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ニュルンベルグのマイスタージンガー

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第三幕その二十八


第三幕その二十八

「泉は微笑みつつその楽園への道を示せり」
「その楽園はまた」
「この世にあるものか」
「そこから生まれた我が心の選びたるこの地上で最も美しい姿」
 歌はいよいよ最後に向かっていた。
「その姿ミューズとなって現われ優しくかつ気高くありしが」
「詩句も見事だ」
「確かに」
「私は大胆にも妻に求め明るい光の輝くひるに歌の勝利にて勝ち得る」
 そして最後に。
「パルナスのミューズと楽園を」
「美しき夢の中に引き込まれるようだ」
 最後まで聴いた民衆の言葉だ。
「捉え難い歌だが響くものは快い」
「全くだ」
「こんな歌ははじめてだ」
 口々に言いながらエヴァに顔を向けて。彼女に口々に言うのだった。
「エヴァさん、決まりだ」
「そう、決まりだ」
「その通りだ」
 ベックメッサーも憮然としながらも頷いていた。
「これだけの歌ならばな」
「あの方に冠を」
「あの方以外にはいない」
 こうエヴァに口々に語っていく。
「ですから今その冠を」
「あの方に」
「これで全ては決まった」
 マイスター達も認めていた。
「騎士殿、貴方が」
「その冠を」
 こうヴァルターに告げるのだった。
「貴方の歌は勝利を得ました」
「マイスタージンガーに相応しい勝利を」
「ザックスさん」
 そしてポーグナーがザックスにまた声をかけてきた。
「私の幸福と名誉は貴方の賜物だ」
「いえ、私は」
「謙遜されずに」
 それはいいとまで言うのだった。
「私の悩みと苦しみは全て過ぎ去ったのですから」
 こう言いながら自分の娘とヴァルターを見る。今ヴァルターはエヴァの前に跪きその手から冠を授けられていた。その月桂樹ともう一つ、その絹の冠だった。その二つの冠を被せられそのうえで立ち上がり二人でポーグナーの前に行きそこで二人並んで跪く。ポーグナーは微笑み彼等の頭上にその祝福の手を差し伸べるのだった。
 二人はそれを受けたうえであらためて立ち上がった。エヴァは恍惚とした顔でヴァルターに対して言うのだった。その至福に満ちた声で。
「貴方こそは私の永遠の伴侶です」」
「立派な証人が答えてくれました」
 ヴァルターはまた民衆の前に来て民衆達に述べた。
「私のやり方は如何だったでしょうか」
「素晴らしい」
「やっぱりザックスさんだ」
 皆彼の言葉にこう言うのだった。
「いつも通りお見事です」
「流石です」
「ではポーグナーさん」
「はい」
 マイスタージンガー達はポーグナーに声をかけるのだった。
「この騎士殿をマイスタージンガーに」
「そうですな。すぐに」
 彼は仲間達の言葉を受け三個の大きな記念貨を付けた全てが黄金の鎖を持ってヴァルターに歩み寄る。そうして彼に対して告げるのだった。
「これをお受け取り下さい」
「それは」
「ダヴィデ王の首飾りです」
 こう彼に説明した。
「マイスタージンガーである証の」
「いえ、それは」 
 しかしヴァルターは左手を前に出してそれを拒む姿勢を見せたのだった。
 
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