西郷どんと豆腐
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第五章
西郷は大久保と向かい合って藩士達にこのことを話した、藩士達は全て聞いてから笑顔でこう言うのだった。
「いや、西郷どんですな」
「全くでごわす」
「西郷どんはその頃から西郷どんでごわしたか」
「面白い話でごわした」
「いや、ありのまま話しただけでごわすが」
話し終えた西郷は照れ臭い顔で応えた。
「面白いでごわすか」
「面白いでごわすよ」
こう答える彼等だった、そして。
大久保も杯を手にしたままその彼に言った。
「西郷どん自体が面白いでごわす」
「おいどん自身がでごわすか」
「器が大きいでごわす、おいも同じ意見じゃ」
そうだというのだ。
「だからでごわす」
「そうでごわしたか」
「いや、いい話を聞いたでごわす」
「ほんまごつよかお話でありもっそ」
「豆腐も馬鹿に出来んでごわす」
「こうして今は普通に食っているでごわすが」
それでもだというのだ。
「薩摩ではおい達こんなもんそう食えなかったでごわす」
「皆貧しくて」
「それを今こうして普通に食っているのも」
「有り難いことでごわす」
「おいどんも最初驚いたでごわすよ」
西郷もだというのだ。
「都では皆おからだけでなく豆腐も普通に食べておりもっそ」
「しかも芋も食っとりゃせん」
「たまげたことに」
「皆豆腐が食える世の中になって欲しいもっそ」
西郷はこんなことも言った。
「そん為にもおいどんは働きもっそ」
「おいもじゃ」
大久保は微笑んで西郷に応えた。
「おいが出来んこともあっが西郷どんが出来ることは山程ありもっそ」
「おいどんが出来ることでごわすか」
「西郷どんは山か海じゃ」
そこまで大きいというのだ。
「大きくどっしりとしておるもっそ」
「西郷どんがおったらおい等何でもできもっそ」
「皆西郷どんについていきもっそ」
他の藩士達も言う、皆西郷を囲んでいる。
そのうえで豆腐を食いながら言う。
「皆が何時までも豆腐を好きなだけ食える世にしもっそ」
「その為にやりもっそ」
「皆やるでごわすよ」
西郷も笑顔で応える。
「明るい世、豆腐の様に白い世に」
「おう、皆で食えば豆腐もさらに美味っそ」
大久保が微笑んで応え他の者達も続き杯を掲げる、西郷はその彼等と共に豆腐を食べるのだった、あの頃のはじめて見た時のことを思い出しながら。
西郷どんと豆腐 完
2013・3・29
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