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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第九十九話




「貴方が王双殿ですか。初めまして邪馬台国の彦五十狭芹彦命です」

「同じく稚武彦命です」

「は、はい。初めまして」

 俺は二人に挨拶をした。まさか桃太郎のモデルに会うとは思わなかった……。

 二人とも筋肉モリモリの大男やイケメンではなく、極普通の一般人みたいである。

「お二人は何故仲に?」

「実は味方がほしいのです」

「味方……とすると狗奴国との戦いですか?」

「ほぅ、邪馬台国の御事情を御存知で……?」

「彦五十狭芹彦命様、王双様は元は倭国の出身なのです」

「へぇ、倭国から仲にですか? 倭国のどの国ですか?」

「え、え~とその……」

 稚武彦命の言葉に俺は歯切れが悪くなった。流石に未来から来た日本人ですとは言えんからなぁ。

 奴国とか対馬国、一支国(いきこく)とか言ったら調べられると思うしな……。

「まぁ良いじゃないですかお二人様」

 そこへ雪風が援護してくれた。

「それもそうか」

「そうですね。同じ倭国の人ですからね」

 二人も何とか納得してくれた。話によれば二人は暫くは仲に滞在して政治や軍を見学するらしい。



「あ、副官」

「よう高順、それに蒲公英も」

 今日は俺は非番だったので書店で歴史書でも買おうと市場を探索していると高順と蒲公英に出会った。

 ……ほぅ。

「御両人、手を繋いでるな。こりゃお邪魔だったかな?」

「い、いやそんな。自分は別に蒲公英さんとは……」

「えッ!? そうだったの高順さん?」

「ぅ……」

 蒲公英の上目づかいに高順がたじろいでいる。……これは面白いな。

「面白いでしょう主?」

「星か。さっきから見てたのか?」

「えぇ。非常に面白いですから」

 星が酒を飲みながらニヤニヤと笑っている。

 その後高順は終始、顔が赤く困っていた。その傍らでは蒲公英が嬉しそうに手を握っていた。

 蜀と魏の戦いは蜀が圧倒していた。蜀は長安から洛陽に侵攻して洛陽は陥落していた。

 曹操以下魏軍は残存兵力を纏めつつ、許昌にて決戦をしたが赤壁の戦いの惨敗をしており士気は極限にまで低下していた。

 そのため曹操を裏切る武官や文官が続発して魏軍は軍としての行動が取れなくなっていた。

 曹操は仲に使者を派遣して援軍を求めようとしたが、使者は道中で蜀に捕らえられたりして仲に使者が届くのは困難だった。

 更に蜀は洛陽を攻略した時に、ライブ活動をしていた張三姉妹を捕縛して魏軍がどうやって兵士を集めていたかを知った。

 北郷と劉備は張三姉妹と会見して、命を助ける代わりにライブ活動をして魏討伐の兵士募集を手伝って欲しいと要請した。

 三姉妹は最初は要請を拒否したが、劉備の何回にも及んだ説得に最初は長女が納得して、ついで次女、そして最後に三女が納得したのであった。

 これにより、蜀は更に兵力の補充に成功して六十万の兵力になっていた。

「華琳様、このままでは……」

「……負け戦ね」

 曹操はそう呟いた。魏軍は数こそ約七万の兵力だが、軍としての機能が出来てなかった。

「……華琳様、仲に亡命してはどうですか? 袁術なら華琳様をとやかくしたりは……」

「……判っているわ。でも……」

 それも一つの手であったが、曹操のプライドはそれを許そうとしなかった。

 しかし、此処でまごまごしていては蜀が侵攻してくるのは明白であった。

「華琳様、失礼ッ!!」

「グフッ!?」

 夏候惇が曹操の前に出て曹操の鳩尾を殴って曹操を気絶させた。

「姉者ッ!?」

「ちょ、ちょっと春蘭ッ!!」

 夏候淵と筍イクは夏候惇の行動に驚いたが、夏候惇は続けた。

「仲に亡命しよう。最早それしかない」

 普段の夏候惇とは大違いに皆は驚いたが、夏候淵は直ぐに我に返って亡命の準備を始めた。

「亡命するのは良いが兵士はどうするんだ姉者?」

「好きにさせよう。蜀に降伏するのも良し、故郷に帰るのも良し。皆の好きにさせよう」

 そしてお触れが出回ると兵士達は次々と逃げ出した。皆、自分の命が大切なのだ。

 また、曹操を討ち取って名を上げようとする輩もいたが全て夏候惇に斬り捨てられた。

 夏候惇達武官や文官はその日のうちに許昌を脱出して仲へ目指すのであった。



「何? 許昌の魏軍が降伏してきた?」

「はい、そうです。ご主人様」

 孔明からの報告に北郷は驚いた。

「……敵の欺瞞じゃないよな?」

「いえ、欺瞞ではありません」

「……慎重に行こう。相手は曹操だ、何か企んでいそうだ」

 北郷の判断により、許昌から脱出した夏候惇達は無事に仲へ向かうのであった。

「ご主人様、本当に私がやってもいいのかな?」

「あぁ、大丈夫だ桃香。君にはその資格がある」

「そうですよ桃香様。桃香様がやってくれるなら私達も戦う意義がありましゅ」

「……判ったよご主人様、朱里ちゃん。私やってみるよ」

 劉備は何かを決意したかのように頷くのであった。

「……取りあえずは関門は突破したかな?」

「そのようですねご主人様。早速お触れを貼り出しましょう」

「うん。それと曹操達の行方は判った?」

「……残念ですがまだです。ですが、大体は判ってます」

「……仲か」

 北郷の言葉に孔明は無言で頷く。

「……仕方ない。暫くは様子見にしよう」

「そうですね。攻めこむのはそれからでも遅くはありません」




 数日後、曹操達の魏軍残党が仲に流れ着いた。そしてそのまた数日後に今度は洛陽から使者が来た。

「な、何じゃとッ!?」

 玉座で使者と面会して紙を渡された美羽が紙を一目すると唖然とした。

「か、漢王朝の再興とはどういう事じゃッ!?」

 美羽は文面を見てそう叫んだ。文面には洛陽にて劉備玄徳が皇帝に位に就き、漢王朝を再興させたという事が書かれていたのであった。


 
 

 
後書き
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