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蒼き夢の果てに

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第5章 契約
  第71話 名前

 
前書き
 第71話を更新します。

 次の更新は、
 9月11日、『ヴァレンタインから一週間』第29話。
 タイトルは、『黒の破壊神』です。

 その次の更新は、
 9月16日、『私は何処から来て、何処に向かうのでしょうか?』第11話。
 タイトルは、『耳元で甘く囁くのは魔物だそうですよ?』です。
 

 
「但し、その為には――――」

 少し……。いや、かなりマズイ台詞をこの蒼いオッサンは口にする。
 何故かその事に付いては瞬時に判断が付いたのですが、しかし、その台詞を遮る事が出来る訳はなく、

「シャルロットを娶ってガリア王家の血筋を次代に繋いで貰う」

 ほぼ、予想通りの内容を続ける聖賢王ジョゼフ一世。そして、これは当然の帰結。
 何故ならば、王家の人間に重要なのは己の家の血筋を残す事。これが一番重要な仕事ですから。

 それに……。
 そう考えながら、傍らの寝台の上で上半身だけを起こした状態にて、俺の答えに神経を割いている少女の雰囲気を探る。
 いや、探る必要など初めから存在して居ませんか。

 まして、この状況で簡単に否定の言葉など返せる訳も有りません。

 ただ……。

「陛下。畏れながらお聞きしても宜しいでしょうか?」

 一応、あまりにも不敬な物言いは出来ないので、取り敢えず、最低限の礼儀は弁えた口調でそう問い掛ける俺。

「なんだ、我が息子よ」

 未だ俺は、この蒼いオッサンの架空の息子役を演じるとは答えた覚えはないのですが、鷹揚に首肯いた後に、俺が息子役を演じる事が既定の事実の如く答えるジョゼフ。
 もっとも、彼女(タバサ)が居る場所で、この申し出を拒否出来ない事を見越しているのは間違いないのでしょうが。

 それでも、少しぐらいは悪あがきをさせて貰わなければ、すべて、この蒼いオッサンの思い通りに事を進められる事と成りますから。

「陛下は未だ御若い。亡くなったイザベラ姫の母親の代わりの新たなお妃様をお迎えに成れば、正当な血筋を引く男児を授かる事も可能かと愚考致しますが」

 現状で一番簡単な……俺が影武者を演じる次に簡単で、更に実現性の高い方法を口にする俺。
 もっとも、これには大きな問題点がいくつか有るのですが。

「それでは、先に内外に御ふれとして出した発表上のルイ王子の存在が消えて仕舞う事となるな」

 俺の上げた代案の、一番の問題点を速攻で付いて来るジョゼフ。
 そして、この部分が確かに一番の問題点。
 流石に、ついこの間に発表した妾腹の王子の存在の続報を出さないと、国内の貴族の間に不穏なウワサ話が流れないとも限りませんから。

 元々、現在のガリアの状態は安定しているとは言い難い状態の時に、一度、その存在を発表された王子の立太子の儀を行わないばかりか、国内外の貴族への御披露目も行わず、更に、現在、マジャール侯爵の元に預けて有る王子を王都リュティスに入れる事すら行わないのでは、其処からどんな形で妙な憶測が流れ始めるか判ったものじゃ有りません。

 その上に、覚醒した夜魔の王に新しいお妃を迎えると言っても、流石に相手を慎重に選ぶ必要が有りますから……。
 まして、この世界のガリアには、本来、地球世界ならば公爵位を持って居るはずの家名が何故か侯爵位に留まって居ますから、王家に流れる夜魔の王の血筋と言う事を、すべての侯爵家が知って居るとも思えません。
 故に、王家にお妃を入れるには、同じような血筋を持った家柄。例えば他国。同じように始祖の血を引く王家などから入れるべきなのですが……。

 真面に始祖の血を引いていると言えるのはトリステインとアルビオンの両王家。しかし、どちらも正当な血を引いているのはアンリエッタにティファニアのみ。後は、トリステインの公爵家ですが……。
 何処の王家も血が絶える寸前のような状態で、其処から新しいお妃様を迎え入れる事は難しいですか。

「それにな……」

 俺の思考が、少なくとも一時的にジョゼフの影武者を演じるのも止むなしか、と言う方向に傾き掛けた事に気付いたのか、ゆっくりと聖賢王ジョゼフ一世がトドメの台詞を口にする。

「儂は、イザベラの母親以外、妃として迎え入れる心算はない」

 一国の王として。更に貴族の家長としては間違いなく失格と成る言葉を……。
 但し、ある意味、その相手の女性に対しては一番誠実な対応ではないかと思える言葉を。

 そして、その辺りはイザベラに然るべき婿。男系男子の系譜を継ぐ人間を王配として迎えて王位を継がせる、と言う選択肢を捨てている以上、何となくでは有りますが、予想は出来た内容ですか。

 真面な親ならば、現在のガリアを取り巻く状況から考えて、自らの娘を熱せられた鉄板の上で一生踊り続ける事を強要される立場に就かせる事は、流石にたじろぐでしょうから。
 それに吸血姫に覚醒していないイザベラの残された寿命と、夜魔の王に覚醒したジョゼフに残された寿命とを比べると、おそらくはジョゼフの方が長い。
 つまり、イザベラ姫は適当な相手が見つからなければ、一生、あのままガリアの姫として暮らしたとしても、何の問題もなく過ごす事が出来ると言う事です。

 その上……。

 俺は、飄々とした雰囲気で俺の目の前に立つガリア王を見つめる。

 ハッキリとした事は判りませんが、この王は、王位を自らの子孫に継がせる事よりも、早逝した自らの妃との思い出の方を大切にしたい、と言う事を暗に示して居ると思います。
 そして、その考え方は理解出来ますから。

 いや、其処まで愛した相手を失っても尚、ジョゼフ王は、この難しい状況のガリアの舵取りを行っています。
 ガリアには真面に機能する三部会も存在していなければ、高等法院も存在していない。彼に助言を行う枢機卿と言う存在も居ない。
 すべての責任は、現在、彼の両肩に掛かっているはずです。
 このガリアの王制と言うのは、そう言う王制。王に絶対的な権限が集中する、俺が知って居る範囲内では他に類を見ない非常に強力な王制ですから。

 完全に俗世に興味を失い隠棲したとしても不思議ではない状況で、王と言う職務。それも、ハルケギニア内では一番権限が大きい代わりに、一番仕事も多いと思われる国の王の仕事を熟している。
 俺にはとてもでは有りませんが、真似の出来ない事を行って居るのは間違い有りません。



 すべての言葉に因る説明が終わった後、俺の答えを待つ為の、しばしの空白が訪れた。
 秋に相応しい蒼穹から降り注ぐ陽光が、明かり取り用の高い位置に造られた窓からのみ差し込む。
 そう。今は何の変哲もない気だるい休日の午後。

 但し、今の俺は、決断を迫られる立場。

 確かに、今までの王の言葉で完全に納得した、とは言えないけど、少なくとも共感出来る点は発見出来ました。
 そして、この国民を欺くような策謀を行ったとしても、少なくとも国民。それは貴族も含めて、すべてのガリアの民に取って、今のトコロ悪い影響が現れるとも思えない内容。
 更に……。

 俺は、最初のようにジョゼフ一世の前に跪き、騎士としては最上の礼を示す形を取る。
 そうして、

「王よ、私がその御話を受け入れる為に、ひとつ約束して欲しい事柄が有ります」

 これが受け入れられないのなら、この話はここまで。
 いや、更に言うのなら、俺は湖の乙女とタバサを連れて、この国から間違いなく去る事になるでしょう。

「申して見よ」

 頭の上から、重々しい声が投げ掛けられた。但し、これから先に申し出る俺の交換条件は、この王には既に見切られている。
 何故か、そう言う事までが判って居る中での交渉と成るのですが。

「私が王位を継ぐかどうかについては、お約束は出来ません。
 ただ、陛下の影武者を一時的に勤めて、その職務から私が解放される時には……」

 其処まで一気に告げた後、一拍の間を置く俺。不自然な体勢。更に、この状況で夜魔の王たる吸血鬼に攻撃されたとしたら、如何に、龍種の俺と言っても無事に終わる事はない、と言う危険な状態。

 しかし、この程度の誠意は見せても良い相手だと、俺がこのガリアの王を判断している、と言う事を簡単に示す事の出来る体勢でも有る。

「オルレアン家の次期当主にして、次代のガリア王ルイのお妃となるシャルロット姫を、彼女が望むのならば、タバサと言う名前の普通の女性に戻る事をお許し頂けるのなら」

 王子の影武者ぐらいなら、幾らでも演じて見せましょう。
 流石に、最後の部分は口にする事もなく、そのままの頭を垂れたままの姿勢で、ジョゼフの答え待つ俺。

 少しの空白。
 ジョゼフから発するのは……これは、陽の雰囲気。ただ、まんまと自分の策に俺が乗せられた事をほくそ笑んでいる、と言う類の物などではなく、おそらく俺の申し出がジョゼフの予想通りの内容だった、と言う事なのでしょう。
 そして、タバサの方はもっと判り易い。彼女が発して居るのは否定。俺が居もしない王子の影武者など演じる必要はない、と感じて居るのは間違いない雰囲気。

 最後に、我関せずの姿勢を貫き続ける湖の乙女は……。
 陰の気を発して居るのは間違い有りません。但し、この陰の気は少し質が違う。
 これは……。まさか彼女が焼きもちのような感情を……。

 そう考えながら、少し彼女に対する感知のレベルを上げる。
 しかし、感知の精度を上げたトコロで、彼女から感じるのは、軽い嫉妬に似た感情で有る事が間違いない、と判っただけ。それ以上の事は一切判りませんでした。

 いや、これも、そんなに奇異な事でも有りませんか。俺は、ジョゼフ王の目の前で頭を垂れ、片膝を床に着けた姿勢のまま、そう考え直した。
 何故ならば、彼女の本質が水の精霊なら、その感情も不思議でも有りませんから。水の精霊とは基本的に愛が深い故に、昔から人間の男性との悲恋の物語の主人公と成る存在でも有りますからね。
 人魚姫然り、メリジェーヌ然り。
 それに普段のやり取りが感情を表に現さない、無機質で合理的な判断を優先させる彼女ですが、それでも心……。感情の部分が存在しない訳では有りません。
 まして、その感情の部分が、前世の俺と絆を結んだ部分と成ったのでしょうから。

 伝承上では、本来心を持たない水の精霊が心を得るのは、人間の男性から愛と言う形の心を与えられた時だけですから。

「王家から姫を攫う、……と言う事かな、英雄どのは」

 かなりの陽の気。おそらく、笑いをかみ殺すような雰囲気を発しながら、ジョゼフはそう言った。
 つまりこれは、俺の交換条件に対する答えが、否定ではないと言う事。
 これで、最初の時に教えてくれたタバサの夢。晴耕雨読のような未来を選ぶ事も、再び可能と成ったと言う事です。

 この部分と交換出来たのならば、僅かな回り道など大した問題ではないでしょう。

「それでは、次に合うのはヴェルサルティル宮殿。ルイ王子がマジャール侯の元より、王都に入る時になるのかな」

 俺からの同意が得られた事で満足したのか、入って来た時と同じ唐突さで、踵を返して出て行くジョゼフ。
 ただ、タバサの寝室内から一歩、廊下に出た瞬間に足を止め、

「その時には、二人仲良く入城するが良かろう」

 振り返りもせずにそれだけの事を口にしてから、再び、軽い足音だけを残して去って行くガリアの王。
 確かに現状のガリアを取り巻く状況から考えるのなら、王位継承権一位の人間を決めて置くのは悪い事ではないと思います。
 それに、その王子と、現王家との間で色々と遺恨の有ったオルレアン家の姫が華燭の典を挙げるのも当然重要な意味を持ちます。

 まして、マジャール侯爵の元に預けられていた王子と共に、表向きには行方不明状態と成って居るオルレアン大公の遺児、シャルロット姫が公式の場に同時に登場して、ヴェルサルティル宮殿に入城すると言う事の意味も大きいですから。
 国内外の貴族たちに対するアピールとしても……。



 一陣の風の如きジョゼフ王の来訪は終了し、次に続く空白が訪れた。

 そして、跪いたままで有った俺が立ち上がると同時に、椅子に座った姿勢で膝の上に開いた和漢により綴られた書籍に視線を上下させていた少女もまた立ち上がる。
 但し、双方の立ち上がった理由が違った。

 俺は、その場で振り返り、寝台の上に上体のみを起こした姿勢で俺を見つめて居る蒼い少女に視線を移し、
 椅子から立ち上がった紫の少女は、一瞬だけ俺にその清澄な湖の如き瞳を向けた後、そのまま開いた状態と成って居る入り口へと真っ直ぐに進み……。

 最後に僅かな躊躇いのみを残し、しかし、後ろ手に扉を閉じる事により、この部屋の主に俺を預けて出て行って仕舞った。



 俺と彼女以外のすべての登場人物が過ぎ去ったこの部屋は、魔法と、締め切った厚手のカーテン。分厚い壁と豪奢な扉に守られた、二人だけの世界が訪れていた。
 そう。春の出会いからこの夏まで続いていた、二人だけの生活の空間が……。

「王子の影武者役など演じる必要はない」

 何故か懐かしい、普段通りの口調で小さく呟くタバサ。
 そして、この言葉が彼女から発せられるのは当然。

 彼女は大貴族で在るが故に、自らの家族をすべて失ったのですから。
 更に、最後に残った家族。自らの妹は今のトコロ行方不明。その上、現実世界での彼女は何モノかに操られている事は確実な雰囲気。
 そのすべてが、彼女が生まれた家がガリア王家に繋がる大貴族で在ったが故に起きた悲劇。
 この上、自分がその家を継ぐだけなら未だしも、俺まで余計な厄介事に巻き込まれようとしているのですから。

 彼女は俺の事を自らの正面に見据えたままで、

「まして、名を与えられる必要などない」

 ……と、そう続けるタバサ。
 彼女は知って居るのか。俺のような存在が他者より名を与えられる、……と言う事の重要性を。

 俺があのガリアの王に名前を与えられると、俺はガリアの王を本当の親に対するように孝を示し、自らが認めた王に対するように忠を示さなければならなくなる。
 そう成れば、俺は俺の望まない仕事を熟さなければならなく成り……。

 今、俺が有して居る龍や、仙人としての徳を失う可能性もゼロでは有りませんから。
 そして、それが名前を与えられると言う事に対するルール。これを無視する事は、龍で有る俺には出来ません。

 しかし……。

 それまで湖の乙女が座っていた椅子に腰を下ろし、タバサと同じ目線の高さから彼女の瞳を覗き込む。
 晴れ渡った冬の氷空に等しい瞳に浮かぶのは間違いなく哀。

「俺は、簡単にくたばったりしないさ」

 彼女の頬に右手をそっとあてがいながら、俺はそう答える。それに、あのガリアの王が道を踏み外そうとした時は俺が止めたら良いはず。
 少なくとも、一切、人の話を聞こうとしないタイプの王とは思えませんでしたから。
 先ほど、この部屋を訪れていた聖賢王ジョゼフ一世と言う人物は。

 まして、この王子の影武者役を上手く熟せば……。

「わたしの事など気にする必要はない」

 タバサに取って望まない未来からの解放の可能性が出来上がる。そう、考えていた俺の思考を遮る彼女の言葉。
 俺の右手を、自らの左手で頬に押さえ付けながら。

 彼女の頬、そして左手もとても暖かく、この台詞が彼女の本心からの言葉で有る事は簡単に理解出来る状態。
 まして、彼女はオルレアン大公家が再興される事を喜びはしなかった。
 そんな彼女が、一時的とは言え俺が貴族の位を得る事を喜ぶ訳は有りませんか。

 彼女が貴族としての生活に向いて居ないのならば、俺だって向いて居るとは思えませんから……。

 但し、

「そうかと言って、はいそうですかと答えて、タバサを貴族の世界に置いたまま、自分だけ元の世界に帰る訳にも行かないでしょうが」

 そもそも、そんな事が出来るのならば苦労はしません。
 まして、俺は彼女と最初に交わした約束を、完全に果たす事が出来なく成りましたから。

 彼女の母親を正気に戻す、と言う約束が。

 確かに、俺の式神のウィンディーネがタバサと共に、彼女の母親の精神を一時的にでも正常に戻せた以上、完全に失敗したと言う状況では有りません。しかし、例えそうで有ったとしても、俺が別の仕事に気を取られて居た隙にタバサの母親に関しては……。

「約束して欲しい事が有る」

 頬にあてがわれた俺の手を外し、手の平同士を合わせ指と指を絡めるようにして繋いで来るタバサ。
 見た目通り繊細で、華奢な彼女の指に少しドキリとする俺。更に、この繋ぎ方は、顔と顔。そして目と目を合わせるので、人前で為すにはかなり恥ずかしい形。

 それでも……。

「俺に出来る約束ならば」

 普段通りの、かなり軽い調子で受け入れる俺。
 まして、彼女は俺の能力の限界は知って居るし、その上で、性格的に出来ない事がある事も知って居るはず。
 無理難題のような物を押し付けて来る事はないでしょう。

 俺の答えに対して、微かに首肯いて答える蒼い少女。その瞬間に彼女から発せられたのは決意。この雰囲気は以前にも感じた事が有る強い決意。
 そして、

「今度は、私の前から簡単に消えないで欲しい」

 感情を表す事のない……普段の彼女からは考えられないような真摯な表情で、そう伝えて来るタバサ。
 しかし……。

「簡単に消える? 俺がタバサの前から?」

 思わず、少し裏返ったような声で聞き返して仕舞う俺。
 何故ならば、先ほどの彼女の言葉はそれぐらい、唐突で、その上に意味不明な願いだったと言う事です。

 いや、それ以前の部分。『今度は』の部分も、かなり奇妙な表現でしたか。
 これではまるで、以前に俺が、彼女の前から簡単に去って仕舞った事が有るような内容なのですが……。

 俺は、普段以上に強い視線で俺を見つめる蒼い姫を見つめた。
 死の淵より生還して直ぐの状態故に、未だ寝間着姿。普段通りの紅いフレーム越しの瞳には、少し訝しげに彼女を見つめる都合四つの俺の顔が映り込んでいる。

 そう言えば彼女。タバサの台詞にも、少し不思議な部分が以前から紛れ込んで居た事が有りました。そんな記憶も有るのですが……。
 そんな、曖昧な記憶の中に存在する何か(・・)を掴み掛けた正にその瞬間、その俺の記憶を肯定する決定的な台詞が、彼女の口から発せられた。

「そして、何時の日にか……。何時の日にかきっと、昔のように本当のわたしの名前を呼んで欲しい」

 昔のように。
 その上に、本当の名前を呼んで欲しい……。

 俺は、タバサの事は、タバサとしか呼んだ事が有りません。
 そして、彼女は、俺にシャルロットと呼ばれる事は拒否をしました。
 その時は大して気にも留めなかったけど、もしかすると、俺からそのシャルロットと言う名前で呼ばれる事に対する違和感が強かったが故の拒否だったのでは……。

 そう。かつての生命の際に、俺が彼女の事を呼んで居た名前の印象が強すぎたが故に。
 ましてその答えに関しても、先ほどの彼女の言葉の中に存在して居ます。

 俺は、彼女の前から簡単に消えている。いや、おそらくは、簡単に人生から退場して居る。
 そして、その事に対する彼女の決意も既に、彼女は口にしている。

 あなたは死なせない……と。
 例え、すべての事象。運命さえもが俺を連れて行こうとしても、わたしがそれを許さない……と。

 あの時も今の彼女と同じ、真摯な瞳の中心に俺を映しながらそう誓いの言葉を口にしました。

「了解」

 俺は大きく、そして強く首肯いた後、簡潔に答えを返した。
 それに、先ほども言ったように、俺は簡単に死にはしません。当然、無敵でも無ければ、最強でもない。
 まして、不死などと言う属性も持って居る訳では有りませんが。

 但し……。
 正直に言うと彼女が今、言って居る事の意味は判ります。彼女が言って居るのは、輪廻転生と言う、東洋の思想には当たり前に存在している思想に関する内容ですから。
 おそらく彼女には、今のオルレアン家長女シャルロット姫として生を受けた以外の生命の記憶が、多少なりとも存在して居るのでしょう。

 そして、その事を非科学的だと否定して仕舞うと、俺は、俺自身の存在。龍の血を引くハイブリッド・ヒューマンだと言う事や、東洋の魔法使い。駆け出しの仙人だと言う事の否定に繋がります。
 例えそれが、今現在は実証が出来ない事で有ったとしても。

 しかし、俺の方には、彼女の本名と言う記憶に思い当たる物もなければ、彼女に出会った時に、既視感に似た何かを覚えた事も有りませんでした。

 ただ……。

「必ず、俺の手で記憶を取り戻した時。その時にタバサの本当の名前を呼ぶ」

 彼女が俺を異世界から召喚出来た理由が二人の間に存在していた縁ならば、俺にも彼女に関する思い出が蘇える可能性も有って当然です。
 そう考えて、非常に簡単に。しかし、強く実際の言葉にして答える俺。
 その瞬間、繋がれたままと成って居る右手に、彼女の方から僅かな力が籠められた。

 これは緊張。そして、俺の続く言葉の内容が彼女に予測出来たから。

 そして、

「その時まで、タバサの前から消える……。死ぬ事はない。それは約束しよう」


☆★☆★☆


 十月(ケンの月)、 第四週(ティワズの週)、ダエグの曜日。

 ガリア南方特有の穏やかな陽光が街を覆い、山から吹き下ろす風が熱波となって、晩秋と言っても良いこの季節とは思えないぐらいの温かな気温を作り上げて居た。
 そう。本来ならば、地球世界のプロヴァンス地方のこの時期に吹く北風(ミストラル)は厳しい冷たさを持つはずの寒風と成るはずなのですが、ここハルケギニア世界の風が吹き下ろして来る高山はすべて火焔山状態。其処から吹き下ろして来る季節風が、冬の寒さをもたらせる北風と成る訳は有りません。

 小高い丘から見下ろした街。この緑あふれる丘には、他の地方の森で良く目にする背の高い樹木などは存在せず、低木で構成された灌木地や藪が海まで続き、海に面した平地に存在する光と風に溢れた港町からは……かなり強い陰の気配が発せられて居た。

 人々が普段から遠ざけ、思い出す事さえせず、しかし、心の何処かでは畏れ続ける事象。
 死の気配と言う物が。

 この死の気配と言うのは当然……。この街も秋の始まりと共に発生した疫病がもたらせた物。この街の場合はペストを中心とした疫病が猛威を振るっている状態のようです。
 そう。隣の軍港トゥーロンとは違い貿易。つまり、商業港として発展して来たこの街の場合は、海の向こうから輸入して来た毛皮などに付着して来ていたノミなどが媒介したペストが過去に何度も猛威を振るった事が有るらしく、今回はその際に死亡した先祖たちが疫鬼として使役され、無辜の民を苦しめているようなのですが……。

 但し、今回の任務はその蔓延しつつある疫病を阻止する事が目的で、このマルセイユの街を訪れた訳ではないのですが。
 もっとも、今回の任務をガリア全土で無事に熟す事が出来たのならば、ガリア全土での霊的防御能力が飛躍的に高まり、一度失われて仕舞った精霊たちと、ガリア王家との絆が結び直される可能性も高く成り……。
 その結果として、このような疫病が流行る事や、自然現象としての天災。そして、それに伴う凶作などが起こり辛い国を作り上げる事も可能だと思いますから、厳密に言うと、完全に無関係の仕事だ、と言う訳では有りませんけどね。

 その瞬間。
 北に控える火竜山脈から吹き下ろす温かな、しかし、乾いた風に煽られて、少し伸び掛けて収まりの悪くなった蒼い前髪が視界を僅かに遮った。

 そう。今の俺の容姿は蒼い髪の毛。そして、蒼と紅の瞳へと移行していた。
 これが、聖賢王ジョゼフの言う少しばかりの細工と言う事。

 俺は顧みて、傍らに居る二人の乙女に順番に視線を送った。
 北風に煽られながらも、そんな事を気にする事もなく、彼女らより返される仕草は正に双子のそれ。微かに首肯く事によりこれから行う作業への同意を示す。

 その仕草を最後まで確認した後、口の端に浮かべた少しの笑みと共に奏で始めるメロディ。
 その妙なる音階は、地球世界ではミストラルと呼ばれる北からの強力な季節風に乗り、眼下の港町。……マルセイユの街の隅々へと広がって行く。

 高く、低く。

 強く、弱く。

 そう。これは、ガリア国内のすべての街の土地神を召喚して彼らとの絆を結び直し、都市自体の持つ霊的な防御能力を高める為の作業。
 土地神。いや、ここは西洋風剣と魔法のファンタジー世界ですから、都市を守護するのは守護精霊と呼ぶべき存在ですか。

 但し、ブリミル教と言う一神教の教えに因り、精霊などの超自然な存在との絆を失ったガリアの都市の霊的防御能力は格段に低い事が、今回の牛頭天王召喚に始まる疫病騒動で露呈した為に、精霊との契約を結ぶ事の出来る俺にこの仕事が回って来たと言う事。
 そして、この蒼い髪の毛、蒼い瞳。ルイ・ドーファン・ド・ガリアと名乗る事。更に、タバサ。オルレアン家次期当主にして、次代のガリア王国の王妃に成る少女が同行する事にも、この土地神たちとの絆を結ぶと言う作業にはそれなりの意味が有ります。

 何故ならば、これは次代のガリアの王との契約に当たる作業と成りますから。
 王家の仕事には、その国の祭祀を司ると言う仕事も存在しています。
 政治(まつりごと)は当然、祭りに通じ、祀りに通じますから。

 刹那、遙か彼方に存在する火焔山……火竜山脈の方角に視線を向けて居た俺の背後に、人ならざる気配が発生した。
 ただ、この気配は何故か知って居る人物……と言うか、知って居る精霊の気配。

 振り返った俺の視線の先に存在していたのは……。
 長い黒髪を北風に晒し、緑を基調としたアール・デコ調のドレスに身を包んだ少女。
 但し、アール・デコ調のドレスの特徴。コルセットから解放された、未だハルケギニアの貴族階級ですら着こなしていない先進的なドレスを身に纏いながらも、彼女が大地母神系の女神で有る事が強く意識させられる体型で有った事は間違いない。

 常に俺の傍に居る二人の少女とは明らかに一線を画する体型。流石に九十センチを超えるキュルケと比べるとアレですが、それでも……。

「よう、久しぶりやな、妖精女王ティターニア」

 見ては成らない物に視線が向かい掛けた事を気取らせない為に、普段よりも更に気さくな口調及び雰囲気でその場に顕われていた少女に声を掛ける俺。
 そう。その場に顕われて居たのは、タバサが吸血姫へと覚醒した太歳星君事件の時に手伝って貰った相手。自らの事を妖精たちの女王で有るティターニアだと名乗る少女であった。

 但し、彼女に関しては、最低でもこのガリア全体を統合する大地系の守護精霊だと思って居たのですが。

「お久しぶりです、忍さん」

 彼女に相応しい、この場に存在する二人の少女から発せられる事のない、慈母の如きと表現されるべき表情の後に、そう語り掛けて来るティターニア。
 但し、何故か……。おそらく彼女の東洋人風の容貌からそう感じるだけなのでしょうが、何故か、彼女から初めて呼ばれた俺の名前が、この世界の言語風の表現などではなく、漢字を主に使う民族的……。簡単に言うと、何故か日本語表記風で呼ばれたような気がしたのですが。

 そう考えた後に、少し頭を振って思考の方向性を変えた。

 そう。違う方向から考えてみると、このハルケギニア世界にやって来てから、色々な人ならざる者に出会いましたが、俺の名前を呼んでくれたのは彼女が初めてでしたから。
 湖の乙女はあなた。タバサも同じ。ブリギットはオマエ。ジョゼフに至っては我が息子ですからね。
 後はオルレアンの姫の使い魔扱いで、人間として呼び掛けてくれた事はなし。

「それで、今回、俺は何をしたら良いんですかいな?」


☆★☆★☆


 本来の任務。マルセイユの土地神を召喚して、その土地神との間に絆を結び直す作業は、ティターニアが顕われた事に因り中断。
 その後、この街に流れる龍脈の浄化と、街に存在する龍穴にティターニアの許可を受けて少しばかりの細工を施した後に……。

 マルセイユの街に宿を取り、夜を待つ事しばし。
 外は昼間の間、ずっと吹き荒れていた妙に生暖かい北風が更に勢いを増し、最早、嵐と言うべき様相を呈していた。
 これでは流石に、トリック・オア・トリートと言う訳には……。

 そんな、あまり役に立たないクダラナイ事を考えながら、何処を見るとは無しにぼんやりと風にガタガタと鳴る窓と、その窓に付随する少女姿の置物に視線を送って居た俺が……。

「なぁ、タバサ」

 寝台の脇に浅く腰を掛け、膝の上に開いた和漢の書に瞳を送って居た蒼い少女の方に振り向きながら話し掛けた。
 その瞬間、窓枠に腰を掛けた少女姿の置物の膝の上で、持参して来て居た和漢の書籍の新たなページが捲られた。
 何故か、その瞬間に、少し不満げな雰囲気を発しながら。

 そして俺の問い掛けに対して、下を向き続ける事に因って収まりの悪く成ったメガネのフレームを直しながら、視線を持ち上げるタバサ。
 そのメガネに魔法のランプの明かりが反射して、僅かな煌めきを俺の瞳に伝えた。
 何故かこちらは、少しの嬉しげな雰囲気を発しながら。

十一月(ギューフの月)、 第一週(フレイアの週)、虚無の曜日に、この世界のブリミル教では、何か特別な祭りのような物が開かれる事はないか?」

 少し、不謹慎な雰囲気は何処か遠くに放り出し、当初の疑問を口にする俺。

 尚、地球世界での十一月一日と言えば、諸聖人の祝日。カトリック教徒の多い国では、国民の祝日と成って居る日のはずです。
 そして、その前日の十月の末日と言えば、当然、ハロウィン。

 但し、これは、元々ケルトの民たちに取って十月末日とは一年の終わりの日。
 そして、十一月の最初の日とは、一年の始まりを示す日だったと言う事。
 つまり、もし、この世界に万聖節(諸聖人の祝日)が存在するのなら、その元と成った精霊への信仰と言う物が存在して居た可能性が出て来ると思いますから。

「ガリアでは敬虔王シャルル一世が、十一月(ギューフの月)、 第一週(フレイヤの週)、虚無の曜日を先祖の為に花を捧げる日と決めた」

 少しの空白の後、小さな声で囁くように答えてくれるタバサ。
 その言葉の中に感じる満ちた雰囲気。必要とされる人間の傍に居ると言うだけで、ここまで穏やかな感情に彼女は包まれて居られるのか、と感じる陽の雰囲気。

 そして、

 敬虔王シャルル一世。確か、以前にも聞いた事が有る名前。
 この名前は、ガリアのブリミル教への信仰に対するターニング・ポイントと成った可能性の有る人物だと言う事に成りますか。
 確か、本来の正統なる祖王からの血を引く義理の兄を弑逆して国を乗っ取った人物。

 それに……。
 俺は、それまで見つめていたタバサから、もう一人の少女の方に視線を移した。
 其処には窓枠に腰を下ろし、(マルセイユ)と秋の夜空を背景とした少女姿の氷の彫刻が存在していた。

 そう。彼女ら精霊と、この世界の魔法使いたちとの歪な関係。
 確かに、精霊と契約を結ぶ事もなく、また、世界にあまねく存在して居るとは言え、霊的な感度がかなり高い人間でなければ精霊たちの力を借りる事は出来ない、と言う俺の世界の理をあっさりと超えたトコロに存在するこの世界の魔法は、科学技術の発展していない世界には必要な物なのかも知れません。
 しかし、それでも、六千年もの長きに渡って殆んど変わらない文明を維持し続けている、と言うのもかなり不審な状態。

 それに、俺たちの世界で六千年前と言えば、これは神話の世界。正確な記述も残されていなければ、その当時の出来事を残して居ると思われる神話と言う物も、時代と共に内容が変遷して来ています。
 そもそも俺は、そのブリミル教と言う一神教について、詳しい内容をほとんど知らないのですが……。
 例えば、日本に神武天皇が本当に実在して居たのかどうかさえ、実は定かではないのですから。たかが、二千六百年から七百年ほど前の事が判らないと言うのに、六千年前の状態の正確な伝承が残って居ると言う事自体……。

 俺が、この世界の成り立ちと、其処に秘められた謎のような物に到達し掛けた正にその瞬間。

 窓枠に腰を下ろした紫の少女が、その視線を送って居た書籍を静かに閉ざした。
 そして、俺を真っ直ぐに見つめる。

 彼女のその反応に合わせるように、このレベルの宿屋に相応しい扉をノックされたのだった。



 轟々と唸るように吹き付ける風に身体を立て、同時に生来の能力を発動させ、風と彼女たちの間に不可視の壁を瞬間に作り上げた。
 そう。時と場合に因っては、時速九十キロ以上の速度と威力で吹き付ける風に、彼女たちを直接晒す訳には行きませんから。

 季節風に支配された異世界のマルセイユの街は正に嵐の様相を呈し、流れる雲の速度は速く、海は荒い波音と整備された船着き場を洗う白波に、今宵は船を出す漁師すら存在していないであろうと言う状況。
 埠頭と言う場所は、こんな嵐の夜に訪れる場所ではないと思うのですが……。

 俺はそう考えながら、少し厳しい表情を浮かべた妖精女王の横顔を見つめる。
 彼女は俺の考えを知ってか、それとも知らずか。
 この場所に辿り着いてから闇の彼方に沈んだ海の向こう側を見つめた切り、何も話そうとはしない。

 そうして、

「この埠頭から西に三リーグほどの距離に有る島に渡りたいのですが」

 この場所にやって来てから初めて、妖精女王はそう言った。相変わらず厳しい瞳で遙か沖を見つめながら。

 三リーグ。大体、三キロメートルと言うぐらいの距離か。
 確か、水平線までの距離が四,五キロメートルと言うトコロだから、晴れた昼間ならば、有視界の範囲で転移魔法は行使可能。
 但し、今は夜。更に波が荒く、其処まで遠方が見渡せるとは思えない状況。ならば、一度上空に舞い上がってから、暗視と遠視の術を使用したタバサか湖の乙女と意識を直結させてから転移を行えば問題は有りませんか。

 ただ、この埠頭がベルジェ埠頭と呼ばれる埠頭ならば、ここから三キロ沖合に浮かぶ島と言うのは……。

「その島と言うのは、もしかしてイフ島の事なのか、ティターニア?」

 そう問い掛ける俺。
 確か、地球世界の西暦に換算すると、今年は清教徒革命が起きて、オリヴァー・クロムウェルにステュアート朝が打倒された年に当たるから、おそらく一六四九年。
 地球世界の歴史から考えると、この時期にはイフ島に存在していた監獄にユグノーたちが送り込まれて居たはずなのですが、残念ながらこのハルケギニア世界のガリアは、地球世界のユグノーに当たる改革派と呼ばれる連中の方が勢力を握っている為に、新教徒たちが囚人としてイフ島に送り込まれているとは考えられない。

 だとすると、イフ島に有った修道院がオスマントルコの海賊に襲撃を受けて衰退するのが一六世紀のはずですから……。

「そうです。イフ島に有った湖の修道院跡に行って欲しいのです」

 大体、俺の予想通りの答えを返して来るティターニア。
 ただ、湖の修道院?
 確かに、西洋で有名な湖の畔には修道院が結構、存在していたとは思いますが、名前に湖の、……と付いた修道院は記憶には有りません。

 もっとも、もしかするとそのイフ島の規模が、俺の知って居る地球世界のイフ島の規模よりも遙かに大きくて、島内に有名な湖が存在している可能性もゼロでは有りませんか。

 それならば、

「一度、有視界内の上空に転移した後に、そのイフ島をタバサに遠視と暗視を同時に行使して貰ってから、意識を俺と同期させ、転移を行う。
 ティターニア。それで問題ないな?」

 
 

 
後書き
 色々な伏線を回収している最中です。
 尚、イフ島が何の物語に登場するのか知って居る方は、これが何処のフラグに直結している物語か判り易いと思います。
 もっとも、その物語のまま行う訳がないのですが。

 次。
 この『蒼き夢の果てに』とゼロの使い魔原作とはまったく関係のない世界。平行世界の出来事です。
 故に、原作小説とは違う部分が存在する事は御容赦下さい。
 尚、ここから先の話は、原作小説から更に離れて行く事に成るのも同時にご理解頂けると幸いに御座います。

 それでは次回タイトルは、『廃墟の聖堂』です。

 追記。……と言うか悩みまくって居る事。
 二次小説は本来ならば全部アウトなのですが、その中でも盗作とそれ以外の線引きって、どのレベルなのでしょうか。
 私の文章でもアウトなのか、このレベルなら大丈夫なのか。
 それに、原作沿いと原作コピーの明確な線引きも判りませんし……。

 一応、原作小説で使用されている描写は知って居る範囲ではひとつも使っていないはずなので、大丈夫だとは思うのですが。
 敢えて、原作小説で使用されている表現とは別の方法を使用している心算ですから。
 
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