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久遠の神話

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第四十九話 スペンサーの剣その十

「尾もな」
「ですね。けれど生えるまでは」
「時間がある」
「その間に何とかしますか」
「少なくとも心臓を刺せば死ぬ」
 生きているならばだというのだ。
「幾ら何でもな」
「そうですね。じゃあ」
「頼んだぞ」
「わかりました」
 高橋はまずは己に来る尾を両断してそれから心臓を狙うつもりだった、一気にそうするつもりだった。
 工藤にしても隙あらばだった。二人はそれぞれ怪物を狙っていた。
 二人は今まさに怪物と戦おうとしていた。だがここで。
 二人の後ろから声がしてきた、その声はというと。
「意外でしたね、お二人が剣士だったとは」
「!?まさか」
「その声は」
 二人はその声に反応し顔をやや後ろにやり目だけでその後ろを見た。すると。
 そこにはスペンサーがいた。服はアメリカ空軍の軍服のままだ。
 彼は二人と怪物を見ながらこう言うのだった。
「お二人とのお話よりも先に」
「この怪物を倒すというのですか」
「はい、そのつもりです」
 スペンサーは穏やかな微笑みで二人に答える。
「だからここにいるのです」
「どうします?」
 高橋はスペンサーの言葉を聞いたうえで工藤に顔を向けて問うた。
「ここは」
「そうだな。今はな」
「様子を見た方がいいか」
「大尉がどういった戦い方かな」
「それに強さもですね」
「力も見たい」
 そうしたもの全てもだというのだ。
「だからここはな」
「大尉にお任せしますか」
「敵はわかってことだ」
 情報、自衛官としてそれを念頭に置いての判断だった。
「だからこそここは」
「ですね。それじゃあ」
 二人で話して頷き合う。そうしてだった。
 工藤がスペンサーに対してこう言った。
「では今回の戦いは」
「私のものでいいですね」
「お任せします」
 お互いに日本語で話す。
「それでいいですね」
「有り難うございます」
 スペンサーも笑顔で応える。こうしてだった。
 彼は一歩前に出る、それと共に右手に剣を出した、巨大な一メートル半は優に越える十字の形の巨大な剣だった。 
 柄は両手で握ってまだ余る、そして剣身も相当な大きさだ。
 長いだけでなく幅もある、工藤はその剣を見て高橋に囁いた。
「あれがだ」
「トゥーハンドソードですね」
「そうだ、それだ」
 まさにそれだというのだ。
「西洋の巨大な剣だ」
「話は聞いてましたけれど」
「大きいな」
「はい、それもかなり」
「一メートル半、いや」
 工藤はその全体を見て言った。
「それは剣身だけだな」
「柄も入れたらもっとありますね」
「二メートルはあるか」
「あんな巨大な剣があるなんて」
「扱いはかなり難しい」
 スペンサーはその剣を両手に持ち腰を落として構えていた。
「勿論相当な膂力が必要だ」
「それに足腰もですね」
「下手に振るうと腰をやられる」
 だからこそ足腰も必要だというのだ。 
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