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ハイスクールD×D 千変万化の男

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先達

霧也は他人事のように流れる景色を見ていた。
宛ら激流に揉まれる小舟のように、次々に浮かんでは消える景色の波を渡って行く。
次第に緩やかな流れになり、終わりが近い事を霧也に伝える。
ふと、自分以外の気配を感じ、その場所に視線を向ける。
そこに居たのはいつかみたパチンコ台から出て来たおっさんだった。

「やぁ、ようやくここまで来たね。」

フランクに語りかけるおっさん。
霧也は何のことだがサッパリわからない。
それに構わずおっさんの話は続く。

「まぁ、今は分からなくていい。少し長いが聴いてくれ。」

霧也は頷く。
おっさんはニッコリ笑うと何処からかホワイトボードを取り出し、説明を始める。

「まず、君についてだ。君はこの世界の人間じゃあない。僕等は君達を欠陥者と呼んでいる。そもそも欠陥者とは、その世界の異物を指す言葉でね。原作の物語を歪める存在なのですよ。まあ、よく二次創作にありがちな…転生者ってヤツだよ。」

ここまでで質問はない?と聞きながらおっさんは手に持ったマジックペンをホワイトボードに走らせる。
ひと段落着いたのか、マジックペンを置くとおっさんは振り向く。

「ご覧の通り、かの世界には君以外に欠陥者がたくさんいる。」

「あの、つまり…?」

「おっと、結論を急ぐのは感心しないなぁ…いま、かの世界は混沌としている。本来あり得ない世界の理の能力を使う欠陥者によってね。例えば他のアニメや漫画の能力とかを使うね。まぁ、僕は本来そういうのを駆除するのが仕事なんだけどね。」

ため息を吐きながらおっさんは肩を竦める。
何処か疲れた様子のその姿はさながら娘に嫌われてるお父さんみたいな哀愁漂うモノだった。
気を取り直す様に、おっさんは顔を振ると此方に向き直る。
少しの間を置いて、霧也に告げる。

「まぁ、つまり…君にはその欠陥者を間引いてほしいのさ。其の為に君には僕の能力の一部を渡してある。」

おっさんの言葉に霧也は首を横に振る。
どう考えても無理である。
と、彼は結論を下しているのだ。
そもそも何故自分なのか?他にいるならそいつに任せればいい。
そんな考えを見透かした様におっさんは霧也の肩に手を置く。

「因みに君には拒否権はないよ?何故なら君は唯一、この僕が定めた転生条件を満たした人間なんだから。」

おっさんが笑いながら告げた瞬間、周りの景色が歪み出す。

「おっと、もう時間かい?まぁ、よろしく頼んだよ。能力につ…は自分で……ら頑張ってね……君の…ょくは…だ…。」

やぐらぐらと視界が揺れる。
激しい耳鳴りでおっさんが何を言ってるのかも上手く聴き取れない。
視界が廻る。
込み上げる嘔吐感を抑え、ゆっくりと暗転する視界の端でおっさんが笑みを浮かべていた。 
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