八条学園怪異譚
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第三十七話 テケテケその十一
「ハロウィンもよかったけれど」
「今はないわね」
「ううん、花とゆめとかりぼんは私達も読んでるけれど」
「妖怪さん達もだったのね」
二人も今知ったことだった。
「いつもお酒と肴ばかりだったけれど」
「漫画も読むのね、本も」
「読むよ、ろく子さんの図書館にも行き来してるからね」
実際に図書館で宴会をしていた。
「まあ博士程じゃないけれどね」
「博士はまた特別だから」
「それがお仕事でしょ」
学者は本を読むことも仕事だ、そこから論文を書くのだ。
「それにあの人どんな言葉の本でも読めるし」
「また特別でしょ」
「あの人ね、実はのらくろとか手塚治虫先生の初版本とかも持ってるのよ」
テケテケは今二人に衝撃の事実を話した。
「他にも藤子不二雄先生の昔の漫画もね」
「そういうのって確か何十万とかいう価値があるわよね」
「何か宝物っていうけれど」
「そうみたいね、のらくろは私も読ませてもらったけれど」
今では古典になっている、尚日本軍は犬で他の国もそれぞれの動物になっているという独特の漫画だ。
「凄く古い本だったわ」
「それであの人の奥さんのお兄さんが小林秀雄なのよね」
花子さんはのらくろの作者のことも話した。
「田河水泡さんのね」
「ふうん、凄い縁ね」
「小林秀雄って」
「そうでしょ、小林秀雄さんの昔の彼女が中原中也さんと付き合ってたこともあったし」
それで色々な逸話もあった、小林秀夫の周りも中々騒がしかったのである。
「この辺り少女漫画チックでね」
「好きなのね、あんたも」
「花子さんも」
「好きよ、皆噂話はおトイレでこそするしね」
花子さんの居場所であるそこでこそ、というのだ。
「色々聞くのよ」
「そういえば私達もおトイレで話すわよね」
「そうよね」
愛実と聖花もこのことに気付いた。
「他に誰もいないってことが多いから」
「ついついね」
「そこで私が聞くのよ」
花子さんがだというのだ。
「それでこうしたお話にもね」
「詳しくて興味もあるのね」
「というか好きなの」
「おトイレにいると色々なお話が聞けるわよ」
花子さんは笑顔のまま二人に話す。
「まあ耳年増っていうのね」
「そうだったのね、花子さんって」
「そうところもあるのね」
「そうよ、意外?」
「意外っていうかね」
「外見からはあまりイメージ出来ないから」
それでだというのだ。
「昔の女の子って感じで」
「それも元気なね」
「ところが、なのよ」
花子さんは自分から言う、かなり乗っている。
「私はそうしたお話が好きなのよ」
「おトイレにいていつも聞くから」
「それでなのね」
「そうよ、中には嫌な話もあるけれどね」
いい話ばかり聞けるという訳ではないというのだ、人は美醜を併せ持つ生き物であるそうした話を聞くのも当然と言えば当然だ。
「ここでは言わないけれど」
「ううん、何となくだけれどわかったわ」
「私もね」
二人、特に愛実は花子さんの言う嫌な話という言葉に察してこう述べた。
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