ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
五十五話:初めての美女タイム
予定通りヨシュアさんとマリアさんが来てくれたとは言え、知ってました的な雰囲気を匂わせて今さら不審がられてる場合では無いので、なに食わぬ顔で応対します。
「ああ、マリアさん。大事に至らなかったようで、良かった」
お茶を濁すためとは言え、きちんと観察した上での一言です。
服の上から見た限りですが、ちゃんとキレイに治療してもらえたようで、本当に良かった!
「ありがとうございます。ドーラさんたちのお蔭です」
ほんのり頬を赤らめて、私に向かって言うマリアさん。
私に向かって。
……ああ。
これはこれで嬉しいけど、ダメだこれは。
立たなかった、ヘンリーとのフラグが。
ちっ、あの甲斐性無しが!
いいもん、もう普通にマリアさんと、仲良くなっちゃうもん!
「当然のことをしたまでです。それより、どうしました?教団の偉い方が、奴隷を連れて奴隷に、何の用です?」
前半はマリアさんに向けて、爽やかな笑顔付きで!
後半はヨシュアさんに向けて、僅かに警戒心を滲ませて言ってみます。
マリアさんのぽーっとした様子に確かな手応えを感じつつ、真面目な顔でヨシュアさんに向き直る私。
ヨシュアさんが、苦笑しながら答えます。
「そう、警戒しないでくれ。君たちにも悪い話じゃない。ここから、出たいんだろう?」
「……出たくない奴隷が、いると思いますか?」
「それは、いないだろうが。君たちほど、真剣にそう考えている者は、いない」
ふむ。
そこに気付くとは、やはりなかなかの出来る男ですね!
惜しいな、ホントに!
「時間も無いことだし、率直に話そう。このマリアは、私の妹だ。共に教団に仕えてきた妹が奴隷に落とされて、逃がす機会を窺っていた。君たちは他の奴隷とは、目の光が違う。どこか諦め、状況を甘んじて受け入れている他の者と違い、君たちからは状況を変えようという、強い意志を感じた」
私の支配下の魔物の協力で、割と居心地の良い環境になってしまったのでね。
危険を冒してまで脱出しようとか、考える人が他にいなくなっちゃったね。
逃げようとしても逃げられないだろうから、別に問題無いけど。
「だから、君たちに頼みたい。妹を、マリアを連れて逃げてはくれないか」
「……ご自分では、されないのですか」
「私には、出来ない。色々と手は考えたが、他に方法が思い付かない」
答えは最初から決まってますが、安易に信じるのも不自然なので、間を置いて考える風を装い、十分に溜めてから答えます。
「……わかりました。あなたに、そんな嘘を吐く理由があるとも思えません。マリアさんの様子からも、きっと本当なのでしょう。私としても、脱出の機会が貰えるなら、ありがたい話です。あなたを、信じましょう」
「……ありがとうございます!ドーラさん!」
「……恩に着る!」
マリアさんとヨシュアさんの兄妹が、顔を輝かせます。
美形兄妹の、輝く笑顔!
うむ、眼福、眼福!
ここからは信頼を示すために、私も笑顔を以て接することにします。
「お礼を言うのは、こちらのほうです。私たちを選んでいただいて、ありがとうございます」
にっこりと微笑みながら言う私に、美形兄妹の顔が赤くなります。
……お?
……これは!
マリアさんだけでなく、ヨシュアさんも、脈ありだね!
良かった、私、女としても、ちゃんとアリなんだね!!
と、いうのも、早々にイケメン美女に目覚めた弊害で、お姉様方のガードが、大変にきつく……。
腐ったカップリング的に、ヘンリーとは許せても、他は有り得なかったらしく……。
ヘンリーはヘンリーで犯罪防止(ロリ的な意味で)に燃えてたのかなんなのか、保護者気取りで、こっちもがっちりガードしてくれやがりまして。
恋愛対象になりそうな若い男性との接触が、最低限というか、ほぼ皆無だったんですよね!
別にここで婚活する気は無かったからまあいいとは言え、それなりにコミュニケーションの場数は踏んどきたかったのに!
とは言え近付けないなりに遠くから、それっぽい視線は感じてたので、本気で無いかもと心配してたわけでは無いけれども。
ちゃんと女扱いされて、好意を実感するというのは、いいものだね!
しかも相手は、なかなか素敵な人だし!
と、気分が浮き上がるのに任せて、やや演技入ってた笑顔が本気の笑顔に変わり、ますます赤くなるヨシュアさん。
さっさと話進めないといけないんだろうけど、折角だから!
もうちょっと!もうちょっとだけ!
と、にこにこというか気分的にはニヤニヤみたいな感じになってると、ヘンリーが割り込んできました。
……ちっ!
また保護者気取りか!
「時間が無いんだろ?行くなら、さっさと行こう」
ヨシュアさんが、はっと我に帰ります。
あー、初めての美女扱いタイムがー。
もう、終了してしまった。
「そうだな、すまない。こっちだ」
牢の鍵を開け、先導してくれるヨシュアさん。
と、バタバタと誰かの走ってくる足音が聞こえてきます。
「な……!人払いはしてあるはずなのに!」
「なに?どうすんだ」
「間に合わない!一旦戻ってくれ!」
と、慌ただしく牢内に押し戻される私たち。
こんなときすらガードされて、ヨシュアさんの手は触れもしませんでしたけれども。
いいけど、別に。
なんとか体裁を整えたところで、駆け込んでくる魔物(人間に擬態)。
ヨシュアさんが声を荒げます。
「仕事はどうした!勝手な行動をして、なんのつもりだ!」
そうか、上の指示に逆らっても、来てくれたのか。
あとのこともあるし、ここはバラしてしまうか。
「ヨシュアさん。大丈夫です。彼は、味方です」
「な……!?どういう……それに、私の名前を、なぜ」
あ、しまった、聞いてなかったか。
「私たち奴隷を粗末に扱わず、気遣ってくれる方なので、覚えていました。だから、信じられたのです。試すような言い方をして、すみませんでした」
嘘を吐くときは、真実を織り交ぜて!
基本ですね!
早いうちからチェックしてたのは、本当ですよ!
「彼らの助けがあったから、私たちはそれほど苦しまずに、これまでやってこられたのです。……見送りに、来てくれたの?」
ヨシュアさんに説明を終え、駆け込んできた魔物(人間に擬態)に声をかけます。
「……ドーラ様!これを!」
息を切らしながら、袋を差し出してくる魔物(人間に擬態)。
「これは?」
「ドーラ様の、お荷物です!お預かりしていた!」
ああ、そんなものもあったね。
ゲームではヨシュアさんがタルに入れておいてくれたはずだけど、上の目にも触れないように、きちんと保管しておいてくれたのか。
「ありがとう。最後まで、面倒かけるね」
「面倒などと、そんな!こちらこそ、今までありがとうございました!」
「自分のためにやったことだから。お礼を言われることじゃない」
一方的に服従させて、いいように使うとか。
ホント、お礼言われるようなことはなに一つしてないんですけど。
……酷いな、私!
今さらながら!
「それでも。ドーラ様にはそれだけのことでも、私は、私たちは、幸せでした」
「そうか。それなら、良かった。なら、迷惑ついでに、頼んでもいいかな」
「迷惑などと!勿論です!」
「あとのこと、よろしく。できるだけでいいから」
「はい!力の限り!」
「できるだけで、いいんだよ。死んだら、ダメだよ」
「はい!肝に命じます!」
うむ、なら、良し!
懐に入れた相手に、人間も魔物も無いからね!
奴隷仲間のみなさんのためとは言え、コイツを犠牲にするわけにはいかんよ。
「ドーラさん。そろそろ」
「そうですね。それじゃ」
「ドーラ様!最後に、これだけ!」
お?なんだ、なんだ。
変な死亡フラグ的なものなら、やめてほしいんですけど。
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