ゲルググSEED DESTINY
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第三十四話 運命と伝説
ヘブンズベース基地で難を逃れたロゴスメンバーは話し合っていた。そんな中ジブリールは攻勢に出るべきだと主張するが、殆どのメンバーに反対される。
「こちらから攻勢に出ようにもどうするべきなのだね?ただでさえ地上の連合軍は分裂し始めているんだぞ?」
ギルバート・デュランダルがロゴスを敵に祭り上げたせいで今や民衆はロゴスを討てと言っている。それは連合軍内でもそうだった。ただでさえ連合軍は大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国、南アフリカ統一機構、南アメリカ合衆国、他の国々と殆どの国が混ざり合って作られたまさに連合と言える組織だ。だからこそ、ロゴスに反対するだけでなく、組織としての連携も取れなくなり、連合という組織は分裂し始めている。それが何とか維持できているのは将官クラスの殆どの人間が自分達、ロゴスの重要性を知っているからだった。
「とはいえ、宇宙でならその影響も薄いのです!だからこそ、宇宙で攻勢に出れば―――」
「幼稚な論理としか言えんな、ジブリールよ?」
ブルーノ・アズラエルが声を大にして反論する。
「そもそも、貴方は一番最初に逃げ出したではないか。我々に何一つ言わず、自分だけが助かろうとした。無論、ここにはそういった人が他にもいるだろうが、私は違うぞ」
「そうだ、確かに我々に脱出するように声をかけたのはアズラエル氏だったぞ」
「ワシもじゃ。もし言われておらんかったら間に合わんだっただろうな」
アズラエルの意見に同調するメンバーが現れ、ジブリールの意見は自然と消滅する。
「とにかく、防御を固めるのは必須ですな。地上部隊をこのヘブンズベースに集中させるべきだ」
「何を勝手な事を!?」
ジブリールとアズラエルの意見がぶつかり合う。とにかく多くのコーディネーターを殺し、敵の戦力を削ぐ事でこちらを有利にしようと言うジブリールの積極案と、防備を固め、ヘブンズベースで敵部隊を叩き、その後反撃に移ると言うアズラエルの消極案。
どちらが正しいということは出来ないが、それでも互いに意見をぶつけ合い、結果的には賛同者の多かったアズラエルの意見が支持された。
「フン、まあいい。コーディネーターどもを殺せるなら同じ事か……それに何よりこのヘブンズベースを落とせる戦力など、どの道ザフトにはあるまい」
負け惜しみであろう悪態をつきながらジブリールは席を退出していった。それで話し合いは終了となり、全員部屋から出て行く。そんな中、一人部屋で残っていたアズラエルはタブレット端末を取り出し、いつものように情報提供者とのやり取りを行う。
「痛快だ。ジブリールの奴が歯軋りしておった。しかし、ここで防御に力を入れるのは当然だな。お主の情報だとジブラルタルは愚か、他の拠点にもザフトが終結しつつあると言っておったからな」
《ですがザフトの戦力が多く集まっていると言う事は逆に言えばそれだけ攻撃時にも戦力を割けると言う事です。油断なさらないでください》
「わかっておる。しかし、ジブリールも言っていたようにこのヘブンズベースには我々の切り札がある。大した問題にはならんよ」
彼が消極案を提案したのは情報の提供者がザフトの戦力が既にこちらが攻めるにはリスクが高いと報告してきたからだった。ロゴスのメンバーは自身の拠点を放棄して脱出してきた以上、失われたものも多い。それはアズラエルにも言える事で、まともな情報網はこの情報提供者位しか残されていない。とはいえ、彼(彼女かもしれないが)は最も信頼できる情報提供者であった為、彼は信用しているのだが。
だからこそ、アズラエルは迂闊だと言えよう。ジブラルタル基地にこそ戦力は集結しつつあるが、その他の場所は逆に手薄になっている場所も存在しているのだ。虚偽の情報に騙され、その手で踊らされている事も知らずにいる。それに気付く事も無く振り回されているアズラエルは最早、道化としか言えなかった。
◇
ジブラルタルに到着し、連合の義勇軍とザフトが手を取り合う姿を見ながらミネルバやラー・カイラムのクルーは騒然とする。
「付近の全部隊に集結命令が出ているのは聞いていましたが、いやぁー、壮観ですねぇー!」
アーサーが喜ばしい限りだとばかりに喜色満面で声を上げる。それを鬱陶しいといった感じに見ているマーレはナチュラルがいる所での普段通りの態度―――つまり、不機嫌さを隠しもせず、口を開く。
「愚盲というか……考え無しと言うか、大義名分が無いと自分で戦う事も決めれないのかね?」
「『剣を取らせるには何よりその大儀が重要である』―――指揮官講習の教官の言葉だけど、全くその通りだと思うわ。貴方だって、討つべき敵とその理由が納得できなければ討てないでしょ?」
「……まあ、確かにそうだが―――」
「彼等は自分の意思で考えて、その上で私達に協力をしてくれると言ってくれたのよ。感謝こそすれど、批判されるいわれは無いと思うわ」
グラディス艦長に遠回しに窘められるマーレは口篭る。
「ですが、正義の名の下にそうやって敵を討つ事は、過去何度も見たそれと変わらないのではないでしょうか?」
アスランが艦橋にやってきてそう意見を言う。以前よりは多少調子を戻していたが、彼の調子は余りいいとは言えないだろう。
「アスラン、お前いけるのか?」
「ああ、まあ良いとは言い難いけどな。でも実際、いつまでも塞ぎ込んでる訳には行かないしな」
マーレが心配したぞと皮肉気に笑いかけ、アスランもそれに苦笑して答える。
『アスラン・ザラ、シン・アスカ、ハイネ・ヴェステンフルス、レイ・ザ・バレル―――以上四名は至急待機中の車両にて出頭せよ』
「いきなり何だ……?」
ジブラルタル基地の基地内放送で呼ばれたアスランは疑問を声に出す。確かに到着してすぐにこのような放送が来るのはいきなりだろう。
「まあ、言って来い―――クラウも先にどっか行ってたしな」
頭をかきながらアスランはミネルバの艦橋から出て、車両に向かっていった。
◇
「やあ、良く来てくれた。君達の活躍は聞いているよ。ここまで良く頑張ってくれた」
出迎えに来ていたのは議長本人だった。その事に驚くシンとアスラン。とはいえ二人とも敬礼は怠らない。ハイネとレイは慣れていた為か落ち着きながらも敬礼を返した。
「アスラン!お元気でした?会いたかったですわ」
「ミ…ラクス、お久しぶりです」
議長の側にいたミーアがアスランに向かって駆け出し、その腕に抱きつく。アスランも邪険にはしないが議長がこの場にいる事の方が気になっており、おざなりな態度で対応する。
「まあ、色々と積もる話もあるとは思うが、まずはこれを見てくれ」
そう言って三機の機体がライトアップされる。
「これは……」
「ZGMF-X425デスティニー、ZGMF-X666Sレジェンド。どちらも従来のMSの性能を凌駕する最新鋭のMS―――君たちの新しい機体だよ」
そういって説明される二機のデスティニーと一機のレジェンド。
「しかし、ギル。この場に機体は三機しかいないようですが……」
レイがそう言って疑問を唱える。確かに、用意されている機体の数は三機であり、彼等は四人だ。数が合わない。
「その事なんだが、色々と話が立て込んでいてね。ハイネ、君には機体の申請が来ていたことを考慮して元々予定されていたこのデスティニーが配備される事になる。もう一機に関しても適正の関係上、シン―――君に合わせた調整をしていてね。このデスティニーは君達の機体になる予定なんだ」
「あ、ありがとうございます」
「議長、喜んでお受け取りいたします」
シンとハイネが同時に敬礼して機体を渡される事に対し礼を言う。
「しかしね―――色々と立て込んでいた事もあってね、これらの機体は未だに未完成なんだよ」
未完成という言葉を聞き、全員が驚く。見た目ではこれで完成しているように見え、OSなどのソフト面で未完成なのだろうかとも思うが、実際は違うと議長が自ら説明する。
「いや、申し訳ない。そんな状態の機体を見せる事になってしまって。それで、このレジェンドに関してなのだが、完成した状態での適正の問題があってね。このドラグーン・システムにはカオスのデータを参考にして量子インターフェイスに改良が加えられていてね―――本来なら高い空間認識能力を持っていなくとも運用出来る筈だったんだが、機体の装備が複雑化する結果となってね。実際に扱えるかは今の所わからないのだよ」
つまり、本来の搭乗者はアスランだったが、空間認識能力が必要になる可能性があるから、その場合はレジェンドはレイに扱ってもらったほうがよいということなのだろう。
「でしたら、その機体はレイに渡すべきだと思います」
「え?」
「いいのですか?またと無い機会である事には変わりないのですよ」
シンはアスランが受け取らない事に驚き、レイは本当にいいのかと聞くがアスランは構わず続ける。
「適正的にレイの方が上だというならそうした方がいいでしょうし、量子インターフェイスに改良が加えられているといっても、多用するとは思えないですし―――何よりセイバーはまだ使える機体です」
「そうか、君の方からそう言ってもらえると助かる。私としても、どちらかに諦めてもらうと言うのは心苦しかったのでね」
議長はにっこりと笑ってレイに顔を向ける。珍しくレイも笑みを浮かべ、アスランに感謝の言葉を言う。
「とはいえ、セイバーの改良も予定されていてね―――一応はこの三機の最新鋭機に迫る性能を予定しているらしい。昨夜から技術スタッフが大慌てで動いているよ」
「所で、完成していないと言う話ですが、一体どういった部分が完成してないんですか?」
「ああ、それについては機体の武装面に関してらしい。詳しくは私も知らないのだが、レジェンドに関してはドラグーンの武装を充実させるのが主だと聞いている。デスティニーは全面的に改良と言うべきものが加えられているようでね、関わっている人間の殆どが徹夜だとか」
そう笑いながら話すが、実際笑い話で済むことではないだろう。徹夜明けの現場をアカデミー時代、ゲルググのトライアル直前時に見た様子を思い出してシンは苦笑いすら零す。
「おや、そろそろ時間のようだ。君たちも以前に話してたように、ロゴスを討つと言う事に対して色々と考える事はあるだろうが―――今、君達にできる事を精一杯やってくれたまえ。また会える日を楽しみにしているよ」
そう言って退出するデュランダル議長の様子を見ながら彼等は己の今やるべき事を考えていた。
◇
「しかし、本当に良かったのか?」
「何がだ?」
シンとレイは新しい機体の性能を確かめる為にその場に残ったが、ハイネとアスランは先にジブラルタルで用意された個室に帰っていた。
「何が……って新型機の事だよ。お前さんも何だかんだ言って惜しいんじゃないのか?」
「力はただ力でしかないさ。結局はそこにある確固たる意思と使いようが重要なんだ―――今の俺じゃ、それに確信が持てないのさ」
「やっぱアークエンジェルの事か?」
誰もが憂いてる懸念の一つ。アスランの不調の原因は明らかにあのアークエンジェルである事は確かだ。確固たる意思―――おそらくアスランは悩んでいる節があることは間違いない。
当然だろう。覚悟を決めても、断ち切っても結局は悩んで後悔するのが人間だ。
「ま、考え無しよりはマシだよな。でも、前にも言ったはずだぜ。割り切れよ」
「ああ……だから、戦場に出るまでには覚悟を決めるさ。俺も人並みに器用に生きてみたいよ。でも、不器用だからな……」
用意された部屋の前に辿り着き、ハイネと別れる。部屋にあった椅子にもたれかかり、天井を見上げながら考え込む。キラは自身の手で討った。それが本当に自分にとって良かった事なのか?幾度と無く考え込んだ事だ。いい加減区切りをつけるべきだとも思う。それでも、それでも尚―――
「俺たちは本当は何がしたかったんだろうな……」
彼等だって平和を誰よりも望んでいたはずだ。ただ、議長の望む平和と彼等の平和が違うのではないか?キラに言われたときからどうしても頭を離れない。議長は己の役割を重視することで本当の平和に繋がるといった。それは思いすらも踏みにじるのではないか……だから彼等は―――
「よそう……何時までも考えたって俺の独り善がりでしかないんだ。本当の理由なんて今の俺じゃ分かる筈もない……」
そう結論を出すとドアがノックされ、そのまま開かれる。ロックはかけておいた筈だが―――そう思い、警戒していると入って来たのは―――
「アスラン―――」
ミーアだ。ディオキアの基地のときもそうだったが、彼女は一応は俺の婚約者である以上、フロントに頼めば入れて貰えるのだろう。フロントの人間も迷惑な気遣いをするものだと思う。
「どうしたんだ、ミーア。ここは俺の部屋だぞ。勝手に入ってくるなんて―――」
「ごめんなさい、でもお話したかったから……あ、ここのすぐ側にあるお店の料理がおいしいって言ってたの。良かったら一緒にいかない!」
荒んでいた状況だったせいもあるだろうが、少しだけ気遣いを見せるミーアに、そういった周りに見せるパフォーマンスも重要かと考え、その提案を受ける事にする。
「ああ、わかったよ、ミーア。準備するから少しだけ待っていてくれ」
「あら―――」
「どうした、ミーア?」
少し驚いた様子の声を上げるミーアに思わずといった調子で尋ねるアスラン。その後、ミーアはにっこりと微笑んで嬉しそうな弾んだ声を出す。
「だって、貴方が笑ったところ―――初めてみたんだもの」
彼が馴染んでないと言うか、距離を感じさせる関係。笑顔を見せても笑ってはいない。明らかに苦笑と言った感じの表情。それが変わって少しだけ、ほんの少しだけ距離が近づけたかもしれない。そうミーアには思えた―――そんな風に感じさせるアスランの笑みを見れた事が嬉しかった。
後書き
遂に登場新型機デスティニーとレジェンド!!一体どんな魔改造が施されるのか今から楽しみで仕方が無い(何も考えていないともいう)。
え、議長専用機?あれはまだまだ先の話です。ついでに言うとリゲルグ何処いったんでしょうね?あれ大分前から登場自体はしてたのに(笑)
アスラン専用機はどうしよう……彼にゲルググは正直いって似合いそうにないし……いっその事、ファクトリーから隠者を借りパクして来るか?
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