皇太子殿下はご機嫌ななめ
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第4話 「お願い、アンネローゼさん」
前書き
ザ○の使い道は、いくつか考えています。
一つぐらいは、派手な見せ場を作ってあげたいなー。
第4話 「なんという離間の計」
皆様、初めまして。
アンネローゼ・フォン・ミューゼルでございます。
皇太子殿下の寵姫をやっております。
皇太子殿下の後宮にやってきていらい、毎日、朝早くから皇太子の間に出勤し、机を磨く事から一日が始まります。
皇太子の間には毎日毎日、たくさんの方々が来られ、私はその度にアポの確認をし、資料を渡して説明を致します。その合間に電話応対があり、各省庁から送られて来た資料をコピーしては纏めます。
もう一人ぐらい寵姫が欲しいと痛切に思う毎日です。
皇帝陛下の寵姫の方々も、忙しい毎日を送っておられるのでしょうか?
皇帝陛下ともなると、きっとお忙しいでしょうし、寵姫の方々も私よりも、忙しいのでしょうね。
あ、申し訳ありません。
皇太子殿下がお茶を出すように仰っておりますので、失礼致します。
「殿下」
「なんだよ」
リヒテンラーデの爺が呆れた顔で、つかつかとやってきやがる。
「殿下は寵姫をなんと、心得ておられるのですか?」
「寵姫は寵姫だろう」
「寵姫はお茶汲みOLではございませんぞ」
せめて秘書ぐらいは、言ってやれよ。じじい。
スーツ姿に黒いパンストのエロ秘書とかさー。
「どこのAVですかっ」
「配給はノイエ・サンスーシ。販売はフェザーンか?」
「ええい、だまらっしゃい。今日という今日は、皇太子殿下に意見を申しますぞ」
「いつも言ってるじゃねえか」
「いいえ、申します」
爺の説教がうるさい。
やれ、皇太子の間がいつの間にか、オフィスに変わってるとか、調度品がスチール棚になっているとか、挙句の果てにはこのファイルの山はなんですかと、きたもんだ。
「書類は管理職の天敵だ。いつの間にか山となりやがる」
「官僚がいるでしょうがぁー」
「決裁を求めてくるんだよっ、その官僚が!!」
見ろ。この判子を。いつのまにか磨り減ってるんだ。
辺境からの嘆願書もあるし、なんだこれ? イゼルローンへの補給に関する決裁まで、俺のところに来てやがる。これぐらい軍務省に持っていけー。
帝国三長官はなにしてんだ。
やる気あんのか、ゴラァー。
じじいー。てめえもしらっとした顔で、書類を持ってくんじゃねー。
「わたくしめは所詮、無任所の国務尚書でございますから、帝国宰相である皇太子殿下に、決めてもらわねばならないこともあるのです」
「なった覚えはねー」
「おや? すでに皆から帝国宰相と認識されておりますが?」
「皇太子殿下、凄いんですね」
「アンネローゼまでそう言うかー」
「違うんですか?」
きょとんとした表情を浮かべるアンネローゼ。
原作の面影がまったくない。原作の儚げな美人はどこにいったのか……。
妙にアグレッシブになりやがって、ラインハルトに見せてやりたい、この姿。
ああ無常……というやつだな。
そのうち、アンネローゼもMSに乗せてやるからな、楽しみにしてろよ。けっけっけ。
どんな機体がいいかなぁ~。
■ノイエ・サンスーシ 後宮 シュザンナ・フォン・ベーネミュンデ■
今日、皇太子の間で寵姫の募集がなされました。
わたくしのところにも、募集要項が書かれた書面が回ってきましたが、これはいったいどういう事でしょうか……?
基本、平日八時から十七時まで、拘束八時間。休憩あり、多少残業あり。各種保険完備。急募、若干名。委細面談。明るい職場ですと書かれていますね。
これは本当に寵姫の募集なのでしょうか?
わたくしのところのメイドたちも、面接に行ってきていいですかと、聞いてくる始末です。皇太子殿下はいったい、何を考えているのでしょう。まったく困ったお方です。
ああ、こんな事を考えていると、お腹の子に悪いですね。胎教に良い音楽でも聴きましょう。
■皇太子の間 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■
ようやく面接も一段落しました。
もの凄く人が集まって、もうたいへんな騒ぎだったんですよ。
近衛兵の方々が列を誘導しておりました。皇太子殿下は机の上で眠っておられます。
「俺は寝る」
とだけ仰って、高いびきです。
それにしても、やはり軍関係者が多かったです。女性兵士のあの血走ったような目。思わず背筋が震えてしまいました。
貴族のご令嬢の方々もおられましたね。
推薦状を持ってきた人もおりましたし、皇太子殿下の人気の高さを思い知りました。
さすが皇太子殿下です。わたくしも鼻が高いです。
ところでジーク……あなたまで、なぜここに来たのですか?
あなたは男の子でしょう? 寵姫にはなれませんよ。それにラインハルトはどうしたのですか?
「ラインハルト様は……」
そう言ったまま、ジークは目を逸らしてしまいました。
いったいどうしたというのでしょうか……。
「そういえば、女装した男の子が一人いたな……金髪のかわいらしい子だったが、結構目つきはきついものがあったぞ」
「皇太子殿下、起こしてしまいましたか?」
「いや、かまわん。ジークとやら、お前も女装するぐらいの工夫をしてみせろよ。ラインハルトのように、な」
「まさか……ラインハルトが、そんな~」
「冗談だ」
「皇太子殿下、ひどいです」
「すまんすまん」
ほっとしました。皇太子殿下の冗談だったのですね。ですよね?
ですがジーク、なぜあなたは真っ青な表情をしているのです?
■ジークフリード・キルヒアイス■
皇太子殿下が新たに寵姫の募集をするという噂を聞き、ラインハルト様は大いに怒っておられました。アンネローゼ様をむりやり奪っておきながら、また別の女性を毒牙に掛けようとする、皇太子殿下に対する怒りです。
そしてなんとか工夫して、皇太子の間に忍び込んだものの、あまりの人の多さに目が回りそうになり、私は恥ずかしながら、アンネローゼ様に助けていただきました。
しかしながらアンネローゼ様のスーツ姿が眩しくて、まともに見ることすらできないのです。
それにしても自ら望んで、寵姫になりたがる女性がこれほどまでに多いとは……。
驚きを禁じえません。
そしてアンネローゼ様はたいそう忙しそうです。
寵姫というものは、これほどまでに忙しいものなのでしょうか?
これではまるで、どこかの事務員のようではありませんか。
寵姫とはいったい、どういうものなのでしょう……。
私には分かりません。
■ラインハルト・フォン・ミューゼル■
皇太子を見た。
たくさんの女性に囲まれ、にやけていた。
やはり貴族というものは、腐りきっている。
前線では、たくさんの兵が死んでいるというのに、奴は後宮で遊んでいる。
やつらは腐っている
腐りきっている。
ルドルフ大帝が墓から起き上がって、奴らを焼き尽くしてしまわないのが、不思議なほどだ。
俺は奴らを滅ぼして、宇宙を手に入れる。
ルドルフに出来た事が、俺に不可能というわけではないはずだ。
ところでキルヒアイスはどこだ?
■皇太子の間 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■
ジークが皇太子殿下と話しているうちに、ブラウンシュバイク公爵様とリッテンハイム侯爵様が、皇太子の間にやってこられました。
お二人とも、ジークを見ると少し驚いたような表情を浮かべます。
皇太子の間に子どもがいるのが、そんなに不思議でしょうか?
ジークはかなり緊張していますね。
そんなに怖がらなくても、大丈夫です。
ああそうそう、ジークにも紹介してあげましょう。
「ジーク、こちらにいらっしゃい」
「はい、アンネローゼ様」
てくてくと近づいてきます。
「ジーク、こちらの方々は皇太子殿下の義兄弟に当たる、ブラウンシュバイク公爵様と、リッテンハイム侯爵様です。ご挨拶しなさい」
「ジ、ジークフリード・キルヒアイスと申します。軍の幼年学校に所属しています」
ジークも緊張して、声が震えています。
「うむ。オットー・フォン・ブラウンシュバイクだ。ジークフリード君は皇太子殿下とは、どういう関係なのだね」
「アンネローゼの弟の友人だ。よくしてやってくれ」
ジークの代わりに皇太子殿下が返事を返しました。その言葉を聞き、リッテンハイム侯爵様が一歩、足を踏み出しました。
「ウィルヘルム・フォン・リッテンハイムだ。よろしく、ジークフリード君」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭を下げるジーク。いい子ですね。
「ジーク、軍の士官学校を卒業したら、俺のところに来いよ。近衛士官に推挙しておいてやるから、な。よく学び、よく遊べよ。今のうちだぞ、遊んでいられるのは。たくさん友人を作って、後悔しない様にしておけ」
「そうですな。これからの帝国は、若い者達の力が重要になってきますからな。ジークフリード君の様な少年には、今のうちによく学んでおいて貰わねば、なりませんな」
「まったくもってその通りですな」
ブラウンシュバイク公爵様がジークの頭を撫でながら、笑っています。
公爵様は大柄でいらっしゃるし、手も大きいので、ジークの頭がぐらぐらしているみたいです。
リッテンハイム侯爵様も笑っておりますし、良かったです。
「アンネローゼ、今日はもう、上がっていいぞ。ついでにジークを送ってってやれ」
「はい」
「ジークはお土産に、チョコレートケーキでも、持って帰れ。アンネローゼのお手製だ。久しぶりだろう?」
「はいっ、ありがとうございます」
「お前、元気だなぁ~」
皇太子殿下の笑い声が部屋に広がりました。
殿下の笑顔は結構好きです。
後書き
感想で指摘してくださった方々に、この場をお借りして、お礼を申し上げます。
修正は連休中にしますので、しばらくお待ち下さい。
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