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オベローン

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第二幕その二


第二幕その二

「この中も」
「何と素晴らしい」
 宮殿の中はみらびやかなまでに飾られていた。紅の絨毯が至る場所に敷かれアラベスク模様であちこちが飾られている。服は絹であり誰もが見事に着飾っていた。
「街中も凄いが」
「この中も素晴らしいものです」
「ではこちらです」
 パックが二人を宮殿のさらに奥に案内する。
「こちらに来られればです」
「ううむ、しかも何と広いのだ」
「こんな宮殿フランクにはありませんよ」
「かつてはローマにあったのですがね」
「ローマに」
「はい、ありました」
 こうヒュオンに話すレツィアだった。
「今はありませんけれどね」
「そうなのか。昔はあったのか」
「まあ昔のことを話しても仕方ありません」
 このことについてはこれで終わらせたパックだった。
「では行きましょう」
「そうだな。それじゃあ」
「奥に」
 こうして三人で先に進んでいると遂にだった。三人で宮殿の太守の間に出て来た。ヒュオンとシェラスミンはその部屋を見てまた驚いた。
「何と広い」
「ええ。これだけ広いのは」
 二人でまた言うのだった。
「陛下の間よりも上だ」
「見たことがありません」
 見ればその部屋の中央にも絨毯が敷かれている。その左右に武装した兵士達が立ち並び階段が奥にある。それでその上に玉座がある。玉座は黄金と白銀、それに様々な宝玉で飾られそこに恰幅のいい口髭の男が座っている。頭にはターバンを巻き豪奢な服を着ている。彼のそのすぐ側に彼女が立っていた。
「レツィア、あれがレツィアか」
「そのようですね」
 パックが彼女を見て声をあげるヒュオンに横から囁いた。
「あの方が」
「そうか。遂に僕達は」
「ねえファティメ」
「どうしました?」
 レツィアもレツィアで横に控えているファティメに囁いた。
「あの人よ」
「その想い人ですね」
「ええ。まさかここに来られるなんて」
「全てはアッラーの御導きです」
 それだと答えるファティメだった。
「それに」
「それに?」
「お嬢様が想われている方はあの方ですね」
 彼女はまずヒュオンを指し示して尋ねるのだった。
「あのスマートな方ですね」
「ええ、そうよ」
 レツィアはその頬をぽっと赤らめさせて彼女の問いに答えた。
「あの人がそうなの」
「私はですね」 
 ここで言うファティメだった。
「あちらの方が」
「あちらの方とは?」
「あの赤い顔の太った方です」
 彼女が指し示すのはシェラスミンだった。
「あの方が」
「好みなのね」
「いいと思いませんか?」
 こうもレツィアに問うのだった。
「あの人。どうでしょうか」
「確かに貴女の好みね」
 レツィアは既にファティメの好みは知っていた。だから納得したのだった。
「あの人は」
「そうですよね。お近付きになれたらいいのですが」
 ファティメにも恋が生まれようとしていた。そしてそれはシェラスミンも同じだった。
「あのお姫様の隣にいる人ですけれど」
「あの人がどうかしたのかい?」
「凄い美人ですよね」
 うっとりとした顔でヒュオンに答えるのだった。
 
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