降りてくる美女
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第五章
「そうしないか?」
「それもそうだな」
「ここで声をかけてそっと場所を変えてな、そうだな」
この友人はざっと周りを見た、そして百貨店のすぐ傍の人気のないところを観て言った。
「あそこがいいな」
「あそこか」
「来てもらってな、そうしろ」
「それがいいか」
「幾ら何でも百貨店の中でコクったらまずいからな」
こう匡に言うのだ。
「わかったな、じゃあな」
「ああ、わかった」
こうしてだった、一行はまずはエスカレーターのところまで行った、時間はもうすぐ六時になろうとしていた。
そこに来てだ、そうしてだった。
美女を待つ、今はエスカレーターの物陰に隠れて彼女を待っている。
やがてその彼女がエスカレーターを降りて来るのが見えた、だが。
匡も仲間達もだ、彼女の後ろ姿を見て拍子抜けした様にして言った。
「あれっ?」
「ああ、何かな」
「違うな」
「雰囲気とかがな」
「全然違うな」
こう言うのだった、皆目を丸くさせて。
「あんな感じだったか?」
「違った気がするな」
「何か今のあの人ってな」
「悪くはないけれどな」
「ああ、そうだよな」
「ちょっとな」
拍子抜けしたう様な声になっていた、皆。
「エスカレーターの時と違って」
「あまりな」
「凄いって感じじゃなくて」
「普通か?」
「普通の美人って感じだよな」
「あれっ、何でだ?」
匡もだ、首を捻って言うのだった。
「今は思ったよりな」
「御前もそう言うんだな」
「拍子抜けって感じなんだな」
「いや、凄い美人さんだったのに」
言葉は既に過去形だった、言っている本人はこのことにまだ気付いてはいないが。
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