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今時のバンパイア

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第六章

「あれでしない?」
「何かここでも赤なんだな」
 西瓜もだと、禎丞は今度は思ったことをそのまま言った。
「本当に赤好きなんだな」
「なん吃言うけれど大好きよ、じゃあ西瓜割りでいいわね」
「ああ、じゃあな」
 禎丞は桃香に言われるまま西瓜割りをすることになった、そしてその赤い西瓜も楽しむのだった。
 桃香はとかく赤が好きだった、トマトに苺に西瓜にだ。
 そうした赤いものを中心に口にする、しかもだ。
 泳ぐことも好きで日光浴を愛し大蒜料理もいつも食べる、しかも胸にはいつも銀の十字架がある。禎丞はその彼女にこんなことを言った。
 今二人でスパゲティを食べている、難波のカプリチョーザという店でトマトとナスのパスタを二人でだ。酒は赤ワインだ。
「あのさ、前から思ってたけれどさ」
「どうしたの?」
 黒のサングラスをかけた桃香が応える。
「いや、どうしてトマトが好きなんだってな」
「これが一番身体にいいからね」
「身体に?」
「そう、私のね」
 だからいつも食べているというのだ。
「苺も西瓜もね」
「赤いものがか」
「そう、けれど他のも食べてるでしょ」
 実際にその通りだ、今テーブルの上にはそのパスタだけでなくイカ墨のスパゲティもある。真っ黒で中にはイカや大蒜がたっぷりとある。
「こうしてね」
「オリーブも好きだな」
「オイルはそれね」
「けれどトマトだよな」
「トマトジュースも飲んでるしね」 
 これも毎日である。
「一日一リットル飲んでるわよ」
「やっぱり身体にいいからか」
「そうなのよ」
「何かラテンだな」
 今食べているスパゲティからも言った言葉だ。
「それってな」
「ラテンかしら」
「ああ、ラテンだな」
 まさにそれだというのだ。
「イタリアとかスペインだよな」
「私日本生まれだけれどね」
「けれど外見ヨーロッパだな」
 どう見てもそちらだった、桃香の顔立ちも肌の色もコーカロイドのものだ、無論その金髪も。
「あんた純粋な日本人じゃないだろ」
「明治の頃にご先祖様が移住してきたのよ」
「へえ、そうなのか」
「そう、神戸にね」
 そこにだというのだ。
「今は大阪にいるけれど」
「じゃあやっぱりイタリアかスペインか」
「最初はルーマニアだったのよ」
 この国の名前がここで出た。
「そこからナポリに移住して、ルネサンスの頃にね」
「で、そこからか」
「日本に来たのよ」
「何か凄いルーツだな」
「自分でもそう思うわ、けれど今は完璧に日本人だから」
「国籍はか」
「ご先祖様が結婚した人も日本人だったし代々日本人と結婚してるから」
 つまり日本人の血がかなり濃いというのだ。
「ルーマニアの血は薄いわよ」
「そうか?その割りには随分外見があれだな」
 コーカロイドのものだというのだ。
「全然アジア系っぽくないな」
「ご先祖様の血が強いからね、そうなのよ」
「それでか、しかしルーマニアか」
 禎丞はこの国からあるものを思い出した、それは何かというと。 
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