問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING ③
一輝は違和感の原因が見つからず、とりあえず巨人を狩っていた。
聴覚を強化して聞こえてきた会話でも、とりあえず混乱させる、とあったので問題ないという判断だ。
「スレイブ、無双って意外と楽しいかもしれない。」
「解らなくはありませんが、これで満足しないでください。」
「解ってるよ。俺が降りてきた目的は、これじゃないからね。」
そう言いながらも、スレイブで次々と巨人を切り倒す。
ただ倒すだけだと飽きるのか、たまに三枚に下ろすなどの遊びまで入れている。
「さて・・・何か動きはないか?」
一輝は、自分は基本戦闘に集中して、スレイブに怪しいものを探してもらっている。
「そうですね。今のところ特にない」
ズガァァァァァァァァァァァァン!!
「訂正します。たった今、何かありました。」
「だな。あの赤い稲妻は・・・」
「黒ウサギの、“擬似神格・金剛杵”ですね。」
つまり、黒ウサギがそれを使うほどの相手がいた、ということなので。
「一応、行っとくか。」
「それほどの実力者なら可能性はありますからね。」
一輝は水に乗り、巨人族を切りながら黒ウサギのほうに向かう。
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“アンダーウッド”東南の平野。
一輝はそこに着くと同時に黒ウサギに向かうナイフを、全て切り落とした。
「嘘!」
「嘘じゃないよ。んで、大丈夫か、黒ウサギ?」
「YES。ありがとうございます。」
「ならよかった。じゃあ、この子は俺に任せて“バロールの死眼”をどうにかしてくれ。スレイブも、向こうの武器はただのナイフみたいだから、サポートについていってくれ。」
「解りました!」
「了解!」
黒ウサギとスレイブは、脱兎のごとくその場を走り去った。
「さて、俺はノーネームの寺西一輝だけど、君は?」
「いや、この状況で自己紹介とかしますか?ってそれより、今、名前は何だと?」
「どう呼んでいいのか解らないと不便だからな。後、名前は寺西一輝だ。」
「そうですか。私はリンです。にしても、あなたが・・・聞いていたような感じがしませんね。偶然同じ名前の人がいた?」
一輝はリンの言葉に違和感を感じ、聞き返す。
「えっと・・・リン。今聞いてたって言ったか?」
「はい。でもただの偶然だと思います。鬼道、なんて苗字に聞き覚えはないですよね?」
「いや、俺が元々使ってた苗字だけど。」
リンは一瞬、聞き間違えたかのように目をパチクリさせた。
「え、え?それって本当ですか?」
「ああ。ってか、こっちとしては何で知ってるの、って感じなんだけど。」
一輝は質問をするが、リンは答えず、
「そっか。ならちゃんと戦って実力を知っておかないと!」
ナイフを投擲してきた。
「危ないなあ。」
そして、なんのひねりもなく、普通に飛んできたナイフを、ただの日本刀ではじく。
「あれ?じゃあこれは!」
リンは再びナイフを投擲するが、それも普通に飛んでいく。
「え?なんで・・・」
「そうそう、リンのギフトだけどね、もう見破ってるし、完璧な対策も立てたよ?」
「・・・あれ?私が何をしているのか分かるの?」
「分かるし、どれだけの規模かも知ることが出来る。」
一輝はリンの疑問を肯定し、その解を言う。
「リンは、概念的な距離を操ってるんだ。だから黒ウサギの攻撃は効かないし、自分の攻撃はトリッキーに動く。違う?」
「・・・いえ、違いませんけど・・・どうして分かりました?私、何か・・・」
「ああ、そうじゃないよ。ただ、そう考えれば巨人のことも説明がつくしね。
あとは、俺が空気の一部を操ってどのくらい操ってるのかを測って、」
一輝は一瞬でリンの後ろに回り、
「同じだけかそれ以上、操ればいいだけだよ。」
刀を振り下ろすが、リンにナイフで防がれる。
一輝はペストとのゲームで知った、距離と頭痛の関係を利用したのだ。
「危ないなあ。それが本当なら、私大ピンチじゃないですか。」
「そうだね。それに、他の魔王たちももうすぐ片付くだろうしね。」
リンは一輝の言っていることが分からないのか、小首を傾げる。
一輝はDフォンを取り出し、
「さっきコイツに、白夜叉から連絡があった。『今、仏門に神格を返上した。じきにこちらも片付くから、最低でも、持ちこたえろ。』って。確かに、本来なら霊格を上げる神格も、白夜叉にとっては枷でしかないだろうしね。」
「・・・嘘、」
「じゃないよ。あいつが本気でやるなら、下層にいるような魔王は相手じゃないだろうし、あいつが全部片付けてくれるだろ。」
リンは、顔に苦渋の色を滲ませながら空を見上げ、戦場から姿を消した。
一輝は、巨人が復活し、カオスなことになっている戦場のほうを向き、
「俺のことを誰から聞いたのかは気になるけど・・・今はあっちだな!」
そのまま、戦場に向けて飛んだ。
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