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遊戯王GX ~Unknown・Our Heresy~

作者:狂愛花
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第9話 制裁デュエル! 闇と異星の攻防

 
前書き
漸く書き上がりました!!

大変遅くなりました!

申し訳ありません!

これで9話全部修正し終わりました。

なので、これからはもっと投稿が遅れるかもしれません。

すみません。

それでは、どうぞ! 

 
Side 雪鷹

いつからだろうか。

俺がこんな性格になったのは。

小さい頃は、周りと何ら変わりない普通の子だったらしい。

昔の事すぎて、今の俺には思い出せない。

しかし、歳が上がるにつれて、俺は周りから孤立していった。

理由は簡単。

頭がおかしい変人だったから。

人とは違うものを好み。

人とは違う性癖を持つ。

そんな俺を面白がってからかう輩が沢山出てきた。

親しくもないのにからかう為に話しかけ。

親しくもないのに色んな事を要求してくる。

それが俺にはとても苦痛だった。

向こうに悪気がないから、どう対処すればいいのか分からずに、だんだんと学校に行かなくなっていった。

その時からだった。

テレビに映る天才と称される人を、因果もないのに深く憎み、どこかで災害や不幸があれば、自然と笑みが零れた。

周りからは、その性格直せと何度も言われた。

自分でも、こんな自分が嫌で仕方なかった。

高校に上がって、やっと俺は自分自身の性格を理解することができた。

俺は“矛盾”で“理不尽”。

人の不幸を喜ぶ反面、人の幸せを誰よりも願っている。

人を憎み、人を愛す。

この矛盾。

人を傷つけるのは好きだが、自分が傷つくのは大嫌い。

俺に非がある説教も、聞いているだけで苛立つ。

この理不尽。

俺は自分が嫌いで仕方ない。

でも、この性格だけは、嫌いになれない。

これも、矛盾だ。

「おい! 雪鷹!」

「っ!」

そんなことを考えていると、隣にいた直哉が俺の名を大声で呼んだ。

「悪い、なんだ?」

「もうすぐお前の番だから、準備しろ」

その言葉を聞き、俺はフィールドに視線を向けると十代たちが召喚したモンスター、ユーフォロイド・ファイターの攻撃によって対戦相手、迷宮兄弟が敗北した光景が目に飛び込んできた。

デュエルキングダムで遊戯と城ノ内を苦しめた門番デュエリスト。

その2人を倒し、見事退学を免れジャイアントキリングを成し遂げた2人に生徒たちが歓声を送っている。

2人の勝利に俺はフッと微笑し、直哉に言った。

「あぁ、わかった」

それだけ返して、俺はデュエルフィールドに向かって行った。

Side out


Side 三人称

デュエルフィールドへと続く廊下を雪鷹は無言で歩いて行く。

すると、デュエルフィールドから十代たちが戻ってきた。

「雪鷹! 頑張れよ!」

「絶対勝つッスよ!」

擦れ違う十代たちから激昂の言葉を掛けられる。

その言葉に、雪鷹はフッと微笑を浮かべた。

「言われなくても、勝ってくるさ!」

そう言って雪鷹は嬉々とした表情を浮かべデュエルフィールドへと向かって行った。

会場には、先程の十代たちのデュエルで興奮した生徒たちの雄叫びにも近い歓声が轟いていた。

会場に雪鷹の姿が現れると、歓声がさらに激しく轟く。

その歓声の中には、雪鷹の存在を疎ましく思う者たちのバッシングがチラホラと混じっていた。

そんな三者三様の声が飛び交う中、雪鷹はデュエルフィールドに上がって行った。

デュエルフィールドには、既に雪鷹の対戦相手が待っていた。

その姿に、雪鷹は目を見開いた。

雪鷹の前に立つ男。

黒のシャツに黒のパンツを履いた全身真っ黒な格好。

刺々しさを感じさせる黒髪に睨みつけるような眼つき。

まるで獲物を捉えた獣のようだ。

雪鷹はその男に見覚えが有った。

この世界に登場しなかっただけに、雪鷹の驚愕は大きかった。

そんな雪鷹を余所に、クロノス教諭がアナウンスを始める。

「それデ~ハ! これヨ~リ! シニョ~ル相原のデュエルを始めるノ~ネ!!」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

クロノス教諭のアナウンスに煽られ、観客の生徒たちが歓声を轟かせる。

「シニョ~ル相原の対戦相手は、ななな、なん~ト! あのデュエルモンスターズの生みの親! ペガサス・J・クロフォード氏が引き取った身寄りのない子どもたち、ペガサスミニオンの1人! デプレ・スコットなノ~ネ!!」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

ペガサスの名を聞いて、先程のデュエルからの興奮が冷めやらぬ生徒たちのテンションが更に上昇していき、フィールドに轟音の様な歓声が轟いた。

紹介されたデプレは無言のまま雪鷹の事をジッと見つめていた。

それに応じ雪鷹も無言でデプレを睨みつけた。

2人の視線がフィールドで交差する。

「それデ~ワ! デュエル、開始なノ~ネ!!」

その言葉を合図に、2人が同時にデュエルディスクを展開していった。

「「デュエル」」




雪鷹 LP4000
手札 5枚
フィールド 0




デプレ LP4000
手札 5枚
フィールド 0




「俺の先行。ドロー」

掠れた声でデプレが冷淡な口調でデッキからカードをドローした。

「俺は、モンスターをセットし、カードを1枚セットしてターンエンド」




デプレ LP4000
手札 4枚
フィールド モンスター セット1
魔法・罠 セット1




デプレの初手は控えめだった。

どうやら様子見のようだ。

さぁ、どう動く? 

そう言いたげな視線が雪鷹を射ぬく。

「俺のターン、ドロー!」

デプレとは違い、雪鷹は語尾に少々力を込め、威嚇するような雰囲気を醸し出しながらデッキからカードをドローした。

「俺は、《ダーク・クルセイダー》を攻撃表示で召喚!」

雪鷹のフィールドに漆黒の鎧を纏った骸骨騎士が姿を現した。

その騎士の手には、身の丈ほどの大剣が握られており、白い髑髏の瞳が赤くぎらついた。




ダーク・クルセイダー
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1600/守 200
手札から闇属性モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
このカードの攻撃力は400ポイントアップする。




「ダーク・クルセイダーの効果発動! 手札の闇属性モンスター1体を墓地へ送り、攻撃力を400ポイントアップする。俺は、手札の《ネクロ・ガードナー》と《ネクロ・ディフェンダー》を墓地に送って、クルセイダーの攻撃力を800ポイントアップさせる!」

黒いオーラがクルセイダーの身体から溢れだし、クルセイダーの攻撃力が上がっていった。

ダーク・クルセイダー 攻撃力1600→2400

「バトル! ダーク・クルセイダーでセットモンスターに攻撃!」

クルセイダーの瞳が紅くギラリと光る。

クルセイダーは大剣を握りしめ、デプレの許へと駆け出して行った。

そして、大剣を大きく振りかぶり、デプレの場に伏せられているモンスター目掛けて勢いよく振り下ろした。

振り下ろされた剣は狂い無く伏せモンスターを一刀両断にした。

『キシャァァァァァァ!!』

切り裂かれたのは大きな紅い目を持つ銀色の身体を持つ小さなモンスター。

その姿は、所謂エイリアンのグレイ型の様だった。

「《エーリアン・グレイ》のリバース効果発動。相手フィールド上の表側表示モンスター1体にAカウンターを1つ乗せる。さらに、リバースしたグレイが戦闘破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードをドローする」




エーリアン・グレイ
効果モンスター
星2/光属性/爬虫類族/攻 300/守 800
リバース:相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
Aカウンターを1つ置く。
また、リバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキからカードを1枚ドローする。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
Aカウンターが乗ったモンスターは、「エーリアン」と名のついたモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算時のみAカウンター1つにつき攻撃力・守備力が300ポイントダウンする。




そう言ってデプレはデッキからカードをドローした。

「さらに、罠カード発動。《スネーク・ホイッスル》」

フィールドに蛇の警戒音のような笛の音が響き渡る。

「このカードは、自分フィールド上の爬虫類族モンスターが破壊された時に発動する事が出来る。デッキからレベル4以下の爬虫類族モンスター1体を特殊召喚する」




スネーク・ホイッスル
通常罠
自分フィールド上に存在する爬虫類族モンスターが
破壊された時に発動する事ができる。
自分のデッキからレベル4以下の爬虫類族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する。




デプレはそう言ってデッキをディスクから取り外し、扇のように広げ、デッキから1枚のカードを抜き取り、ディスクにセットした。

「俺は、《エーリアン・ウォリアー》を特殊召喚する」

フィールドに現れたのは、獣の様な姿を持つエイリアン。

黒い肉体を覆う肌色の外郭。

自分の顔を被える程の巨大な腕。

その腕から生える白く鋭利な5本の爪。

橙色の瞳をぎらつかせ、フィールドに咆哮を轟かせた。




エーリアン・ウォリアー
効果モンスター
星4/地属性/爬虫類族/攻1800/守1000
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
このカードを破壊したモンスターにAカウンターを2つ置く。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
Aカウンターが乗ったモンスターは、
「エーリアン」と名のついたモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算時のみAカウンター1つにつき攻撃力・守備力が300ポイントダウンする。




「エーリアンデッキ!?」

グレイとウォリアーの登場に雪鷹は目を見開いた。

それは控室で見ていた直哉、観客席で見ていた理子とアヤメも同じだった。

自分たちの知りデプレは確かにエーリアンに酷似したモンスターを軸としたデッキを使っていた。

しかし、今目の前にいるデプレは酷似したモンスターではなく、エーリアンと名のついたモンスターを使用している。

驚愕した雪鷹を見て、デプレは微笑を浮かべた。

「ホゥ、エーリアンを知っているのか? 噂以上に楽しめそうだな」

そう言ってデプレは表情を歪ませ笑った。

「(噂?)」

デプレの言った噂という言葉が気になり雪鷹は心の中で呟いた。

「俺は、カードを1枚セットしてターンエンド」




雪鷹 LP4000
手札 2枚
フィールド モンスター 《ダーク・クルセイダー》
魔法・罠 セット1




「俺のターン、ドロー」

先程と変わらない落ちついた声でデプレはカードをドローする。

ドローしたカードを見て、デプレは不気味な笑みを浮かべた。

その表情に雪鷹は怪訝な表情を浮かべる。

「エーリアンの事を知っているのならば、このデッキの恐ろしさも知っているだろう」

その言葉に雪鷹は何か来ると身構える。

「俺は永続魔法《「A」細胞増殖装置》を発動。このカードは、自分のスタンバイフェイズ時に相手フィールド上の表側表示で存在するモンスター1体にAカウンターを1つ乗せる」

デプレのフィールドに6つの培養機が現れた。

その培養機の中には、脳のような紫色のウネウネとした物体が水溶液に入れられていた。




「A」細胞増殖装置
永続魔法
自分のスタンバイフェイズ時、相手フィールド上に
表側表示で存在するモンスター1体を選択し、Aカウンターを1つ置く。




「さらに魔法カード発動。《浸食細胞「A」》。このカードは、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体にAカウンターを1つ乗せる。ダーク・クルセイダーに2つ目のAカウンターが乗る」




浸食細胞「A」
通常魔法
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
選択した相手モンスターにAカウンターを1つ置く。




「ダーク・クルセイダーに乗っているAカウンター2つを取り除き、手札から《エーリアン・リベンジャー》を特殊召喚する」

ダーク・クルセイダーの身体から2つの紫色の球体が天へと昇って行き、天井からオーロラの様な七色の色彩を放つ光がデプレのフィールドに射し込んだ。

光彩のカーテンを引き裂き、デプレのフィールドに漆黒の異形が姿を現した。

血の様に真っ赤な皮膚を被う漆黒の外郭。

6本の腕に竜の様な下半身。

鋭い眼光が雪鷹を睨みつける。

そして、フィールドに咆哮を轟かせた。

『ギシャァァァァァァァァァァァァ!!』




エーリアン・リベンジャー
効果モンスター
星6/闇属性/爬虫類族/攻2200/守1600
このカードはフィールド上のAカウンターを2つ取り除き、
手札から特殊召喚できる。
1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在する
全てのモンスターにAカウンターを1つ置く事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
Aカウンターが乗ったモンスターは、
「エーリアン」と名のついたモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算時のみAカウンター1つにつき攻撃力・守備力が300ポイントダウンする。
「エーリアン・リベンジャー」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。




眼前に立ち塞がるリベンジャーの姿に雪鷹の表情が歪む。

その表情を見て、デプレの口角が上へと釣り上がる。

「リベンジャーの効果発動。1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターにAカウンターを乗せる」

リベンジャーの胸元から弾丸のようにして紫色の光が打ち出され、その光はダーク・クルセイダーに直撃し身体の中へと浸透していった。

「バトル。リベンジャーでダーク・クルセイダーに攻撃。リベンジ・オブ・オーバーロード!」

リベンジャーが6本の腕を銃口の様な胸に翳し、体内のエネルギーを身体の中心部へと集中させていった。

そして、溜まったエネルギーを熱線に変換しダーク・クルセイダーへと放った。

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「なんで!? ダーク・クルセイダーの方が攻撃力は高いのに・・・・」

デプレの攻撃宣言に観客席で見ていた翔が声を上げて驚愕した。

それは翔だけではなく、デプレの攻撃宣言に会場にいた大半の生徒たちが驚愕していた。

「もしかしたら、あのモンスターにはまだ他に何か効果が有るんじゃ・・・・」

神妙な顔つきをした明日香がそう呟くと、隣に座っていた理子が微笑みながら答えた。

「その通りです。エーリアン・リベンジャーにはAカウンターを乗せる他に効果が有ります。それは、Aカウンターの乗ったモンスターがエーリアンと名のつくモンスターと戦闘する時、ダメージ計算時のみそのモンスターの攻撃力はAカウンター1つにつき、300ポイントダウンするんです」

丁寧に説明する理子の言葉を聞いて、翔と明日香は目を見開いた。

「! じゃ、ダーク・クルセイダーの攻撃力は・・・・」

「2400から、2100へと下がる」

2人の額を汗が滑り落ちて行く。

しかし、そんな2人に追い打ちを掛けるようにアヤメが言葉を発した。

「ち、違います」

アヤメの言葉に全員の視線がアヤメに向かった。

「違うって、何が違うんだ?」

アヤメの言葉に十代は首を傾げ訊ねた。

「デプレさんのフィールドには、エーリアン・ウォリアーがいます。う、ウォリアーにも、リベンジャーと同じ効果が有るんです。だから、ダーク・クルセイダーの攻撃力は、600ポイント下がるんです」

訊ねられたアヤメは、オドオドしながら答えた。

その言葉に、全員がバッと再びフィールドに視線を向けた。

アヤメの言葉通りなら、現在のダーク・クルセイダーの攻撃力は2400から600ポイント下がり、1800となっている。

リベンジャーでクルセイダーが破壊されれば、残ったウォリアーの攻撃をもろに食らってしまう。

そうなれば雪鷹は大ダメージを受けてしまう。

全員の頭に不安の2文字が駆け抜けて行った。

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放たれた熱線が真っ直ぐにクルセイダーへと向かって行く。

「この瞬間、墓地のネクロ・ガードナーの効果発動! このカードをゲームから除外する事で、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする事できる! リベンジャーの攻撃を無効にする!」

向かい来る熱線は、クルセイダーに直撃する寸前で向きを変え、天上へと向かって行き爆発した。

爆発の火花がフィールドに降り注ぐ。

火花越しに2人の眼光がぶつかる。

「フッ、凌いだか。まぁいい。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」




デプレ LP4000
手札2枚
フィールド モンスター 《エーリアン・ウォリアー》《エーリアン・リベンジャー》
魔法・罠 《「A」細胞増殖装置》 セット1




雪鷹が攻撃を凌いだ事で観客席にいる翔たちがホッと安堵の息をついた。

「俺のターン、ドロー!」

観客席の状態も気に留めず、雪鷹はカードをドローした。

引いたカードを手札に加え、手札とフィールドを交互に確認すると、雪鷹は対面に居る自分の相手をその瞳に映した。

獣の様に鋭い眼差しに強張った表情。

しかし、その表情からは何処か楽しげな感情が感じられる。

その事を怪訝に思いながら雪鷹は気にせずプレイに戻った。

「ダーク・クルセイダーの効果発動! 手札のネクロ・ガードナーを墓地へ送り、ダーク・クルセイダーの攻撃力を400ポイントアップさせる!」

再びダーク・クルセイダーの身体から漆黒のオーラが溢れだし、クルセイダーの瞳が真っ赤に輝いた


ダーク・クルセイダー 攻撃力2400→2800


「更に墓地に存在するネクロ・ディフェンダーの効果発動! 自分のメインフェイズ時、墓地のこのカードをゲームから除外する事で、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体は次の相手ターンのエンドフェイズまで戦闘破壊されず、戦闘で発生する自分へのダメージも0になる。俺の場にいるのはダーク・クルセイダー1体。よってこのターン、ダーク・クルセイダーは戦闘破壊されず自分へのダメージも0になる! バトル! ダーク・クルセイダーでリベンジャーに攻撃!」

ダーク・クルセイダーは大剣を両腕で力強く握りしめ、リベンジャーへと向かって行った。

漆黒の巨獣に立ち向かう漆黒の騎士。

まるでおとぎ話に出てくる様な光景が観客たちの視界に広がった。

「罠カード発動。《亜空間ジャンプ装置》。このカードは、自分フィールド上のモンスターと相手フィールド上のAカウンターの乗ったモンスターのコントロールを入れ替える。俺は、ウォリアーとダーク・クルセイダーのコントロールを入れ替える」




亜空間ジャンプ装置
通常罠
自分フィールド上モンスター1体と、
相手フィールド上のAカウンターが乗ったモンスター1体の
コントロールを入れ替える。




「そうはさせない! カウンター罠発動! 《闇の幻影》! 亜空間ジャンプ装置の発動を無効にして破壊する!」

雪鷹の背後から漆黒の風が吹き荒び、デプレのフィールドの反転したカードを破壊していった。

「チッ」

罠を防がれた事にデプレは表情を微かに歪ませ舌を打った。

ダーク・クルセイダーの大剣を振りかざし、リベンジャー目掛けて勢いよく振り下ろした。

リベンジャーも6本の腕でクルセイダーに襲い掛かるが、見えない壁に攻撃を遮られてしまった。

『ギシャァァァァァァァァァァ!!』

けたたましい悲鳴を轟かせ、リベンジャーは大剣に一刀両断され、爆音と共に爆発していった。

「・・・」

爆風に襲われても、デプレは無表情のままその場に佇んでいた。

「メインフェイズ2で俺は《黒曜岩竜》を守備表示で召喚して、ターンエンド」

ダーク・クルセイダーの隣のゾーンから光が溢れだし、その輝きの中から黒紫色の色彩を放つ岩石の身体を持つ小さな竜が姿を現した。



黒曜岩竜
効果モンスター
星4/闇属性/岩石族/攻 800/守2100
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上の闇属性モンスター1体を
対象とする魔法・罠カードの効果を無効にし破壊する。




雪鷹 LP4000
手札1枚
フィールド モンスター 《ダーク・クルセイダー》《黒曜岩竜》
魔法・罠 無し




「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時、増殖装置の効果が発動する。黒曜岩竜にAカウンターを乗せる」

培養液の1つの蓋が開き、その中から紫色の物体が勢いよく飛び出し、黒曜岩竜へ飛び付こうとした。

「無駄だ! 黒曜岩竜の効果発動! このモンスターがいる限り、闇属性1体を対象とした魔法・罠カードの効果を無効にし破壊する!」

飛び来るAカウンターを睨みつけ、黒曜岩竜は特大の咆哮を轟かせた。

『グウォォォォォォォォォォォ!!!!』

肌を震わす咆哮に思わず生徒たちは耳を塞ぐ。

その咆哮に吹き飛ばされ、Aカウンターは培養機の許へ飛んで行き、培養機も咆哮に震わされ粉々に砕け落ちてしまった。

「チッ! ならば、俺は《エーリアン・サイコ》を守備表示で召喚する」

培養機を破壊されデプレは舌を打ちつつディスクにカードをセットした。

すると、光と共にデプレのフィールドに小さなエーリアンが現れた。

触手の様な腕で守りの体勢をとり、小さな咆哮を上げ、雪鷹を威嚇する。




エーリアン・サイコ
効果モンスター
星1/闇属性/爬虫類族/攻 200/守 100
このカードは召喚・反転召喚に成功した場合守備表示になる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
Aカウンターが乗ったモンスターは攻撃宣言をする事ができない。




「カードをセットし俺はこのままターンエンドだ」




デプレ LP4000
手札2枚
フィールド モンスター 《エーリアン・ウォリアー》《エーリアン・サイコ》
魔法・罠 セット1




「俺のターン、ドロー! 俺は、魔法カード《闇の誘惑》を発動! デッキからカードを2枚ドローして手札から闇属性モンスター1体をゲームから除外する」

雪鷹はデッキからカードを2枚ドローし、手札のカードを1枚自分のポケットへと仕舞い込んだ。

「そして、《天使の施し》を発動! デッキからカードを3枚ドローし、手札を2枚墓地に捨てる」

再び雪鷹はデッキからカードをドローして、今度は手札を2枚抜き取り墓地へ送った。

「これで俺はターンエンドだ」




雪鷹 LP4000
手札2枚
フィールド モンスター 《ダーク・クルセイダー》《黒曜岩竜》
魔法・罠 無し




「あれ? なんで雪鷹は攻撃しなかったんだ?」

そう言って十代は首を傾げる。

隣に座る翔と明日香も同意見の様で、十代と同じように不思議そうな表情を浮かべていた。

「今相手のフィールドには攻撃力を上げるウォリアーに謎のエーリアンがいるわ。仮にあのエーリアンも攻撃力を下げる効果が有ったとしても、ダーク・クルセイダーに乗っているAカウンターは1つ。攻撃力も下がって300ポイント。それでもクルセイダーの攻撃力は2200と2体の攻守を上回っているわ」

なのに何故と怪訝な表情を浮かべる明日香に再びアヤメが説明する。

「サイコがいる限り、Aカウンターの乗ったモンスターは攻撃する事が出来ないんです。カウンターの乗っていない黒曜岩竜で攻撃しなかったのは、伏せカードを危惧しての判断だと思います」

フィールドを見つめ冷静な判断で下した結論を理子は3人に説明した

その節未明を受けて3人は納得と言いたげに頷いた。

「だが不思議だな」

突然聞こえた声に全員が喫驚した。

声のした方に全員が顔を向けると、そこにはラーイエローの制服を着た男子生徒が神妙な顔つきで雪鷹のデュエルを観戦していた。

「なんだ、三沢かよ。脅かすなよ」

その姿を見た十代がホッと息をつきそう言った。

男の名は三沢大地。

雪鷹たちと同じくラーイエローに所属している生徒で、筆記テスト3位の知識と実力を持つ秀才である。

「すまない。先程から居たんだが、気付かなかったのか?」

『うん、まったく』

そう言って十代たちはバッサリと三沢を切り捨てる。

気付かなかったと真っ向からハッキリと言われ、三沢はどんよりとしたオーラを纏い落ち込んでしまった。

その様子にアヤメが苦笑いを浮かべて見ていた。

「で、何が不思議なの?」

落ち込む三沢を一切気にせず明日香が訊ねた。

「おっと、 そうだった」

訊ねられた事で三沢は落ち込みから立ち直り、再びフィールドに視線を送った。

「相手選手、デプレさんがさっき使用したエーリアン・リベンジャーだが、新パックにはそんなモンスター入ってないんだ」

「(ピク)」

三沢の言葉に理子とアヤメの眉が微かに動いた。

「え? でも、現にデプレさんはそのカードを使用してるよ?」

三沢君の勘違いじゃない?

そう言って翔は苦笑いを浮かべた。

しかし、三沢は納得いかないと言った表情を浮かべたままデプレの事を見ていた。

「いや、勘違いじゃない。俺は新パックに入っているカードのリストを海馬コーポレーションに注文していたから、間違いはない。そのリストの中にあのモンスターの名は無かった」

そう言って三沢は目を細めデプレと雪鷹のデュエルを静観した。

三沢の言葉に十代たちは怪訝な表情を浮かべフィールドに目をやった。

雪鷹のエンドフェイズでターンがデプレに移り、デプレはデッキからカードを静かにドローしていた。

「でも、あの人はペガサスミニオンなんだから、ペガサスさんから特別にカードを作って貰ったってこともあるんじゃない?」

「えぇ~、それってズルくないか?」

三沢の疑問に仮定の回答を述べた翔に十代は顔を少し歪ませそう言った。

「そうだとしたら、あの人はそれなりの実力を持っている事になるわね」

そう言って明日香の額に汗が浮かんだ。

明日香の言葉を聞いて十代と翔の額にも汗が浮かび上がる。

心配そうな面持ちで3人はフィールドを見つめる。

「不思議な事はもう一つある」

「え?」

三沢の突然の言葉に3人は素っ頓狂な声を上げた。

「確かにペガサスミニオンであり、相当な実力者であるならば、ペガサス会長からオリジナルカードを作って貰ったことも可能性の1つだ。だが、俺が今一番不思議に思っているのは、君たちだ」

そう言って三沢は理子とアヤメを指差した。

突然指を差され2人は目を見開き驚愕した。

理子は何処か案の定と言いたげな表情を浮かべ、アヤメは突然の事にアタフタし出した。

「2人の何処が不思議なの?」

三沢の言った言葉の意味が分からず明日香はそう訊ねた。

「俺はさっきエーリアン・リベンジャーというカードは新パックに入っていないと言った。入っていないと言う事は、そのカードの攻撃力・守備力・効果など一切知らないと言う事だ。だが、彼女たちは先程、リベンジャーの効果を君たちの説明していた。これは少し矛盾しないかい?」

そう言って三沢は鋭い眼光で2人を睨みつけた。

その視線に対抗するように理子も三沢を睨み返した。

アヤメは何処かバツが悪そうな表情を浮かべ三沢から視線を逸らしていた。

三沢の言葉を聞いて明日香たちはハッと思い出していた。

確かに2人は自分たちにリベンジャーの効果を説明していた。

攻撃力を下げる効果だけだったが、2人の口調は当てずっぽうではなく知っているような口調だった。

その事を思い出し、明日香は何故2人が知っているのか、と疑問を感じ、2人に視線を向けた。

未だ理子と三沢の睨み合いが続いていて、三沢から視線を逸らすアヤメは明日香たちからも視線を逸らしていた。

「別に2人を責めている訳じゃないんだ。ただ、何故2人はリベンジャーの効果を知っていたのか知りたいだけなんだ。だからそう睨まないでくれ」

先程と打って変わって優しげな口調で三沢は2人を諭すように訊ねた。

その言葉で理子は漸く睨むのを止め、アヤメも恐る恐る三沢に視線を向けた。

何かを言わなければならないと理子とアヤメは内心すごく焦っていた。

実は自分たちは転生者で、リベンジャーなどこの世界で生まれていない多くのカードを所持している。

などとは口が裂けても言えない。

言ったところで信じるはずもない。

ならどう言えばいいのだろうと2人は考える。

2人の回答を三沢たちは静かに待っている。

その沈黙が2人に焦燥感を与えているとも知らずに。

何か言わなければと焦る理子は、口をから何かを言い掛けた時だった。

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

「っ!?」

轟音の様に会場に轟く歓声に、フィールドから目を離していた十代たちは何事かと話を打ち切りフィールドに視線を向けた。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼


「俺のターン、ドロー」

相も変わらずデプレは静かにデッキからカードをドローする。

「俺は魔法カード《強欲な壺》を発動。デッキからカードを2枚ドローする」

デプレの手札が4枚へと増えて行った。

増えた手札を確認して、デプレが表情を歪めて笑った。

「俺は《エーリアン・マーズ》を召喚!」

サイコの隣から炎が巻き起こり、その炎の中からサイコと同じ大きさで、肌色の上半身に触手の様な腕と下半身がウネウネと動き、サイコと同じような声で小さな咆哮を上げた。

「そのモンスターは!?」

マーズの姿に、雪鷹は焦ったような表情を浮かべ声を荒げた。

その姿にデプレの口角が上へと釣り上がって行った。

「その顔を知っているようだな。その通りだ! マーズがいる限り、マーズ以外のAカウンターン乗ったモンスターの効果は無効化される!」




効果モンスター
星3/炎属性/爬虫類族/攻1000/守1000
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
「エーリアン・マーズ」以外のAカウンターが乗った効果モンスターの効果は無効化される。




マーズの額から紅い閃光が放たれ、その輝きに照らされ、クルセイダーと岩竜の中に潜んでいた浸食細胞が2体から力を吸い取り始め、2体を覆っていた黒オーラが細胞に吸収され消えていった。


ダーク・クルセイダー攻撃力2800→1600


「クルセイダーの攻撃力が!?」

観客席で翔が叫んだ。

同様に明日香たちの顔にも焦りの色が浮かんでいた。

心配な表情を浮かべる明日香たちとは違い、アヤメは曇りの無い眼差しでフィールドに立っている雪鷹の背を無言で見つめた。

観客席で心配する明日香たちの事を露知らず、雪鷹は眉1つ動かさず眼前のモンスターたちを見つめた。

「そして、俺はフィールド魔法《異界空間Aゾーン》を発動!」

フィールドに歪みが走る。

空間がねじ曲がり、物体が屈折する。

色を適当に混同したような模様の空が天上に広がり、宙を岩石が縦横無尽に漂う。

模様のその先には、美しく輝く星たちが瞬く大宇宙が広がっていた。

正にこの空間は異界であった。




異界空間Aゾーン
フィールド魔法
相手モンスターが自分フィールド上に存在する「エーリアン」と名のついた
モンスターと戦闘する場合、相手モンスターの攻撃力と守備力は
ダメージ計算時のみ300ポイントダウンする。




「この空間が存在する限り、相手モンスターがエーリアンと名のついたモンスターと戦闘を行う場合、その相手モンスターの攻守はダメージ計算時のみ300ポイント下がる」

デプレがニヤリと微笑する。

「さらに永続魔法《古代遺跡コードE》を発動!」

 地響きを轟かせ、鋼の大地を突き破り、太古の遺跡が姿を現した。

煉瓦で出来た廊下に滴る紫色の液体。

そしてその先に存在する紺碧色の空間。

その中央に浮遊する漆黒の球体が微弱な電気を発している。

それは遺跡というより宇宙人の船の中と言った様な感じだろう。

「バトル! マーズでクルセイダーを攻撃!」

マーズは両手の触手を振りかざし、クルセイダー目掛けて両腕を伸ばした。

マーズの両腕に捉えられ、クルセイダーはもがきながら大剣を振るった。

振るった剣がマーズの胴体へと命中し、マーズは激痛に悲鳴を轟かせた。

そして、痛みの余り両腕に力を入れ、クルセイダーを締め付けた。

2体は悲鳴を轟かせながら同時に爆発していった。

爆風が2人を襲う。

しかし、そんな事を気にせず爆煙の向こうの敵を睨みつけていた。

「この瞬間! エーリアンが破壊された事で遺跡にAカウンターを1つ乗せる!」

爆煙の中から紅い球体がコロコロと転がり出て、遺跡の中へと転がって行った。

そして、漆黒の球体へと吸い込まれていった。

「この遺跡は、フィールド上のエーリアンが破壊される度にAカウンターが乗る。そして、遺跡に乗っているAカウンターを2つ取り除くことで、墓地からエーリアン1体を特殊召喚する」

そう言ってデプレは口元を歪ませて微笑して見せた。

その表情はまるで相手を痛めつける事を楽しんでいるかのようだ。

「まだ戦闘は終わってはいない! ウォリアーで黒曜岩竜に攻撃!」

橙色の瞳をぎらつかせ、ウォリアーは咆哮を轟かせながら黒曜岩竜へと向かって行った。

そして、その大きく鋭利な爪で、黒曜石の様に美しい黒紫の身体を引き裂いた。

悲鳴のような咆哮がフィールドに響き渡った。

咆哮を上げながら、黒曜岩竜は爆発した。

「俺はこれでターンエンドだ」




デプレ LP4000
手札1枚
フィールド モンスター 《エーリアン・ウォリアー》《エーリアン・サイコ》
魔法・罠 《異界空間‐Aゾーン》《古代遺跡コードA》




エーリアンの攻撃に、雪鷹のフィールドががら空きになってしまった。

その現状に明日香たちの表情に焦りの色が浮かぶ。

未だに両者はダメージを食らっていない。

気の抜けない一進一退の攻防戦に生徒たちは固唾を呑んだ。

「俺のターン、ドロー!」

明日香たちと違い、一切の焦りも見せず、凛とした態度で雪鷹はカードをドローする。

「俺は、《強欲な壺》を発動! デッキからカードを2枚ドローする」

先程デプレが使用したドローソースを今度は雪鷹が使用した。

手札1枚という状態から手札を一気に3枚まで増幅させた。

この局面でドローソースを引き当てる2人の引きの強さに明日香たちは十代へと視線を移した。

視線を向けられた十代は何の事か分からず首を傾げる。

デッキからカードを2枚ドローして、引いたカードを手札に加え確認する。

そして、雪鷹はニヤッと笑みを浮かべた。

「俺の墓地には闇属性モンスターが5体存在する。よって、手札からこのモンスターを召喚する事が出来る! 現れろ! 《ダーク・クリエイター》!!」

雪鷹のフィールドに闇が溢れ、漆黒の煙がとぐろを巻いて渦巻く。

渦巻く闇の中で、バチバチと電気が帯電している。

帯電した電気をその身に纏い、深紅の瞳をぎらつかせ、闇を振り払い漆黒の姿が光に曝された。

ダーク・クリエイター。

漆黒の創生者が、ここに降臨した。




ダーク・クリエイター
効果モンスター
星8/闇属性/雷族/攻2300/守3000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に闇属性モンスターが5体以上存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に特殊召喚できる。
1ターンに1度、自分の墓地の闇属性モンスター1体をゲームから除外する事で、
自分の墓地の闇属性モンスター1体を選択して特殊召喚する。




「あれって、創生神(ザ・クリエイター)!? でも、なんだか雰囲気が違うような・・・・」

観客席で翔がダーク・クリエイターの姿にそう意見を零した。

「確かに創生神にそっくりね。名前にもクリエイターが付いているわ。恐らく、効果も同じはず・・・・」

鋭い眼差しでダーク・クリエイターを観察し、明日香はそう推測した。

「ダーク・クリエイターの効果発動! 1ターンに1度、墓地の闇属性モンスター1体を除外する事で、墓地の闇属性モンスター1体を特殊召喚する事が出来る! 俺は、黒曜岩竜をゲームから除外し、《終末の騎士》を特殊召喚する!」

クリエイターの掌から闇が溢れだ、その闇をクリエイターは天へと放った。

天へと放たれた闇の中から、漆黒の放浪騎士がフィールドへと降り立った。

「天使の施しの時に墓地へ送ったモンスターか」

2体の登場にデプレは焦りも見せず静かに様子を窺っていた。

「終末の騎士の効果発動! このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。俺は、3枚目のネクロ・ガードナーを墓地へ送る」

雪鷹はデッキをディスクから取り外し、扇のように広げ、その中からカードを1枚抜き取り、墓地へと送ってデッキをディスクにセットし直した。

「俺はこのターン、まだ通常召喚を行っていない。終末の騎士をリリースし、《邪帝ガイウス》をアドバンス召喚!」

終末の騎士が光の粒子となって消えて行き、大地より渦を描くように闇が舞い上がる。

螺旋する闇の中で、赤い光がギラリと輝く。

闇を振り払い、深紅の瞳をギラつかせ、黒紫の鎧を纏った巨体がその姿を現す。

「帝モンスター!?」

ガイウスの登場に生徒たちがどよめいた。

それもそのはずだ。

ガイウスはこの世界で希少なカード。

それを、以前ゴーズを召喚して見せた雪鷹が召喚した。

超レアカードを所持している雪鷹。

プラネット・シリーズのカードを所持している直哉。

観客席の明日香たちは、2人の存在が改めて分からなくなってしまった。

「そのモンスターは!?」

ガイウスの姿を見て、デプレが初めて焦りを見せた。

「ガイウスの効果発動! アドバンス召喚に成功した時、相手フィールド上のカード1枚を選択して除外する! 俺は、ウォリアーを除外する!」

ガイウスは両手を向かい合わせ、掌中に漆黒の球体を作り出した。

そして、作りだした球体をウォリアー目掛けて撃ち放った。

放たれた球体によって、ウォリアーは次元の歪みへと誘われ、異次元の彼方へと消えていった。

「クッ!」

ウォリアーの除外に、デプレは表情を歪め雪鷹の事を睨みつけた。

「バトル! ダーク・クリエイターでエーリアン・サイコに攻撃! ダークネス・ボルテックス!!」

クリエイターは右腕を天へと掲げ、天井に暗雲を呼び寄せた。

暗雲はその中で雷を轟かせ、内で稲光を光らせていた。

クリエイターは、掲げた右手を勢いよく振り下ろし、デプレの場にいる小さなエーリアン目掛けて、漆黒の雷を落とした。

『キュィィィィィィィィィィィィ!!』

雷に撃たれ、サイコの悲痛な叫びが木霊する。

悲鳴を轟かせ、サイコは光の欠片となって破壊されていった。

「クッ!」


デプレ LP4000→1900


散って行った光の欠片がデプレを襲った。

これでデプレのフィールドはがら空きになった。

ガイウスの攻撃が通れば、雪鷹の勝ちが決まる。

勝利を確信した明日香たちが嬉々とした表情でフィールドを見つめた。

「ガイウスで止めだ! ダークネス・ボール!!」

ガイウスは再び掌中に漆黒の球体を作り出し、それをデプレ目掛けて撃ち放った。

撃ち放たれた球体は弾丸のように突き進んで行き、デプレの眼前へと迫って行った。

自分に向かい来る漆黒の球体を見つめ、デプレは微かに笑みを浮かべた。

「ッ!」

その笑みに雪鷹は目を見開いた。

ゴーン、ゴーン、ゴーン

フィールドに響き渡る鐘の音。

何事かと全員が辺りを見渡す。

そして、会場に居る全員の瞳に映ったのは、デプレの眼前で制止したガイウスの放った漆黒の球体だった。

何故、その言葉が生徒だけではなく教師たちの頭を過った。

「そいつは・・・・」

デプレと対面する雪鷹には、何が起きたのか分かっている様子だった。

そんな雪鷹の視線の先には、漆黒の翼を羽撃かせた振り子のように尾の先に着いた鐘を振り、時報を伝えているような小さな悪魔が浮遊していた。

そんな雪鷹の呟きに、デプレは歪んだ笑みを浮かべた。

「“バトルフェーダー”」




バトルフェーダー
効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、
フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。




デプレの言葉に、会場に居る全員は漸くその姿を捉える事が出来た。

しかし、捕えられても何が起こったのかは未だに理解できていなった。

「あんなモンスターいつ召喚したんスか?」

翔がバトルフェーダーの姿を見て首を傾げて言った。

「それ以前に、一体何が起こったの?」

バトルフェーダーもそうだが、デプレのライフポイントが減っていない事に明日香は怪訝な表情を浮かべていた。

「あのモンスターは・・・・」

理子とアヤメは自分の目を疑っていた。

あのモンスターを自分たちはよく知っていた。

しかし、あのモンスターはこの世界には存在しないモンスター。

なのに、デプレはそれを当り前のように使っている。

疑問符が幾つも2人の頭上に現れる。

そんな2人の様子を三沢は静かに見つめていた。

バトルフェーダーの奏でる鐘の音により、デプレの目の前に浮遊している球体がスーッと消えていった。

「俺はこれでターンエンドだ」




雪鷹 LP4000
手札1枚
フィールド モンスター 《ダーク・クリエイター》《邪帝ガイウス》
魔法・罠 なし




「俺のターン、ドロー!」

観客たちが状況を掴めていないのを無視して、2人はデュエルを続けた。

「さっきの戦闘でサイコが破壊されたので、遺跡に2つ目のAカウンターが乗る」

遺跡に今度は黄緑色の球体が吸い込まれていった。

2つの球体を吸収した事で、遺跡が地響きのような鳴動を響かせた。

鳴動する遺跡を見てデプレはニヤリと頬を歪ませて笑みを浮かべた。

「遺跡にAカウンターが2つ乗った事で遺跡の効果を発動する事が出来る! 俺は遺跡のカウンターを2つ取り除き、墓地からリベンジャーを復活させる! 蘇れ、リベンジャー!!」

デプレの叫びに遺跡が大きく振動した。

まるで地震に見舞われたように大きく揺れ動いた。

そして、遺跡の周りを電流がバチバチと走り抜け、遺跡全体を帯電させた。

雷を纏いし遺跡から、2つの球体が天へと撃ち放たれた。

放たれた球体は空を覆う銀河へと吸い込まれていき輝きを放った。

その輝きは銀河に渦を作り、その渦の中から、漆黒の流星がデプレのフィールドに降り注いだ。

どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!

盛大な衝突音を轟かせ、デプレのフィールドを砂煙が覆い隠した。

煙の中で、パキパキと岩が砕けるような音が聞こえてくる。

まるで卵が孵化するような音だ。

そして、煙の中に2つの光がギラリと輝いた。

やがて、煙は晴れて行き、その中から漆黒の巨獣が姿を現した。

『ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

復活を喜ぶ復讐者の雄叫びがフィールドを振動させた。

「またリベンジャーが召喚された!」

帰って来たリベンジャーの姿に翔たちの額に焦りの色が戻った。

「リベンジャーの効果発動! 貴様のフィールド上に表側表示で存在するモンスター全てにAカウンターを1つ乗せる!」

リベンジャーの胸にある銃口から、2発の弾丸が放たれた。

放たれた浸食細胞がクリエイターとガイウスの中へと浸食していった。

これで2体の攻撃力はグンと下がってしまった。

「まだだ! 俺はバトルフェーダーを生贄に《エーリアン・マザー》を召喚する!」

浮遊するバトルフェーダーが光となって消えて行き、銀河から再び隕石がフィールドに降り立った。

リベンジャーの時同様に衝撃音が辺りに轟き、ベージュ色の隕石がデプレのフィールドに現れた。

その隕石もピキピキと卵の様に割れて行き、その中から赤紫色の肌にベージュの外郭をしたエーリアンが姿を現した。




エーリアン・マザー
効果モンスター
星6/闇属性/爬虫類族/攻2300/守1500
このカードが戦闘によってAカウンターが乗ったモンスターを
破壊し墓地へ送った場合、そのバトルフェイズ終了時に発動する。
破壊したそのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、
このカードがフィールド上から離れた場合、全て破壊される。




「バトル! リベンジャーでガイウスに攻撃! リベンジ・オブ・オーバーロード!!」

リベンジャーが6本の腕を銃口の様な胸に翳し、体内のエネルギーを身体の中心部へと集中させていった。

微かな光を放ちながら、エネルギーの充填が完了し、銃口から青紫色の閃光が放たれた。

ガイウスの攻撃力は2400、リベンジャーの攻撃力は2200。

通常ならリベンジャーの負けだが、今のガイウスにはAカウンターが乗っている。

Aカウンターの乗ったモンスターは、エーリアンと戦闘する場合、攻守が300ポイントダウンしてしまう。

リベンジャーにはその効果が備わっている。

だが、それだけではない。

今フィールドは異界空間に覆われている。

このフィールドには、リベンジャー同様にAカウンターの乗ったモンスターの攻守を300ポイントダウンさせる効果を持っている。

よって、今のガイウスの攻撃力は2400から1800へとダウンしている。

向かい来る閃光を止めようとするが、力叶わずガイウスは閃光に掻き消されて爆発していった。

ドガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

「クッ!」

爆風が雪鷹を襲った。


雪鷹 LP4000→3600


「エーリアン・マザーでダーク・クリエイターに攻撃!! プラネット・ブラスト!!」

マザーは両手を頭上に掲げ、両手の掌中に小さな隕石を作り出し、それを銀河へと打ち上げた。

打ち上げられた隕石は、多くの隕石を引きつけ、雪鷹のフィールドへと降り注いだ。

「墓地のネクロ・ガードナーを除外してその攻撃を無効にする!」

クリエイターの前にネクロ・ガードナーの幻影が現れ、降り注ぐ隕石から身を呈してクリエイターを守った。

「チッ、俺はカードをセットしてターンエンドだ」




デプレ LP1900
手札0枚
フィールド モンスター 《エーリアン・リベンジャー》《エーリアン・マザー》
魔法・罠 《異界空間Aゾーン》《古代遺跡コードA》 セット1




「俺のターン、ドロー! 俺は、ダーク・クリエイターの効果を発動させる。終末の騎士を除外して、ガイウスを守備表示で特殊召喚する」

再びクリエイターは頭上に手を翳し、天井に暗雲を呼ぶ。

暗雲に中で渦巻く闇の中から、ガイウスが再び雪鷹のフィールドへ舞い戻って来た。

しかし、ガイウスは先程の様に威風堂々たる姿ではなく、片膝をつき守りの体勢をとっている邪帝に有るまじき体勢だった。

「ダーク・クリエイターを守備表示に変更し、カードを1枚セットしてターンエンド」




雪鷹 LP3600
手札1枚
フィールド モンスター 《ダーク・クリエイター》《邪帝ガイウス》
魔法・罠 セット1




「俺のターン、ドロー」

デプレは引いたカードに視線を落とし、直ぐにその鋭い獣の様な眼差しを雪鷹へと向け直した。

「エーリアン・リベンジャーの効果発動! 相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター全てにAカウンターを乗せる」

リベンジャーの胸部から弾丸のようにして2発のA細胞が放たれた。

放たれたA細胞が跪いているダーク・クリエイターと邪帝ガイウスの体内へと浸食していった。

これでダーク・クリエイターの守備力3000が2100へとダウンしてしまった。

ニヤリとデプレの口が三日月を描いた。

「エーリアン・マザーでダーク・クリエイターに攻撃! プラネット・ブラスト!」

異空間銀河より燃え盛る隕石群がダーク・クリエイター目掛けて降り注ぐ。

「ネクロ・ガードナーを除外してその攻撃を無効にする!」

「罠発動! 《天罰》! 手札を1枚捨てネクロ・ガードナーの効果を無効にする!」

鳴り響く雷が雪鷹の墓地にいるネクロ・ガードナーに落ちる。

「クッ!」

何者にも阻まれること無く降り注ぐ隕石群が容赦なくダーク・クリエイターを襲う。

ドドドドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!

轟音を轟かせ爆炎が舞い上がる。

「クッ!」

爆風が雪鷹を襲った。

ダーク・クリエイターがフィールドから消えた瞬間、デプレは目を見開き満面の笑みを浮かべた。

「この瞬間、マザーの効果が発動する!」

「「「「え!?」」」」

デプレの言葉に観客席の翔たちが驚愕の声を上げた。

すると、雪鷹のフィールドに2つの紫色の物体が蠢いていた。

そこは、先程までダーク・クリエイターがいた場所だった。

蠢く物体、それはダーク・クリエイターの中にいたA細胞だと、翔たちは直ぐに気付いた。

するとその蠢くA細胞は、這いずる様にしてデプレのフィールドへと戻って行こうとしていた。

這いずる紫色の物体に、観客たちは気持ち悪さを覚え、嗚咽する者もその中にはいた。

デプレのフィールドまで辿り着いたA細胞は、その身体から紫色の体液を出し、デプレのフィールドに大きな体液の水溜りを作り出した。

すると体液はまるで磁性流体のように重力に逆らい上へと伸びて行った。

次々と伸び上がる体液は、徐々に形を成して行った。

出来上がっていく形に、翔たちの額を汗が伝い落ちて行った。

そして、形を作り出した体液の色が、紫から漆黒に変わっていく。

漆黒に染まったその形を見て、デプレがニヤッと笑みを浮かべた。

漆黒の形を見て、会場が騒然とし出した。

何故?

どういう事?

一体どうなって?

そう言った疑問の声が雪鷹の耳に入り込む。

騒然とする観客と違い、対面している雪鷹はいたって冷静だった。

その冷たい眼差しの先には、自分が使役していた漆黒の創生神、ダーク・クリエイターが深紅の瞳でこちらを見下ろす姿で佇んでいた。

「なんでダーク・クリエイターが相手フィールドに!?」

状況が理解できず翔は椅子から立ち上がり叫んだ。

隣に座る十代も訳が分からず、頭上にクエスチョンマークを浮かせて混乱していた。

「あのモンスター、もしかして戦闘破壊したモンスターのコントロールを得る効果が有るのかしら?」

明日香は腕を組み、右手の指で自分の顎をつまんでそう推理した。

「嗚呼。天上院君の見立て通りだよ。あのモンスター、エーリアン・マザーは、Aカウンターの乗ったモンスターを戦闘破壊した時、その破壊したモンスターのコントロールを奪う事が出来るんだ」

「そんな!?」

三沢の解説に翔と十代は目を見開いて驚愕した。

「不味いわね。今はまだ戦闘の途中。相手のフィールドに攻撃モンスターが増えてしまった。これで雪鷹にダメージが通ってしまうわ」

静かにそう呟いた明日香の額を汗が伝い落ちる。

「心配ありません」

雪鷹の敗北を危惧した明日香の呟きを、アヤメの言葉が否定した。

その言葉に全員がアヤメに視線を向ける。

「マザーの効果は、戦闘終了後に発生します。だから、ダーク・クリエイターがデプレ、さんのフィールドに現れた時点で、デプレさんのバトルフェイズは、終了しています」

ホラ、と言葉を付け加え、アヤメがフィールドに目を向けるのを追う様に全員がフィールドに視線を向け直した。

「俺はこれでターンエンドだ」




デプレ LP1900
手札0枚
フィールド モンスター 《エーリアン・リベンジャー》《エーリアン・マザー》
魔法・罠 《異界空間Aゾーン》《古代遺跡コードA》




「ククッ、噂以上に楽しめたが、所詮はこの程度か」

デプレは失望したような表情を浮かべ、雪鷹を憐れむような目で見つめた。

「なぁ、気になっていたんだけど、噂ってなんの事だ?」

当初からデプレが零していた噂という言葉が気になり、雪鷹はそう訊ねた。

「知りたいか?」

デプレは意地悪な笑みを浮かべ雪鷹に訊ね返した。

デプレの言葉に雪鷹は無言で頷いた。

「俺に勝てたら教えてやる。勝てれば、な」

そう言ってデプレは「ギャハ、ギャハハハ」と奇怪な笑い声で笑った。

その言葉に、雪鷹の目が鋭くナイフの様に鋭利な物へと変わった。

「俺のターン、ドロー!

雪鷹は勢いよくカードを引き抜いた。

「ッ!」

すると、引いたカードを見て雪鷹は目を見開いた。

その姿にデプレの笑いが止まった。

そして、雪鷹の口がニヤリと三日月に割れた。

「へっ! やっと来たか!」

「ッ!?」

雪鷹の言葉にデプレは目を見開いた。

「このデュエル、もらった! 俺は手札から《D.Dクロウ》を墓地に送って、アンタの墓地にあるマーズを除外する!」

雪鷹の墓地から漆黒の烏が飛び出し、デプレの墓地に居る火星のエイリアンを鷲掴みにして次元の彼方へと飛び去って行った。

「一体何がしたいんだ?」

生徒たちは雪鷹の行動が理解できず、プレイングミスかと嘲笑う声が聞こえてくる。

しかし、デプレは生徒たちと違った。

デプレは雪鷹のプレイを見て、何故だか不安感に包まれていた。

嫌な汗がデプレの額を伝って行く。

伝い落ちる汗がフィールドに落ちたと同時に、雪鷹の口が三日月に割れた。

「俺の墓地には、闇属性モンスターが3体のみ存在している。よって、このカードの召喚条件が揃った! 現れろ! 暗黒の闇に巣食いし破壊竜! ダーク・アームド・ドラゴン!!」

雪鷹の墓地から3体の闇が飛び出し、フィールドを縦横無尽に飛び回る。

飛び回る闇は、螺旋し渦を生み、雪鷹のフィールドに舞い降りた。

『グウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!』

渦巻く漆黒の闇が咆哮によって吹き飛ばされた。

闇の中から、刺々しい刃が覆う甲殻を纏いし漆黒の龍がその姿を現した。




ダーク・アームド・ドラゴン
効果モンスター(制限カード)
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の闇属性モンスターが3体の場合のみ特殊召喚できる。
自分のメインフェイズ時に自分の墓地の闇属性モンスター1体を
ゲームから除外する事で、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。




「そのモンスターは・・・・」

自信を睨む金色の瞳に射ぬかれ、デプレの額を汗が伝い落ちる。

微かだが、その声が震えているように思える。

「ダーク・アームド・ドラゴンの効果発動! 墓地の闇属性モンスター1体をゲームから除外して、相手フィールド上のカードを1枚破壊する! 俺は、墓地のダーク・クルセイダーを除外してエーリアン・マザーを破壊する! ダーク・ジェノサイド・カッター!!」

ダーク・アームド・ドラゴンは徐に両腕を頭上に振りかざし、その腕を勢いよく振り下ろした。

それと同時に、ダーク・アームド・ドラゴンの両肩に付いている刃がブーメランのように回転しながら飛び出し、エーリアン・マザーに襲い掛かった。

『ギシャァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!

ダーク・ジェノサイド・カッターが命中し、マザーは轟音と悲痛な叫びを轟かせ爆発して逝った。

「マザーが破壊された事で、クリエイターが自壊する!」

そう言って雪鷹は嬉々とした笑みを浮かべた。

その表情を見て、デプレは「クッ」と苦虫を噛み潰したような表情で雪鷹を睨みつけた。

ダーク・クリエイターの形を形成していたA細胞が、氷が解けるように崩れて行く。

泥人形が解けて行くよう紫色の体液がドロドロと流れ落ちて行き、漆黒のその姿は紫の水溜りの中へと消えて行った。

「ダーク・アームド・ドラゴンの効果は1ターンに1度じゃない! よってもう一度効果を発動する!」

雪鷹はそう言って墓地から邪帝ガイウスのカードを取り出し、ポケットへとしまう。

そして再びダーク・アームドは両腕を振るい、漆黒の刃を撃ち放った。

放たれた刃は遠心力を得て鋭利さを増し、輝きを放ちながら狂いなくその刃で眼前の復讐者を切り裂いた。

『ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

リベンジャーはマザーと同じように悲痛な叫びを轟かせながら爆発して逝った。

「クッ!」

爆風がデプレを襲う。

爆炎が徐々に晴れて行くと、壁モンスターの存在しないデプレのフィールドが観衆の目に飛び込んできた。

「すごい・・・・あの状況から、一気に大逆転した・・・・」

目の前で起こった事に明日香は信じられないと言いたげな表情を浮かべた。

そんな明日香の隣に座っているモモエとジュンコも同様の表情を浮かべ、空いた口が塞がらないと言った状態で固まっていた。

「これで相手を守る者は何もなくなった!」

「行っけぇ! 雪鷹!」

明日香たちとは違い、十代と翔はこれで雪鷹の勝利だと椅子から立ち上がり歓喜して声援を送っていた。

「なんてモンスターなんだ・・・・。墓地に闇属性が3体のみの場合に特殊召喚できて、墓地の闇属性を除外する事でフィールドのカードを制限無しに破壊する効果。面白い・・・・」

三沢はフィールドに存在するダーク・アームドを観察し、その効果に冷や汗を流すが、どうやってこのモンスターを攻略するかという事に楽しさを感じていた。

モンスターが居なくなったデプレのフィールドを見つめ、雪鷹は静かに呟いた。

「アンタ、言ったよな。俺の実力はこの程度かって」

その言葉にデプレは恐る恐る雪鷹へと視線を向け直した。

デプレの視線の先には、前髪で目元が隠れた雪鷹がこちらを向いて佇んでいた。

その姿勢にデプレは言いようのない恐怖感を感じ、全身を震えが走り抜けて行った。

「俺の実力は、こんなもんじゃないよ! リバースカードオープン! 《異次元からの埋葬》!!」

「何!?」




異次元からの埋葬
速攻魔法(制限カード)
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、
そのカードを墓地に戻す。




「このカードは、ゲームから除外されているモンスターを3体まで墓地に戻す事が出来る! 俺は、ゲームから除外されているネクロ・ガードナー3枚を墓地に戻す!」

そう言って雪鷹は自分のポケットにしまっていたカードを取り出し墓地に戻した。

これで雪鷹の墓地には、闇属性モンスターが5体。

デプレのフィールドには魔法カードが2枚。

デプレの額を汗が流れ落ちて行った。

「ダーク・アームド・ドラゴンの効果発動! 墓地のD.Dクロウを除外して、Aゾーンを破壊する!」

ダーク・アームドは、今度は両腕を勢いよく振り上げ、お腹にもある刃を空目掛けて撃ち放った。

パリィィィィィィィィィィィィィィィィン!!

放たれた刃は天を切り裂き、フィールドを包み込んでいた異空間の空がガラスの様に砕け落ちて行った。

「さらにネクロ・ガードナーを除外して、コードAを破壊する!」

ダーク・アームドは、振り上げた両腕を勢いよく振り下ろし、肩の刃を遺跡目掛けて撃ち放った。

ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

放たれた刃は遺跡の中へと入って行き、遺跡内の仕掛けを破壊して爆発を起こし遺跡は崩れ去って行った。

これで、デプレのフィールドは完全にがら空きになった。

「これで止めだ! ダーク・アームド・ドラゴンでダイレクトアタック! ダーク・アームド・パニッシャー!!」

『グウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』

ダーク・アームド・ドラゴンは咆哮を轟かせながら右腕を振りかざし、その腕に漆黒のオーラを纏わせた。

そして、その腕を勢いよくデプレ目掛けて振り下ろした。

振り下ろされる腕を見つめ、デプレは目を瞑りフッと微笑を浮かべた。

ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


デプレ LP1900→0


激しい爆音とブザーが会場に響き渡り、デュエルが終了を告げた。

爆音と共にソリッドビジョンが消えて行く。

「アンビリ~バブ~!? ししし、勝者! シニョ~ル相原なノ~ネ!!」

雪鷹がペガサスミニオンを倒した事に、クロノスは驚愕しつつも会場に勝利のアナウンスを響かせた。

そして、それと同時に会場に轟音が轟いた。

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

雪鷹の勝利に観客たちが雄叫びを上げた。

「すっげぇ! ペガサスミニオンに勝っちまったぜ!!」

「凄いデュエルだったぞ!!」

「いいぞ! 相原!!」

雪鷹の勝利に興奮し歓喜の声を上げる者たち。

「ペガサスミニオンに勝っただと!?」

「半端者のイエロー如きが、ペガサスミニオンを倒した・・・・」

「チッ、生き残っちゃった」

雪鷹の勝利に愕然とする者、退学免除に残念がる者の声を歓声の中には混じっていた。

そんな者たちの言葉を無視し、雪鷹はデプレの許へと歩み寄って行った。

「いいデュエルでした」

そう言って雪鷹はデプレに握手を求めた。

「嗚呼、こちらこそ」

差し出された手を掴み、デプレは微笑を浮かべながら握手に応じた。

握手を交わす2人に会場から拍手が送られた。

「それじゃ、勝ったから教えてくれないか? 噂ってやつを」

握手を解き、デュエル中にデプレが度々零していた噂という単語の意味を改めて雪鷹はデプレに訊ねた。

訊ねる雪鷹の視線は先ほどよりも鋭く、鋭利な物に変わっていた。

その視線にデプレは一瞬気圧されるものの、直ぐに微笑を浮かべ直し口を開いた。

「最初俺は、このデュエルの依頼を受ける気はなかった。たかが生徒とのデュエルなどする価値は無いと思っていたからだ。だが、そんな時、ペガサス様からある情報をお聞きした」

「情報?」

デプレの言った情報という単語を復唱する雪鷹。

雪鷹の鸚鵡返しにデプレは頷いて答えた。

「アカデミアには海馬瀬人も認めた実力者が2人いるらしい、とな」

「社長が?」

「嗚呼。最初は俺も半信半疑だったが、お前とデュエルして確信した。こいつがそのデュエリストだとな。恐らく、もう1人も同じく」

そう言ってデプレは雪鷹の後方にある出入り口に目を向けた。

「・・・・」

暗がりの中で、デプレの視線に気付いた直哉はフィールドで向かい合う2人の姿を鋭い眼差しで見つめていた。

視界に映りはしないが、デプレは暗がりから自分を射ぬくような視線を感じ、その威圧感に微笑を浮かべ微笑んだ。

「まぁ、認められているか否かは分からないけど、俺と直哉はそこいらの連中とは違うとだけ言っておくよ」

雪鷹はその言葉を残し、デプレ同様に微笑みを浮かべ、踵を返して直哉の待つ出入り口へと戻って行った。

去り行く雪鷹の背を見つめ、デプレはもう一度微笑むと自分も出入り口へと戻って行った。

パチパチパチパチパチパチ!!!!

フィールドから降りる2人に会場から盛大な拍手が送られた。

巻き起こる拍手の渦に包まれ、2人のデュエリストは暗がりへと消えて行った。

「お疲れさん」

そう言って降りてきた雪鷹の肩を直哉は軽く叩いた。

「嗚呼。まさか、デプレが相手とは驚いたよ」

「俺もだ。最初に姿見た時は驚き過ぎて声が出なかったぜ」

そう言って2人は溜息を吐き、デプレが消えて行った出入り口の方に目を向けた。

「それと、ちょっとしたトラブルが起こった」

「トラブル?」

トラブルという言葉に雪鷹の目つきが鋭いものへと変わった。

そして雪鷹の脳裏を廃寮での事件が過る。

「心配すんな。お前が考えてる程深刻じゃねぇよ」

雪鷹の考えを見透かしたように直哉は苦笑しながら雪鷹の肩に手を置いた。

「じゃ、トラブルってなんだよ?」

事がそれ程大きくないと言われ、拍子抜けしたように雪鷹は眉を顰め呆れた表情を浮かべ訊ね直した。

直哉はその質問に答えずズボンのポケットからPADを取り出し、その液晶画面を雪鷹に向けて見せた。

雪鷹が画面を除き込むと、そこに書類のような文字の羅列が画面いっぱいに書き込まれていた。

どうらやメールのようだ。

差し出し人の欄に視線を向けると、観客席で2人の試合をしているはずの理子からだった。

何故態々メール? と頭に疑問符を浮かべながらメールを読んで行くと、雪鷹の目がスゥーと真剣な物へと変わった。

そこに書いてある内容は・・・・・・。


From 水瀬理子
To 直哉さん
さっきのデュエルでデプレさんが召喚したエーリアン・リベンジャーですが、どうやら一般的に認知されていないカードの様です。その事を知らず私たちがリベンジャーの効果を明日香さんたちに説明してしまい、三沢さんに怪しまれてしまいました。どうしましょう?
もしかしたら、他にも同じような事があるかもしれませんので、直哉さんたちもくれぐれも気を付けてくださいね。
P.S.
直哉さんも頑張ってくださいね♪


という文面だった。

文面を読み終え雪鷹はハァと深く溜息を吐いた。

「確かに、思うほど深刻ではなかったけど、これはこれで面倒だ」

デュエル終わりの疲れとメールの内容に雪鷹は意気消沈とした。

「悪いが俺はこれから試合だ。だから、その間にお前が何とかしてやってくれないか?」

「嗚呼、わかった」

直哉の頼みに雪鷹は首を縦に振って了承した。

「じゃ、そろそろ行ってくるわ」

「嗚呼、行って来い!」

そう言って2人はハイタッチを交わした。

直哉は雪鷹より闘士を受け取り、その身体に闘争心を灯し歓声の渦巻くフィールドへと向かっていった。

雪鷹は直哉に闘士をバトンタッチし、理子たちが待つ観客席へと向かい闇の中へと消えて行った。

制裁デュエル、第2ラウンド、開始!

To be continued
 
 

 
後書き
いかがでしたか?

デプレの口調ですが、Rと違いペガサスが死んでいないため、精神が崩壊していないのでクールな口調へと変えています。

これで修正する9話全部が修正し終わりました。

なので、これからはもっと投稿が遅れるかもしれません。

そこはどうかご了承ください。

我儘、申し訳ありません。 
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