八条学園怪異譚
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第三十八話 狐道その十
「そうしておるのじゃ」
「お賽銭盗もうなんて確かに不届きだしね」
「凄く悪いことなのは事実ね」
「そうじゃ、本来なら囲んで袋叩きじゃが」
狐達でそうするというのだ。
「そこは化かすことで勘弁してやっているのじゃ。しかもここは小学校じゃからのう」
「悪ガキもいるっていうのね」
「それも代々よね」
「悪ガキは常におる」
実際にそうだというのだ。
「賽銭箱に土なぞ何かの動物の糞を入れようとしたりな」
「ああ、そういうことする奴っているのよね」
「本当に何時の時代でもね」
二人にも心当たりがあった、そういうことをする子供は彼女の代にもいるからだ。
それでだ、二人もこう言う。
「罰当たりな男の子ってね」
「たまに女の子でもいるけれど」
「うむ、女でもたまにおる」
狐は後ろ足で立って前足を組んで言う。
「そしてそういった娘程大人になると美人になるのじゃ」
「それって何かの法則かしら」
「よくある話だけれど」
「おてんば娘程後でそれを恥ずかしく思って慎ましやかになるのであろうな」
「ああ、逆になるのね」
「それでそれが外にも出るのね」
「そういうことやもな。とにかくわしとしてもじゃ」
狐は話を戻してきた、その目はお稲荷さんの社を敬愛するもので見ていた。
「お稲荷様への無礼を許す訳にはいかぬからな」
「だから気をつけてるのね」
「悪ガキも懲らしめてるのね」
「そうじゃ、もっともここには中学生や高校生も来るがな」
悪ガキは世代を問わない、そうした歳でもいることはいるというのだ。
「大学生でもな」
「大きな子供ってことね」
「大学生でもって」
「それでそうした奴を常に凝らしめておるのじゃよ」
そうだというのだ。
「わしにしてもな」
「成程ね、九尾さんはここの狐さん達のまとめ役だけじゃないね」
「社の護り役でもあるのね」
「そうじゃ、そちらもわしの仕事じゃ」
実際にそうだというのだ。
「日々護っておるぞ」
「真面目なのね、そういうところは」
「しっかりしてるのね」
「うむ、それでじゃが」
ここまで話してだ、狐はあらためて二人に言った。
「狐道じゃな」
「そうそう、そこね」
「今から行くのよね」
「うむ、では行こうぞ」
こう話してそうしてだった。
一行は狐に案内されて社の裏に入る狐道を進んだ、そして小学校を出るそこでだった。
先導を務めていた狐は立ち止まり二人の方を見て言った。
「ここからじゃよ」
「小学校を出たらなの」
「そこが、なのね」
「若しかしたらな」
泉だというのだ。
「泉やも知れぬ」
「わかったわ、それじゃあね」
「行って来るわね」
二人も狐の言葉に頷く、そして。
猫又と送り犬もだ、横から二人に言った。
「じゃあ今回もな」
「確かめてきてね」
「うん、まあここが駄目でもね」
「次があるし」
二人は今も割り切っていた、最早かなり慣れていて泉でなくとも次があるからいいといった感じである。
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