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こぶたのまき

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りなの過去1
  こぶたのまき

 
前書き
「ねぇまき。覚えてる?」
私は、まきという友人の写真の前でそうつぶやいた。
私、秋山りな。友人は園田まき。だけど、まきはもういない。
 大事な友人を亡くした辛さは変わらない。亡くなったという現実も変わらない。
ねぇまき、いまどこを飛んでる?私の近くにいる?
私の声聞こえてる?
  
  

 
私は小学校に入学してすぐ、いじめと呼ばれるものを受けた。
入学式の翌日のこと。
「あいつ、きのこじゃね?」
上級生のある言葉がきっかけだった。確かに髪型はおかっぱで、周りが見ると「きのこ」なのだろう。
その一言から、いじめは日に日にひどくなっていった。
入学して2週間たったころ、私は教室に入るためドアを開けた時だった。
頭上に何か落ち出来た。それはチョークの粉がついた黒板消しだった。おかげで髪も制服も粉だらけだ。その日は、上級生にすれ違うだけで「きのこが歩いてる。」とか「粉がついたから毒キノコだ」とからかわれた。
先生が
「秋山さんその頭大丈夫?」
と、声をかけてきた。
「大丈夫です」
私はそう答えて、家へ帰った。家に帰ると、祖母がいた。私の格好を見て
「りな、もう制服汚したんか。しょうがないなぁ」
とわらって制服を綺麗にしてくれた。祖母は大丈夫かとか何があったのかなどには触れず、ただ、私から制服をとって綺麗にしてくれた。幸い、翌日は土曜日で学校でなかったので制服は間に合った。
だが、学校に行く不安は消えなかった。先生にも親にも相談できなかった。
それからまた2週間が過ぎた。
私は変わらずいつも通りに家を出た。確かに学校に行くことが少し怖くなっていた。
学校につくと私の上履きがなくなっていた。正面を見るといつもの上級生が何やらこっちを見ながら笑っていた。犯人はきっと、いや絶対あの人たちだろう。私は確信した。勇気を出して返してくださいというべきなのか。しかし、上履きがないと教室に入れない。あったものがなくなったといえば誰も信じないだろう。
上履きがなくなるなんてよほどのことでないとなくなる可能性は低いから。
だから私は
「あ、あのっ、上履き返してください。」
と勇気を出して行ってみた。はたして彼らが素直に返すだろうか。そんなの予想しなくてもわかる。
「きのこちゃん、何言ってんのぉ?いやだねぇだ!」
と。ほらやっぱり。彼らがすんなり返すわけがない。先生に言ったらいいのだろうけど、言っても私は
負けるだけだろう。「何でいうんだよ」ってまたいじめをひどくするだけだろう。しかし上履きがないままで教室には入りたくない。
「返して!返してよ!」
気づけば私は大きな声で上級生の彼らに言っていた。彼らは少し驚いた顔をしたが
「ウケるんですけど!ちっさ!届いてないじゃん。ほらほら」
と私の上履きを持って上下に振った。私もそれについてジャンプして取ろうとした。無駄なことだとい
うことはわかっていた。だって彼らよりかなりの身長さがある。
「ほらほらおチビさん。とれないのぉ?」
悔しかった。とっても悔しかった。負けることははなから見えている。だけど負けっぱなしはいやだった。
どうしても取り返したかった。上履きごときで上級生とこうしてる私は小さいのだろうか。
「返してやるよ。ほれ」
一人が私の上履きを学校の外に投げた。外は田んぼ。だから投げられた上履きは田んぼへと落ちて行った。
取り返せなかったこと、自分の身長が低いこと、からかう上級生、全てに…すべてに腹が立った。
悔しかった。この時から学校に行くことに恐怖を覚えた。クラスのみんなは可愛がられて楽しそうに
してる。浮いているのは私だけだった。ワクワクしながら入学したことが嘘みたいだ。私にとって楽しいところでも、何でもなくなっていた。
結局私は職員室へ行ってスリッパを借りることにした。
先ほどの状況を先生に話した。当時の私は言葉もよくわからず、説明が下手くそといっていいほど
会話がならないものだった。何とか話すと
「これのこと?」
と袋を渡してきた。見ると中には「秋山」と名前の入った私の上履きが入っていた。
「これです」
私は答えた。話によると、田んぼの持ち主さんが届けてくれたらしい。ずいぶん濡れているため
履くことはできない。
「彼らがやったんだね?先生が話してみるから、秋山さんは安心していいからね。よく話してくれたね」
先生はそう優しく笑って言った。
安心していいからね。その言葉を信じていいのか。私は考えた。先生が彼らに言ったところで彼らが
やめるとは思えない。むしろひどくなるだろう。
そして教室に入った。あと1年我慢すればあの人たちは卒業するから、つらい思いをしなくて済むんだ。
私は心に言い聞かせ、席に着いた。教材を出して机の中におさめそうとしたときだった。
中から何かが出てきた。
「きゃっ」
思わず声が出てしまった。机の中にはたくさんの虫の死骸が入っていた。
誰が入れたのだろう。と、悩まなくてもわかる。絶対の確率であの人たちに決まっている。
何でこんなことをされなければならないのだろうか。私に対してなんの恨みがあるというのだろう。
「秋山さん」
私は先生に呼ばれた。さっきのことだろう。
「彼らに聞いたら、やってませんっていうの。学校に来る途中秋山さんが上履きを振り回しながら
来てましたよ。って。ねぇ秋山さん。どうなの?」
先生は彼らの見方をするのだろうか。なぜ私の言うことを信じてくれないのだろうか。
なぜ彼らを信じるのだろうか。
「6年生のあの人たちがやったんです。本当なんです先生。」
私は訴えた。それでも先生は悩んだ顔をしていた。いくら先生に訴えても結局何も解決のないまま終わってしまった。机の中の虫のことは言えなかった。言っても無駄だと思ったから。
今までのことは自分の勘違いだと思えばいいんだ。そう諦めてもみた。


私は小3になった。
あのことは解決のないまま彼らは卒業していった。小2の時はいじめはなかった。だから私は安心して学校生活を送ることができた。
なのに今。

「こないで。りなちゃんといると楽しくないんだよね。一人で遊んでなよ」

休憩時間クラスの友達とあそぼうとみんなの後をついていった。
だけど来るなと断られてしまった。
私は何かかんにさわることをしてしまったのか。正直身に覚えがない。

いつしかみんなは私から離れて行ってしまった

 
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