ロックマンX1st魔法少女と蒼き英雄
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第二話「魔法/MAGIC」
前書き
ついにタケルがロックマンとして目覚めます。今後もこの話はなのはの原作に沿って書こうと思います。
第二話
「魔法/MAGIC」
タケルはなのはと共に目の前の化物と対峙していた。先に先手を打ったのは化物のほうで、化物はなのはへ向けて突進をかけたが、その刹那ジュエルシートの球体が反応し、結界を生じて彼女の身を守った。
「なのはちゃん……!」
タケルも応戦をしたいが、武器のようなものが見当たらず戸惑っていると、
『右腕を目標に向けるんだ。バスターへ変形する!』
「バスター……?」
タケルはモデルXに言われたとおり右腕を化け物へ向けると右腕が変形し、一種のアームキャノンへ変形したのだ。
「じゅ、銃……?」
『照準を定めて、バスターは自分の意思で放てる!』
「よ、よしっ……!」
タケルはバスターの銃口を化物へ向けそして撃つという意思のもとバスターから光弾が放たれた。
「……!?」
バスターの光弾は化物に命中し、それなりのダメージを与えた。しかし、化物はなのはよりもロックマンとなったタケルへ敵対姿勢を向けてしまった。
「き、来た……!?」
『もう一発!敵はだいぶ弱っている。チャージショットを!』
「ちゃ、チャージ……?」
『バスターの腕に力を込めて?通常の数十倍もの威力が放てる』
「こ、こうか!?」
タケルは右腕へ力を込めると、バスターの先からエネルギーが集結し、巨大な光弾へと膨らんでいく。
『今だ!』
「いっけえぇ……!」
タケルが放ったチャージショットは凄まじい速さで風を切り、そして化物へ命中した。化物はもがき苦しみ、そして体が幾つもの破片へと分散して飛び散り、それが塀、電信柱などに衝突して穴が開き、倒れるなど、もがき苦しんでいた。
「や、やったの……?」
「いいえ、まだです!封印を!?」
と、フェレット。
「ふ、封印!?」
慌てるなのはにフェレットは解説する。
「僕等の魔法は発動体に組み込んだプログラムと呼ばれる方式です。そして、方式を発動させるために必要なのは、術者の精神エネルギーです。そして、あの化物は忌まわしい力によって生み出された思念体、アレを停止させるにはその杖で封印してもとの姿に戻さなくてはいけないのです」
「よ、よくわからないけど、どうすれば!?」
「本来、攻撃や防御などの基本魔法は心に願うだけで発動しますが、より大きな力を必要とする魔法には「呪文」が必要なのです」
「呪文?」
「心を澄ませて?心を澄ませば、あなたの心に呪文が浮かぶはずです」
「……」
なのははフェレットの言うとおり目を閉じ、精神を集中させる。そのとき、化物が再び彼女に襲い掛かるが、その化物の動きを抑えるかのように数発の光弾が化物の突進を抑えた。
「なのはちゃん!僕が動きを止めるから、君は早く……!」
なのはの盾となってタケルが援護射撃を続ける。
「ありがとう!タケル君、よし……!」
なのはは杖の先を化物へ向け、彼女の心に浮かんだ呪文を唱えた。
「リリカル・マジカル!」
「忌まわしき力はジュエルシード」
フェレットの叫びになのはが続いて、
「ジュエルシード!封印!!」
杖から光の翼が生え、そこから光の帯は放出し化物を拘束して、足掻く化物の額にはローマ数字が浮かび上がった。
「リリカル・マジカル、ジュエルシード・シリアル21……封印!」
杖を掲げると、杖の先の赤い水晶は光だし、その光が化物を貫いて奴を封印した。そして、瓦礫となった場所にビー玉のサイズ程の宝石が隠れており、それをなのはが拾い上げた。
「それが、ジュエルシードです。レイジングハートで触れて?」
フェレットの言葉でなのはは杖こと、レイジングハートをジュエルシードへ近づけると、レイジングハートの水晶はジュエルシードを吸い込んだ。
戦闘が終わり元の姿へ戻ったなのははキョトンと立ち尽くしている。タケルも元の姿へ戻ると、片手に握るモデルXを見た。
『見事だ。君の能力は想像以上だったよ?』
「やっつけたの?あの化物……」
『ああ、とりあえず一安心だ』
その後、二人は公園でフェレットとモデルXから事情を聞きだした。そこでタケルはフェレットが喋ることに気がつき、なのはもいつの間にタケルがライブメタルという物質を持っていたのか、聞きたいことは山ほどあるが、最初は彼らの自己紹介から始めた。
「僕は、ユーノ・スクライヤ……「スクライヤ」は部族名だから、「ユーノ」が名前です」
「ユーノ君か、可愛い名前だね?」
「あの……すみません。あなたを巻き込んでしまって」
ユーノは戦いになのはを巻き込んでしまったことの罪深さを感じており申し訳ないと思っているが、なのはは特に気にしてはおらず、
「気にしないで?それと、私は高町なのは、家族からも友達からも皆「なのは」って呼んでいるよ?それと、こっちの子がタケル君。少し人見知りがあるけど、本当は優しい男の子なの」
と、なのははタケルも紹介し、言葉を喋るフェレットに驚きながらも彼はお辞儀をした。
『じゃあ、次は僕の紹介かな?』
そういうとモデルXは宙に浮いてタケルやなのはの前で自己紹介を始めた。
『僕は、意思を持った金属融合物質生命体ライブメタルの一種、モデルXです。まずは、仲間のユーノを助けた事に礼を言わせてください』
「一種ってことは、君以外にもまだライブメタルはあるの?」
と、タケル。
『開発中だけどね?今のところ僕が初号機で、もう一体は……いや、またの機会に説明しよう。そもそもユーノは先ほど出現したあのイレギュラー化した「ジュエルシード」というロスとギアを回収するべくこの世界へ派遣されたんだ』
「ジュエルシード……?それにロストギアって?」
科学者の両親をもタケルでさえ聞き覚えのない用語ばかりであって首をかしげていると、
「ロストギアとはかつて古代文明で作られた遺産で、その多くは現代の技術では到達できない高度な技術力で作られた物さ?使い方次第では創造にも、破壊にも繋がる。そしてジュエルシードはそのロストギアの一部で僕たちはそれを回収しているんです」
と、ユーノが説明をし、
『しかし、ジュエルシードは予想以上の強大な力を秘めている。さすがにユーノ一人の力では無理だ。そこで僕も同行し、この世界における適合者とロックオンしてロックマンとなれば、イレギュラー化したジュエルシードにも太刀打ちできる。僕単体でも中級魔力はどうにかなるが、ジュエルシードのような上級並みの魔力ではどうにもならないからね?』
「じゃ、じゃあ、僕がその適合者に選ばれちゃったってこと?」
そうタケルが自分へと指を刺した。
『うん、本来ならば適合者と公平に話し合った上でロックオンする予定だったけど、あの時は仕方がなかったんだ。本当にすまない!』
「……別にいいよ、済んだ事だし。それに、僕が選んだ事だから……」
『ありがとう、でも君のような少年を戦いに巻き込むわけには行かない。対称に合った適合者を一刻も早く探し出すために君と戦った事は今回っきりにするよ?』
「……そう?」
タケルは少しホッとしたような顔をした。
「とりあえず、ユーノ君もまだ怪我は治っていないんだし私の家に来なよ?モデルXさんもしばらくは家にいて?」
「……そうだね、新しい人が見つかるまで僕が大事にするね?」
『ありがとう、タケル……』
「あれ?どうして僕の名前を……?」
『君が名乗らなくても適合が強い相手なら名乗らなくてもわかるよ?』
そういうとモデルXはタケルのポケットへスッポリと入り込み、ユーノもなのはの掌に乗っかり、二人に家まで連れて行ってもらった。
しかし、もう夜更けの深夜だ。今頃家を抜け出して行ったから、皆怒っているんだろうな?今度こそ覚悟してタケルはなのはと共にこっそりと玄関の戸を開けようとすると、
「お帰り……二人とも」
「「!?」」
振り向くとそこには兄の恭也が待ち構えており、なのはは慌ててユーノを後ろに隠し、タケルは寝巻きの姿でも帽子を被っていて、その唾で顔を隠した。
「お、お兄ちゃん……!?」
「こんな夜更けに何処へ行っていたんだ?」
「あ、あの……えっと……?」
「あら、可愛い!」
と、なのはの背後には姉の美由紀も居て、彼女はなのはが背に隠したユーノを目にそう叫んだ。
「なのははこのフェレットが気になって様子を見に行ったんだよね?タケル君もそうでしょ?」
そう美由紀は二人を庇ってやった。
「わからなくもないが、だからといって内緒なのも頂けない……それにタケル?」
恭也はなのはから彼の隣に絶つタケルへ視線を向けた。
「……!?」
「君は男の子なんだから、なのはと同行するよりも引き止めなくてはいけないぞ?」
(このガキが……いっそここから消えてしまえばいいものを?)
恭也の注意が、タケルの頭の中で被害妄想によって掻き消され、このように聞き届いた。
「あ……あぁ……!」
「?」
恭也が気づくと、タケルは目を見開き、パニクッていた。そして絶叫してここから疾走してしまったのだ。
「あ、タケル!タケル!?どうしたんだ?」
恭也が追おうにも信じられない速さで疾走し、すでにタケルの姿は夜道に消えて肉眼では捉えられなかった。
「とりあえず、探そう?まだ遠くへは行っていないみたいだし」
「そうだな?なのは、俺は美由紀と一緒にタケルを探してくる。家で待っていろよ」
二人は夜道へ消え、なのははタケルの身を案じて無事を祈った。
「タケル君……」
タケルはなのはと打ち明けても、彼女の家族とは打ち明ける事はできなかったのだ。
*
彼がライト博士の自宅へ訪れた頃には激しい雨が降り始めていた。博士は留守にしており、彼は敷地へと横たわり身を潜めていた。
『タケル?タケル!?どうしたんだい!?』
「ごめんなさい……!ごめんなさい……!」
『……』
跳ね返る雨に打たれながら何度も謝り続けるタケルを目にモデルXは彼を見守った。
翌日、タケルが目を覚ますと、そこはライト博士の自宅で、ベッドに寝かされていた。
「……」
まだまぶたが重くも、今寝かされている場所はライト博士の自宅だ。どうして彼の自宅に居るのだろうか?機能までの記憶があまり思い出せない……
ガチャッ……
「……?」
すると、ドアを開けて部屋から大柄な老人トーマス・ライトが入室し、タケルの表情を伺いに来た。
「おや、もう起きれたのかい?」
「博士……」
「君が私の庭で横たわっていたから驚いたよ?それも雨に打たれながら寝ているので少し熱を出していたが、その様子だと熱は下がったようだね?」
「迷惑かけてごめんなさい……」
「いや、無事でいてくれたから安心したよ?ところで、タケルや?高町家の人がこちらを尋ねてきたが?」
「……!?」
ライトが尋ねると、タケルは彼の言葉で昨夜のことを思い出した。そして、自分がライブメタルという金属生命体と言葉を喋るフェレットとであった事も思い出した。
(このガキが……いっそここから消えてしまえばいいものを?)
あのときの妄想を思い出し、それを回想すると彼は激しく頭を抱えて苦しみだした。
「……っ!!」
「タケル……」
ライトはそんなタケルの背を優しくさすった。
「大丈夫だよ?誰もお前さんを虐めやしない……」
「っ……!」
数十分かけてようやく落ち着いたタケルを見てライトは席を外し、研究室へと戻った。研究室のラボにはデスクの上にライブメタル、モデルXがおかれていたのだ。
『ライト博士……』
実を言うと、モデルXの開発者はライト博士の知人でありモデルXもライト博士の事を前々から知っていた。この世界に来てジュエルシードに襲われながらも知人と出会えることが出来た事は不幸中の幸いであった。
「タケルは、見ての通り極度な対人恐怖症でね?人に強く物事を言われたりすると号泣や疾走をしたり、最悪の場合は発作も起したりするのだよ?今まで私が彼の心のケアを勤めてきたが、しかし最近は徐々に悪化しつつある。最近になって被害的妄想を発言したり、恐怖のあまり凄い力を出したりと、このままだとタケルは心を闇に閉ざし、自ら命を絶ってしまう恐れがある。この病気を治すには他者と触れ合い、徐々に心を打ち解けていくしかないのだよ?」
『彼は、そんな病を抱えて……』
そのような重い病を抱えて昨夜、ロックマンへ変身して勇敢に戦ったのかと思うと、彼の正義感は本物だと感心させられた。
「彼はもう、私では手の施しようがない。どうにかして、人と触れ合う事はできないものか……?」
『博士?』
モデルXはライトへ尋ねた。
「何だね?」
『……一晩考えたのですが、あのタケルという少年はロックマンとしての資質があるかもしれません』
「あの子が?しかし……」
『確かに、自分が何を言っているかはわかっています。病を抱えた少年を戦いに巻き込んでしまうことは非情だと思います。しかし私は彼をこのまま放ってはおけません。彼の心の中には強い正義感と優しさが宿っています。きっとロックマンとしての自覚が持てれば彼の病も断ち切れるかもしれません。お願いします。彼を、蒼霧タケルと話をさせてください?』
「……」
ライトは考えた。今まで他人と目が会っただけで隠れてしまう、そんな少年を戦わせて大丈夫なのかと?
『博士、タケルは高町なのはという少女の前では心を徐々にですが、打ち明けつつありました』
モデルXからの報告を聞いて、
「なのはが?あの子が?」
ライトは玄関で出会ったあの娘を思い出した。明るく元気で、そして正義感に満ちた強いオーラを感じさせる純粋な少女であった。あの少女がタケルを自分の代わりに支えてくれたのだ。そして、タケルと心を打ち明けられるかもしれない。
「本当かね?」
『はい、タケルはなのはに身体を触れられても平然としていました』
「あのタケルが……?」
『博士……』
「……私のほうから話をつけてこよう?だから、今しばらく時間をくれないかい?私とてタケルの保護者でもある。今まで父性を抱いてあの子に接してきたんだ。だからタケルを戦いへ巻き込ませるのを考えると……」
『……わかりました。では、返答をお待ちしております』
モデルXとの対話を終え、ライトはしばらくしてタケルを昼食へ招き、テーブルの上で話をつけた。
「……タケル、先ほどモデルXと話としていてね?彼はタケルにロックマンとしての資質があると評価してきたのだよ?」
「……モデルXが?」
動かしていたナイフとフォークが止まり、タケルはライトの話に耳を傾けた。
「彼は君をロックマンとして選びたいと言っておるが、タケルや?いきなりですまないが、お前さんはどう思うんだい?」
「僕は……」
「今は私とお前しか居らんよ?さ、正直にお言い?」
「……僕は、「ヒーロー」が嫌いです」
と、タケルは答えた。その返答にライトは首をかしげる。
「ヒーロー?」
昨夜の戦闘を見てタケルはロックマンのことをヒーローと例えていた。
「僕は、ヒーローを信じません……」
「ロックマンのことかい?」
「……」
タケルは頷いた。確かに言われて見れば暴走したジュエルシードを回収して世界を救う役目、この仕事をする人間をヒーローと呼ばないで何と呼ぶのか?
「では、私から断っておこう……」
そういうと、ライトはタケルに背を向けると、
「は、博士!」
「ん?何かな?」
「……その、そうなると…モデルXとはお別れになるんですか?もう、会えないんですか?」
そのタケルの目は、断る目というよりも、わずかながら心残りのある目であった。それをライトは見逃さず、
「……しばらくの間、私の家で預かることにしたよ。モデルXも意思を持った生命体だから話し相手ぐらい居ないと寂しかろう?今日は休日だからタケルもゆっくりしていきなさい?」
そう博士はタケルにそう言い合せていた。タケルが最期に言ったあの心残りのありそうな言葉を聞いて、ライトも少し戸惑っていた。タケルはモデルXが自分を必要としているのではないかと気づいており、今まで嫌っていた自分を変えたいと思っている。そういう顔をしていた。
ライトが部屋から出てラボへ戻ると早速モデルXが問う。
『どうでした……?』
「迷っておる……あの子はお前さんに必要とされていると思っておるのか、少し戸惑う目をしていた。しばらくは様子を見よう?」
『そうですね?』
*
翌日、タケルは猛スピードで学校へ走っていた。一昨日学校を抜け出したため、自転車を置き忘れていったのだ。朝の六時に起床して玄関先でそれに気づいたので走らなくては間に合わなかった。
「ま、間に合ったかな……?」
時刻は八時、どうにか間に合ったようだ。校門へ入ろうとした時、
「お待ちなさい!」
「!?」
その聞いたことある甲高い叫びにタケル恐る恐る振り向くと、そこには一昨日絡んできた委員長の女子が仁王立ちしてこちらを睨んでいた。
「……?」
「ぎりぎりになって遅刻とはどういうことですの!?」
「……自転車を忘れたから」
「言い訳は無用!ともかく、今度こそ帽子を脱いで授業を受けなさい!!」
と、ビシッと指を刺すと同時にあの時の大柄な男子が彼女のバックに立っていたが、彼以外にもう一人居た。二人の仲で一番背が小さい。タケルよりも背が小さなメガネの少年だ。
「あれ……?」
タケルがメガネの少年へ目を向けると、少年は気づかれなかったのかと怒り出す。
「あ、今更僕に気づいたのですか!?僕はキザマロ!委員長の頭脳とも言われている存在です。僕よりも背がでかいからといって威張らないでください!!」
「べ、別に……」
「とにかく!早くその帽子を取りなさい!ゴン太、あなたの出番よ!?」
タケルは彼を目に恐がるが、それと同時に彼もタケルを見て恐がり出した。
「い、委員長!こいつ一昨日俺を突き飛ばしたんだぜ!?」
「何を言っているの?あなたよりも体の小さい子があなたを突き飛ばすわけがないじゃない!?」
「とにかく!その子から帽子を取りなさい!?」
「え、え!?」
「……」
ゴン太もまた突き飛ばされるのではないかという恐怖と、タケルはまた追いかけられるのではないかという恐怖感で双方は動かずにじっと身を震わしていた。
「こらこら?やめないか」
と、校門から白衣を着た男が出てきた。アフロのようなモジャモジャ頭に愛称のいい優しそうな表情が印象的だ。
「あ、育田先生?」
と、委員長は振り向いた。タケルは先生と聞いて嫌ってはいるが、この教員を見た瞬間、警戒心が和らいだ。
「やぁ?おはよう、君がタケル君かい?話は聞いているよ、私は育田道徳。君のクラスの担任だ。よろしくな?」
「……あ、蒼霧タケルです……」
「うん!自己紹介できたね?立派だ」
「……?」
自己紹介したくらいで立派?タケルはそう不思議に思っていた。
「よく学校へ来てくれたね?君は一昨日早退したようだけど、別に嫌だと思ったら学校へ行かなくても良いんだよ?」
「え……?」
道徳の言葉にタケルや委員長たちも驚いた。
「え、学校へ行かなくてもいいの?」
と、ゴン太。
「う~む……理解できません…」
キザマロも合意的な口調で納得できない。
「いいかい?世の中には学校で学ぶ事よりもたくさん学ぶことがたくさんあるんだよ?」
「そうなんですか?」
と、委員長。
「ああ、それに愛好を求めて無理やりな行為を続ける事は遺憾だよ?ルナ君」
道徳はそう委員長こと、白金ルナへ振り向いた。すると彼女も目的を悟られたのか焦った口調で言い逃れをしようとした。
「わ、わたしはタケル君のことを思って……」
「「嘘だ……」」
見苦しい彼女を見てゴン太のキザマロはそう呟いた。
「まぁ何にしろ、こうやって勇気を振り絞って来てくれたんだ。私は大いに君を歓迎するよ?タケル君。もし、症状が悪くなったらいつでも私に言いなさい?」
「はい……」
「さて!それじゃあ役者が揃った事だし、教室へ戻るぞ?」
タケルはこの道徳という担任にとは始めて会うも、恐怖感や過去の回想が重なる事もなく、なのはの時と同じように平然を保っていた。
その後、教室で一時間目の授業を始まり、教科書を机の上に用意していたが、
「それじゃあ授業を始めるぞ?」
一時間目の算数の時間になったがこのときゴン太が道徳に、
「先生!いつもの話を聞かせてよ?」
と、言い出してきた。
「いつもの話……?」
タケルは首をかしげると、周りの生徒達はそれを聞いて楽しみに道か顔で道徳を見た。
「おいおい?仕方ないな……よし、じゃあ全員教科書を閉じて?」
「え……?」
タケルは彼が何を言っているのか理解できないが、その後道徳の特別授業が始まった。
「じゃあ、今回は人と人との絆について話そうか?」
そういうと道徳は生徒達に話を始めた、生徒達も彼の話を熱心に聞いて授業はいつのまにか一時間目が終わっていた。
「……と、いうわけで関東淡路大震災や近年起こった東日本大震災では被災地の人たちは皆で力を合わし、協力しながらお互い譲り合い、他者を思いやる優しい心を世界に見せた。こうした人と人との絆は困難な試練にこそ生まれるものだ。だから、皆もどんなに辛いことが起ころうとも、挫けずに人と手を取り合いながら頑張ろう!」
ちょうどチャイムが鳴り、タケルは道徳の授業を堪能した。彼にも道徳の特別授業が気に入ったようである。
それから午前の授業が終わり昼休みになった。一人で給食を食べ終えた後は一人こっそりとグリム童話を呼んでいた。
「……」
「やぁタケル君?」
「先生……?」
彼の席へボールを小脇に抱えた道徳が歩み寄ってきた。
「これからドッジボールを皆とやるんだが、君もどうだい?」
「……」
ドッジボール、彼にとって聞いただけで嫌な言葉だ。よく、体育の時間にやったドッジボールは虐めの的にされたものだった。
「……いいです」
「ん?そうか?遠慮しないでもいいぞ?」
「一人がいいから……」
「そうか……気が変わったらおいでよ?」
そういうと道徳は生徒達に引っ張られながら校庭へ向った。
「……」
タケルは読書で昼休みを過ごし、午後の授業も無事に受けて学校から帰ることが出来た。しかし彼はこの後高町家に戻ろうか、それともライトの元へ行こうかと迷っていた。あの時は自分が疾走して迷惑をかけてしまったから戻りにくい。やはり、ライトの自宅へ行こうか?そう自転車に乗りながら考えていると、
「なのはちゃん……?」
目の前で走るなのはと行き会った。
「あ、タケル君?」
なのはは立ち止まり、タケルの顔を見てホッとした。
「よかった……あのあと心配したんだよ?」
「ご、ごめん……なのはちゃん、何処へ行くの……?」
「ユーノ君と一緒にジュエルシードの回収に行くの!神社のほうにジュエルシードの反応がするって?私、学校や塾の時間は無理だけどそれ以外の時間なら手伝えるから」
「……」
「じゃあ私行くね?」
そういうとなのはは先を急いだが、しかしタケルはそんななのはの行動が理解できず、
「なのはちゃん……!」
「え、なに?」
なのはは急いでいる様子なので手短に彼は尋ねた。
「……どうして、なのはちゃんは人のために頑張るの?また、昨日みたいに危ない目にあったりするんだよ……」
「え?」
「……なのはちゃんが頑張る理由は何なの……?」
真剣な目でタケルは尋ねた。しかし、なのはは自分なりの返答を彼に答えた。
「ユーノ君の事情も聞いちゃったら放っておけないよ?それにあの時みたいなことがご近所で度々あったりしたら、皆さんのご迷惑になっちゃうし……家族や友達が巻き込まれたくないの」
「……」
タケルは黙って彼女の話を聞き続ける。
「困っている人が居て、助けてあげられる力が自分にあるなら、そのときは迷っちゃいけないって……これ、お父さんからの教え」
「……?」
「あ、ごめんね!私もう行かなくちゃ!」
そう言い残して彼女は慌てて現場へと向っていった。
「……」
そして、一人だけ取り残されたタケルは思った。なのはだけが戦い、自分は個人の都合で現実から逃れようとしている。そう思うと自分が情けなく思った。
確かに、あのときは戦いに巻き込まれて自分の中に眠っていた正義感が一瞬呼び覚まされてロックマンへ変身し、戦った。今ではもう済んだ事だし、もう戦いに巻き込まれたくないと思った。それなのに、何故かスッキリしない。どこかで心残りがあった……
あのときモデルXは自分に助けを求めていた、蒼霧タケルという存在を必要としていた。
「……」
(困っている人が居て、助けてあげられる力が自分にあるなら、そのときは迷っちゃいけない……)
「っ……!」
なのはが言っていた士郎の教えを思い出し、気がつくとタケルはライトの自宅へ向って走っていた。
「僕に出来る事……」
今まで僕は「ヒーロー」と呼ばれる存在を認めはしなかった。だからヒーローになることも拒んだ。だけど……
「……!」
今は違う……!
「っ……!!」
僕が目指すヒーローは、今まで嫌っていた「ヒーロー」とは違う。僕は、この世界に存在しない真の「ヒーロー」になってみせる!
ライトの自宅へ駆け込み、彼のラボへ押しかけるとそこにはライトは居ず、居るのは彼のデスクに置かれているモデルXだけであった。
「モデルX!?」
『……?』
「モデルX!起きて?」
『タケル……?』
「モデルX……僕決めたよ!僕を……「ロックマン」にしてください!」
『タケル……』
「僕、本当は迷っていたんだ。でも、誰かが助けを求めているなら、誰かが僕を必要としてくれるなら、困っている人を助ける力が僕にあるのなら……僕はなりたい、ロックマンになって本当の自分を少しずつでも取り戻していきたいんだ!」
タケルの熱意と再びよみがえった正義感を受け、モデルXは彼を適合者として正式登録を行った。
『……やはり僕の目は間違ってはいなかった。タケル、君こそ僕を扱う真の適合者だ』
「行こう!モデルX……」
タケルはモデルXの指示のもとイレギュラー化したジュエルシードの現場へと直行した。
ここから暴走が起こった現場の神社からはそう遠くないはず。
「なのはちゃん……今行くから!」
*
一方、なのはは神社の石段をユーノと共に駆け上り、現場へと向っていた。
「なのは!レイジングハートを!?」
ユーノの叫びに、なのはは首にかけた赤い水晶の宝石「レイジングハート」を手に鳥居の前で駆け上り、暴走するジュエルシードを目撃した。
それは、四つの目をむき出してこちらを睨みつける巨大な黒い化け犬だった。
「原住生物を取り込んでいる!?」
ユーノが推測するが、なのはは首をかしげる。
「実態がある分手ごわくなってるんだ!」
「大丈夫……」
正義感に溢れたなのはは自身を持ち合わせているが、
「なのは!レイジングハートの起動を!?」
と、ユーノに言われた途端、
「えっ?起動ってなんだっけ?」
度忘れしてしまい、考える余裕も与えず化け犬はこちらへ襲い掛かる。
「我は使命から始まる起動パスワードを!?」
と、肩に登ってユーノが指示するも、
「えー!?あんな長いの覚えていないよ?」
その間にも徐々に化け犬は距離を詰めてこちらへ迫ってきている。
「もう一回言うから、それを何度も繰り返して!?」
その刹那、突如レイジングハートが光を放ち、そして気づけば大気状態だったレイジングハートは杖へと姿を変えていたのだ。
「ぱ、パスワード無しで起動させた!?」
ユーノはなのはに秘められた想像以上の資質を目に驚き、彼女に襲い掛かる化け犬もレイジングハートの光に興奮し、突進をかける。
「なのは!防護服を!?」
「!?」
なのはは反射的にレイジングハートを構えると、ふたたび宝石が光だし、結界が生じて化け犬の突進を防ぎ、彼女は防護服を身に纏っていた。
しかし、結界に弾かれて鳥居の上に立つ化け犬は飛び降りてなのはに飛びかかろうとしていた。
「!?」
なのはも気づくのが遅れるが、そのとき、襲い掛かる化け犬の身体に数発の光弾が命中し、化け犬は弾き飛ばされて倒れた。そして、光弾が放たれた先にはロックマンとなったタケルの姿が見えた。
「なのはちゃん!大丈夫……!?」
「た、タケル君……?」
「間に合ってよかった!後は僕にまかせて、なのはちゃんは奴が弱っている間に止めを……!」
そう指示を流すとタケルは起き上がる化け犬に向かい、拳を与えた。
「このっ……このぉ……!」
たかが拳と化け犬は軽く見たが、タケルの拳は予想以上の力を発揮し、化け犬を弾き飛ばした。
『何と……拳の一撃であれほどの威力を!?』
その光景を見たモデルXは予想以上のタケルの力に驚かされる。
「グルルゥ……」
激怒した化け犬は再びタケルへ飛びかかろうとするも、タケルは高く跳び上がってその反撃を回避し、上空からやや強めのチャージショットを連弾で放ち大ダメージを与える。
『なに!?チャージショットを連続で発射するとは……この子は凄い才能だ……!』
なおも、従来単発のチャージショットを連続で撃ち放つタケルはもはやモデルXの予想以上の玉である。そんな彼の攻撃を受けて化け犬は動かなくなった。
「し、死んだの……?」
タケルはモデルXへ尋ねた。いくら暴走とはいえ、取り付かれた動物は無事だろうか?
『心配はいらない。ジュエルシードの強大な力だから取り付かれた生物には何の影響は無いよ?』
「そ、そうか……なのはちゃん、封印を?」
「あ、うん……えっと、封印だよね?お願い、レイジングハート」
そうなのははレイジングハートへ祈ると、レイジングハートは封印を始めて杖から放出した光が化け犬を拘束し、なのはは呪文を唱える。
「リリカル・マジカル!ジュエルシード、シリアル16封印!!」
そして、化け犬は光となり封印され、光からジュエルシードが現れてそれをレイジングハートの宝石が吸い込んだ。
「これで……いいのかな?」
「うん!これ以上に無いくらい……」
ユーノに高く評価され、なのはは照れくさくなった。
『タケルも凄いね?君は僕の想像していた以上の存在だよ』
「べ、別に僕は……ただ、我武者羅に……」
と、タケルも照れくさくなった。
「モデルXにタケル、先ほどは応戦してくれてありがとう。これから先も一緒に戦ってくれると心強いよ」
ユーノが歩み寄ってタケルとモデルXに礼を言い、なのはもタケルに礼を言った。
「さっきはありがとう。とてもカッコよかったよ?タケル君!」
「ぼ、僕が……?」
「うん!まるでヒーローみたい」
「ヒーロー……」
タケルは自分が求めた「ヒーロー」を彼女に認めてもらい、彼は少しだけ遣り甲斐と嬉しさを感じた。
その後、ジュエルシードに取り付かれていた子犬は散歩の途中巻き込まれて気を失った飼い主の元へ戻り、無事に至った。
「お疲れ様……かな?」
なのははタケルと石段にすわり、そう呟いた。
「うん……お疲れ様」
それを聞いたタケルも彼女にそう返した。すると、なのはは彼に振り向き、
「タケル君?これから一緒にジュエルシードを集めるのを手伝ってくれるの?」
「うん、僕はもう決めたから……」
そう、僕はもう逃げたりはしない。まだ病気は治っていないし人を見たら怖くなるけど、これからなのはと一緒に少しずつ自分を取り戻していこうと思う。それにはまず、高町家の人たちと仲良くしなくちゃ……
「ねぇ?タケル君」
「……?」
「私のことは「なのは」って呼んでね?」
そう笑顔で言う彼女を見てタケルは急に赤くなると共に胸が締め付けられるような痛みが襲ってきた。
「う、うん……」
「さて、帰ろっか?タケル君」
「うん……帰ろう?なのは」
こうして、僕のロックマンとしての最初の一歩が始まりました。まだ、わからないことがたくさんあったり、不安なこともいろいろありますが……
「そういえば、お腹減ったね?」
「そうだね……」
とりあえず、なのはと一緒にこれからもいろいろと頑張っていきます。
「……」
僕は無表情から浮かぶわずかな笑顔を浮かべてなのはと手を繋いで僕を待ってくれる「家」と帰るのでした……
後書き
次回予告
正式にロックマンとなった僕はなのはと共にジュエルシードの回収に頑張るけど、昼夜問わずジュエルシードの回収をし続けてヘトヘト……そんなある日、僕はなのはのお父さんに「サッカーをしないか?」と誘われてしまいます、サッカーは過去のトラウマの一つ、僕はどうしたらいいか戸惑います。
次回ロックマンX1st魔法少女と蒼き英雄 第三話「サッカー/SOCCER」
「僕は……サッカーが恐いです……」
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