中を突っ切る事になるなんて・・・」
そう。れいの言うとおりここは寺の敷地内だ。厳光寺という名前で、奈良時代からある由緒正しい寺である。それゆえか敷地はかなり広く、高台の上に立っている。
こんな所を近道に使っても大丈夫なのだろうか。そうれいが考えた時だった。
「ちょっとストップ!」
突然、本堂の前で芽衣が止まった。
「おい、何してんだよ!!遅刻すんぞ!!!」
「うるさいわね!やる事があるの!!」
止まった芽衣に対し星矢が文句うが、芽衣はそのまま本堂の前で手を合わせて拝み始める。
「だから何してんだよ!!」
「中を通らせてもらっているんだ。拝んでおかなければバチが当たるだろう!」
文句を言う星矢に芽衣はこう答えた。
「じゃあ、私もやっておこうかな?」
すると、れいもそれに便乗して拝み始めた。
「だから!んな事してら近道の意味が無いだろうが!!」
それを見た星矢はしびれを切らし、二人の腕を掴んで引きずって行く。そして、出口の門に差し掛かったとき・・・
「っ!?」
芽衣が何かを感じた。
「お、おい!どうしたんだ!?」
それを見た星矢は驚いて彼女に尋ねる。芽衣がこうなった時は大抵何かを感じ取った時だからだ。
「何か…来る。恐ろしいものが…」
「お、おい。そう言う事言うなよ。お前が言うとシャレになんないからさ。」
芽衣の口から出た言葉に星矢が不安になりながら言った時だった。門から見える山の向こうで何かが光った。
「え?」
突然の出来事に、三人は互いに目を見合わせた。すると・・・山の向こうから黄色い円盤が飛んできた。
その頃、星矢はパトカーでをサイレンを鳴らしながら緑が浜を走っていた。すると、指令室がら無線による通信が届く。
『大佐!大変です!!』
「どうした!」
『敵がとうとう緑が浜に到達しました!!!』
「何!?」
それを聞いた星史はパトカーのスピードをさらに上げた。
「頼む、間に合ってくれ!」
パトカーは猛スピードで緑が浜を突っ走って行く。星史の向かう先、それはダ・ガーンの眠る厳光寺だった。
再び、ここは厳光寺。
「な、何だよあれ!?」
謎の円盤を見た星矢が思わず叫ぶ。すると、円盤はロボットへと変形し、街中に着地した。
「あれって、まさかオーボス軍!?」
「な、何言ってんだよ、れい。オーボス軍は何十年も前にあたしの親父がぶっ潰しただろ?」
それを見たれいが叫ぶと、星矢が震えながらも否定する。だが・・・
「地球が・・・助けを呼んでいる・・・」
芽衣がそう呟いたのを聞いて固まった。
そして、ロボットは街で銃を乱射し始める。
「さあ、出てきなさい。伝説の勇者さん。」
キャンデロロは母艦でリチェルカのメインカメラを介して戦場の様子を見ていた。だが、今の所やって来るのは防衛機構軍の戦闘機だけである。
「中々出て来ないわね・・・リチェルカさん。今度は遠くの方を攻撃してちょうだい。」
「早く!ひとまず寺の中に逃げんぞ!!!」
ロボットが街で暴れ出したのを見て、三人は一瞬固まってしまった。だが、星矢が一足先に正気に戻りれいと芽衣の二人を引っ張って寺へと逃げ込む。だが、その時・・・ロボットが厳光寺へ向けてビームを放った。
「「「きゃあああああああああああああ!!!」」」
三人はその爆風で吹き飛ばされてしまう。
「あれは!!」
パトカーで厳光寺まであと少しという所まで来ていた星史は、ビームが寺の境内に着弾するのを見てしまった。
(せめて“勇者の石”だけでも無事でいてくれ!!)
そう願いながら、彼は厳光寺への道を急ぐのであった。
「うっ・・・」
れいは厳光寺の境内の地面の上で目を覚ます。どうやら、爆風に吹き飛ばされた際気絶してしまったようだ。
「そうよ!二人は!?」
そこで、親友二人が居ない事に気付く。辺りを見渡してみると星矢の方は近くで気絶していたが・・・芽衣は木の柱の下敷きになっていた。
「芽衣!!」
れいは慌てて芽衣の方に駆け寄るが意識は無い。柱を退かそうとするが、れい一人の力ではどうにも出来ない。
「星矢!起きて!!芽衣が大変なの!!!」
れいは次に星矢に駆け寄って彼女の体を揺すった。すると、か星矢は目を覚ます。
「ぐっ、何だよ。身体中が痛え・・・」
「そんな事を言ってる場合じゃないよ!芽衣が!!!」
「芽衣がどうしたんだ?」
「あれ!!!」
「なっ!?」
れいが指差した方向を見て、星矢は驚愕する。
「芽衣!!!」
だが、直ぐに立ち上がると芽衣に駆け寄り、彼女を上から押しつぶす柱を退かそうと手をかけた。
「れい!お前はそっちを持て!!!」
「うん!」
当然、れいも星矢に手を貸す。
「これは酷い・・・」
厳光寺に到着した星史は、パトカーの車内から寺の惨状を見てそう呟いた。その時・・・
「れい!お前はそっちを持て!!!」
境内から声が響いた。
「この声は!?」
それを聞いた星史はパトカーから降り、寺の階段を駆け上がる。そこで彼が見たのは・・・柱の下敷きになる友人の娘の芽衣と、それを助けようとする自分の娘とその友人であるれいだった。
「星矢!!!」
星史は直ぐに娘の元へ駆け寄った。
「親父!何でここに!?」
「星史さん!?」
「今はそれどころでは無いだろう!」
それを見た二人が驚くが、星史はそれに構わず、芽衣の上からのしかかる柱に手をかけた。
「俺と星矢で柱を持ち上げる。れい君はその間に彼女を引っ張り出してくれ。」
「わ、わかりました!」
「星矢!いちにのさんで持ち上げるぞ!」
「オッケーだ!」
「「いちにのさんっ!!」」
星史と星矢が力を込めると、柱は少し持ち上がった。その間にれいが芽衣を引っ張り出す。
「よし!」
救出が完了すると、星史は柱を下ろし、芽衣を抱き上げた。
「さあ、避難するんだ。付いて来い!」
そう言って星史は二人を先導しようとする。だが、その時・・・れいの頭に声が響いた。
「どうした、れい?」
急に立ち止まったれいを見て星矢が不思議そうに言う。だが、次の瞬間・・・境内の地面の一部が丸を描いて光り出した。
「あれはまさか!」
星史はそれに見覚えがあった。彼が小学生だった頃、勇者達の隊長に選ばれた時に見た物と同じである。
「え?急に来いって言われても・・・」
すると、れいの頭の中に再び声が響いた。
「れい君!君の頭の中で声が聞こえるのかい!?」
れいの様子を見た星史が叫ぶ。すると、れいはタジタジしながらも答えた。
「た、確かにそうですけど・・・」
「なら、あそこに入るんだ!」
れいの答えを聞いた星史は、光る地面を指差しながら叫ぶ。
「でも、何で・・・」
「説明している暇は無い!あそこに入れば分かる!!」
「は、はい!!!」
星史の気迫に押され、れいは光る地面の上へと足を踏み入れる。すると・・・
「きゃっ!?」
彼女の体は光る玉に包まれ、地面に潜って行った。
「れい!!」
それを見た星矢は思わず叫ぶ。そして、星史を問い詰めた。
「親父!どうなってんだよ!!」
「・・・彼女は選ばれたんだ。地球の意思“オーリン”によって。」
「オーリン!?って事はまさか!?」
「ああ。彼女が新たな勇者達の“隊長”だ。」
深い地面の底へと、れいは案内された。
「ここは・・・っ!?」
そこで、再びあの声が聞こえる。声のした方向を見ると、そこには水滴のような形をした黄金に輝く物体があった。その物体はれいの頭の中に直接語りかける。
「え・・・地球が危ない?」
さらに物体はれいへ語りかける。
「君に、力を託す。私の・・・地球に住む全ての命ために戦ってくれ?あなた、何者なの!?」
れいが尋ねると、物体は自分の名を名乗った。
「オーリン…?それってまさか!星史さんの言っていた地球の意思!?」
物体…オーリンはそれを肯定する。
「という事は、私をあのロボット達の隊長に任命するって事!?」
そうだ。と、オーリンは言う。
「でも、どうして私が・・・」
れいが疑問をぶつけると、オーリンはそれに答えた。
「君が・・・この地球のために頑張ってくれたから・・・それって!?」
オーリンが言うのは、おそらくれいが異世界に行った時の事だろう。
「私は、そんな資格のある人間じゃ無いわ。向こうの世界の人達に一杯迷惑をかけてしまった。」
れいはそう。自嘲する。だが、オーリンはそれを否定した。
「でも・・・君のこの世界に対する想いは本物だ。君は、どうしたい・・・」
オーリンの問にれいは少し考える。だが、答えは直ぐに出た。
「せっかく取り戻した世界をめちゃくちゃにされるなんて嫌。だからお願いオーリン。私に力を貸して!」
そして、れいはオーリンを手に取った。
「きゃっ!?」
その瞬間、オーリンから凄まじい光が発せられる。
光が収まると、れいは再び厳光寺の境内に戻って来ていた。
「今のは、一体・・・」
一瞬、れいは夢かと思った。だが、右手に握られたオーリンがそうでない事を示している。
「れい!!」
その時、星矢と芽衣を抱きかかえた星史が駆け寄って来た。
「やはり、君が隊長に選ばれたのだな。」
れいの手に握られているオーリンを見て星史が言う。
「さあ、早くそれを本堂へ向けて掲げるんだ!!」
「はい!」
星史の言うとおり、れいはオーリンを厳光寺の本堂へ向けて掲げた。すると、オーリンから光が伸びて本堂の中へ入り、そのまま本尊である仏像の額に吸い込まれて行く。そして、そこへ埋め込まれていた勇者の石が分離した。勇者の石はそのまま本堂の外へと飛んで行き、厳光寺の星史が外に止めておいたパトカーと融合する。すると、パトカーは独りでに動き出し、寺の階段を登り上がってジャンプすると境内に居るれいの目の前に着地した。
「これって、一体・・・」
「まあ、見ていろ。」
困惑するれいに星史が言う。すると、パトカーが変形を始めた。車体前部が展開し脚部となり、ドアの部分が腕となる。そして、車体後部が二つに割れて肩になると、その間から頭が飛び出す。うつ伏せになる形で完全に人型となったパトカーはその場で立ち上がり、れい達の方を向いた。
「これが・・・」
「そう。“ダ・ガーン”だ。」
ロボットの姿を見たれいが思わず呟くと、星史がそれに答えた。
「久しぶりだな、ダ・ガーン。」
そして、彼はダ・ガーンに話しかける。
「君は・・・星史なのか?」
「覚えていてくれたか。」
「ああ、もちろんだ。」
再会を喜ぶ二人。だが、星史達の後ろで爆音が響いた。
「もう少し再会の喜びを共有したい所だが、今は時間が無い。」
「そのようだ。」
星史がそう言うと、ダ・ガーンは遠くで暴れているロボットを見て答える。すると、ロボットはダ・ガーンの存在に気付いたようで、こちらに向かって来た。
「では隊長、命令を。」
それを確認した彼はれいに命令を求めた。
「さあ、早く。」
星史も彼女にダ・ガーンへ命令を出すよう催促する。
「分かったわ。ダ・ガーン!あいつを倒して!!」
「了解!!」
そして、れいがロボットを指差しながら命令すると、ダ・ガーンは出撃した。
「ダ・ガーンナパーム!!」
ダ・ガーンまず牽制として、胸に内蔵された三発のミサイルを発射する。すると、敵は手に持った拳銃でその全てを撃ち落とした。
「ダ・ガーンボンバー!!」
だが、ダ・ガーンはその爆煙に紛れて両肩に着いたタイヤを投げつける。タイヤは直撃し、敵のバランスを崩した。
「今だ!ダ・ガーンマグナム!!」
その隙にダ・ガーンは右脚に収納された拳銃“ダ・ガーンマグナム”を取り出し、敵に向かって発砲する。発射されたビームは見事に敵の胴体を貫いた。そして、おそらく中枢を破壊された敵ロボットはその場で爆発した。
「あれが伝説の勇者ね。」
リチェルカのメインカメラを介して戦闘の様子を見ていたキャンデロロはそう呟いた。
「ももいろさん、あかいろさん。データはとれた?」
「はい。」
「奴を倒す事の出来る機体を生み出すには十分です。」
「そう。なら、早速始めてちょうだい。」
そう言うとキャンデロロはモニターに映されたダ・ガーンの静止画を再び見る。
「伝説の勇者さん。貴方は一足先に私が“救済”してあげるわ。」
続く
後書き
《次回予告》
まさか私がロボット達の隊長に選ばれるなんて・・・でも、せっかく取り戻した世界を壊させる訳にはいかない。そのためなら、隊長だって何だってやって見せる!
次回・ビビッド『ダ・ガーン』オペレーション
隊長になった少女
隊長は、私!
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