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ヘタリア大帝国

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TURN84 山下の焦りその八

「軍神と讃えられているのは」
「その山下さんだけですね」
「臣民の中には、特に学者は」
 所謂知識人だ。その影響力はかなり大きい。
「海軍さんの功績だけを見て」
「陸軍を軽視する傾向があると」
「はい」
 そのことが問題だというのだ。
「中には海軍さん主体で陸運さんを吸収する形で」
「統合軍をですか」
「そうした意見も出ています」
「それはかなり」
 日本は伊藤のその話に難しい顔になる。
「まずいですね」
「はい、統合軍もです」
「我が国にはそぐわないですな」
「海軍と陸軍は国家の両輪です」
 まさにそれになるというのだ。
「ですからそれは」
「はい、我が国には両軍が必要です」
 その海軍と陸軍がだというのだ。
「ですからそれは」
「統合軍は我が国にはそぐわないです」
 日本も伊藤もこう考えている、そしてだった。
 帝もここで言う。
「私も軍の統合は考えていません」
「そうなのですね」
「はい」
 微笑んでいない、いつもとは違うその顔で日本妹に応える。
「やはり両軍はそれぞれ国家の両輪です」
「では海軍への吸収も」
「無論考えていません」
 そうだというのだ。
「とてもです」
「帝がそう仰るのなら」
 日本妹もここで言う。
「決定ですね」
「そうなりますね」
 やはり日本帝国の国家元首は帝でありその権限は強い、こうした国家や閣僚達もいて議会もある、だが帝の権限はかなり強い。
 その帝がはっきりと言った。
「統合軍は置かず」
「そしてですね」
「陸軍に艦艇は不要です」
「現状のままですね」
「そのうえで両軍の融和を計ります」
「海軍と陸軍の」
「親睦と相互理解を深める為に交流を進めるべきですね」
 穏健だが確実な方法、帝はその選択肢も出した。
「むしろこれまでは」
「なかったですね」
「それも全く」
 日本兄妹はそれぞれ帝に答えた。見れば日本は海軍の軍服、妹は陸軍のそれを着ている。そのうえでの言葉だった。
「私達は兄妹ですが」
「両軍は」
「他国の軍との交流は盛んです」
 ここでまた言う伊藤だった。
「それもかなり」
「しかし中はといいますと」
「今気付いたことは」
「そう、ありませんでした」
 伊藤は日本兄妹にこの事実を話した。
「お互いに向かい合った時も」
「敬礼はし合いますが」
「それでも」
「はい、疎遠です」
 もっと言えばそれどころではない。
「むしろ時代によっては敵同士の様でした」
「今も関係はかなり悪化していますが」
「やはりお互いこそはです」
「最も交流がなかったですね」
「私も今気付きました」
 伊藤にしてもそうだった。 
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