ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁〜WIZARDと呼ばれた男〜
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序章:旅する親子
オレは夢を見ている。見た事の無い豪華な部屋で父上によく似た人がウロウロしている。
「パパス様、お産まれになられました。元気な双子の男の子で御座います」
階段から慌てて降りて来た女の人の言葉に今までの表情から一変して穏やかな顔になる。
父上は慌てた様子で階段を一気に駆け上がる。
父上が部屋に入ると、赤ちゃんの元気な鳴き声が耳に入る。
「マーサ、よく頑張ったな」
父上はまだベッドでグッタリとしている母上らしき女の人の手を握る。そして産まれたばかりのあかちゃんを抱きかかえる。
「そうだ、早速名前を付けてやらねば!」
父上はベッドの周りを歩き、何かを閃いたみたいで母上に駆け寄る。
「決めた、こっちの利発そうなのがプーサン、優しそうなのはトンヌラでどうだ?」
父上はいい名前だと頷いているが、母上はニコニコしながら静かに話し出す。
「まぁ、どちらも素敵な名前……でも、私も考えていたの、アークとリュカ。どうかしら?」
母上がニッコリと笑顔を浮かべ、父上に聞く。
「ふむ、変わった名前だが悪くない……よぅし、今日からお前達はアークとリュカだっ!」
父上が二人の赤ちゃんを天に掲げる。
「まぁ、あなたったら……うっ……ゴホ、ゴホッ!」
さっきまで笑っていた母上が咳をして苦しそうにしている。聞こえてくる声がだんだん遠くなっている。
目を覚ますと、木で出来た天井が視界に入る。
「起きたかアーク。ん、どうした変な顔をして……」
部屋の椅子に腰掛けていたのは父、パパスだ。
『変な夢を見ていたみたい。オレとリュカがどこかのお城で産まれた夢をみてた』
オレの言葉に父上は一瞬、目を見開くが次の瞬間には豪快に笑う。
「わっはっは、どうやら珍しくアークも寝ぼけてる様だな。外で風に当たって目を覚ましてきなさい」
確かに父上が笑うのも無理はない。オレは自身の装備を身に纏って部屋を出る。
外に出ると、太陽の光が眩しくて一瞬視界が真っ白になる。目が慣れてくると青い海と空しか無い世界が目の前に広がる。
『確かに気持ちいいな……さてっと……リュカはどこに行ったのやら……』とりあえず、船内を探し回ってみるかな。
「港が見えたぞーっ!」
見張り台の上にいた船員の言葉を合図に周りにいた男達も慌ただしく動き始める。
「着いた様だな……坊や達、部屋にいるパパを呼んで来て貰えるかな?」
船長っぽい男にそう言われる。
「分かりました。兄さん、行こう」双子の弟が、元気に挨拶すると、父上の居る部屋に入っていく。
船はビスタ港と言う小さな港に到着して錨を下ろしている。
「それじゃ船長、世話になった」父上と船長は昔からの知り合いみたいで楽しげに話している。
「あぁ元気でな……おっと次のお客がみえたな」
港側から何人かの集団が歩いてくる。見た感じ高価な衣服に装飾品を身に纏っている。
「船長、世話になるぞ」
一番戦闘にいた裕福そうな男が船長に声を掛ける。
「これはこれはルドマン様。お待ちしておりました」
船長は帽子をとり、頭を下げる。どうやら、このお金持ちはお得意様の様で他の船員の人も皆集まっている。
「娘の入る修道院も良い所が見つかってな、これから自宅に戻って支度をせねばならんのだ」
チラッとルドマンと呼ばれた男の後ろを見ると、髪の長い大人しそうな女の子が船と桟橋の段差が登れず、戸惑っていた。
「ふむ、お嬢さんにはこの段差は大変そうだ……アーク、手を貸して上げなさい」
『はい、父上。手をどうぞ』
俺はそっと手を差し出すと女の子はおずおずといった様子で俺の手を取る。
「よいしょ……きゃっ!」
しかし、女の子は段差に躓いてしまう。
『おっと、大丈夫?』
俺は咄嗟に女の子を抱き支える。
「は、はい……ありがとうございます」
女の子は顔を赤らめながら礼を言う。
「おぉ、フローラ……大丈夫かね。すまないな少年」ルドマンさんがフローラに近寄りながら、俺に声を掛ける。
「どうした、アーク。行くぞ」父上とリュカは既に船を降りていた。俺は慌てて二人を追い掛ける。
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